北アルプス 剱岳小窓尾根

小窓尾根上からの剣岳



山行日   : 2009年5月1日夜 〜 5日
メンバー : L.藤田、坂口、高橋、有本、石田

1日 :

2日 :

3日 :

4日 :

5日 :

近鉄新大宮 → 東名 → 北陸道 → 立山IC → 公園

公園 → 馬場島(7:10) → 雷岩(10:00) → 小窓尾根末端台地(11:05) → 1990ピーク(14:00)

1990ピーク(5:10) → ニードル(7:00) → ドーム → 馬の背リッジ(8:50) → 三ノ窓(12:10)

三ノ窓(6:40) → 長次郎のコル(7:30) → 剱岳頂上(8:50) → 早月小屋テン場(11:40)

早月小屋テン場(6:05) → 馬場島(9:10) → アルプス温泉 → 北陸道 → 東名 → 奈良



〈5月1日〉

 厄介な仕事はすべて連休明けということで18時頃事務所を後にし、集合場所の近鉄新大宮駅に向かった。
現在高速料金割引中でETCのアナウンスに感動の声を上げながら、立山IC近くの公園に到着しテントを張って仮眠することに。
いつもの事ながら皆さんの手際の早いこと。ヘッドランプを探してザックの中身を地面にぶちまけて探している間にひとり取り残され、寂しい気持ちで眠りについた


〈5月2日〉

 公園を後にし、馬場島の駐車場に到着。途中朝日をバックにした剱の稜線があまりにもきびしく、そして美しく輝いていた。
駐車場では早月尾根を行く岡橋さんパーティーと一緒になり、短い挨拶などかわしながら出発のときを待った。装備を整えザックを担ぐが、20kgオーバーの重量がずっしりと肩に食い込む。いよいよ出発である。
 白萩川沿いの道を進み、橋を渡って右岸をしばらく行くと取水口堰堤に到着。ここは渡渉するか高巻くかになるのだが、しばらく流れを見つめて思案していると対岸を3人組のパーティーが下ってくる。よく見ると当会の中武会長である。なぜこんな所を?なんて考えているうちにササッと渡渉してきた(さすがなのである)。挨拶もそこそこに、ルートの話をすると今年はスノーブリッジが期待できず、この先も渡渉を強いられるとの事。これで決まった。タカノスワリといわれるゴルジュ帯は高巻くことに。
 樹林帯の中を大きく高巻きながら再び白萩川の右岸に降り立つ。池ノ谷の分岐を過ぎたあたりなのか。右岸の雪の河原を進むと取付きの雪渓らしきところに。藤田さんがしばらく偵察した後、アイゼンをつけ始めた。
 いよいよです。かなりの急斜面ではあるが、藪交じりのため木の枝も掴みながらなんとか尾根の末端台地に到着。そこからは稜線上を1614mmのピーク、そして本日のテン場である1990mmのピークへと登りつづけるが、ザックの重荷がボディブローのように効いてきた。さらに左足の太ももに違和感がでてきて、これはやばいと高橋さんに「足がつりそーだよ」と訴えると、あせらずゆっくり歩けばいいよと励まされ、さらにお塩少々いただいてなんとか登り続けることができた。このあたり実は最高の眺めで、右に早月尾根、左に赤谷尾根、振り返ると登ってきた尾根の先には白萩川の流れ。すばらしい眺めに大満足なのでした。
 お約束の大汗をたらしながらようやくテン場に到着。疲れた体でテン場を整え、ようやくテントに転げ込む。なんだかとても幸せな感じにつつまれました。夜は藤田さんのぜいたく鍋(食材が波状攻撃でだんだんリッチになっていく) 明日に備えて眠りについた。


   
いよいよ出発   白萩川池ノ谷出合
今年は、雪が少ないようです

  雷岩からの小窓尾根取り付きのルンゼ
夏道がルンゼの左の尾根にあるので、早々に尾根に逃げるが勝ちです。

   
小窓尾根の全景。下部はブッシュが多くて、見栄えは良くありません。   1800m付近の稜線
もう、ダウン寸前です。
  標高1990mにあるテン場に到着
このテン場は、5〜6張を張ることが可能です。



