非実在青少年に人権は無いと思う

下手の考え休むに似たりなんだけど、一応書いときますっ!


 非実在青少年については、TBSラジオ デイ・キャッチの山田五郎さんのデイキャッチャーズボイスで二回ほど特集があり、また、『東京都青少年健全育成条例に反対する漫画家たちの記者会見』を拝見して、そんな規制は嫌だなぁと、殆ど延髄反射のように思って、ブログのエントリを書きました。
 その後、「賛成派の意見も一応読んでから考えてみたら?」というアドバイスを戴いて、そちらの方も拝読、現行の都条例と、それが今回の改正案によって変更してみたものをテキスト化してくださっているサイト『無名の一知財政策ウォッチャーの独言』様を見つけて拝読させていただきました。

 で、真面目に資料を当たってみても情報は収斂することなく、グルグル回ってます。だって、賛成派は賛成派に有利な学者・学説・統計を持ち出すし、反対派は反対派に有利な学者・学説・統計を持ち出すので、正誤の判断手段の無い私としては、データの類は見るのと見ないのと余り変わんないなぁということ。

 そう、変わんなかったんです、山田五郎さんのポッドキャストで初めて聴いた時から。或いは、少し反対したい気持ちが強くなったかな(笑)。箇条書きにするとこんな感じです。

1.現行の条例でも十分網はかかってません?
2.都の見解を丸々信じるのは不安なんです。
3.直接の被害者は居ないので、実在青少年(子役・モデル)とは根本的に問題が異なると思う。
4.子供に見せたくない理由は、子供と大人の組み合わせの数だけ有るものなのでは?
5.ホラー映画やスプラッタ映画を見た人が皆殺人鬼に成る訳じゃないよね?
6.今のコンビニの商品配置に余り問題を感じない私の感覚が鈍いの?
7.ゾーニングの概念は、小学4年生でも備わっているもんなんですよ?
以下、簡単に補足していきます。


1.現行の条例でも十分網はかかってません?


 現行の(不健全な図書類等の指定)の定義は、 東京都青少年の健全な育成に関する条例より、
(不健全な図書類等の指定) 第8条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
東京都青少年の健全な育成に関する条例施行規則より、
(指定図書類、指定映画等の基準)
第15条 条例第8条第1項第1号の東京都規則で定める基準は、次の各号に掲げる種別に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 著しく性的感情を刺激するもの 次のいずれかに該当するものであること。
イ 全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ロ 性的行為を露骨に描写し、又は表現することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に卑わいな行為を擬似的に体験させるものであること。
ニ イからハまでに掲げるもののほか、その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同程度に卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
実在成人・非実在成人・非実在青少年、どれでもOKな網が既にかけられていますよね?

 改正案では、今までの条例にプラスする形で、
年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交又は性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚かにより認識することができる方法でみだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

 「食べ物なら何でも好きですよ。魚は好きですね。」と言われたら、『この人は十中八九魚を食べたいのだろうな』、と思うように、「漫画・アニメ・イラストに対する規制を特別厳しくしますよ」宣言に見えますね。議事録を見ると、175条というものを取り締まりに使うことが出来ないから、とか…。
公権力の取り締まりのツールは、最低限が良い。私には現行のままで十分なのでは、と思えてしまいます。本当は、この条文でも言論の自由との兼ね合いはギリギリなんじゃないかと思えるのです。


2.都の見解を丸々信じるのは不安なんです。


 『現在、都議会で審議中の東京都青少年健全育成条例改正案に係る様々なご指摘についての都の見解』に、"成人への流通は自由であり"、とか、"著しく悪質なものに限って"などと書かれていますが、山口貴士弁護士が、『東京都青少年健全育成条例に反対する漫画家たちの記者会見』にて、弁護士としての立場から、
そういう答弁をした役人の人が交代してしまえばそれまでのことだというのがこれまでの通例。どうせ2〜3年で担当者は交代してしまうし、新しい担当者に前の人はこう言ったとしても、『やぁ、それは前の人が決めたことだから』ということになってしまいます。ですから、実際に条文は残るけれども担当者は変わる。実際に条文を見てなんて書いてあるかということ(が重要)。今回の都条例の条文というのは、大人に対して網を掛けるものでは無いという風にはとても読めない。都民に対しても蔓延を抑止して子供がアクセスしないように環境を良くする義務を課するということ。大人に対する制約を課していないとはとても言えない。
と仰っているのを聴いて、不安になりました。これも、私には確認のしようの無いことなんですが。


3.直接の被害者は居ないので、実在青少年(子役・子供のモデル)とは根本的に問題が異なると思う。


 実在の子役・子供のモデルの人権は、成人の俳優・モデルの人権同様守られなければならないわけですし、更に判断能力の低い18歳未満の内に、変な映像が流出してしまうと、将来が狭められてしまうので規制しよう。これはもう、ガンガン規制して良いと思う。
 で…、非実在青少年は?特に困らないなぁと、思えてしまうんです。


4.子供に見せたくない理由は、子供と大人の組み合わせの数だけ有るものなのでは?


