お買い物

 

 ここは京都の高野というところです。
さいちゃんのお家は、父さん、母さん、お兄ちゃんの4人家族。
さいちゃんは、この時6歳です。
さいちゃんは、いつも瞳をきらきら輝かせている、好奇心旺盛の男の子。
お兄ちゃんとは、大の仲良しで、毎日一緒に遊んでいました。


 今日は、一年中で一番忙しいと思われる大晦日。
でも、さいちゃん達には、そんなこと関係ありません。
これは大人達が、そう思っているだけだから・・・
さいちゃんにとっては、楽しい楽しい一日です。
この日に、大好きな母さんと、お兄ちゃんと三人でお正月のお買い物に出かけることになりました。    
市電(今はもう無くなりました)に乗って、デパートまで お買い物です。
さいちゃんとおにいちゃんは、もう嬉しくて仕方ありません。
市電は街の中を走ります。バスや車も並んで走ります。さあ、デパートに到着です。
 デパートの中は、お買い物に来た人達で、あふれていました。
さいちゃんとお兄ちゃんは、エスカレーターが、目に入りました。
めずらしくて二人は、一緒に飛び乗りました。(これは昭和30年頃のお話です。)
気がつくと、母さんがそばに居ません。
下の方を見ると母さんの、エスカレーターの前でもじもじしている姿が見えました。
どうやら怖くて乗れない様子です。
さあ大変です。
さいちゃん達と母さんの距離は、どんどん離れて行きます。
二人の優しい子供たちは、母さんの姿を見て悪いことをしたと、後悔しました。
でも、もう仕方ありません。
 さいちゃん達は、一生懸命母さんのいる場所に戻ろうとしますが、今日は大晦日です。
デパートの中は、お正月のお買い物をするお客さん達で、前が見えません。
どうしたら、母さんの居る場所に、行けるのか分かりません。
ふたりは 母さんが、「迷子になってしまった。」と、思いました。
二人の兄弟は、ひとごみをかき分け、はぐれない様に、しっかりと手をつないで、
迷子になった母さんを、探しました。
けれども、この大勢の人の中から、母さんを見つけ出すのは、子供たちには無理でした。
 二人は相談して、お家に帰ることにしました。
来たときは、母さんと一緒だったから 市電に乗ってらくちんだったけど、
今は、母さんが 迷子になってしまったから、
仕方なく 歩いて帰ることにしました。


 京都の冬は、底冷えのする寒い寒いところです。
冷たい北風も、ピープー吹いていたことでしょう。
 デパートは、四条河原町です。
さいちゃんのお家は、高野。
子供たちにとっては、途方も無い道のりです。
 お兄ちゃんは、きっと心細かったでしょう。
弟のさいちゃんを、お家まで連れて帰らなければなりません。
お兄ちゃんには、責任があります。弟を守る。
兄弟が二人だけで初めて歩く道。
ここで二人が道に迷ってしまったら、それこそ大変ですものね。
 さいちゃんの方は、大好きなお兄ちゃんと一緒だったから 心丈夫だったでしょうね。
さいちゃんとお兄ちゃんは、なんとかお家に帰ることができました。
 良かったですね。凄いですね。さいちゃんとお兄ちゃんは。
この時、きっとさいちゃんは、お兄ちゃんが居てくれて良かったと思ったことでしょう。


   お家でお留守番をしていた父さんは、もうびっくりです。
小さな子供たちが二人だけで、それも歩いて帰ってきたのですから。
さいちゃんとお兄ちゃんは、父さんに叱られるのを覚悟で、二人が、かわるがわるデパートでの出来事を、
全部話しました。
でも、父さんは、何も言わず、そんな二人をぎゅっと抱きしめました。
そして、その後、
「何か遭ったときの為に使うようにと、ポケットの中に入れてあったお金で、
市電に乗って帰ってくれば、良かったのに。」と。


 父さんは、母さんの事を思いました。
母さんは、まだデパートの中を、心配しながら二人の子供達のことを、捜しているに違いないと。
  そうなんです。母さんは、あれからずっと、子供たちのことを、捜しまわっていたのです。
父さんは、デパートに電話をしました。
そして、母さんに「もう、心配しなくていいよ!子供たちは、大丈夫だよ!」と言って
母さんを、安心させてあげました。
 父さんと、さいちゃんと、お兄ちゃんの三人で、デパート迄母さんをむかえに行きました。