〈5月3日〉

 いよいよです。まずは2121mmのピークまで準備体操がてら登りきる。目の前には鋭い岩峰のニードルとドーム、それに至る雪壁がどーんと立ち塞がっていて「垂直やん。こんなん登れるの?」と、ビビッてはいないけど、ただもうリーダーの後をついていくだけって感じで雪壁に取り付く。
他のネットのレポではロープをFIXしたりとか書いてあったが、ノーロープ(私は這松の枝付(汗))でこなしていく。ニードルの右側池ノ谷側をトラバーる。そこから急な雪壁をこなしてドームの上に達した。すごく気持ちがいい場所で、あいかわらず早月尾根の眺めもすばらしく、コルに張られた2組のテントをみつけ岡橋さんパーティーではないかなとか話しながら大休止をとった。(実は後ろのおっさんパーティーがうるさいので先に行ってもらうためでもあったが。)
そこからコルに向けて下っていくと雷鳥が2羽、斜面上をヨチヨチとトラバースしており、その頼りなさが己が姿を見るようでとてもいとおしく思った。
 実はこのコルから先の岩峰がマッチ箱へとつながって行くらしく、先述のネットのレポでも滑落者がでた所でありレポ者自身もホールドが浮石であったためセミになりかけ、今回の山行中もっとも冷や汗をかいたと書いていたところであった。ところが、とりついてみると以外やひょいひょいという感じでクリアでき、無事通過できた。
 そこからまた急な雪壁をぐいぐいと登っていくとすっきりとしたスノーリッジに出る。そこからは右手に見えるマッチ箱へとつづく馬の背リッジが見渡せる。なるほど、みごとにすっぱり切れ落ちている。しかし、この眺め“Rock and Snow ”まさにバリエーション的で怖いというよりも、すばらしいという感動のほうが大きかったように思います。リッジは1人ずつ記念写真を撮りながら通過。この後は急な雪壁をこなしてマッチ箱のピークを右側に巻き上がることに。
そこからは小窓の王へと続く岩峰のUP DOWNがまだまだ続き「大変やんか」と思う反面とてもすっきりした岩と雪のリッジなので、気持ちの良い風に吹かれながらしばし見惚れていました。その後、50mロープいっぱいの懸垂下降で岩稜を下降し、パーティの全員が降下してくるのを待つ間、目前に広がるとんでもない雪壁を眺めながら「あれを登りきれば今日は終わりか。しんどそうやな。怖そうやな。落ちたら一気にふりだしやな」などと考えていたら、そこが三の窓で今日は登らなくてもいいことが判明!(知らなかったのは私だけ)素直にうれしかったです。
 この日は覚悟していた大雪壁(池ノ谷ガリー)を登らなくてよかったため体力が有り余り、テン場整備やトイレ設営と張り切って働いていましたが、調子に乗るとろくな事が無く、テント設営時にポールを滑り落としそうになり、あやうく一晩中テントのポールの代わりをする羽目になるところでした。
早いうちからテントでマッタリ過ごし、夜は高橋さんのこだわりの温度管理付(?)クリームシチューをいただき、いよいよ明日に迫った“早月小屋のビール”ではなくて、剱山頂を夢見ながら眠りにつきました。

   
今日は小窓尾根核心の日です。   ニードルは登らずに、右の尾根から巻いて通過します。   少しだけ緊張しながら、岩稜と雪稜を通過していきます。

   
馬の背リッジ〜マッチ箱へとつながる岩峰を前に、大休止をして周囲の景色を楽しみます。
  これから行く馬の背リッジは、気分を盛り立ててくれるに充分な眺めです。

  馬の背リッジは、まさに馬の背なのです。
だから、中にはこんな格好で通過する人も !?


   
馬の背リッジを通過した後は、仙人谷側の急な雪壁をこなして稜線上に出ます。

  小窓の王をバックに記念写真です。
  懸垂下降が終われば、三の窓のテン場です。



〈5月4日〉

 気力体力ともに十分な状態でとりついた池ノ谷ガリーの大雪壁でしたが、これは正直怖かった。朝一という事で雪面はクラストしておりアイゼンも良く利き登りやすく感じたのは最初だけで、登れば登るほど高くなり(当たり前ですが)リーダーのステップも不明瞭になったりするもんですから、坂口さんの言いつけどおり一歩一歩確実にキックステップを蹴りこんで、なんとか登りきりました。後で聞くと後続の方には氷の雨を振りまいていたようで、大変ご迷惑をおかけしました。
あとは稜線沿いにいくつかのUP DOWNをくりかえし、雪庇のうえを通過したり、八つ峰を登る人を眺めたりしながら剱山頂に到着。
感動なのである。やはり報われるんだ。努力は人を裏切らないんだ。360度の大展望の中で静かに喜びをかみしめた。
 みんなで記念撮影のあと、後ろ髪を引かれる思いで山頂を後にし、早月尾根をビールにむかってではなくて、ゴールに向けて下り始めた。
ムムム・・・いきなりの雪付き氷付きのクライムダウンが待っていました。先行パーティーはロープを出して懸垂で下っていましたが、どうやら我がパーティーはノーロープで行くようです。有本さんと「やっぱりただでは降ろしてもらえないね」と話しながらクライムダウン開始。結果的にこれがおもしろかった。
氷にアイゼンを蹴りこむ感触。しっかりと食い込んだアイゼンに乗りこみ次のステップを蹴りこむ。なんだかくせになりそう。(といっても、たかだか4m足らずの壁でしたが(汗))。
 後はひたすら下降し、本日のテン場の早月小屋に到着。早々にテン場の整備を行い、おっとその前にビールで乾杯!!最高においしい瞬間でした。今日は時間も早いことだからとダイニングセットを掘り出し、有本さんプレゼンツのエースコックのワンタンメンを食べたり、ビールを飲んだりとマッタリしていましたが、冷えてきたので早々にテントに引き上げ、夜は坂口さんの和風だしのカレーうどん改め、マーボーなす春雨をいただき、明日に迫った下山に少々寂しい思いをしながら眠りにつきました。

   
今回の山行で一番怖かった、池の谷ガリーの登りです。
バックに昨日懸垂下降した小窓の王基部の雪面が見えてます。


  本峰に続く尾根は、知らず知らずに雪屁の上を歩いていたりして、時に緊張する場面もあります。
  剣岳の頂上の祠で、全員で記念写真
( 画像の上にカーソルを置くと別山方面の景色になります。 )
   
氷化した凹角は、後向きになってアイゼンを蹴り込みながらクライムダウン
  早月尾根を下る途中にも雷鳥のツガイがいました。
  早月小屋に早々に着いたので、テントの前にテーブルを作り、すっかり宴会モードに!!



〈5月5日〉

 最終日、晴天に恵まれ最後の下降をこなし、無事馬場島の駐車場に到着。
帰りの準備を終え、まずは温泉で4日間の汗を流し、藤田リーダーお勧めのおいしい寿司とあら汁でおなかも心も満タンにし、Uターンラッシュで混雑する高速を一路奈良に向けて走り始めた。  

早月小屋に別れを告げて、馬場島に下ります。
  1600m付近から見た早月尾根
  長い下りをこなして、馬場島に無事到着



−石田−