クレーメルメモリー「氷」〜ふゆトマトの温もり〜
今回のタイトルって結構好きです。(笑)
セルシウス「じゃっ、次、私の番かな」
イフリート「おっ? いいのか?」
セ「まぁね、それに3人の話も聞いちゃったしね」
ウンディーネ「別に無理をする必要はないんですよ?」
ノーム「セルシウスしゃんは、せんさいだ〜か〜らねえ」
セ「みんなしてそんな過保護にならなくても・・もうっ!話すわよっ!」
あれは・・・そうね、メルニクス文明以前だったかしら・・・。
あの頃、あたしは悩んでいたの、どんなにどんなに頑張っても、
あたしは氷の大晶霊・・・人を冷やすことができても暖めることはできない・・・
ほら、人間って、冷たい人間とか暖かい人間とかって言うじゃない?
その意味から考えると・・・私は冷たい人間・・・
だから・・・暖かい心を与えることも持つこともできないんだって。
その頃からかな・・・、ふゆトマトの栽培をはじめたのは、
何かきっかけがあってはじめたわけじゃないけど、
こういうやって何かが育っていくのを見てるのは気分が良かった。
それにほら、ふゆトマトって、
寒い地でしか育つことができないじゃない?
私にだって育てられるものがあるって・・・、
そうすることで、暖かい心が持てるんじゃないかなって淡い希望も抱いてね。
そんな時、女性が、この極寒の地の中、たった一人で私の元にやって来たの。
???「あの・・・ゴホゴホッ・・・
もしや、氷の大晶霊セルシウス様では・・・!?」
セ「ええ、そうだけど・・・って!!、貴方!!大丈夫!?」
本来、大晶霊は、そう簡単に人に姿を現したり
言葉を交わしたりするもんじゃないんだけど、
まさか、こんな所に女性一人で来るハズないと思ったし、
それに彼女の状態が異常と感じたのよね、
???「ゴホッ・・・はい・・・私の名はムツキと言います・・・」
セ「名乗りなんていいから!、早くこちらへ来なさい!!」
とにかく、せめて少しでも寒さを和らげる場所に連れていったわ。
セ「ここなら少しは寒さを防げるハズよ・・・それにしても・・・」
ムツキ「ウッ・・・ご、ご迷惑をおかけして・・・申し訳ありません」
セ「そんなこと!! それより貴方、もしかして・・・」
ム「はい・・・私は、ある不治の病にかかっているのです・・・」
セ「不治・・・治らないってこと!?」
ム「ええ・・・今の医学ではどうしようもできないと、
お医者様も仰っていました・・・」
セ「そんな・・・じゃあ、どうしてここに!?、そんな体で!!」
ム「昔・・・お婆様から聞いた言い伝えを思い出したのです・・・」
セ「言い伝え・・・?」
ム「はい・・・何でも極寒の地に棲んでいらっしゃる、
セルシウス様・・・貴方のお育てになられている
食べ物には・・・万能薬の力があると・・・」
セ「私が育てている・・・もしかして、ふゆトマトの事・・・?」
ム「ごほっ・・・おそらくは・・・」
セ「貴方・・・そんな言い伝えを信じてここまで・・・」
ム「ふふっ・・・村中から、止めろ止めろって言われました」
セ「そりゃそうよ!!」
ム「でも・・・生きたかった・・・生きて生きて生き続けたかった・・・
娘がね・・・生まれたんですよ」
セ「娘・・・さん?」
ム「はい・・・こんな病の中でも、
新たな命が生まれたんです・・・この娘のためにも・・・
私は・・・生きたい!!」
セ「分かったわ・・・ちょっと待ってて!!」
私はこんな状況の中・・・少し喜んでいたの・・・
私が作ったもので人が救われる・・・!!
そうすればきっと・・・私だって暖かい心を持つことができるって!!
セ「これが私の栽培した「ふゆトマト」よ」
ム「これが・・・なんて綺麗なの・・・素晴らしいです・・・セルシウス様・・・」
セ「いや・・・そんなに褒められると照れるんだけど・・・」
ム「いえ、本当にありがとうございます!!、頂きます」
セ「ええ、遠慮なく食べてちょうだい!」
「シャリッ」気持ちの良い音を立てながら、
美味しそうに、ふゆトマトを食べる彼女の姿・・・今も覚えているわ・・・
誰かに喜んでもらえることがこんなに嬉しいなんて・・・。
ム「美味しい・・・ひんやりしてて・・・とってもジューシーで・・・
作ってる人の心が・・・気持ちがとても伝わってきます・・・」
セ「体の方は・・・どう?」
ム「ええ!!どんどん元気が湧いてきましたよ!!」
セ「ホント!!良かった〜!!!」
本当に感動したわ・・・だって・・・とにかく嬉しかった!
私にも私にだって・・・人間を助けることのできる暖かい存在なんだって!!
セ「あっ!せっかく治って来たのに!こんなとこにいちゃダメじゃない!
さっ、送っていくわ!」
ム「とんでもございません!そこまでご迷惑おかけするわけには!!
