第3回リサイタルネット中継
               
             11月11日
                漢字で書くと、十一月、ちょっともじって武士の士にも見える
                特に関連はないが、主人の父の命日です。
                よりによってそんな日にリサイタルを開く私は、悪い嫁?
                それは公然の秘密なので弁解はやめましょう。

                朝、起きて珈琲を入れる。
                夕飯は作らなくて良い。打ち上げがあるから
                息子もお出かけなので、これまたラッキー
                ちょっと気楽な気持で簡単に家の用事を済ませ、楽器を積み込み始める
                リサイタルも三回目だが、何故か私以上に緊張している我が夫
                「怖くて聞きに行けない」
                「行かないお詫びに猫を飼ってもいい」
                などと分けの分からない事を言う。
                この間まで、「休憩時間に是非一曲歌わせてくれ!」と言って聞かなかったのに・・
                合間に歌われるより、来ない方がいいか・・とやっぱり悪い嫁
 
   後ろめたいのか珍しく荷物を車まで運んでくれる夫
   演奏会は何度となくして来たが、荷物の積み込みを手伝ってくれたのは
   記憶ではまだ十回も無いだろう。
   いえいえ、別に不満に思ってるわけではなくて、既成事実をありのままに述べただけです
   気持ち良く見送ってくれて、気持ち良く迎えてくれるだけでうれしいのです!

   取りあえずなんとか許容範囲内に家を出て、会場到着は予定時間ぴったり
   すでに搬入口では、箏屋さん待機
   いつも、早い琴姫様も待機
   なんと裏方スタッフの竹ちゃんまで待機・・竹ちゃんに負けたのはちょっとショック

     何はともあれ、準備準備
      そして、1曲目からリハ開始

                  「四つの前奏曲」長沢勝俊作曲
                  さて、本番という今になって、実は二つある楽器のどちらを使うか・・
                  多少の迷いがあったのです。
                  私が持っている二つの17絃
                  まずは、二つの17絃の紹介をさせて頂きましょう
             
       泰治朗と泰之介

         泰治朗
             私が買った初めての17絃。
             長いお付き合いで、実に良くなります。
             「こんなに良くなるなんて、反則ですよ」
             「泰治朗を是非貸して!!」と言われて演奏の旅に出た事も・・
             欲しい音を出してくれる、泰治朗は私の大切な楽器です

       泰之介
        1回目からずっとリサイタルは17絃中心で開いてきたのですが
        最初は泰治朗を舞台で調絃して使ったけど、やはり無理があると感じて
        あらたに養子縁組したのが、この泰之介。
        一応名門玉淵家のくり太郎でもある。音色は結構深みがあって上品だ
        しかし肝心の音量が今ひとつ・・・上品すぎるのはやはりええとこのお坊ちゃんだから?

        練習段階でこの二つをあれこれ弾いてみた、最終的には本番の2週間前には
        「今回は泰之介にしよう」と決めていた
        泰之介は成長していたのだ、「四つの前奏曲」にふさわしい音色と重厚感があったのだ
        私は一から三まで絹糸を使っている。
        一旦、泰治朗の消耗した三の糸を新しいのに替えたが、この時点で可哀想だけど
        泰治朗の絹糸を泰之介に取り替えて、柱も外してしまった。

        そして、本番前日。箏屋さんに泰之介を渡してしまい、
        家に残った泰治朗で最後の手ならしをした
        するとなんと、泰治朗が奇跡的な音色でなってくれるではないか!!
        「やっぱりお前しかないのか・・・・」不思議なくらい、当たり前に思える感動
        そして、こうなったら舞台の上でこの二つの楽器がどんな風に鳴り響くか見るしかない
        と、泰治朗を梱包して、リハーサルに持って行った


                        舞台にまずは泰之介をだしてもらい、弾き始める
                        一通り最後まで演奏してみる、そして泰治朗の出番。
                        ふと気が付くと、琴姫さんが客席でじっと聞いてくれている
                        二つの楽器を弾き終わり、私なりに結論は出た
                        が、客観的な意見も聞いてみたい

