輝きの海 ACT11
つかの間の安息・後編
一行あらすじ:思い出話に花が咲きました。ぱえーん。 『 しかし、圧倒的物量差の前には奇策も奇策に過ぎず、守備隊は全滅。ロスタバン将軍は捕らえられるが、自ら舌を噛み切り自害して果てた。 その後、イシュタリア王は自ら降伏を申し出、二年にもおよぶ長い戦争が終結した。』 「……ふー…」 昨日は、非常に長い一日だった。始まりはミルフィーユが彼の歴史小説を奪い、半強制的に広場の警備にあたらせたこと。それから、一週間分ぐらいの興味深い体験をしたように思えた。 (ワーベアにクリティカル食らって一撃でやられたりとか) 情けない。 (14歳でキュアを使える女の子に助けられたりとか) 聖女の異名は伊達じゃないってことか。 (エレンに謎の人物が憑依したりとか) はいな。アンルリー。クィッキー占い。何もかも理解できなかった。 (イツキがいなくなったりとか) まさかあの時はこうなるとは思っちゃいなかった。 (………………) ちょっと思い出したくないけど。 (…何も出来ないうちにダメージ受けるだけ受けて、肝腎の敵らしき奴には…逃げられたりとか……) 何しに来たんだ、俺? 「……ま、いいか」 ……なんだかんだで、今日という日がまるで一ヶ月ぶりの休暇のように思えていた。ちなみに普段の仕事は週休二日制。今日は連休の二日め。 「ミルフィちゃん、おっは〜。昨日はなんか大変だったよね〜」 買出しに来ていたミルフィーユに声をかけたのは、彼女の無二の親友サラ=リゾルテだ。ミルフィーユより一つ年上だが、誕生日は数週間しか違わないため同い年と言っていいだろう。また、彼女は外見こそ大人びているものの、中身はミルフィーユより幼い子供そのものである。 ちなみに彼女が言う「大変」とは、エレンにメルディが降臨して爆笑トークを展開したこと。 「おっは〜♪大変だったよねぇ。もう、二度とあんなの見たくないぃ」 そして、ミルフィーユが言う「あんなの」とは、切り傷だらけアンド血だらけの自分を見たくない、イコールセルヴとの戦いのこと。ミルフィーユが海岸洞窟で壮絶な戦いを繰り広げてきたことを、サラは知らない。重傷のルーフェイを除いては、あの後クリスが法術で傷口を塞いだのだった。イツキの件に関しては、「魔族」に関することを伏せた上で、ルーフェイが一人で全てやったことにした。 せっかくのオーロラ祭の余韻を壊したくなかったし、イツキのこれからを考えるとそうするのがベストだった。……が、当事者の一人ミルフィーユはその事を聞かされていない。あれからさっさと帰っちゃったからである。 「そう?あたし的には来年もあんなのが来てくれると面白いけどな」 「え〜?わたしは絶っっ対、いや〜」 会話の食い違いが発生するのは当然のことだった。そして、そのへんの誤解は話題にされないまま長話が始まっちゃうのである。 「……でさ、そこでレイガがねぇ……」 「やだぁ。冗談でしょ」 「女ってのは何故こんなにお喋りしたがるのか、それは男の俺にはわからねえけど、これだけは知ってる。数分経てばついさっきまでしてた会話の内容なんて、ぜーんぶ忘れてるのさ。あれだけ喋ってりゃちょっとぐらい覚えててもよさそうなもんだけどなぁ。」 と、レイガは語っている。 当のレイガは休日返上で、ひどい怪我で動くこともままならないルーフェイの看護をしていた。ただでさえ最前線で戦って体力を消耗していたのに、エアスラストの直撃を三人分受けたのだから失血も相当なものだった。それでも彼が生きているのは、抜群の生命力と強運のおかげであるとしか言いようがない。たとえ気休めであっても、とクリスやゼフィーは法術によって治療しようとしたが、ルーフェイは二人も疲れているだろうから、とそれを拒んだ。 「ま、とにかくよ……いろいろと謎が増えたけど、イツキが帰って来てよかったよな」 魔族だの何だのと意味不明な話を聞かされたかと思えば、本当にイツキが何かとてつもない力を出した。ルーフェイが反応を示さないのを見て、レイガは続けた。 「イツキさ……やっぱり、普通の子供じゃなかったんだな」 「………ああ」 重たそうに口を動かしてルーフェイが答えた。そのイツキは今、外で友達といっしょになって元気に走り回っている。 「……グランス、か」 窓からイツキを見ながら、レイガはぽつりと呟いた。いつか、イツキがグランスの記憶を取り戻して「魔族」になったら? ……彼は、最初に何をするのだろう。もしその時が来ても……イツキとしての記憶は失われないでほしい。 「エレンったら、いったい何をした……ううん、されたのかしら……まだ目を覚ましませんわ」 エレンの母であるマリーツァが心配そうに訊いた。 「あの子はあの子なりに頑張ったんだよ。扱いきれない力を無理に使ったからその反動がきてるのさ」 何もかも知っているような口ぶりで、祖母であるバーサが答える。