クレーメルメモリー「地」〜ナイトキャップのお休み〜後編


もしかして・・・微妙な所ですが、かなり久しぶりに満足した作品が書けたかな・・・
と思います。こういう気持ちって、嬉しいものです♪

本編へ♪


老人「ノームさん見つけたぞい♪」
ノ「・・・おじいさん・・・どうしてここが・・・」
老人「ふぉっふぉっふぉっ、
   バテンカイトスはお主だけの世界じゃなかろう、皆の世界じゃ、

ノームはバテンカイトス・・・精神世界で、己の殻に閉じこもっていた・・・。

ノ「もう僕に構わないでよ・・・・・」
老人「そうはいかんのじゃよ」
ノ「なんで・・・・・」
老人「このままでは、ファルナが死んでしまうからの」

老人があまりにもアッサリとその事実を言う。

ノ「・・・!?・・・どうして!!どうして彼女が!!」
老人「ふぉっふぉっ♪なんじゃ、元気ではないか」
ノ「あっ・・・」
老人「そんな殻さっさと破って、ファルナの元に言ってやらんかい」

ノ「でも・・・・・」
老人「自分の痛みから逃げるでない、本当に大切なものは痛みの先にあるのじゃ」
ノ「痛みの・・・先・・・」
老人「行くのじゃ、言って全てを確かめよ・・・行かねば何もはじまないが、
   行けばきっと何かが動き出す・・・っと・・・ふぉっふぉっ、若いのう」

老人が語り終える前に、ノームはバテンカイトスから消えていた・・・。

ノ「こ、これは!!ど、どうして・・・この山は火山なんかじゃなかったのに!!」

驚愕するノーム、そこへ老人が追いつく。

老人「ふぉっふぉっふぉっ」
ノ「お、おじいさん!!う、浮いてる・・・!?」
老人「人間、長生きすればいろんな事ができるもんじゃよ」
ノ「は、はあ・・・そうなんだ・・・」

今のノームに老人の言葉を確かめている余裕などない、ただ信じるのみだ。

老人「さて、そんな事より、この状況じゃが、
   ノーム、これはお主の『ストレス』が生み出したものじゃ」
ノ「僕が・・・ストレス・・・!?」
老人「そうじゃ、今回の事による、自身の喪失・・・悩み、迷い・・・
   晶霊と言うものはそういうものに弱いもんじゃてのう、
   それが溜まりに溜まって、吐き出すしかなくなった場合、
   人間なら暴れたりすれば良いが・・・大晶霊となるとどうか・・・見ての通りじゃな」
ノ「そうか・・・自然界の『地』は僕の心の写し鏡・・・」
老人「分かったかの?」
ノ「・・・また僕は、こんな事を・・・僕なんか僕なんか・・・」
老人「これ!」

「ポコッ!」老人は持っていた杖でノームの頭を叩いた!

ノ「おじいさん・・・」
老人「グズグズ言ってる暇があったら、ファルナを探さんかい」
ノーム「でも!!」
老人「でもでもじゃない、あの村の人間達が変わる様を見たであろう?
   負の方向へと変わる姿・・・そして正の方向へと変わる姿を、
   そうじゃよ、人も晶霊も変わる事ができるんじゃよ」
ノ「変わる事・・・」
老人「ほれっ!」

「ポコッ!」老人は、また持っていた杖で今度はノームの尻を叩いた。

ノ「ファルナーーーーー!!!!!」

ノームは叩かれた勢いのまま、火山へと急いで降りていった!!

ファルナ「あ、熱い・・・・・でも、頑張らなきゃ!!」

もう、すぐそばまで溶岩が迫ってきている・・・
それでも、それでも!ファルナは一生懸命に溶岩の流れを変える道を掘り続けていた・・・。

だが、溶岩の流れ方と言うものは、非情なまでに理不尽である・・・
その流れがいきなり急に流れ出す!!

ファ「あっ・・・そんな・・・きゃあ!!!」

溶岩がファルナの目の前までせまった瞬間!!!

