断末魔の美しさ
                    2004.3.27 東山裕一


竹は60年あるいは100年に一度花を咲かせるといいます。私たちの目に美しい花も、実は当の植木にとっては種(しゅ)の生き残りを賭けた必死のあがきなのです。

地球上の生物は進化の中で、生殖という手段によって自らが死んでも種を保存できるという画期的な方法を手に入れました。それまでの生物は細胞分裂によってしか生きながらえることしかできず、言い方を変えれば死ねなかったのです。それが、植物ならタネを作る、動物なら子供を生むことによって親は安心して死ねることになりました。

植物はタネを作るために花を咲かせ、昆虫をさそい、めしべに受粉させます。植木にとっては、最後の力ふりしぼる"とどめの仕事"なのです。そう、花は断末魔の美しさです。

意地の悪い見方かもしれませんが、日常生活の中でも楽々と仕事をしている人の姿より、一つ間違えば首になるというぎりぎりの瀬戸際で、必死、真剣に取り組んでいる姿の方が美しいです。なんでも一生懸命が一番です。
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