ランチェスターの法則の導出

- LAW OF LANCHESTER -

■ 第1法則

この法則は『一騎打ちの法則』とも呼ばれ、次のような理屈から生まれました。A軍とB軍が常に一騎打ちを行うという原則のもとで戦闘を行うとします。また、B軍の各兵士がA軍の各兵士よりもE倍優れているとします(各兵士の実力が優れているのか、武器が優れているのかは問いません)。つまり、B軍の兵士が1名戦死するごとに、A軍の兵士はそのE倍のE名の兵士が戦死するということです。この状況下である時間が経過したとき、

A軍の残存兵数を A
B軍の残存兵数を B

とし、戦闘が始まる直前の各軍の初期兵数を

A軍の初期兵数を A0
B軍の初期兵数を B0

とすると、

(A軍の戦死者数) = A0 - A
(B軍の戦死者数) = B0 - B

となります。ここで、A軍の戦死者数はY軍の戦死者数のE倍であったことから、

A0 - A = E(B0 - B)

という結果が得らます。1次式で表されていることから、この法則を『ランチェスターの1次法則』と呼ぶこともあります。

この法則をAoCに適応させることを考えると、この法則の有効条件は『常に一騎打ちを行う』ということでしたから、AoCにおいて一騎打ちで戦闘を行うこということはほとんどなく、あまり利用価値はないといってよいでしょう。

■ 第2法則

上記の第1法則が1対1の戦闘を想定して考えられたの対し、第2法則は複数対複数を想定して考えられました。銃器や大砲などの飛び道具などの一人が複数の敵を同時に攻撃できる近代戦や、多数の兵士が入り乱れて戦う広域的な戦闘では、敵軍より自軍の兵数が多くてもあぶれることが少なくなり、敵兵士に集中的に損害を与えることができます。そのことから、この法則は『集中効果の法則』または、個々の攻撃が確率的に敵軍の各兵士に損害を与えることから、『確率戦闘の法則』とも呼ばれます。

具体的にどのような法則かというと次の通りです。

A軍の初期兵数を A0
B軍の初期兵数を A0

とし、一定時間経過後の各軍の残存兵数を

A軍の残存兵数を A
B軍の残存兵数を B

とします(第1法則の場合と同様)。ここで、

A軍の各兵士がB軍に与える損害を a
B軍の各兵士がA軍に与える損害を b

とし、武器効率E(各軍が与える損害の比)を

E = b / a

で定義します。このとき、戦闘中のt時間内にA軍の兵数は dA / dt だけ減り、同じ時間内にB軍の兵数は dB / dt だけ減ることになります。このとき、 dA / dt はB軍の兵数のE倍に比例し、 dB / dt はA軍の兵数に比例することになるので、

-dA / dt = kEB (kは比例定数)	…@
-dB / dt = kA			…A

となります。ここで@、Aからkを消去すると、

dB / dA = A / EB

という変数分離系の微分方程式が得られます。これを

AdA = EBdB

と変形して、両辺を積分すると、

A2 = EB2 + C(Cは積分定数)		…B

となります。すなわち、

C = A2 - EB2

ですから、これに戦闘開始直前の各軍の初期兵数A0, B0を代入すると、

C = A02 + EB02

が得られ、これをB式に代入すると、

A02 - A2 = + E(B02 - B2)

という関係式を得ます。これが『ランチェスターの第2法則』と言われる数学モデルです。第1法則に対し式の形から、この法則を『ランチェスターの2次法則』と呼ぶこともあります。

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