輝きの海 ACT13
そして二人は旅立った
一行あらすじ:ジン があらわれた!→コマンド?→ばくろ(暴露)→「光のソーディアン・シェルドの力なのだっ!」 ジンは家にあがり込むと、「腹減ってんだよね〜」とか言いながら食べ物を探した。……が、出発前に荷物をまとめた跡に、食べ物が残っているはずがない。 「…………」 「クリスちゃんって、ひょっとして旅人?そうは見えないんだけどな〜」 あの〜、とゼフィーが声をかけようとしたとき、ジンがこちらを向いて言った。いくら探しても食べ物はないことに、ようやく気付いたらしい。 「……旅してるけどさ……それよりアンタデリカシーってもんがないのつい昨日までうら若き乙女が二人で住んでた家に勝手に上がりこんだ挙句あちこち探しまわるってどうよこれあげるからさっさと出てきなさいっっ!!」 一息に言い切ると、クリスは大きな布袋から缶詰を一つ取り出し、ジンに差し出した。 「おぉ♪ありがとぅ〜〜っ……あゴメン、ボアの肉は嫌いなんだ。別のにしぶはっ!」 鉄拳制裁。正確にはチョップ。 「我侭が過ぎるわよ」 「はい……ごめんなさい、お腹に入ればなんでもいいです、ハイッ」 ジンは妙な威圧感に気おされ、真っ白な頭の中から無意識のうちに言葉が出ていた。 「あら?アンタケガしてない?ゼフィー、ちょっとこっち来て」 右肩のほかにも、あちこちかすり傷がある。 「あぁ、これはね……ちょっと悪い奴らに追われてさ、下手くそな銃で撃たれちゃったの。そんなコトよりっ、そっちの更にかわいい子はゼフィーちゃんって言うんだね?よろし――」 ゼフィーの制止も彼女には届かなかった様子。 数秒後、ジンは傷を三倍に増やして家の前に捨てられていた。 後に、レイガはこの事をこう分析している。 「やはりキーワードは『更に』だったんだろうか?」と。 そして、クリスは後にこう語っている。 「トシの差には勝てないってことかしら?でも、あれは腹が立ったわ」 翌日早朝。 村の門に、大勢の人々が詰め掛けていた。門から少し出たところに、二人の修道女が立っている。 「もう……行ってしまわれるのか」 村を、そして世話になった者を代表して、ティストーの村長ラムカンが言った。 「はい。今も、私たちの助けを求めている人々がきっと、それぞれの場所で待ちつづけていますから」 「いろいろ思い出もできたし、ホントはずっといたいけど……そーゆーワケにもいかないからね」 「寂しくなるな。特にクリスちゃんがいなくなるってのは……」 レイガが口を滑らせる。 「あら、アンタには……」 本命がいるじゃないの、と言いかけてやめた。これからの二人の関係に影響が出そうだったからだ。 「それでは、皆さん……さようなら。また逢える日を楽しみにしています」 ゼフィーは、クリスの目線の合図を受け取って、別れの言葉を述べた。 「何年のちのことになるかわからぬが、ワシらも楽しみにしておる。主らの行く道に幸多からんことを、陰ながら祈っておるぞ。気をつけて、良い旅をすることじゃ」 「ありがとうございます……」 「さよならは言わない。また逢おう!」 「また逢おうな!」 「お前たちのことは、次に会うまで絶対に忘れん!」 「生きてるうちに絶対来てよね、もう一回っ!今度は(女として)負けないんだから!」 「天の星々は貴方達に味方しています!また逢いましょう!」 「またね、ねーちゃん!」 「……またね、だってさ」 笑顔で手を振って応えながら、クリスが言った。 「また来よう。この旅が一段落ついたら、きっと……」 同じように手を振りつづけながら、ゼフィーが答えた。 お互いに、姿が見えなくなるまで手を振り続けた。 