ノ「大丈夫かい!?ファルナ!!」

ギリギリで駆けつけるノーム!!ノームは片手で岩石を発生させ、
溶岩の流れを防いでいる!!

ファ「ノーム様!!!」
ノ「ごめんね・・・僕のせいなんだ・・・この噴火は・・・」
ファ「・・・でも!来てくれたじゃないですか♪」

ファルナはノームの言葉に一言も怒る事なく、いつもの通り・・・笑顔で答えた。

ノ「ファルナ・・・」
ファ「今ならきっと・・・変われます!!ノーム様!!!」

彼女の言葉が・・・僕に・・・僕の心に力をくれる・・・!!

ノ「地よ!!我が呼び声に応えよ!!」

「ドオーーーーーーーン!!!」

ノームの声に応え、火山の噴火が最高潮に達し、その炎柱は空へと達するほどだ!!

ノ「鎮まれい!!鎮まれい!!」

すると!空へと達した炎柱は、見る見る内に、噴火口へと還っていく!!!

ノ「赤き大地の躍動よ・・・深き地へと還れ・・・・・」

さらに!噴火口そのものが地形が変動し・・・消えていく・・・・・・。

ファ「やったー!!ノーム様!!」

ファルナがノームに抱きつこうとした時、

ノ「ふふっ♪・・・痛っ!!!ぐぅっ!!」

ノームが突然、胸を押さえて苦しみ出した!!

ファ「ノーム様!!しっかりして!!ノーム様!!」
ノ「ぐあっ・・・、はあ・・・だ、大丈夫だよ、ファルナ・・・・・」
ファ「ノーム様!!」

ファルナがノームに手を差し伸べようとすると・・・、

老人「辛いじゃろうが・・・、今は助けてはならんのじゃよ、娘さん」
ファ「おじいさん・・・?」
老人「ふぉっふぉっ、ノームさんはのう、今、自分の痛みと戦っておるのじゃ
   自分のストレスを無理に抑え鎮めた代償のため、そして自分を変えるためにの」
ファ「ノーム様・・・」

ファルナは伸ばした手をグッと力強く握り締め、心から辛そうな顔を見せるが、
必死でノームを助ける事を我慢した・・・、

ファ「頑張って!!ノーム様!!大丈夫・・・大丈夫だから!!」
老人「(越えよ・・・越えるのじゃノーム、今のお主ならば!!)」

ノ「痛う・・・ま、負けない・・・自分の甘い心に・・・!!
  この痛み・・・忘れない・・・忘れない・・・よっ!!!」

ノームの中で、何かが・・・・・・弾けた・・・!

ノ「はあ・・・はあ・・・♪」
ファ「ノーム様っ!!」

ファルナが今度こそ、ノームに抱きつくっ♪
ノームは、力なくファルナにもたれ掛かり・・・

ノ「zzz・・・すぅ・・・すぅ・・・」
ファ「ノーム様・・・ゆっくりお休みくださいね♪って・・・あ、あら・・・」

ノームを優しい笑顔で安眠へと誘った直後、ファルナもまた、

ファ「zzz・・・」

立ったまま眠ってしまった・・・、よほど体力的にも精神的にも疲れていたのであろう。

老人「ふぉっふぉっふぉっ♪じじいの出番かのう♪」

老人は老人特有の味のある笑い声をあげながら、二人をヒョイと持ち上げて、
帰っていった・・・・・・。

1日後、

ノ「あ・・・れ・・・?」
老人「ふぉっふぉっ、お目覚めですかのう」
ノ「おじいさん・・・」
老人「すまんのう、目を覚まして最初に見たのが、こんなおいぼれとは・・・」
ノ「い、いえ!!・・・なんだか『眠る』のって、久しぶりのような気がしました・・・」
老人「ふむ、そうじゃのう、そもそも晶霊に『眠る』と言う概念は無いからの」
ノ「詳しいんですね」
老人「ふぉっふぉっ、年の功じゃよ」