                        千「どっちが良いと思う??」
                        姫「最初の方がいいわ」
                        同感です、糸を取り替えたせいもあるけれど低音の響きも全体的な音色も
                        やはり泰之介でした
                        これまで色んな場面で活躍してくれた泰治朗、ありがとう!!
                        また、糸を取り替えて復活させよう
                        と、言う事で今回は泰之介が活躍する事になりました



     さて、2曲目は「祈詩RENMEN」
     音あわせの段階から、夕山さんの尺八には押されっぱなし
     気迫と包容力のある尺八の音色に
     ついつい聞き入ってしまうのです。
     自分の演奏で相手を圧倒しようというような敵対的な気持の演奏ではなく
     夕山さんの中でこの曲がはっきりした形に消化されていると感じられる
     そんな演奏だと思いました。
     ただ、こちらも気迫で負けないように、しかしけんかをするのではない
     二つの音色の調和のある演奏になるようにしたいと思いつつ練習してきたのでした
 
     一度合わせてみて無事終了、あとは本番まで気持を残しておきましょう

       途中で本日のプロデューサーさっちゃん登場!
       すっきりしたスーツ姿でさっそうと登場
       あれこれ意見を求めると、きっぱりとこたえてくれるのが頼もしい
       さっちゃん、やっぱり頼りになりますぅ〜♪
       
        双樹
          この曲を琴姫さんと本番で演奏するのは実は8回目
          色んな場で何度も付き合っていただき、演奏させてもらいました。
          そして、練習の時も熱心にあれこれ曲想を考えてくれる姫に本当に感謝
          感謝の気持ちも込めて、リサイタル前半の最後にこの曲を持ってきたのでした
          これも、あんまり違和感なくリハ終了
          

  瑞星
    今回ただひとつの箏の曲
    直前リハの調子がよくなかったので、3章をやり直してもらう  
    あとは神に祈るのみ・・・アーメン!
                

                   舞台にはお隣のお花屋さんのこうちゃんが来て花をいけてくれている
                   前回は、こうちゃんと同級生の我が息子が来ていたが
                   今日は娘が来ているので、幼なじみの会話があった模様
                   樹冠の楽器配置の為にお花のディスプレーの位置だけ決めてもらう

          
                          そして舞台はこんな風に・・・
                               



         樹冠
            これも直前リハの時録音した音源を聞くと
            もう少しハイレベルになってほしい。
            今日のリハは樹冠にかけます!!
            気になる部分は誰がリードするかを決め何度か通す
            最初と中間部に尺八ソロがあるので少し照明で強調
            「僕はこういうの恥ずかしいんだけど・・」と夕山さん
            あんまり派手なスポットはやめてホドホドに照らす事に・・

                  樹冠リハ
                           
            
   リハは無事終了。舞台には1曲目のソロに備えて泰之介がスタンバイ

            

   そこで私はもう一度ソロの曲を通す、まだサポーターがはずせません
                       
       
        
楽屋では、受付責任者yukiさん他のメンバーが昼食の真っ最中
「受付のお仕事書いて置いたので見てね」と本日のお仕事一覧を手渡すと
隊長yukiさんが「はい、みんな聞いてね〜」と説明してくれている

そして、何より忘れてならないのはもくもくとドレスにアイロンをかけてくれるよっこさん
本日のファッションショーのドレスを4着も作ってくれたのです、
私がトップに着るものと、樹冠のおそろいのドレス
そして、本番の今朝アイロン持参で駆けつけてくれました。
たくさんの方に助けてもらうのはいつもの事ながら、
今回はこれまで以上に多くの人が関わって助けてくれました。
感謝です、本当に心からの感謝です


              さて、時間はあっという間に過ぎていく
              お昼もほどほどにして、着替えて・・・さあ、本番だ
 
              舞台裏の廊下にスタッフが用意してくれた調絃台の上の楽器と
              舞台の上の泰之介の最終調絃チェック!