この年のお正月は、いつものお正月のご馳走より、どことなくちょぴり寂しい気のするお料理だったそうです。
そうです。そうなんです。そんなこと仕方ありませんよね!
さいちゃんとお兄ちゃんの大冒険のおかげでね。
 でも、いつものお正月より、うんとうーんと心の温まったお正月が向かえられたに違いありません。
だって、さいちゃんは、46年経った今もその年のお正月のことは、思い出す事ができるからです。

                                                 ★ お話し協力者  さいちゃん ★


おまけ 

 ★この話しを聞いて、思い出した事があります。
私にも経験がありました。
子供を迷子にさせてしまった方なんですけどね。
 2歳の子供を連れてお買い物をしていました。
ふと 気がつくと、子供がそばに居ません。
いつもお買い物をする魚屋さん、お豆腐屋さん、お菓子屋さんなど、
大急ぎで探しました。だけど、どこにも居ません。
まさか2歳だから、帰ろうとはしないだろうと思ったけど、市場の外へ、出てみると、
いつも帰る道をトボトボと、歩いている我が子の姿が見えました。
駆け寄りぎゅっと抱きしめました。
心の中で、ごねんね!ごめんね!と言いながら。
 迷子の子供って、あーん、あーん、って泣いているのをよく見かけますが、
お家に帰ろうとする子もいるんだなっと!
ふたとうりの迷子のケースがあるんですね。
親としては、泣いている子の方が安心かもしれない!
でも、大きくなってもこれだと困りますよね!

★ 「兄弟」それは、生まれた瞬間に、この世で一番最初に出会うライバル?
親の愛情を分け合う為の・・・
子供たちにとっては、いつもいつも一緒にいて、遊んだり、兄弟喧嘩したりで、
そんな意識は、まったく無いですけどね。
  でも、何か悪いことをすると、親としては、物事の分かりやすい お兄ちゃんの方を、
叱ったりする事が、多いと思います。
お兄ちゃんの立場としては、はるかに弟より損と、感じているのでしょうか?
それに引き換え弟の方は、まだ小さいと言うこともあって、そうきつくは、叱られない。
そして、お兄ちゃんの叱られている姿を見て、弟の方は育つから、
してはいけない事と、良いことの判断がつきやすく、お兄ちゃんより、
叱られないようにできる。
 親としては、兄弟平等にしているつもりでも、そうでもないのかもしれない。
最初に生まれた子供に、二人目が生まれるまでの間、注いだ愛情の分。

 ★私は、三人兄弟の真ん中に、生まれました。自分は、真中で良かったなと思っています。
世間的には、真ん中は損だという話は、よく聞きますけど・・・
弟とも、姉ともよく遊んだと思う。そして、姉と弟が遊んだ時間よりも、
はるかに多く。 はるかに仲良く。

★ お話しを提供して頂いたさいちゃんへ★
 私は、「何かを文章にしたい。」な、と思った時、さいちゃんの「お母さんの迷子」の
お話にめぐり合いました。
大切な想い出を、どうもありがとうございました。
内容は少し変わってしまったかもしれませんが、ごめんなさい。
そして、下手な文章で申し訳ありません。お許しください。
これからも都合悪くなければご協力の方、よろしくお願い致します。
                                   

   幼い頃 お兄ちゃんと寒い中、一緒に帰った想い出!

   いつまでも、大切にしてください!

   お兄ちゃんを、頼もしく思えた日の事を・・・


 なーんって、言ってみたりしたけど・・・
もしかして、この話は、まるっきしの逆さまかも知れない。
6歳と8歳。これくらいの年の差なら、さいちゃんの方が、お兄ちゃんを、
連れて帰ってあげた可能性もある。
そうなると、お兄ちゃんの方が、さいちゃんの事を頼もしく思ったのかな?
お兄ちゃんの方は、のんびりさんタイプで、どちらかとゆうと、さいちゃんの方が、
しっかりさんタイプだったりした場合ね。
どうでしたか?さいちゃん?


★兄弟って、不思議な出会いですね。★
夫婦とか、友達とかは、選ぶことができ、別れることもできるけれど、
兄弟は、自分の意志では、どうしても切り離せない・・・・・
肉親、血のつながりとゆうものなのでしょうか・・・・・
                                   MIYU

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