ノームは気付いていない、知らず知らずの内に、この老人に『敬語』を使っているのを。

ノ「眠ってる間・・・夢を見ました、久しく会っていない『仲間達』の夢・・・
  ファルナの言っていた意味がまた少し分かった気がします、
  なぜ、眠りが大切ななのか・・・、眠る心地よさは精一杯働いてこそはじめて分かる・・・
  そして逆に眠ると現実空間での行動が不能となり、動いている事の大切が分かる・・・」

老人「それもお主が『痛み』を感じたおかげじゃな」
ノ「与えるだけ・・・それで本当に人は豊かになるのか?
  おじいさんの問いの意味がやっと分かりました・・・
  大晶霊だからこそ、人に『痛み』を教える事ができる、
  僕があの厳しい自然の形ともいえる火山の噴火から痛みを受けたように・・・
  自然からの恩恵だけでなく被害もまた、大切な事
  『安らぎ』と『痛み』、両方味わってこそ、人は成長していける・・・」

老人「うむ、人間は非常に流されやすい生き物じゃ、
   良い方向にも、そして悪い方向にもの、
   だからこそ、お主達、大晶霊が上手くバランスを
   取ってやらねばならん・・・と、ふぉっふぉっ、もう分かっておることじゃな」
ノ「はい!!」
老人「この歳にもなると、どうも説教臭くなってイカンのう・・・うむ?
   ふぉっふぉっふぉっ、良かった良かった♪
   こんなオイボレじじいとは比べものにならんほど嬉しいお客さんじゃぞ♪」

ファ「ノームさま〜!!!」

ドアの向こうから声が聞こえる・・・この元気いっぱいの声、ファルナ以外いない♪

「バタンッ!」

老人「娘さん、ドアは静かに開けるもんじゃよ♪」
ファ「あっ、ごめんなさい、おじいさん!!」

ノ「ファルナ」
ファ「良かったあ、もうすっかり元気元気!!」
ノ「うん♪」

ファ「それでっ!!ノーム様に村を救って頂いたお礼を持って来たんです!!」
ノ「えっ?も、もらえないよ!!元はと言えば僕が悪いんだから!!」
ファ「そ、そんな!!・・・せっかく、昨日から徹夜して一生懸命編んだのに・・・」

ファルナの目からウルウルと涙の雫が・・・・・・

老人「関心せんのう、年頃の娘さんを泣かすとはのう♪」

ノ「ご、ごめんごめん!!!」
ファ「ヒック・・・ヒック・・・もらって・・・くれます・・・?」
ノ「そ、それは・・・」

老人「おお、よしよし・・・可哀想な娘さんじゃ、
   せっかくの感謝の気持ちを踏みにじられてのう・・・よしよし」

老人がファルナを寄せて「よしよし」とさすってやる・・・
その奥には今にも笑い出しそうだったり♪
もちろん・・・彼女の方も・・・♪

ノ「だ〜!!分かった!!分かりました!!・・・もらうよ」

ファ「あはっ♪ありがとうございます〜!!!!」

先ほどの涙は何処へ行っちゃったの?・・・そーんな感じで爽やか笑顔爆発のファルナ♪

ノ「・・・だ、騙された・・・・・・」
老人「ふぉっふぉっふぉっ♪まだまだ未熟よのう!」

老人も満足げに笑っている♪

ファ「さぁさぁ!開けて見てください!!」
ノ「あはは・・・はいはい」

ノームが綺麗な黄色い紙で包まれた中のものを、紙を破らないように丁寧に開く、

ノ「これは・・・!!」

中に入っていたものは、
天辺に赤色の玉がくっついた黄緑色の可愛らしい『ナイトキャップ』だった!!

ファ「ふふっ♪ノーム様は、ただでさえ働き者さんなんですから、
   たまにはコレを被って、ゆっくり『お休み』してください♪」

僕は今までの最高の・・・

ノ「ありがとう!!!」

を、彼女に贈った!!