彼女は三十七の時にマリーツァを産み、マリーツァは三十五でエレンを産んだ。エレンが運命の男性と結ばれ子をつくるのがいつになるのかはともかく、バーサは九十歳を過ぎている。だと言うのにまだまだ元気、アルツハイマーのアの字もない。口うるさい婆様として村の名物になっている。 「まだまだ未熟だけど、同じ頃のあんたよりはずっと強い力を扱いこなしてるね。先祖返りって奴かねぇ……」 「お母様。それじゃまるで私が出来損ないみたいじゃありませんこと?」 マリーツァが少し口調を尖らせた。 そこに今まで新聞を読みながら横目でそのやりとりを見ていた、マリーツァの夫であるクルトが間に入って仲裁しようとする。 「まあまあ二人とも。トンビがタカを産むってよく言うじゃないか、マリーツァ?」 「フォローになってませんわ、あなた」 マリーツァの顔に怒りが、クルトの顔に悔やみが浮かんだ。 「……まあ、そのうち起きてくるさ。ケガしてるわけじゃないんだ、無駄に心配する必要はないね」 やれやれ、とでも言いたげにバーサは「どっこいしょ」と立ち上がると、行き先も告げずに外へ出ていった。 クリスは、ちょうど書き終えたところである手紙をゼフィーに見せた。 「これはね、あたしが旅に出るまでいた修道院の修道長さまへの手紙。修道長さまのこと知ってるでしょ?昨日は特にいろいろあったし、そろそろ書かないとな……って」 「ね、読んでいい?」 「いいわよ」 『拝啓 マザー・マルテルさま そろそろ雪が降りはじめそうな近頃、マルテルさまはいかがお過ごしですか? あたし達は元気でやってます。3年が経ち、もう世界の4分の3ぐらいは回ったと思います。 えーと、あれから9つぐらいの町や村を救ってまいりましたっ。もうゼフィーってば凄いんですよ、どこの町(村)でも大人気。 なんであたしはゼフィーみたく人気者になれないかな〜 って、マルテルさまに愚痴ってもしょうがないか。 あたしにチカラがないのが第一の理由ですよね、うん。よ〜し今日から修行に励むぞ〜、なんて言ってみたりして。 そうそう、5番目ぐらいに訪れたフォルヌの町で、ちょっと良い人に会いました。 アイ=フリードっていう女の人なんですけど、あたし達にからんできたゴロツキ6人をひとりで全員やっつけてくれたんです! やっぱり都会って怖いですねぇ。あの人がいなかったら今ごろ・・・ あたしやゼフィーの鉄の貞操帯が外されちゃってるとこでした。アハハハハー・・・って笑い事じゃないかゞ そしてそして、今回の報告の目玉はですねぇっ、今いるティストー村なんですけど、もう凄い一日でした・・・ あたし達が来る直前に何か事故か事件かがあったらしくて、ケガ人の数が半端じゃなかったんですよぉ〜ゞ 男ばっかだし、それも全然男らしくない奴ばっか。しかもゼフィーが何かわがまま言い出して、 アゼルとかいう子ににかかりっきりになっちゃって…… もうただの作業でしたよ、その時あたしがやってたのは。 さらにさらにですねぇっ、もうゼフィーったら大暴走なんですよ!? とーとつに外へ出て歩いてくもんで追いかけたら・・・ いつのまにかさっきのアゼルって子やマッチョなオジサマと合流しちゃってて・・・ しかもあからさまに怪しい洞窟に入ろうとしてるんですよ!? もう何が何だか……でも、覚悟決めました。ゼフィーを守るのはあたしですから。 そしたらですねぇ、奥で待ち構えていたのは魔物とか悪人じゃなくて・・・ 「魔族」なんですよぉ!信じられます!?田舎の海岸の洞窟の中に魔族ですよ!? しかも無茶苦茶強いんです、コイツが。マッチョなオジサマが守ってくれなかったらあたし達は今ごろ…… あ、別に惚れたりとかしてませんよ?あたしの白馬の王子さまがオジサマなワケないでしょうが。 ま、そんなこんなで疲れきった体を癒しつつこの手紙を書いております。 マルテルさまもどうか体には気をつけて。 敬具』 「……ノーコメント、にしとくわ」 ゼフィーの感想はその一言だった。 |
九十九
2001/08/11(土)23:35:17公開
■この作品の著作権は九十九さんにあります。
■あとがき
■今回初登場のきゃらくたー達:サラ=リゾルテ(関谷いくみさん)
◎後書き本文
「ストォックブルェイクゥあ!はーっはっはっは、一億光年早いわ!」→HP1
……や、昨日やっとDISC1を再クリアしたんですよ、IX。 あぁPS2買いてぇXやりてぇ(泣)
さてさて、これにてようやく第一部・海岸洞窟編(直なネーミング)が終了致しました。
レイガが語ったことになっている女性についての考察ですが……
コレはACT8の後書き(レス返し)に書いた女友達からついでに聞いた(聞かされた)ので確実です、たぶん。
……その人だけがそうなんだろ、ってツッコミ、できれば拒否したい気分(死)
ところで「おっはー」ってまだ流行ってますか?流行ってますよね?(汗)
それから……ゞ=(汗)と解釈して頂きたく思っております(何)