矢車草と弟

 

毎年、矢車草が咲くと思い出す事があります。

あれは、二人とも小学生の頃。

4学年離れた弟は、学校で斡旋していた科学と学習を

買って貰っていて、その科学の本の付録に

矢車草の種が入っていました。

裏庭の日当たりの良い場所を選んで、

土を掘り返し種をパラパラと蒔き土をかけて

水をやりました。

でも、それっきりでその事は忘れていました。

春になって芽が出てどんどん育っていったのに、

全然、気付きませんでした。

やがて、蕾がふくらんで色とりどりの花が

咲きました。

青・ピンク・白・ボタン色・・・

その咲いた花を見て

弟と二人顔を見合わせました。

種を蒔いただけで、すっかり忘れてしまっていたのを

思い出したからです。

それから、毎年その場所に矢車草が

咲くようになりました。

たったそれだけの出来事なんですが、矢車草を見ると

今はもう居ない、その時のあどけない弟の顔が浮かんでくる。

 

矢車草の写真は、H.Pようおこしうしさんのデジうし君からお借りいたしました。

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