ニックネームの変遷

 私は,大学でこそ,「デニー」というニックネームで呼ばれるようになりましたが,高校までのそれとは全く関連性がありません.また,ニックネームらしいニックネームで呼ばれるのはおそらくこれが初めてだったりもします.

 小学校の時は,苗字があまりに平凡だったからか,もっぱら下の名前で呼ばれました.呼び捨てか,君付けですね.

 中学校の時も,名前を呼び捨てか,君付けだったんですけど,生徒会をしたこともあり,「学年代表」「会長」などと呼ばれることの方が多かったですね.会長職を退いた後も,「会長」または「元会長」などと呼ばれることもしばしばでした.後はクラブで副部長をしていたので,「副部長」ってのもありましたね.後輩からは,普通に,(苗字)先輩,と呼ばれましたが.

 高校に入ると,状況は変わりました.ウチの高校は,「標準服」といって,入学式とかの時だけ学ラン/セーラー服を着るようになっていた(普段は私服でもいいし,標準服でもいい)のですが,私は中学校の制服がブレザー(しかもだっさい紺ブレ,その上ネクタイなし)だったので,学ランを持っていなかったのです.で,入学者説明会の時に,学年主任に,「学ラン持っていないんですけど,スーツで行ってもいいですか?」と聞くと,渋々ながらもOKされました.で,私は高校生活を,毎日スーツで過ごすことになったのです.入学式の日,教室に入って,一瞬で,「……! 社 社長!!」と,知らない(そりゃそうか)男子生徒から声をかけられました.その声に周りも乗ってきて,私も気さくな性格ですからそれに応え,そうしておそらく学年最速でニックネームが決まったのでした.そして学年中,否,学校中に,「社長」の名が一瞬のうちに知れ渡ったというわけです.ほぼ全ての人から「社長」といわれました.中には先生の中にも「社長」という人までいた始末です.そのほかにも,自治会執行部(いわゆる生徒会と同義,ウチの自治会はかんなりリベラルだった)の会長も勤めたので,中学校の時と同様,「会長」と呼ばれることはありましたが,「社長」のインパクトがあまりに強すぎて,あまり定着しなかったようです.また,女の子からは,親しみを込めて「社長さん」と呼ばれることも一部ありましたが,呼び方によっては,そりゃあ客引きでっせ(彼女たち自身にそういう意味でふざけている意識はない).男の知人からは,揶揄まじりに「シャッチョさん」とか呼ばれることはありました.クラブでは部長もしましたが,「部長」と呼ばれることは皆無でした.
 これは別の話ですが,卒業アルバムの個人写真は,標準服着用が原則(ってか絶対)で,私以外は男性はみな学ランを着ています.私は,撮影会の日,学年主任に,「う〜ん,君はいいよ」と,スーツ着用を認められました.だので,私だけスーツです.実際話,見掛け倒しじゃなくて自治会もやったし成績も学年3位で,(先生・学生ともに)あまり敵を作らない性格だったのも奏功したのでしょう.
 これは更に別の話ですが,高校の卒業アルバムのクラブ活動の欄に「自治会執行」もあり(自治会ってクラブなのか!?),そこに写っている光景は,いかにも会長席,な所にスーツ姿(とはいえ撮影は夏場だったので上着は着ていない)の私がドーンと座っていて,その周りに他の学生が,そして後ろには先生が写っているのですが,先生方,夏場という事もありめっちゃラフな格好で,一人なんかジャージで,私の方がよっぽど先生らしい格好だったりします.見たら笑うでしょう.スキャナがあれば(ほかの人の目の所には線を入れて)公開するかもしれませんが,残念ながら(?)我が家にスキャナはありません.
 これは更に更に別の話ですが,スーツ姿がよほど珍しかったのか(ってそりゃそうか),高1の時,文化祭の企画の「ミスター・ミス夕陽(←夕陽は高校の愛称)」で,私がミスター夕陽3位になってしまったのは別の話.ちなみにこれは全校生徒による投票でした.
 ※ほぼ全て:私の「社長」キャラ,にペルソナ(仮面,位格)性を感じてくれた人がいて,その人だけは私を「社長」と呼ぶことは決してなく,「(苗字)君」でした.私が気づいた中ではペルソナ性を感じてくれていた人はその人だけです.

 ではなぜ大学ではデニーと呼ばれるようになったのか,という事も,とりあえず触れておきましょう.大学に入ってまもなく,私はE.S.S.(英語研究会)の扉を叩きました,そこには男性の先輩が一人いらっしゃいました.独りだったのは活動時間外だったからでしょう.彼は「ダディ」というニックネームで呼ばれていましたが,大学に入って間もない私に,講義の取り方などいろいろ親切に教えてくださいました.で,4月の下旬頃に行われたプレ新歓(クラブの勧誘)での話.当然お酒を飲むわけですが,他の人がビールや酎ハイ,カクテルを頼む中,私が頼んだのは,日本酒.それで私は,「ダディ」先輩とキャラが似てる(本当はそんなことはない)ということで,私にも「ダディ」というニックネームがつけられたのです.ですが,同じクラブに同じニックネームが複数いては不都合ですので,数日後,私のニックネームは「デニー」へと変形したのでした.私は「ダディ」よりも「デニー」の方が響きが柔らかいので気に入っています.E.S.S.っぽいニックネームなところも気に入っています.
 また,大学では他にも,「大臣」や「センセ(先生)」「リーダー」「チーフ」などと呼ばれることもあります.センセ,って私は碇シンジじゃないですよ.

 こうしてニックネームの変遷を見てみると,本当にニックネームらしいニックネームで呼ばれたことが少ないのに驚くのと,役職名のニックネームが実に多いことに驚きます.学年代表から始まり,会長,副部長,社長,大臣,先生,リーダー,チーフ…….高校までの私を知る人は,また大学の友人にも,私にカリスマ性(?)を少なからず見出した人が多いようです.高校の時,先生にも,「耕太,お前は政治家になってこの日本を変えてくれ」と真顔で言われました.どうも冗談ではなさそうです.実際,私は今,教師を目指していますが,大学の多くの友人から,「デニーは教師も似合いそうだけど,でもやっぱりそんな器じゃない.そんな小さな所でくすぶっていては勿体無い」とよく言われます.とはいえ,私は私だけの私ではないので,なかなかそうも行かないんですよ,みなさん.

 ニックネームに変遷があることで,街角で声をかけられた時に,どのように呼ばれるかでどの時期の知人かがわかる,という便利さもあります.私はごく浅くごく広くの交友関係ですので,あっちは知っていてもこっちはあまり知らない,という事もあるのです.

 私の片鱗がお分かりいただけましたでしょうか? とはいえこんな文章,誰が読むんだろうか…….