平均と典型
                    2009.11.23


過ぎた夏を振り返った時、「今年の夏の暑さは平年並みだった」ということはあまりなく、「猛暑だった」とか「冷夏だった」ということ事の方が多いように思います。もともと平年というのは、暑い夏があり、そして涼しい夏があってそれらの平均ということですから、普通の平均的な夏というのは結構少ない、あるいは極端に言えば存在しないのかもしれません。

"平均"と言う言葉は、一般的で世の中にごくありふれたという意味で、たとえば「平均的なサラリーマン」という使い方もしますが、具体的に「この人がその人です」と指し示す事はなかなかできないのではないかと思います。

よく似た言葉に"典型"と言う言葉があり、「典型的な役人」という言い方をします。"平均"と"典型"、これら二つの言葉はほとんど同じ意味で使っていますが、厳密には微妙に違うと思います。

たとえば35人のクラスがあったとして、クラス全員の平均身長は計算すれば算出できます。でもその平均値きっちりの子がいるかと言うとまずいません。一方身長順に一列に並んでちょうど真ん中の子、18番目の子の身長はかなり平均値に近いはずです。また、よく似た身長の子どもたちを1cm刻みでグループ分けしたとき、一番人数が多いグループの身長も平均値に近い事も経験的に知られています。そうした子のことを典型的な身長の子と言うんだと思います。そして、どちらも実在します。

数学用語で言えば、平均(average)は"平均(mean)"ですが、典型(typical)は"中央値(median)"あるいは"最頻値(mode)"に対応するように思います。そして日常私たちが何気なく"平均"と言っているのは、あくまでも平均"的"あるいは平均"像"のことなのでしょう。
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