「……行ってしまったな」 「ああ、行っちまったよ」 心に、小さな穴が空いたような気分だった。 ――と、後方から砂煙をあげて爆走してくる一つの影が。 「ク〜リ〜ス〜ちゃ〜〜〜〜〜〜ん!!ゼフィーちゃ〜〜〜〜〜〜んっっ!!」 先日からこの村に滞在している、シェルドと銘打たれた立派な剣を持つ少年、ジンだ。 ゼフィーがこっそり治してあげたらしく、昨日の傷は既に癒えている。 「はぁはぁ……寝過ごしちまった。二人はどこ!?」 「……もう村を出ていったが?」 呆れた様子でアゼルが答える。 「…………そんな〜、せめてさよならが言いたかった……嗚呼、我が初恋の人よ……」 「初恋が二人いてどーすんだよ、初っ端から二股かけるってか?」 レイガが即座にツッコんだ。 ――ぷっ。 誰かがこらえきれずに笑った。 ――あはははははっ。 ちょっと沈んでいた村の空気に、活気が戻ってきた。 「はぁ……」 ……ジンは例外として。 数時間後、ルーフェイとイツキは旅支度を済ませていた。 「え?ルーフェイさんとイツキも旅に出ちまうの!?」 その事を聞いて誰よりも驚いたのはレイガだ。 まだあの死闘から一週間も経っていない。だから、暫くは仕事も休んでゆっくり過ごすと思っていたのだが。 「はっきりさせようと思うのだ。イツキもそう言っている」 イツキは「魔族」。では何故、イツキは捨てられていたのか……そして何故、人間の暖かみをもっているのか…… 「はっきりっつったって……答えなんか、どこにあんだよ!?」 「それを探しにいくのだよ」 レイガはルーフェイを旅立たせまいと必死になっているが、彼やイツキの決意が変わろうはずがない。 「……でもよ、イツキがまた危険な目に遭ってもいいのか?ルーフェイさん一人で、守りきれるのかよ?」 「ふ……こいつぅ、大きな口を叩くようになりおってぇ!はっはっはっ!!」 ルーフェイは豪快に笑い飛ばした。 「言うようになったじゃないか。だがな、お前に心配されるほど俺は弱くないわ。なんなら手合わせしてみるか?」 「……いや、やめとくよ。俺が悪かった。でも気をつけてくれってのは本気だぜ?最近の魔物の増え方は尋常じゃねぇからよ」 「わかっているさ。俺の目が黒いうちはイツキを危険な目にあわせはしない」 「……死ぬんじゃ、ねーぞ。俺が許さねえからな」 レイガは口をゆがめさせた。 「では、行ってくる。……後を追うようなマネはするな。余計なお節介だ」 そして、親子もひっそりと旅立った。 義姉妹はまだ知らない。 そう遠くない未来、彼らに再び逢えることを。 親子はまだ知らない。 その旅が、思った以上に深刻になることを。 そして、村に残された若者たちはまだ知らない。 ――運命の歯車が回り、永遠の幻想曲を奏で始めたことを。 |
九十九
2001/08/14(火)00:47:11公開
■この作品の著作権は九十九さんにあります。
■あとがき
■今回初登場のきゃらくたー達:なし。強いて言えばラムカンか…………ラムカン……モロだ(ぉ
◎後書き本文
「(このままじゃ)イッカァァァァーーーーンッ!!」ガシャン!(壷を割る音)
……ハイ、毎度おなじみの九十九です。そろそろスパートかけないとヤバげな中三生です。
実はですね……決めました(今ごろ)。
この小説は主人公無しの群集劇。そしてアゼル君は単なるMyキャラの一員。……ということに(ぉ
え〜とですね、苦肉の策として旅立たせちゃったんで、暫くは出番なくなります>クリス&ゼフィー
今までのACTで目立ちすぎでしたからね……ホント、手が勝手にキー叩いてんですよ^^;
ちなみに今回のサブタイは、クリス&ゼフィーとルーフェイ&イツキの両方のことを言ってます。