今日が終わって、月曜日になったのだった。冷たい室温。二度とあえないだろう人。恋の始ま
り。全ての混沌から来たもの。また、その理論。君は知ってるだろうか。夜が深まっていくに
つれ、気だるい疲労だけが目と背中を覆う。明るすぎるルクスの室内灯。耳慣れない言葉。聴
いたことのあるバンドの。世界は今日も蘇生する。ニュース。君へのニュース。眠ってしまっ
たろう君に、ニュースは届く?冷たすぎる部屋の中で丸くなって眠ってるだろう、君。ストー
ブはまだ出してなくて、どうしようもないんだろう。好きな男の子と二人で夕食を食べたり、
楽しく話したりする、ストーブの無い部屋。僕は君の部屋を思い浮かべる。当然、僕がそこへ
行くことは間違い以外にはありえないし、行こうとも思っていない。破綻した尾。生活を超え
君への思いが積み重なる。不健全な恋愛だ。雨が降ればいいのに、と思う。風と、雨が降れば
いい。僕はいつもように少しだけ偏頭痛になるだろう。低気圧が来て、去っていくほど、僕の
気持ちは穏やかではなかったのだった。雲の切れ間から覗いた太陽は、少し、ほこりくさいあ
の雨上がりを。走り出しそうになる、大好きな音を聞いて。君はどこで何しているのだろう?
こうやって、僕の中に君が居て、話をしているのがとてもうれしい。誰も気がついていない、
はずのこの思いが、晴れ間のように、穏やかに夜に変わり、やがては星をうつし、地上へ愛は
等しく還元されていく。僕は一人、思っている。風呂場のタイルは不器用に存在していて、い
つだって全く無口なのだった。流れ落ちていく湯の音が、ざばーんと反響して、こもる。暖か
い湯気の、その向こう側のまだ冷たいままの湿度、あるいは殺意。湯船で丸くなったとき、君
が冷たい部屋で一人、丸くなって眠っているのと同じ心持ちになった。呼吸をゆっくりとして
吐き出す息のリズムが鼓動と狂う。そのずれがやがては忘れていた疲労を引きずってきて、つ
ぶやきさえも圧殺してしまう。暖かな照明のした、狂った呼吸と鼓動の周期がゆっくりと元に
戻るまで僕は君とひとつになったように足を抱えて目を瞑っていたのだった。ただ、静かに。


眠りについてしまえば、全ての実行中のアプリケーションの記録は保存されないのと一緒で、
僕は自動的にあることは記憶し、あることは忘れてしまう。データの欠損が僕に少し、不快な
気持ちにさせる。不安になる。無意識的に選別した思いの上に君が居て、僕は、それを追って
いくしかないのだ、ということに。柔らかな雲。朝の、少し灰色がかった空気の中で、全ての
動きがスローモーションになって、セイヨウタンポポの苦そうな葉っぱが地面にへばりついて
いる。僕の愛は君に降った?君は夢を見たんだろうか?僕は、残念ながら君の夢ではなくて、
変なやつらに追いかけられて、どこからか足を滑らせるという夢を見た。もしかすると、あの
通りの向こう、そう、ちょうど緑が茂っていて、公園になっているような、を君が歩いていた
かもしれない。それを傍目に見た。でも僕は君より、追っ手から逃げていて、君も僕には気づ
かなかっただろう。きっと。そうやって、すれ違おう。もっと完璧に。そうすれば、こんな朝
に重苦しく呼吸をする必要は、無いのだから。