クレーメルメモリー「地」〜ナイトキャップのお休み〜中編


アイヤー、はじめて前・中・後に分けてしまたアル。
・・・喋りにくい。。と言うわけで、今回は3つに分かれる事になりました。
ちょっと長くなるので、レスはある程度纏めさせていただきます、申し訳ありません。
まず、過去ノームですが、「人型」ではありますが、「人間」ではありません。
イメージ的には、「ホビット」ですね、そんな感じで書いています。
老人はバレてんだろうなあ・・・って思いながら書いてます。(笑)
『テーマ』の方は、重いんじゃなくて、深いって事を書いてて感じました。

では本編へ♪


あのおじいさんの突然の訪問から数日・・・、
『異変』は確実に起ころうとしていたんだ・・・。

日に日に・・・鉱山に仕事に来る人が減り・・・次第に山に活気が無くなっていき・・・。
聞く所によれば麓の村も同じような感じらしい。

唯一、変わらない例外と言えば、

ファルナ「あっ!ノーム様〜!!おはよーございまーす!!」
ノーム「ファルナ・・・こんな朝早くから・・・」

そう・・・彼女、ファルナだけは、いつもの彼女と何も変わっていない、
自分の背丈と同じくらいの「つるはし」を持ち、大人でも大変な鉱夫の仕事している、
頑張りやさんの彼女のままだ。

ファ「えへ♪、私、早起きは得意なんですよ〜♪」

この・・・明るくて健康体な姿も声もいつものまま・・・。

ノ「い、いや、そういう問題じゃなくて・・・」
ファ「はいっ?」
ノ「毎日毎日・・・、
  麓の村から鉱山まで歩いてきて、それで鉱夫も仕事までキッチリこなして・・・
  体は大丈夫なの?」
ファ「はいっ!頑丈だけがとりえですから♪」
ノ「良かったら、僕が疲れを取ってあげようか?」
ファ「ダイジョーブ♪、それにノーム様、疲れない仕事なんてないですよ♪
   何でも一生懸命にやれば疲れるものです♪」
ノ「う、うん・・・だからその疲れを・・・」

ファ「疲れを取るには眠るのが一番!!って・・・あっ、ごめんなさい!!
   皆を元気にしてくれるノーム様の前で・・・」

明るかった笑顔が突然、泣き出しそうになるファルナ・・・
そんな彼女の顔を見て慌てるノーム、

ノ「えっ?あっ!ぼ、僕は気にしてないから!!ねっねっ!!」
ファ「ほ、ホントですか・・・?」
ノ「うん♪」
ファ「良かったあ・・・」

さっきまでの表情は何処へやら一転して明るい笑顔に戻るファルナ、
これが子供の素直さと言うものなのであろう。

ノ「でも・・・眠るのが一番か・・・ねぇ、ファルナ?
  どうして君はそう思うんだい?
  あっ、僕に遠慮しなくていいから、君の考えを聞きたいんだ」
ファ「えっと・・・それが『自然』だからだと・・・思います」
ノ「自然・・・?」
ファ「一日中頑張って♪お仕事をして、疲れた体を休ませるために眠る、
   これってお仕事してる人にとっては自然な事ですから」
ノ「でもさ、そんな事しなくても、僕がパーっと・・・」

ファルナは首を静かに横に振る。

ファ「眠るって大切な事だと思います。
   明日への活力を溜めたり、
   楽しい夢・・・私だったら私が小さい頃に亡くなったお父さんの夢を見たり・・・」

一瞬、ファルナの表情が寂しさと暖かさが同居したような不思議な顔を見せた・・・。

ファ「それに良く眠れるっていうのは頑張って働いた人がもらえる、ご褒美ですから♪」

ノ「ご褒美・・・か・・・」

ファルナの言葉に何か・・・何か気づかなくてはならないような気がして・・・
懸命に考えたが・・・答えは出なかった・・・・・・。 

ノ「あっ、ごめん!!仕事の邪魔しちゃったね」
ファ「いいえ♪気にしないでください!!」
ノ「じゃあ、頑張ってね!!」
ファ「はい!!」

そう言って僕はファルナを後にした・・・。
その後も鉱山の活気は無くなり続け・・・この山に来る人間の目的のほとんどが、
僕に体や疲れを取ってもらいに来る人間ばかりになっていた・・・
そうだ、この数だけは、減る事なく・・・増え続けていたんだ・・・。


それから・・・事態はさらに深刻化していた・・・。
あれだけ僕の元に来ていた人間達ですら、山にほとんど来なくなり・・・
もう鉱山に入る者はファルナ一人となり、麓の村でも仕事をする者がほとんどいなくなり、
廃れ果てていると言う・・・。

