【d/m】
S2#20の後…な話です、決定的なネタバレはありません。






「コンドーム持ってます?」

いつも仕事場で交わす言葉と同じ抑揚でダニーが問いかける。

聞かれた主はどこだったかと目線を泳がせた、
たまにセックスの機会があったとしてもモーテルばかりで在りかを思い出せない。それを見てダニーはベッドから降りると横のカウチに掛けてあったジーンズに手を伸ばし、後ろポケットのウォレットからコンドームの包みを取り出して立ち上がった自分の其に手早くつけた。
ベッドに戻り

「一つしかなくて、つけないでも構いません?」

そう言うとダニーはマックの立ち上がりかけた其に手を添わす。

何故こんな事になったのか、
マックは見慣れた自室の天井を見上げこんな状態でまだ迷っていた。

体の反応とは裏腹に気持ちが落ち着かない、今裸で抱き合っているのは部下であるダニーで彼は自分を愛していると言う、いやそんな台詞はなかった、只いつもと同じ調子の人を食った物言いで
「あなたと寝たい。」と言っただけだ。

何故そんな言葉を受け入れたのか…兄の事で今さっきまで自分の肩で泣いていたダニーが、まだその濡れた瞳を向けて子供がねだるかのように問いかけたからだろうか、
そんな慰めでは足りないとでも言うかのように。

それでも自分の部屋に招いたのは軽率だったかもしれない、いつも誘われた女と礼儀のようにモーテルで適当なセックスをして別れるあの調子なら心に引っかかりもない、
明日の仕事に何の支障も出ないというものだ。
マックは仕事以外で普段のペースを乱されるのが嫌だった。

不意に覚えのない奇妙な感触を感じて体がこわばる、腰や足の付根を撫でていたダニーの手が後ろに回り指を差し入れた。
マックが鋭い痛みを感じて思わず腰を引きかけるとダニーに足の間に割って入る形で体重をかけられて身動きを阻まれた。自分の腹にあたるダニーの張り詰めたペニスの大きさを思うと、この先の苦痛が容易に想像できる。

自分の中で蟲くダニーの指の感触に身をよじる、
マックの顔色を見てダニーが問いかけた、

「やっぱり嫌ですか?寝たいとは言ったけど
挿れたいとは言わなかったから…
どうしても嫌なら…」

そう言ってマックを覗き込むダニーの目は不安気に揺れていた、だがマックの中をまさぐる手の動きは一向に止まずむしろ抜き差しを繰り返し弾力をもってきた其所に指を増やして分け入ろうとしている。

「…私がお前の立場なら止めないな。」

浅い息を吐きながらマックが洩らした声はいつもとは違う緩やかさと艶を含んでいた。

ダニーはそんなマックを見てもうこれ以上ない位張り詰めたペニスが痛む程に感じている、今こう言ってるマックが多少躊躇した所で己の欲望のままに突き上げたい衝動は収まらないだろう。
マックを促しうつ伏せに腰を上げた所を抱え込むように体を添わせると少しこちらを見たマックはすぐに顔をシーツに埋めてしまう、あぁ顔が見られないのは残念だ、普段冷たい程のポーカーフェイスがどんな風に感じて歪むのか興味があった。

それでも自分の上司である年かさの男を組み敷いてこんな体制を取らせているだけでもダニーは十分興奮した。
ペニスの先をさっきまで指が拡げていた所にあてがい軽く先を挿入するとマックの背がびくりと動く、緊張から強く締め付ける感触に鋭敏な亀頭が痛むが構わずそのま腰を進める、初めての感触にマックの全身がわななくのを感じてダニーは密かに満足を覚えていた。

ダニーはゆっくり全部を埋めるとマックの背に被さるようにして後ろから抱きしめマックの肩や背中を愛撫しながら緊張が抜けるのを待った、直に触れる内壁からマックの状態が伝わってきて最早会話は必要ない気がした。

