輝きの海 ACT14
そして五人も旅立った


一行あらすじ:義姉妹と親子が旅立ちました。イッエー。




 二,三日の間、レイガは悶々としていた。

 その姿は、誰が見ても痛ましいほど辛そうだった。

 だが彼はある日、決意した。

 後を追おうと。



 旅支度を終えたところにアゼルが来た。
「レイガ……やっぱり、お前も行くのか」
「……ああ」
 さすがに勘がいいなと、レイガは答えた。
「……止めはしないさ」
 長い付き合いだからそれぐらいわかってると、開け放たれた家の扉の前でアゼルが言った。レイガは黙って家を出ようとし、アゼルは少し退いてやった。
「――しないけど……」
 すれ違いざまにアゼルは呟いた。

「独り旅はつまらないだろ?俺も一緒に行ってやる」
「……そう来ると思ってたぜ」
 扉のわきに置いてある荷物を見て、レイガは嬉しさと悔しさが半分ずつ混じった表情で苦笑した。しかし、アゼル一人にしてはその荷物は少々多すぎる気がする。特に衣服入れだと思われる袋の膨らみようは尋常じゃない。
「……言い忘れてた。もう一人――」
「水臭いじゃないのレイガァーーーッ!」
 物陰に隠れていたのだろうか。突然現れた一つの影は一瞬でレイガの視界を覆い尽くし、何事かの判断もさせないままレイガを押し倒した。早い話がフライングボディープレスである。
「その声はミルフィーユか……お前、俺を押し潰すのが新たな趣味にでもなったのか?」
 海岸洞窟での「ちょっとイイ思い出」を思いだしながら、レイガはなんとか顔を持ち上げて確認する。確信していた通り、先程の影はミルフィーユその人以外の何者でもなかった。
「ソコ、"潰す"とか言わないっ。とにかくね、キミだけじゃ不安だからわたしもついてくんだからねっ」
 その言葉の裏には、それ以外の感情が少なからずこもっているようにも見えなくはない。もちろんレイガは気付いているのだが、口には出さなかった。……ただし、彼は感情に気付いてはいてもその対象を間違っているだが。
「……ま、こういう事だ。それに、男二人のむさい旅よりは紅一点がいたほうがいいだろ?」
「…まーな……」
 先行きに多少の不安を感じながら、レイガは気のない返事をした。





 まだ早朝だ。ほとんど人はいない。少し村外れのほうに行けば畑仕事に精を出す村人もいくらかいるのだろうが。三人は余計な制止をされることなく村を出ようとしていた。
 ――その時。
「まってぇ〜」
 さほど深刻そうには聞こえないちょっと間の抜けた声が聞こえた。振り向くと、こちらに向かって走ってくる一人の女性が。山ほど荷物を抱えているため、人というよりは荷物が走って近づいてくるようだった。まって〜とか言ってる割には焦る様子もなく、マイペースで走っている。荷物はたしかに重そうだが、それにしてものんびりしている。
「ミルフィちゃんが行くならあたしも行くよ」
 先端に宝石がついた杖を片手に持ち、何かの決意に満ちているらしい表情を見せる。
「そんなこと言ったってサラ、外は危険なんだよ?わたしたちだけじゃキミを守りながら戦うことなんてできない。早い話が足手まといなの」
 ミルフィーユが彼女の目を見据えていった。
「あたしだって戦えるもん」
 ミルフィーユが多少怒った様子で言い返そうとした時――

「な〜〜に〜〜〜を〜〜〜〜してるんだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっ!?」
 目を光らせて、少年がやってきた。
「……厄介なのが来たな」
「そうみたいだな、さっさと行こうぜ」
 二人はすたすた歩き出した。あとの二人も慌てて後を追う。
「ああっ!無視しないでくれよ、アゼルの兄貴にレイガの兄貴ぃっ!」
「「いつ俺がお前の兄貴になったっ!」」
 異口同音の見事なツッコミが入るが、ジンは早くもはじめて見る顔に見とれていた。
「君、かわいいね。名前は?」
「へ……サラだけど?」
「コラ、ジン。わたしたちはねぇ……」
 ミルフィーユが見かねてそれを止めようとすると、彼はこう言った。
「俺の初恋を邪魔しないでくれ、ミル姉!」

「テメーは今までに何回初恋を経験してんだ!?」
「ジン君は今までに何回初恋を経験してるの!?」
「キミは今までに何回初恋を経験してるの!?」

 二人称と語尾を除いては全て同じ、総勢四人によるコーラスがジンの耳に大ボリュームで響いた。

「さ、三十九回……今回でね」

 呆れてツッコむ気も失せた。まさにノーサンキューってカンジである。

「……あと、海岸洞窟の件の関係者と言うとエレンさんだけど……どうする?」
 レイガが皆に訊いた。
「彼女は家族が健在だ。また引っ張り出すのは可哀想だろうし、それに……」
 レイガやミルフィーユはわかっているだろうが、と思ってアゼルはそこで一呼吸おいて、
「何か怪しいことになれば、どんな方法であっても向こうからやってくることは間違いないだろ?」
 こう言った。即座に二人が頷く。
「まぁ、とにかく今は――」


「行こうぜッ!」




九十九
2001/08/15(水)01:12:04公開
http://members.tripod.co.jp/Tsukumo_99/
■この作品の著作権は九十九さんにあります。


■あとがき
10号機おめでとうございます。

■今回初登場のきゃらくたー達:なし。……いかん、ヒットマンの気配が(汗)あと16人か……
◎後書き本文
とりあえず仮ほめぱげを公開してみたり。
最近気付いたショックなコト……解像度が800x600だったりとか、
フォントがMS UI Gothic以外だったりすると一行のはずが二行になっちゃうトコロが……
と言うわけで、解像度はどうしようもないのですがフォントはMS UI gothic推奨です>今までのACT
今回からは一行の文字数に気をつけてますのでご勘弁を……


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