或る冬の日
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[或る冬の日] 空気が凍る或る冬の日。 私はゆっくりと落下していく。 一瞬の生を感じながら。 灰色の空。 私が生まれた。 灰色の雲。 私が育った。 そして空気がぐんと冷えたその日。 私は固まったまま地面に落ちていく。 身体全体に風を感じて ゆらゆらゆらりとゆれている。 地面はまだ白色茶色緑色アスファルト色のまだら模様。 先に行った同胞達が染め上げた白で塗られたまだら模様。 同胞達の誰かはもういないだろう。 同胞達の誰かはまだいるだろう。 恋焦がれた地上。一瞬の生の後にすぐに地に吸いこまれる命。 それが私。そして同胞。 私達が地上に降りたって見る世界はずっと少ない。 青い空を見れば私達はたちまち消えてしまう。 太陽が私達を溶かすから。 灰色の空が覆う今だけ、降り立つこの世界を一番長く見つめていられる。 灰色の空。 私が生まれた。 灰色の雲。 私が育った。 そして空気がぐんと冷えたその日。 私は固まったまま地面に落ちていく。 もし太陽と青空の世界がとてもとても綺麗だとしても。 私は長くはいられない。 それが惜しいのか。惜しくないのか。 わからない、今の世界も綺麗だと、思うから。 私は消えるけれど、土に吸いこまれた後のわたしがどうなるか。 わからない、もしかしたらその世界にも行けるかもしれない。 でもそれは私ではない。 だから。 恋焦がれた地上。一瞬の生の後にすぐに地に吸いこまれる命。 それが私。そして同胞。 私達が地上に降りたって見る世界はずっと少ない。 青い空を見れば私達はたちまち消えてしまう。 太陽が私達を溶かすから。 灰色の空が覆う今だけ、降り立つこの世界を一番長く見つめていられる。 だから今だけは目に焼き付ける。 冷たい空気の中で揺れながら。 灰色の空が覆う今だけ、降り立つこの世界を一番長く見つめていられる。 今だけは。 朝、空は深い青。雲一つない快晴だった。 積もった雪は朝日を浴びてきらりきらりと煌いた。 そうして昼が近づいて、そのまますぐに消えてしまった。 |
中華
2004年10月23日(土) 18時13分09秒 公開 ■この作品の著作権は中華さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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obufLvJiRXk | 50点 | znfpfljc | ■2014-09-27 09:30:01 |
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