ホモ‐エコノミクスというドグマ

 経済学では,「全ての人間は己の利益を最大化する様に行動する」という人間像を前提条件として考えています.

 アダム‐スミスに始まる近代経済学は,リカードゥによる数量化,ワルラスの限界革命と一般均衡理論,アロー及びドブリューの高度な数学による均衡理論の完成という歴史をたどって作られた現在の数理経済学のモデルは,二つの行動原理が前提となっています.

 それは,企業は利潤最大化を,消費者は効用最大化を目的として経済活動を行う,というものです.

 この様な人間像を「合理的経済人」(ホモ‐エコノミクス)と呼びますが,この純理論モデルは,現実を説明しきれないにも関わらず,モデルの限界が明確でなかった事,他の行動モデルを扱う事が出来なかった事を理由に,長い間存続し続けました.

 現在の経済学では,ゲーム理論など,経済主体への条件付けが考慮される様になってきています.