もう一度、写実派と印象派
                    2005.2.20 東山裕一


18世紀後半イギリスで起こった産業革命は、その繁栄とは裏腹に資本家・労働者の対立と貧困をもたらしました。その現実をありのままに描こうとしたのが写実主義(Realism)で、クールベ、ミレーが有名です。そして1800年代半ばには、外形にとらわれず人間が受ける印象を描くべきだと考える印象派(impressionism)が起こり、モネ、ルノワール、ゴッホが活躍します。
この変化に当時の写真技術が大きく影響していると私が考えていることは、以前にも触れたことがありますが、もう少し詳しく見てみましょう。

フランスの発明家ニエブスが感光板を使った写真撮影に成功したのが1826年のことです。ちなみにその15年後には日本に伝来しています。初期のカメラの露光時間は6時間以上必要だったそうですが、その後30分、数分と改良され、1851年には10秒以下になりました。

実は写真機の発明には画家が多く関与していました。小さな穴を通して暗い部屋の壁に写った外の景色をなぞるということは、当時の画家がよくやったことのようです。いずれにしろ当時の画家は、この写真機の発明をよく知っていたはずで、機械で自動的にできてしまう、「ありのままを描く」という写実主義の意義は急に薄らいでしまったと考えられます。そしてその後は、人間の印象、感情を重視する芸術へと変化していったのでしょう。

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