クレーメルメモリー「風」〜ブルーフェザーの育み〜
シルフ「へぇ〜、ウンディーネも色々あったんだねえ」
ノーム「そぉ〜れ〜は〜、シ〜ル〜フにも〜言えることなんだよ〜ね〜」
シ「げっ・・・ノ、ノーム!、このこのぉ!」
ノ「いたいいたい!・・・まったくぅ〜、シルフはガキな〜んだから〜」
セルシウス「そういえば、シルフが昔、今の子供の姿じゃなくて、
大人の姿だったことは有名よね」
イフリート「そういや、そうだな」
ウンディーネ「シルフ、もし良ければその辺りの事情を話してくれますか?」
シ「うっ・・・そうだねえ・・・
そんな二人見たいに良い話じゃないんだけどさ・・・」
あれは・・・そうだね・・・、
ウンディーネと同じメルニクス文明中世期の頃だったかな、
僕は自由を好む風の大晶霊!だから、
大晶霊ってことを隠してよく人間の町や村なんかに堂々と出ていったり
してたんだけど、ある町でこんな光景を見たんだ。
少年A「へん!このやろ、このやろ!!」
???「痛い! 痛いってばぁ〜!!」
少年「バーカ、痛いことをしてんだから当たり前だろっ!!」
???「・・・痛っ!・・・エーンエーン!・・・もう止めてよお・・・」
少年C「うるさいぞっ!!」
一人の男の子が他の少年達に・・・いわゆる「いじめられて」いたんだ。
その時の僕は「いじめる」と言う行為も気に入らなかったけど、何より
その男の子の「自由を奪う」行為が許せなかった。
シルフ「おまえ達、その辺にしておけ」
少年A「なんだよ〜!」
シルフ「その子の、保護者・・・とでも行っておこうか」
少年B「げっ!みんな逃げろ〜!!」
少年C「ちくしょう!、覚えてとけよ〜!!」
自分より強い者に出会うと、途端に弱くなる、
いじめる者なんて、そんな者だ。
シルフ「ふむ、派手にやられたようだな、大丈夫か?」
???「うん・・・ありがとうお兄ちゃん!!」
シルフ「おまえの名前は?」
???「ん?僕はアルフレッド!!みんなは『アル』って呼んでるよ」
シルフ「アルか、アルは毎日・・・いじめられているのか?」
アル「・・・うん・・・僕、弱いし・・・下級平民だし・・・」
・下級平民とは、現在のリッド達の平民の位よりさらに下位に位置するもの。
ちなみに、前回のウンディーネ編でも分かるようにこの頃の階級差別は
もっとも深刻な時期であった。
風のきまぐれ・・・だったんだろうね。
普段なら「人間の文明なんか、そんなものさ」で終わってたんだろうけど、
僕はアルにこう言ったんだ。
シルフ「そうか・・・アルよ、おまえは自由が欲しくないか?」
アル「自由・・・?」
シルフ「ああ、自由とは何者にも束縛されないこと、全て自分の意志で
生きていくこと、風のように流れ風のように進むことだ」
アル「・・・欲しいよ・・・凄く欲しい・・・。昔っからこうだもん・・・僕・・・
体弱いから友達少ないし・・・外、出てきてもアイツらがいじめるし・・・
それに僕の家、下級平民だから・・・
いろんな人が・・・僕達を苦しめるんだ!!」
シルフ「ならばおまえに自由を与えよう」
アル「えっ!?・・・お兄ちゃん・・・?」
シルフ「私の名は大晶霊シルフ、名前くらいは聞いたことがあるだろう?
と言っても、突然そんなことを言われても信じにくいかな?」
そう言うとシルフは、右手を突き出して風を産む!
シルフ「汝に空に舞いし風の衣を与えん・・・」
アル「えっ!?・・・うあっ、うああああ!!」
シルフの力でアルは空に舞う。さすがに最初は驚いたのか、
体を震わせビクビクしていたアルだったが、そこは子供の適応力。
すぐに安全だと気付き、空を感じる・・・
アル「うああ・・・凄い・・・凄いよお兄ちゃん!!