 暗いところを怖がらないように、怪談の類に一切触れさせないように育てている方のエッセイを読んだことがあって、真似しようかと思ったことが有りました(夜、トイレに起こされたりしなければ楽そうv)。でも、読書好きの我が子は、学校の図書室で自主的に怪談を読んで、一時期暗いところを怖がる人になってしまいましたが(笑)。
その他、子供に見せたくないものは、その子の個性、対する保護者との関係性などによって、千差万別なのでしょう。宗教的な理由で、非常に厳格にいろいろなものを制限されている方もいらっしゃるでしょうし、過去に悲しい事件が有って、PTSDの方もいらっしゃるかもしれません。
 明治時代には、夏目漱石の小説も、悪書とされた時代が有ったらしい。面白すぎて、漢文を読む人が減るからだそうで。逆に、例えば石原慎太郎氏のように『スパルタ教育』「私の家庭では、妻や母親は反対するが私は子供たちの前でヌード写真の氾濫した雑誌を隠さぬようにしている。」という主義の方もいらっしゃるでしょう。
 法律や条令での規制は最低限にして、後は個人に任せた方が良いと思うんですよ。
 学校の図書室に怪談を置かないで、とはとても言えません。

5.ホラー映画やスプラッタ映画が好きな人が皆無差別殺人者に成る訳じゃないよね?


 無差別殺人を犯してしまった人が、ホラー映画やスプラッタ映画が好きな確率は高いかもしれないけれど。 あったとしても、それは一対一対応じゃなくて一意対応なのですよ、多分。そういう映画は沢山あれど、今の世の中、それ程のデストピアになってないと思うんです。駄目?


6.今のコンビニの商品配置に余り問題を感じない私の感覚が鈍いの?


 成人用として区分けされた棚で青いシールを剥がして立ち読みできる子供ってそんなに多いの?  結界があって近づけないって感じなんですが…。


7.ゾーニングの概念は、小学4年生でも備わっているもんなんですよ?


 昔、子供が幼稚園児の頃、近所に住む小学4年生の女の子が、『名探偵コナン』の面白さについて語ってくれたのですが、その後、「○○ちゃん(家の子の名前)は、未だ見ない方がいいと思うよ。怖いシーンが入っているから」と教えてくれました。大部分の日本人や東京都民の大人は、小学4年生以上の知恵は有るでしょうから、「この子供には向かない」と感じれば、それを子供に与えない知恵が有ると思うんです。
 法や条例で規制するのではなくて、そういう知恵で、自主的に取捨選択するレベルでOKなんじゃないかなぁと直感的に、思ってしまう。


まとめ


そんなこんなで、思考停止のまま文章を綴ってしまいました。
今回の条例改正案は、私たちの未来の情報の流通の質を変化させるものです。マスコミでも、賛成派と反対派の議論を丁寧に取り上げていただいて、判断の材料を十分把握した上で大切な選択をして欲しいと思います。
私は、今のところ規制強化には反対します。


おまけ


あの膨大な『第28期東京都青少年問題協議会議事録』のPDFの中で、漫画という単語がいくつ出てきたか、Wordに貼って数えました。 全部読む体力無いですし、逐語筆記の他に、まとめを載せてくださらないかな、と、いつも思います。あ、日PやP連のサイトとは違って、情報公開いただきありがとうございます。
第1回総会 (H20.12.24)0
第1回専門部会 (H21.1.30)13
第2回専門部会 (H21.2.6)0
第3回専門部会 (H21.2.17)1
第4回専門部会 (H21.3.26)3
第5回専門部会 (H21.4.24)0
第6回専門部会 (H21.5.26)0
第7回専門部会 (H21.6.25)17
第8回専門部会 (H21.7.9)45
第9回専門部会 (H21.10.15)4
第1回拡大専門部会 (H21.11.24)35
第10回専門部会 (H21.12.17)46

ニコニコニュース
3月16日(火)19:30に、ネット世論調査
「『非実在青少年』性的表現の規制について」を行い、ユーザー83,785人の方に回答をいただきました。
■「東京都青少年の健全な育成に関する条例」の改正案を知っている 75.3%
■改正案に「賛成」8.9%、「反対」79.5%

内閣府(平成 19 年9月)の統計
調査対象:全国20 歳以上の者3,000 人
有効回収数:1,767 人(58.9%)
調査期間:平成19 年9月13 日〜9月23 日
調査方法:調査員による個別面接聴取
(資料7を提示して、対象者によく読んでもらってから質問する。)
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【資料7】
現行の法令では、実在しない子どもに対する性行為等を描いた漫画(コミック)や絵(イラスト)などは、規制の対象となっていません。
これに関して、実在しない子どもを描くのであれば、他に害を及ぼさないため、現行のままで問題ないとの意見があります。一方、これらコミック等が児童を性の対象とする風潮や児童に対する性的犯罪を助長するとの意見もあり、実在する子どもの写真やDVDなどと同様に規制の対象とすべきとの意見があります。
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Q7 〔回答票22〕このような漫画(コミック)や絵(イラスト)を規制の対象とすることについてどう思いますか。この中から1つだけお答えください。
(58.9)(ア)対象とすべきである
(27.6)(イ)どちらかといえば対象とすべきである
( 6.6)(ウ)どちらかといえば対象とすべきでない
( 2.5)(エ)対象とすべきでない
( 4.5) わからない

2010.04.03

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