     舞台袖に行くとすでにさっちゃんがアナウンス席にすわり舞台スタッフと談笑中
     もともとこの城ホールのスタッフはとても親切でなおかつ仕事に対してとても良心的
     こちらの要望に応えようといつも気持ち良く努力してくれる
     利用させて頂く側としては、妙な職人気質のスタッフの意地悪に気分を悪くする事もなく
     また、公的ホールとはいえお役所的な四角四面の反応でもない
     ああ。また、城ホールを宣伝してしまった。
     このホールの予約は競争率がとても高い。
     それは良心的な使用料金なのに、スタッフがとても良いからだ
     もちろん、それだけではない。
     肝心のホールとしての性能がとても良い
     特に邦楽など音量の少ない楽器にはぴったりだ
     さらに、競争率が高くなるかな・?
     
     舞台袖のモニターで見るとホワイエもそれほど混雑していない
     客席もほどほど埋まってきた様子
     「開演は時間通りでお願いします」とスタッフに伝え
     私は、舞台袖に置いた靴をにらむ「どれを履こうか。。」
     最初は、よっこさんメイドのバラの花模様のドレス
     楽屋でよっこさんに「靴はどれがいい??」と聞くと即座に「この金色!」
     それを思い出して金色の靴を履く
     さ〜〜、行かなくては!

     舞台袖でさっちゃん、竹ちゃんと小さな円陣を組んで「頑張ろう〜〜!!」
     たとえ少ない人数でもこれを円陣を組まないとコンサートは始まりません!


さて、さっちゃんのアナウンスが入る
舞台スタッフが反響板のドアに手をかけてアナウンスの終わりを待っている
緞帳があがりスタッフがドアを開けてくれていざ舞台へ。
わーー、結構お客様が入ってくれてる
さっちゃんの厳しい指導通り、に〜〜っこり笑いながら舞台へ
あれ、イスに手をかけて会場を見回す・・だったっけ??
ま、ご来場の皆様に心からの感謝を込めてお辞儀
17絃の方へまわり、ここでもたつく
実は17絃を弾く時靴を履いていると低音の押さえの時など
くつの音が気になる事があるので裸足になりたい・・が、脱げない・・
会場の期待と緊張を感じながら、もたもたと靴を脱ぎました、おほほ・・
雪山さんから頂いたビデオを見ると、この焦りが私の余裕を無くしたか
靴を脱いでイスに座るやいなや、弾き始めておりました。
最初はもっと間を取らなくっちゃ〜ね、

    さて演奏が終了して、はた、と困った
    最初の予定では
    「演奏終了、にっこり会場を見渡す千。緞帳が下りる、靴を持ってはける」
    ところがリハの時、プロデューサーさっちゃんと相談して、緞帳は下げない事になったのだ
    なんとかして舞台から去らねばならない
    にこやかに微笑みつつ内心焦る私に残された選択肢は

    @また、もたもた靴を履いて照れ笑いをしながらはける
    A素知らぬ顔で靴を放置して裸足ではける
    B靴を手に持って、逃げるようにはける
    この三つ・・・・・さて、あなたならどうする??

    まあ、自分でもつまらない奴だと思いますが、私は@を選んではけたのでした


       舞台からはけると、舞台袖で靴を脱いで舞台裏の廊下をダッシュ!!
       楽屋で待ってくれているよっこさんに手伝ってもらって早変わり!
       前回のリハも同じように裸足で楽屋へ続く廊下を走っていたのですが
       前回の反省は、頭の事
       1曲目までは余裕があって頭を綺麗にセットしてるけど
       2曲目への着替えですでに頭は崩壊
       あとからビデオをみて、自分で吹き出してしまいました。
       今回は、よっこさんが「ちょい待ち!!」とイスに座らせて頭をセットしてくれました
       うわ〜〜、スタイリストさんみたいで豪華!