すっごく広くて・・・おっきい・・・」
シルフ「それが空だからな、そろそろ降ろすぞ」
アル「あっ!待って!もう少しだけ・・・」
シルフ「ああ、分かった」
アル「本当に広いなあ・・・僕も・・・こんな広い世界に出たい・・・
広くって青くって・・・包み込むような・・・」
それからしばらくアルは空の旅を楽しんでたね、
僕もなんか嬉しかったよ、自由を知ってもらえたからかな・・・。
あの時のアルの笑顔は・・・今でも鮮明に覚えているよ。
シルフ「よし、そろそろいいか?」
アル「うん!!」
シルフ「これで分かったかな?」
アル「うん!!、お兄ちゃんがシルフさんだったんだね〜!」
シルフ「これは二人だけの内緒だぞ♪」
アル「分かってるよぉ〜!そうだ!約束しよーよ!」
シルフ「約束?」
アル「うん、指きり♪、内緒の約束♪」
シルフ「指きり・・・とは何だ?」
アル「え〜!!シルフお兄ちゃん、大晶霊なのに指きりも知らないの〜!?」
シルフ「う・・・うるさい!大晶霊だってな、知らないことの一つや二つ・・・」
アル「しょうがないな〜!僕が教えてあげるよっ♪」
アル「うっ・・・あ、ああ、頼む」
何気ない会話だったけどさ、楽しかったよ。
多分アルも楽しかったんだと思う。
僕もこんな風まかせの性格だからさ、特に人間とは深く付き合ったことは
無かったからね、余計に・・・楽しかった。
アル「ほら、こうして、小指と小指とくっつけて・・・」
シルフ「ふむふむ・・・こうか?」
アル「そう!、そうして
『指きりげんまん嘘ついたら針千本飲〜ます!指きった!』
って言うんだよ!!」
シルフ「何!?嘘ついたら針千本も飲むのか・・・人間は・・・」
アル「ものの例えだよ・・・お兄ちゃん・・・」
シルフ「!!・・・そ、そんなことわ、分かっていたさ!!」
アル「ホント〜?」
シルフ「と、とにかく行くぞ!!」
『指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲〜ますっ!指きった!!』
アル「分かってる? 小指と小指の誓いは絶対なんだからねっ!」
シルフ「もちろんだ、では指きりを教えてくれたお礼に
こちらも先ほど言った自由を与えよう」
アル「自由・・・うん・・・でも、いいのかな?」
シルフ「構わん、大晶霊たる私が認めた人間だ」
アル「・・・ありがとう!!」
シルフ「ふっ、では、まず私の前に立て」
アル「うん・・・これでいい?」
シルフ「ああ、そのまま動かずにじっとしているんだ」
シルフ「風の大晶霊シルフの名において、汝に蒼の羽根を宿さん・・・」
両手をアルの胸に置いてシルフは静かに語りかける・・・。
すると、アルの体が白く光り、その胸から一枚の蒼い羽根が光り輝いている。
そしてしばらくすると光も止み、やっと我にかえったアルはシルフに聞く、
アル「うわあ!?・・・シルフお兄ちゃん、これは何!?」
シルフ「それは、蒼の羽根・・・『ブルーフェザー』
これをその身に宿した人間は、その者が一番望む事を
それを望む心を力にかえることができる」
アル「どういうこと・・・?」
シルフ「おまえが自由を望むなら、強く想い続けるが良い
それがおまえの力となり、おまえはいずれ自由を掴むだろう」
アル「・・・強く想い続ける・・・」
シルフ「それが力になる、その『力』で自由を手に入れるのだ、アルよ」
アル「・・・・・・うん!!僕、絶対強くなってやる!!
そして自由を手に入れるよ!!シルフお兄ちゃん!!」
シルフ「その意気だ、では私はそろそろ行くよ」
アル「もう・・・行っちゃうの?」
シルフ「そんな寂しそうな顔をするな、おまえはもう大丈夫だ、
それに私にばかり頼っていては、少しも強くなれんぞ?」
アル「・・・そうだね・・・僕、頑張るよ!!」
シルフ「おまえが成長した時、また会いにくる」
アル「ホント!?、ようし!!今度会う時はお兄ちゃんが
ビックリするくらい凄くなってやるんだから!!」
シルフ「ああ、期待しているぞ。じゃあ」
アル「うん!!またね!シルフお兄ちゃん!!」
そう言って僕はアルの元を去ったんだ。
ノーム「やっぱり〜、『この頃』のシルフは格好良いね〜」
セルシウス「ホントね、どっかのバカとは大違いだわっ」
イフリート「!?・・・ど、どっかのバカって俺のことか!?」
セルシウス「分かっているだけマシだけどね」
イフリート「・・・・・・」
ウンディーネ「・・・力・・・ですか・・・」
シルフ「うん・・・そう・・・ウンディーネの考えてる通り・・・」
その時、僕はまだ、気付いていなかったんだ
・・・僕がしてしまった大きな過ちを・・・。
☆毎度おなじみ補足辞典☆
・アルフレッド・フリーデン 年齢 8歳
通称「アル」、シルフが立ち寄った町でいじめられていた少年。
性格 内気で気が弱く小心者。体も弱く家にいることの方が多い。
家柄が下級平民であるために、階級差別もかなり酷い。。
だが、それゆえに誰よりも自由を望む事になる。
・ブルーフェザー
直訳すれば蒼い羽根。いやホントに蒼い羽根である。(笑)
シルフが人の体内に宿すことのできる力の事を指す。
その効果は、その人の一番の望みを、その望みを強く想う心分の
力を本人に与えるというもの。その力はシルフの力の及ぶ範囲内、
シルフの力分。と言っても大晶霊の力は人にとっては絶大なもので
あると言うことは言うまでもない。
アルが望んだのは自由・・・その先に待つものは?
今回は元ネタは無し。
・シルフinアダルトバージョン(笑)
人間で言うと20〜22歳くらいで、身長175cmくらいの細身の青年姿、
ただし口調は大晶霊ゆえか偉そう。無論、美形。(爆)
性格自体は、子供と大人の違い程度かな。
なぜ今の子供の姿になったかは物語が進むにつれ明らかにされることだろう。
遊人
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■作者からのメッセージ
第3段はシルフっ!しかもアダルトばーじょん♪(笑)
このシルフまでは当初の構想から立ってのでわりとスムーズに行っています。
しっかし、じょじょにオリジナル色が強くなってるなあ・・・(汗)
前2話よりは重いと言うより暗い話になっていると思います。
書いてる間は、思いっきり感情移入する方なので、書き終わった後は結構ダークになるんだな、このシリーズは・・・(笑)