ノ「皆・・・どうしてしまったんだ!!!」

分からない・・・分からない!!
そんな時、夜も深ける頃に、またあのおじいさんが来た。

老人「ふぉっふぉっふぉっ、お悩みのようじゃな、ノームさんや」
ノ「おじいさん!!」
老人「どうじゃな?月夜の散歩と言うのもなかなか風情があって良いものじゃ」

そう言うや否や老人は振り返り、スタスタと外へ歩いていった。
僕は・・・おじいさんの不思議な引力のようなものに惹かれ・・・連いていった・・・。

だが、

ノ「・・・は、速い!!」

な、何て言うスピード・・・と言うかまるで歩いていないようにも見える・・・
大晶霊の僕でも捉えるのがやっとなんて・・・なんて人間なんだ・・・。

そうなのだ、
これだけ超人的な動きをされようが、あの老人から感じる気配は人間そのものだ・・・。

老人「ふぉっふぉっふぉっ、着いたのう」
ノ「・・・えっ?」

おじいさんを追うのに必死で気が付かなかった・・・、
ここは、麓の村だ・・・。

老人「ノームさんや、お主の力なら分かるハズだ、この村に渦巻いている人の気」
ノ「・・・・・こ、これは・・・」

村中から感じたのは、圧倒的な脱力・・・、無気力だった・・・。

老人「お次は耳を澄ましてごらんなさい」

ノ「・・・・・うっ・・・」

思わずショックを受けそうなほどの人の負の声・・・

男「あ〜、めんどくせえ、めんどくせえ・・・」
女「ホント、だるいわあ・・・料理なんてやってられない・・・」
老人A「イタタ・・・最近運動せんから腰が・・・まぁ、良い、明日にでもノーム様のとこ・・・
    それも疲れるのう・・・」
子供「勉強も遊ぶのもめんどくさーい!家でダラダラしてよ〜・・・」


ノ「どうして・・・皆、こんな事に・・・」
老人「まだ気付かぬのか」

不意に穏やかだった老人の気配から・・・背筋がゾッとするほどの威圧感が走る・・・。

老人「全部・・・とは言わんが、お主のせいじゃよ」
ノ「!!!・・・な、なぜ!!どうして僕が!!」

分からない・・・分からないよ!!

老人「お主は人に与えすぎた・・・「楽」と言う感情をな・・・」
ノ「それは・・・疲れたり痛んだりした人を助けただけで!!」
老人「・・・それは外見を正しに過ぎん、それもやり過ぎなほどにな・・・」
ノ「・・・・・!?・・・・・・」
老人「痛みを知らぬものに、本当の楽は無い」
ノ「痛み・・・」

『痛いから頑張れるんです!!』

苦悩するノームの顔を辛そうに見つめながら・・・老人は優しく、

老人「・・・優しすぎるんじゃよ、お主は・・・」

そう言って・・・消え・・・た!?

ノ「ま、待って!!!」

(老人「答えは己自身の手で掴むものじゃ、大丈夫じゃ、あの娘を信じて見なさい
    良いか、村人に手出ししてはならん・・・
    それができなければ同じ事の繰り返しじゃよ・・・」)

老人の声が・・・心に響いて来た・・・。

僕は・・・なぜか分からないけど、その老人の言う通り、村人を見守る事にした・・・、
そして月日は過ぎていく・・・その中で僕が見続けたものは、
脱力と無気力と負力が同居する村の人々と・・・そんな村人達を精一杯激励しながら、
今日もまた、たった一人で、一日のお仕事、辛い鉱山の仕事に出かけるファルナの姿・・・。

どうして・・・?どうして君はそんなに頑張るの・・・・・・?

・・・深まる僕の疑問・・・・・何もできない自分・・・・・・、

そんな日々が3年続いたある日、


男「ノーム様〜、お久しぶりです」

突然、もう誰も来なくなった鉱山道の横にある僕の家に、
鉱山に努めていた男の鉱夫がやって来た!!

ノ「ん?ああ、久しぶりだね・・・今日は・・・?」

・・・僕の助けを借りに来たか何かか?・・・そう思いながら尋ねた僕は・・・
その男性の発言に驚く事になる・・・・・・


男「ええ、もう・・・しばらく行く気すら起きなかったんですが・・・
  今日、ふと鉱山へ行ってみようかなって思いまして・・・」
ノ「!!」
男「・・・あんなに小さなファルナが俺らの分まで毎日・・・毎日働いてくれている・・・
  何か凄く申し訳なくて・・・恥ずかしくて・・・それで・・・」
ノ「ファルナ・・・」

男と話しをしていると、

女「おーい!!アンタ〜!!」
男「あっ、おめえ・・・」

この男性の奥さんだ、

女「ごめんごめんよ・・・こんな事、久しぶりにしたからさあ・・・」

そう言って女性は、お弁当箱を取り出した!