大丈夫!体も元気になったことです、自分で帰れます」
セ「そう?・・・うーん・・・じゃ、大丈夫・・・?だよね?」
ム「はい!!」
元気よく返事をして、彼女は帰っていったわ・・・
でも、どうしても何かが私の頭の中に
ひっかかっていた・・・私は彼女の後を追ったわ・・・そうしたら・・・・・・
セ「おーい!ムツキ〜!・・・ムツキ?・・・ムツキ!!!!!」
彼女は・・・半分雪に埋れながら・・・血を流して、倒れていた・・・。
ム「ハアハア・・・あら・・・見つかってしまいましたね・・・」
セ「貴方!?・・・どうして・・・!!、やっぱり、ふゆトマトの効果なんて・・・」
ム「いいえ・・・そんなこと言わないでください・・・とっても美味しかった・・・
ホントに病気なんて吹き飛んじゃうくらい・・・」
セ「ごめん・・・ごめんね!!私が『ふゆトマト』なんて栽培したばかりに・・・」
ム「違いますよ・・・それは私が勝手な言い伝えを信じてきただけ・・・
それにどちらにせよこのまま死ぬ運命にあったのですから・・・
最後まで・・・生きる意志を失わなかった自分に後悔はありませんし・・・
大晶霊たる貴方様に会えて・・・
ここまでして頂いてもらっただけでも十分です・・・」
セ「ごめん・・・ごめん・・・
私なんかが・・・暖かい心なんてもとうとしたから・・・!!」
ム「・・・諦めちゃ・・・ダメです・・・」
セ「・・・えっ?」
ム「そのふゆトマトは、暖かかった・・・、何でか分かります?
極寒の地に育つふゆトマトだって、
大切に大切に想い育てる人がいれば・・・
その心を受け止めて暖かい心をもつことができるんです・・・
だから・・・きっと・・・」
セ「でも、私には・・・」
ム「ほら、またそういうこと言う・・・貴方は気付いていないだけ・・・
貴方様の事を想ってる人だって、きっといます・・・私だってそう・・・
貴方様と会った時から、貴方様の事が大好きですよ♪」
セ「ムツキ・・・ありがとう・・・ありがとう・・・」
ム「痛っ!!・・・ゴホッ・・・セル・・・シウス様・・・最後に・・・お願い・・・」
セ「うん・・・何?」
ム「私を・・・娘の所まで・・・」
セ「分かった・・・分かったから・・・もう・・・喋らないで!!」
そうして私は麓の村まで彼女を送ったわ・・・。
村は大騒ぎだった・・・そして娘さんは、
一体何が起こったのかも分かっていないようだった・・・
でも・・・何となく分かるんでしょうね・・・涙を流していた・・・。
それからしばらくは、無気力状態が続いたわ・・・。
救えなかった・・・暖かい心も・・・・・・
私の心の中に大きな穴がポッカリあいたような・・・。
でも、彼女の言葉だけは私の心に強く・・・強く残っていた。
「大切に想ってくれる人がいれば、
その心を受け止めて暖かい心を持つことができる」
続く
☆ご存知?設定図鑑☆
・オリキャラ
ムツキ・アマモリ(天守 睦月)23歳 女性
何で漢字まであるのかは聞かないお約束♪(笑)
1歳になったばかりの娘を持つ母親。
性格は至って普通だが、芯の強い女性である。
不治の病にかかり、医者から数ヶ月と持たないだろうと宣告される。
そのため彼女はあらゆる手段を尽くして治そうとするが・・・
どれも失敗に終わる。
最後に彼女が賭けたのが、お婆さんからの言い伝え
「セルシウスが育てている、ふゆトマトは何でも治る万能薬」
と言うこと・・・しかし・・・。
死に際にセルシウスにとって、とても大切な事を教え・・・逝く・・・。
・ふゆトマト
極寒の地でしか育たない、珍しい食べ物
その血が寒ければ寒いほど、
よく育つ特性を持つ、そしてなぜかどんなに冷たくても
凍らることは絶対に無い。
予め言っておくが、ムツキが聞いた言い伝えは、「真っ赤な嘘」である。
現実は甘くない・・・そういうことだ。これは、はっきりとした事実である。
遊人
http://www5.ocn.ne.jp/~ingaku/
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■作者からのメッセージ
最近書いてて思うんですけど、小説って言うか書きものって簡単に人殺せますよね・・・(苦笑)
自分が死と言う言葉を使った瞬間に・・・いともたやすくその人が逝なくなる・・・。
だからこそそこまでを、どう描くかが鍵となるんでしょうけど、
自分は何処まで描けているのかなあって思ったりなんかしました。
さて今回は実は一番悩んだセルシウス編、多分元ネタを知っている方
察しの言い方はお気づきでしょうが、思いっきり元にしているネタあり。(笑)
まぁこの話は次回までとっておきましょう。
あ、流れを一貫性にするとか言ってましたけど・・・訂正させて下さい。。(爆)
思いっきりなくなってますもんね、一貫性・・・。