輝きの海 ACT25
エルナディア・プリンセス
一行あらすじ:謎の助っ人参上。 「……まずは礼を言う。お前たちが来てくれなければ、俺はイツキを守りぬくことができなかった」 ルーフェイは深深と頭を垂れた。イツキも慌ててそのまねをする。 「困ったときはお互いさまですから」 フレリアは裏のない笑みでそれに応える。そして、すぐに表情を真剣に引き締め、茶色がかった黒の瞳でルーフェイを見据えた。 「……それで、一体どうしてこんな森に来て、しかも魔物ではなく忍なんかに襲われていたのですか?」 「…………この森の奥に『英雄の墓』があるのは知っているな?」 「ええ」 フレリアが頷く。 「俺たちはそこへ向かう途中だった……襲われた理由は話すことができん」 幸いにも忍との会話は聞かれていなかったようだ。 だが、イツキが魔族であると知られたら…… ルーフェイはお茶を濁した。 「僕らも今から行くところですが……小さな子供と二人だけで行くのは危険すぎます。この森は魔物も多いんですよ?それを、何らかの因縁がある状況でなんて……」 リーファとともに彼の傍らにいたリジェが口を開いた。彼らはあの忍たちが魔族の使いであることに気付いていなかったのだろうか。 「わかっている……だが、そうもいかないのだよ」 「……相当なワケありみたいですね……とにかく、二人だけでは危険です。どうせ目的は同じなんですから、いっしょに行動しましょう」 フレリアもそれ以上詮索しようとせずに、快く提案してくれた。 「ところで、さっきの僕たちの話、もしかして聞いてましたか?」 ふと思い出したようにリジェが訊いてくる。 「姫がどうとかいう話のことか?あれだけ大声で話していては……」 「あちゃー」 リジェはがっくりと肩を落とした。出てきた単語からわからないでもなかったが、やはり知られてはマズいことだったらしい。当のリーファは少し離れたところで、下を向いて寒そうに肩を震わせている。ときどきチラチラとルーフェイのほうを見ては、怯えた目をして恥ずかしそうに俯いてしまう。 「姫…リーファ。あなたから話していただけますか?」 「え……うん……」 リジェに促されて、困惑の表情でリーファがおずおずと進み出る。 「あ……あの、私は……」 だが、見る見るうちに顔が真っ赤になっていく。そして何も言わなくなり、数歩後ずさりして―― 「ごめん、やっぱダメェー!」 火が出そうなぐらい真っ赤になった顔を両手でおさえて、ルーフェイから逃げるように走っていった。慌ててフレリアが後を追う。 「……すいません、ひ…や、リーファはああいう人なんです」 「…男性恐怖症、か?」 「ええ……それも、あなたのような大柄の男性だけをひどく拒絶するんです」 「それはまた珍しいな」 ルーフェイが緑色の目を丸くする。 「……リーファは、今はリーファ=ラディッシュと名乗っています。けれど、本当は……リーファ=エルナディア。エルナディア王家の正当な後継ぎなんです」 「女王の国として知られる、あのエルナディア王国の……!?それが何故お前たちのような……いや失礼、とにかく何故こんな場所に?」 「あなたが忍に襲われていたわけを話せないのと同じく、僕たちもそのわけをお話することはできません。」 リジェは青い天然パーマの前髪に隠れた碧玉の瞳を、まっすぐルーフェイに向けた。 「そうか……そう言えば自己紹介がまだだったな。俺はルーフェイだ」 「俺はイツキ!この子はメルビっていうんだぜ、可愛いだろ」 「僕はリジェ=プロスト。これでもエルナディアの蒼騎士……になれる日を夢見て、日々修行に明け暮れています。それから……リーファはさっき言いましたね。もう一人のリュックを背負った人はフレリアと言います」 「うむ、短い間だがよろしくな。それでは俺たちも追いかけようか、姫君を」 三人と一匹は森の奥へ消えた二人を追って、走っていった。 さっきの広場からだいぶ離れたところで、リーファは地面にぺたんと座り込んでいた。 闇雲に走って疲れきったのか、はっきり耳に聞こえる息遣いとともに肩を激しく上下させている。 「リーファ、一人で走ってくなんて危ないじゃないですか」 フレリアは地面に膝をついて、リーファの両肩に手をのせた。 「――っ、だって怖かったんだもんっ……」 ぐすっ、と鼻を啜って振り向いたリーファの顔は、涙でびしょ濡れになっていた。青の瞳から零れ落ちたしずくが頬を伝い、顎から滴り落ちる。 「……綺麗なお顔がだいなしですよ」 「…っく……フレリアぁ〜」 リーファは、彼女より十五センチも背の低いフレリアに泣きついた。フレリアが黙って胸を貸すと、彼女は顔をうずめて本格的に泣き出した。 「うぇぇぇぇんっ、うっ、うっ、ぐすっ……」 こうして見ると、なんだか自分より幼く思えてくる。でもリーファは十六歳で、自分は十五歳だ。身長だってリーファのほうがうんと高い。 ……だけど、こうしていま自分に甘えているリーファは、純真な子供そのものだ。 なんとなく、ふわっと頭をなでてやる。 「ひくっ……あだし……ごどもじゃないもん……」 「だったらはやく泣きやんでください」 |
九十九
2001/08/28(火)00:14:15公開
http://members.tripod.co.jp/Tsukumo_99/
■この作品の著作権は九十九さんにあります。
■あとがき
★ほーめぱーげ更新情報
今日はとくにありません。
大辞典は気が向いたときに更新してます……
●後書き本文
いやぁ……こんなにあっさりバラしていいのか、リジェ!?と、自分で書いてて思いました
――っていうか
ACT24の時点で思いっきりバラしてるんでもう、毒くらわば皿までって(笑)
――っていうか
ヤバいですね、えっちぃネタではないにせよ属性&趣味が露見しつつあるような……
――っていうか
レイミル・ジーエルときて今度はフレリーですか?(ツッコまれる前に自分でツッコんどく)