15cm屈折経緯台&12cm双眼望遠鏡

 今回の大江山で最も「自作魂」をビンビン感じる望遠鏡2台を持ち込んだ方がおられました。それは兵庫県在住の池見和身さんです。見た目は製品のようなシンプルさとは対局の物。それ故のインパクトは相当な物です。池見さんの凄いところは、流用できるところはとことん利用しつつ、確かな技術で製品並みかそれ以上の性能を実現してしまうところでしょう。特に双眼望遠鏡などは視軸がずれて自作が相当難しいと言われていますが、見せて貰った星像は誰の目からも完璧に視軸の一致した仕上がりでした。
 15cmF8屈折経緯台。こういった形態の経緯台をドブマガでは高垣さんにあやかって「きりん型経緯台」と呼んでいますが、近畿地方では観望会を通じて凄い勢いで波及している事を実感します。フォーク部が変わった形をしていますね。
 近寄って撮ってみました。側に立っているのは製作者の池見さん。何でも自分で作ってしまう凄腕の持ち主であります。15cmF8レンズ・接眼部は「星をもとめて」で国際光器ブースで購入した物だそうです。
 反対側から見たところ。アルミフレームのフォーク部、実はオートバイの後輪を支えているパーツなんです。知り合いの処理業者から譲って貰ったそうです。たいがいの材料は、同様に廃材で作ってしまうんだとか。
 鏡筒の形状が変わっている(ゴム引きの布で覆っている)のが気になって見せて貰いました。まさに鏡筒の「あばら骨」です。丁寧な工作の一端を垣間見た気がします。


 こちらは12cmアクロマート双眼望遠鏡。そのいでたちからして只物ではない(?)事がわかります。何とも物々しい姿です。
 接眼部側から見たところ。人の手の最も触れるであろう部分は木を加工してあります。
 斜め横から見たところ。鏡筒のグレーの部分は、大型双眼教のジャンクを利用。オレンジの部分は焦点距離の関係で延長した部分で、3mmベニヤ板を曲げて製作し、補強には何と和服の帯を巻き付けて(!)ニス仕上げしてあるそうです。
 ピラー部を撮ってみました。高さ調節機構も厳ついですね。これもバイク(?)部品で構成されているのでしょうか。動きが音もせず実にスムーズなのが驚き。
 高度調整部付近。重量のある鏡筒をスムーズに動かす事を考慮してか、油圧ジャッキを使用しています。動きが実にスムーズで、まるで高射砲を扱っているかのような操作性は兵器を連想させます。
 接眼部側から見たところ。昨今の自作双眼望遠鏡は正立化するためもあって、EMSや天頂プリズム等をを用いた90度対空型が主流ですが、流用した双眼鏡がそうであったであろう直視型。空には月が見えます。
 接眼部回りを横から撮りました。手持ちのパーツや材料を上手く使って自前で工作しています。それにしても工作技術の確かさが目に見えるようです。

 他の参加機材取材のためゆっくり触らせていただく事は出来ませんでしたが、池見さんの作品は間違いなく心に残った望遠鏡のひとつです。お金をかけて部品を発注・購入して望遠鏡を組み付けるというのは、金銭的に余裕のある人なら誰でも出来る事ですが、池見さんの場合はジャンクを利用してお金をかけないで自分の持っている技術の範囲でそれを実現してしまう凄さを感じずにはいられません。機材は黙して語らずですが、その姿かたちが全てを物語っている点が際立っているように思います。それを分かるように隠さない作風も、池見さんの凄いところなのかも知れません。