蟹の恩返し(昔話)
久世神社のカニ池にまつわるお話です。
昔、久世村に心の優しい娘さんがおりました。
その娘さんがある時、村の男の子らが蟹(カニ)を捕まえて遊んでいました。
夜にその蟹を食べると聞いて、あわれやと思った娘さんが
その蟹を買い取って助けてあげました。
それから幾日かが過ぎたある日、娘さんのお父さんが田んぼに行きました。
すると蛇が蛙(かえる)を飲み込もうとしていました。
それを見たお父さんは、「まぁまて、その蛙を助けてやったらお前の好きなものをやろう」
と言いました。蛇は蛙を放してするするといなくなりました。
するとその夜、姿を変えた大蛇が来て「娘をお嫁さんに貰いに来た」と言いました。
びっくりしたお父さんは「ちょっと待ってくれ。三日間待ってくれ」と頼みました。
その間に厚い板で倉を作り、娘さんを倉にかくまいました。
大蛇は怒って本性をあらわし、倉をぐるぐる取り巻いて、
大きな音をたてて倉をつぶそうと、しっぽで倉を叩きつづけました。
翌日、音がやんだのでおそるおそる戸を開けてみたら、
たくさんの蟹と大蛇が死んでいました。
大蛇をやっつけてくれた沢山の蟹のために、
塚を立てて手厚く葬りました。
「城陽の民話と暮らし」を参考にさせて戴きました。