男「こ、こりゃ、凄え!!ありがてえ・・・」
ノ「もしかして・・・君もファルナの・・・」
女「はい、あの子・・・もう料理も作る気もなくなった家庭に・・・
  いつも自分で作った「おにぎり」を差し入れてて・・・ウチもそうだったんです・・・
  それで・・・そうしている内に、自分が無性に情けなくなって・・・それで・・・」


それが・・・再生へのはじまりだった・・・、
少しずつ鉱山に活気が戻りはじめ、村も元の賑やかなな村へと復興していく・・・

甦った村人の全員が口を揃えて言う「ファルナのおかげ」だと・・・。

ファ「ふぅ〜♪」
ノ「ファルナ・・・」

ファ「あっ!ノーム様、おっはよーございまーす!!」

12歳になったファルナ、顔と体は大人らしくなって変わっているが、
この笑顔は・・・あの頃とちっとも変わってない、いや、さらに輝いて見える・・・。

ノ「今日も早起きかい?」
ファ「えへへ♪ はいっ!!」
ノ「鉱山も村も・・・元の姿を取り戻しつつある・・・君のおかげだ」
ファ「いいえ♪そんな事ないです、村の皆の頑張りのおかげです♪」
ノ「・・・分からないんだ・・・」

ファルナの真っ直ぐな言葉に対して、つい漏らしてしまった僕の疑問の言葉・・・

ファ「ノーム・・・様?」
ノ「ファルナ、僕のして来た事は間違っていたのだろうか・・・?」

突然の問いかけに戸惑うファルナであったが、そのノームの表情で全てを察したようで、

ファ「・・・間違っては・・・いなかったと思います。ただ・・・」
ノ「ただ・・・?」
ファ「ノーム様は、お優し過ぎたんですよ♪」

!!・・・おじいさんと同じ言葉だ・・・・・

ファ「人が生きて行くためには、『楽』だけじゃダメなんです、
  『苦』も覚えなきゃ、
   楽があるから苦を感じられる・・・苦があるから楽を感じられる・・・」
ノ「・・・痛みを知るから頑張れる・・・」
ファ「はい♪」
ノ「じゃあ僕は・・・皆にいらない存在なんだね・・・」
ファ「・・・ノーム様!?」
ノ「・・・これからも・・・頑張ってね、ファルナ・・・」
ファ「ノーム様!!ノーム様!!!」

ファルナの前から突然消え去る僕・・・。
僕は・・・・・自分の存在意義を失った・・・心の中にポッカリと穴が空いた気がした・・・。

ファ「ノーム様・・・そんな事、そんな事ないです!!!そんな事ないんですーーー!!」

ファルナの叫びが・・・鉱山の山中に虚しく響いた・・・・・。


老人「・・・大晶霊は、物質的にも、
   そして精神的にも非情に外部の影響を受けやすい・・・実は脆く危うい存在じゃ・・・
   今回の事で、何か悪い事が起こらねば良いが・・・・・
   ノームよ、気が付くのだ・・・自分のすべき事に・・・・・・」


ノームが鉱山から消えた後も、鉱山と村は復興し続け、
前と同じ・・・いや、もはや前以上に活気溢れた賑やかな地域となっていた、

しかし・・・そんな彼らに自然は無情にも・・・

「ドッカーーーーーーーーーン!!!!!」

鉱夫A「噴火したぞおおおおお!!!」
鉱夫B「なっ!?ここは火山なんかじゃなかったハズだろ!!」
鉱夫C「ああ、だから分からないんだ・・・どうして・・・くっ!!」
鉱夫B「やっと俺達も・・・ここまで来たってのに!!」

ファ「皆さん!!!急いで山から脱出してください!!」
鉱夫A「ファーちゃん!!子供達は先に逃げてろって言っただろ!!
    ここは俺達、大人がやるから!!」
ファ「いえ!!ここの事なら私の方が詳しいですし!!」

一歩も退かないファルナ・・・

鉱夫A「わ、分かった!!ったく、ファーちゃんにはかなわねえなあ・・・」
ファ「他の皆さんは、村の皆にも避難した方が良いって伝えて下さい!!」
鉱夫B「ああ!!」

ファ「皆・・・ここまで頑張ってきたんだもん!!!
   絶対に絶対に皆を守るんだから!!!」

すると、突然置いてあった「つるはし」を抱え、走り出すファルナ!

鉄夫A「ファルナちゃん!!どこへ!?」
ファ「あそこから噴火したとなると・・・溶岩は村の方へ流れてしまうかもしれません!!
   ですから、少しでも地形を変えて・・・溶岩の流れ方が変えるんです!!」
鉄夫A「無茶だ!!人の手でどうにかなるもんじゃねえよ!!」
ファ「やってみなくちゃ分かりません!!さあ、ここは危険です、逃げてください!!」
鉄夫A「ファルナちゃん!!!」

鉄夫Aが必死で止めるのも全く効かず・・・ファルナは溶岩が流れる方へと走っていった・・・。

遊人
2001/05/09(水)23:54:27 公開
http://www5.ocn.ne.jp/~ingaku/
■この作品の著作権は遊人さんにあります。


■あとがき
言われて見ると、ファルナは大人びているって事になるのかな・・・?
あくまで客観的に見ると、でしょうけどね。
彼女は特に意識するわけではなく、自分らしく行動してるだけですから。
中・後と分けてしまい、いちいち2ページの手間を取らせてしまって、
申し訳ありませ〜ん!!
と言うか、多分、他のシリーズも書き直したら、これくらいに
なるんでしょうね・・・(苦笑)


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