「…動きますよ?」

マックの耳元近くに唇を寄せてダニーが囁いた、返事ともつかぬマックの吐息が漏れてダニーは腰を動かしはじめた。
コンドームに付いているグロスと唾液程度では少し引っかかるものの差し支えはないようだった、少しづつ探りながら腰を打ち付ける、するとマックの体がびくりと反り返りあぁココだ…そうダニーは思った。

お互いの体が汗ばんで息も浅く荒くなってくる、マックの洩らすまいとつぐむ口から思わず出た声の端をダニーは受け取るように動きを激しくしてゆく、苦痛か、快楽か、ないまぜになったマックの体も心も混乱したままその体だけはダニーを受け入れようとぎこちなくもがいていた。

体を貫く動きがマックの肩を押さえつけ腰を上げさせた形でさらに激しくなってゆく、擦りきれるようなヒリついた痛みと打ち付けられる肉のぶつかる鈍い痛みがマックを襲いもう混乱をきたした体は苦痛すら快楽とすり替えようとする。

「は…あっ・あ…ぅああ…」

言葉にならない声が吐き出されるともう止められない、マックは羞恥に顔が赤くなり背を向けていてよかったと思った。

ダニーの手がマックの立ち上がったペニスに回り擦り上げる、マックは自分を襲う刺激にどちらの快楽も逃すまいと知らず腰を上下していた。その己の浅ましい動きにマックは溜め息を漏らす、ダニーの動きが一際強くなりマックの体は腰を上げたまま上体をベッドに深く押さえ付けられてしまう、


「…ッは、あ…!ダニー…も…ぅ、」

マックがダニーの手の中で吐精するとほどなくしてダニーの絶頂を内側から感じてマックはまるで二度達した気分になった。

「……マッ…ク…、」

マックの背に被さるようにベッドへ沈むダニーがまだ熱い吐息と共に問いかける。

「すいません…何か、夢中になって…加減出来なくて…
辛くなかったですか?」

マックは微かに首を振った、何と答えを返していいのか分からない…、
ダニーはゆっくりマックから自身を引き抜き離れると手短に自分の始末をつけてマックの体を拭こうと手を差し出した。

「いや、いい…自分でやる。」

マックはダニーの手からタオルを取るとそう言った。ダニーはマックの横に寝転がり背を向けたマックの首筋に唇を沿わせ呟く、

「マック…僕は前からこうしたかった、あなたと…。」

ダニーはさっきから返答に困る事ばかり口にする、ダニーが自分を慕っているのは分かっていたがまさかこんな形で…マックは受け入れた自分にも驚いていた。
返事のない背中にダニーは続けた、

「でも、マックが嫌なら無かった事にして下さい…。」

苦し気に小さくなる声とは反対にダニーの腕はマックを後ろからきつく抱き締める、その温かさが心地よいと思ったマックは何も言わずダニーの手に自分の手を重ねていた。

それ以上ダニーは何も言わずお互いの息遣いだけが聞こえている、やがてダニーの腕が弛くほどけて寝息が聞こえてくるとマックは体をずらしてダニーにシーツを架けシャワールームに向かった。
朝まで後数時間…慌ただしく部屋を出てゆくダニーが想像出来る、先に体を流しておこうと思った。

シャワーを浴びて戻るとダニーは安心しきって深い寝息を立てていてどこか子供のように思える、マックはつい半日前までこの青年を何とか守ろうと躍起になっていた事を思い出した…けれど結局彼を救ったのは命がけで彼を守ろうとした兄だった。

あんなに自分が無力に感じた事なんて無い、一体何が出来る?そう考える間もなく気が付くとダニーを抱き締めていたのは自分だった、
長い抱擁の後にどちらともなく唇を合わせた、
誘ったのは私だったのかもしれない…

マックはダニーの薄い唇に軽くキスを落とすと横になり久しぶりに自然な睡魔を感じて目を閉じる、この部屋で人の暖かさを感じて眠るのは久しぶりだ…遠くなる意識の中でマックはそう思う、やがて二つの寝息が聞こえて静かな部屋に柔らかい旋律が流れていった。


【end.】

ダニーは勝手にマックは男性とはないだろうと思ってますが、
本当の所は分かりません…。


表のss【Clear morning】に続いているようないないような。



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