ファ「・・・あ〜!!忘れてました〜!!
   これからお仕事お仕事♪じゃっ!!行ってきま〜す!!!」
ノ「行ってらっしゃ〜い!!!」

彼女は、やっぱりいつものように鉱山の仕事へ向かって行った♪

ノ「ゆっくり・・・か♪、おじいさん」
老人「うむうむ、お主の眠りを妨げるじじいは、早々に退散するとしようかの」
ノ「いろいろと、お世話になりました!!」
老人「ふぉっふぉっふぉっ、
   地の大晶霊ノームよ、今のまま、優しくあれ、
   そして時には、厳しくあれ」
ノ「はい!」
老人「さてと、それでは行くかの」
ノ「これからどちらへ・・・?」

老人「ふぉっふぉっふぉっ、『世直し旅』の途中での、次は何処に辿り付くのやら」
ノ「そうですか、そちらも頑張ってください!」
老人「うむうむ、お主もの」

そう言って老人は去って行った・・・。

ノ「よーし!!ふぁ・・・『ナイトキャップ』装着完了!!
  お休みなさーい!!むにゃむにゃ・・・zzz・・・・・・」



と言うわけなんだにょ〜〜〜ん!!!

シルフ「げっ、いきなり元の口調に戻ったよ・・・・・・」
セルシウス「って言うか、ノーム、貴方もしかしてそれからずっと・・・」
ノ「そうだよ〜〜ん、つい最近まで寝てたんだよ〜ん!!!」
シ「信じらんない・・・・・」
ノ「にょにょにょにょ〜ん♪」
セ「で、寝すぎて、こんな『にょにょにょ』になってしまったと・・・」
シ「分かりやすいような・・・そうでもないような・・・」

イフリート「しかしよお、謎のじーさん、ありゃ何者だったんだ?」
ノ「分からない〜んだよぉ〜、僕は感じた限りではに〜んげんだったんだけどねぇ〜」
シルフ「でもさ〜、行動力が人間じゃないんだよね〜」

ウンディーネ「ノームがそういうのですから、その方は人間だったんでしょう、
       人間にも色んな人間がいます、一人くらい空が飛べたり、
       地中を潜れたりしても、全然、おかしくありませんよ」

ヴォルト「・・・ソウカ・・・?」

黙っていたヴォルトだったが、さすがにこれにはツッコんでしまった・・・。
それにクスッと笑いながらウンディーネは後ろに振り返って天空を見上げ、

ウンディーネ「(まったく、気まぐれな御方ですね♪)」

と、隠れて微笑んだ。

ノ「よぉ〜し!みんなのお話も終わってぇ〜出発進〜行〜!!」
イ「おぅ!?なんだ、コイツ珍しくやる気じゃねえか!!」

ノ「ぷんぷん!!まったくイフリートしゃんは失礼だなあ!!」

怒りをイフリートに見せるノーム、だがその顔は真剣になり、


ノーム「人間は今、グランドフォールって言う大きな『痛み』と戦ってる、
    だから僕達が助けてあげて、その後に待ってる大きな『安らぎ』を
    手に入れさせて上げるんだ・・・ねっ、ファルナ♪」
遊人
2001/05/10(木)00:10:55 公開
http://www5.ocn.ne.jp/~ingaku/
■この作品の著作権は遊人さんにあります。


■あとがき
ここで言う事がないくらい、伝えられる事は伝えられたかな・・・と
ちょっぴり満足げ。(笑)
要はアメとムチの話をしたんですが。(爆)
今までのシリーズは自分が憧れる作品の影響を受けたりしていますが、
この話は完全オリジナルっ♪そこも結構自慢げ。(笑)

謎の老人の正体は「今回」は隠しておきました♪
もう、正体はお分かりでしょうね。
物質世界とバテンカイトスを行き来でき、大晶霊であるノームにも
その正体を悟らせなかったほどの実力者。そしてジジイ。(爆)
(ウンディーネにはバレテますけど、彼女は、ものの本質を「見抜く」
事に関しては根元晶霊の中でずば抜けていると言う風にしています。」
今回はって事は、次が・・・・・?それは秘密です♪(笑)


戻る。