   2曲目「祈詩RENMEN」
    舞台袖にはすでに夕山さんがスタンバイ。
    もう、ここからは一人での演奏ではないのでちょっと安心
    この安心がいけないのはよく分かっているけど
    演奏中に夕山さんの尺八に聞き惚れてしまったのは事実
    そして、1曲目で懲りたので、舞台で靴を脱ぐのはやめました。
    人はこれを「学習する」と言う
    ちなみにこの曲だけよそから借りてきた17絃
    吉崎バージョンで龍角がクリスタルになった貴公子風なこの楽器は
    と、あるお方から借りたのです、
    1章で低音の和音がたくさん出てくるこの曲
    和音の響きが鎮魂の鐘の音に思えて、とても丁寧に大切に弾きたい
    その鐘の音の響きは、普通の17絃より糸が長くなるよう作られた
    吉崎バージョンのこの貴公子の音色がとても良く合うのです。
    
    夕山さんの音色にも助けられ、アンケートの中でも
    かなり評価の高い曲となりました

       演奏が終わり、舞台をはけるとまたまた靴を脱いでダッシュ
       途中、舞台裏の調絃コーナーでふらっとさん、琴姫さんが
       調絃を見たりしてくれているのを横目に見ながら走る!
       

           双樹
             会場には作曲者「千秋次郎先生」が来られているらしい
             演奏のあと紹介させて頂こうと思いましたが、
             先生の所在は不明。
             「千秋先生が来られてるか確認しておくから
             もし、来られてたら演奏のあとマイクを渡すわ」とさっちゃn
             17絃ソロのあとの20絃の演奏、初めから集中している姫
             頼りになるな〜と思いつつ楽しく演奏させてもらう
             演奏終了、さてマイクは来るのか??
             お辞儀が終わってもマイクの出てくる気配はない
             千秋先生は来られてなかったかな。と、演奏者は舞台からはけたのでした。
             本番を何度もさせてもらったお陰か、自分でも安定を感じた「双樹」
             お客さまの反応もかなりあり、曲作りのなんたるかを再認識させてくれました
  
      千秋先生については・・
      「来られてるかわからなかったので、休憩時間に確認しておくからね」とさっちゃん
      さっちゃん、あなたはえらい!ほんとに行き届いています

       少し余裕の着替え
       そして瑞星
       今日はこの曲だけが箏の演奏
       箏の曲を入れようかどうしようかと企画段階で迷った
       でも、やっぱり基本は箏、頑張ろう〜って思って選んだ曲です
       演奏は、夢中で終わってしまいましたが
       会場でのアンケートには
       「やっぱり箏の音色にほっとしました」などの意見もいくつかあり
       プログラムに入れて良かったかなと思いました

       そしてアンケートを見ていると胸を打つメッセージが・・
       「瑞星を聞かせて頂き、亡くなった娘を思い出し涙が止まりませんでした。
       星になった娘に会えたような気がしました」
       あとから聞くとお嬢さんは自ら命を絶たれたとのこと
       舞台からはお客様の顔は見えても、心まで感じ取る事は出来ません
       けれどもこんな哀しい心を抱いて来られている方もあるのですね。
       私の拙い演奏でも、そんな方に何か小さな光を感じていただけたなら 
       演奏する事に何か意味を見いだせるのかもしれない、と思い
       私自身も大きな癒しを得たような気がしました


   リサイタルの為の準備、そして練習にはどれくらい時間をかけたでしょうか
   数えられないほどの時間を費やして、でも、本番はあっというまに駆け抜けてしまいます
   あれだけ時間を費やしたのに、なかなかすべてを舞台に出し切る事は難しい
   でも、今日の演奏が今の私自身のすべてなのでしょう
   
   最後の樹冠。大好きな曲。
   特にこの曲だけの出演をお願いしたふらっとさんの優しい音色
   長沢曲のもつ美しいメロディーにその音色が是非欲しかったのです
   よっこさんの作ってくれたおそろいの衣装で舞台に出ていく
   そして、演奏・・・気が付いたら終わっていました。
   挨拶をして終わり。千秋先生にも舞台に上がっていただき無事終了

  リサイタル開催に関わって下さった皆様、本当に心よりお礼を申し上げます
  また、助演の皆様にはさらに感謝!
  「次を楽しみにしています」と声をかけて頂いたりもしましたが
  今は本当に真っ白。
  また、心から演奏したい曲が貯まってきた時、皆様におめにかかりましょう
  リサイタルネット中継もご愛読ありがとうございました! 完