Skype将棋レポート10



■全国大会に向けて


皆さん こんにちは、 愛知県の柏木です。
今年もいよいよ全国盲人将棋大会の日日が迫って参りました。
先人の智恵と努力によって創設され、あまた先輩方によって守り育てられてきた
この大会も、近年は参加者数が減ってきており、
せっかくの素晴らしい行事、伝統あるイベントを、末永く残していくのが私たちの
責務だと、常々考えております。
そして今回はなんと、私の地元 名古屋で開催されます。
 数年前「是非一度名古屋で開きませんか?」と言った私のつぶやきが
聞き入れられたわけです。
ところで、私は将棋の対局中、無意識に対局相手の差し手に対して
「ほおぉ! そりゃすごい手だなぁ!」
「困ったなぁ! これじゃぁどうしようもない」
「いやあ、もう負けだなぁ」
 などとぶつぶつつぶやく癖が有るらしく、いつの間にか将棋仲間から
「ぼやきの柏木」と言われるようになってしまいました。
 が、大会開催に関しては、私の〈つぶやき〉が 功を奏した訳です。
 大いに喜んだ私ですが、いざ名古屋大会が決まってみると、急に
あれこれ忙しくなり、これまでそんなことは何も考えず、大会に参加して、時には
役員の人たちと口論までしていた自分を振り返ると、改めて関係者の方に
頭が下がる思いです。
さて、準備はちゃくちゃくと進められました。
 まず、審判団の要請依頼は、私の古くからの将棋仲間、原木氏を通して、
日本将棋連盟 愛知県支部連合会会長の大村欽一氏にお願いし、大村しは
快く引き受けてくださいました。
 私は結構完全主義者で、やるからには盛大かつ有意義の内に、大会を
成功させなければと考えてしまいます。その為には何としても参加者を
増やさなければなりません。 そこで、前々からそのような声は出ていましたが、
参加者を特定の組織の会員に限定せず、視覚障害者であれば誰でも参加できるように
して欲しいと働きかけました。 また、これまではA級とB級の2クラスだった
組分けに、初心者クラスのC級を加えるよう要望しました。
 もはや私のつぶやきは、つぶやきではなく、みなを説得する発言と
呼びかけの声に変わりました。そして、その声は関係者の耳に届き、すべての要望が
認められました。 それでもなお満足できない私は、せっかく当地でやる大会に、
地元の参加者が私しかいない と云うことになってはたいへんだと、早速名古屋で
将棋同好会を立ち上げることにしました。 昔からの将棋仲間の何人かに声を
かけましたが、なかなか良い返事がもらえず、もはやこれまでかと思った時、
案内文を見たと云う人から連絡が有り、無事同好会発足にこぎ着けました。
 集まったメンバーは、駒の動かし方も知らない初心者が多く、今回の
大会はC級に出るのがやっとと云う人がほとんどですが、私より若いし、
女性の方も何人かいるので、数年後が楽しみです。
 普通の人なら、ここまで準備が整えば満足するだろうと思いますが、
ここからがぼやきの柏木のすごい(こだわる)ところ。
 みなが納得の行く対局ができるよう、出来るだけ使い易い将棋盤を
用意しようと思いつきました。 そこで、これまで尤も使い易いと言われていた、
九州の江口茂樹さん考案、& 北村氏製作の盤を購入しようとしましたが、
残念ながらそれは製造中止になっていることが分かりました。
 ならば同じような盤を地元で作ってもらおうと、参考までに江口さんの
盤をお借りすべく、わざわざ佐賀県から郵送していただき、友人の力も借りつつ、
地元では有名な家具屋さんに直談判し、社長をどうにか説得して作成にこぎ着けました。
 マスの大きさや仕切り線の高さなど、もちろん材質についても、みんなの
意見を取り入れながら(と言いつつ、ほとんどは私の意見ですが)ついに 試作品が
完成。今はさらに使い易い盤にする為、第2の試作品を作成してもらっている
ところです。それで問題が無ければ、大会に間に合うように
10枚の盤を作っていただく予定です。
 計画通りに進めば、盤の受け渡しは11月5日、大会は8日ですから、
参加者はできたてほやほやの盤で対局できることになります。新品の盤を挟んで、
全国の沢山の視覚障害者の方が対局する場面を想像すると、
何とも言えない充実感と満足感を覚えます。
そう言う訳で、準備はほぼ整いました。
 完璧主義の私が、今もう一つ気にしているのは、大会での自分の成績です。
このところ準備作業に追われ、思うように趣味を楽しむ時間が足りなかったのと、
初心者にあれこれ指導をしていたことで、自分の腕前はあまり上達せず、
最近のスカイプでの対局は負けてばかりです。
 しかし、そんなことをぼやいている暇は有りません。大会はもう2ヶ月後
なのですから。 自分の成績も大事ですが、今回は初の名古屋大会が成功することを
願ってやみません。 なので、最後は、ぼやきでも説得でも宣伝でも無く、
こう叫びたい。「みなさぁん、第38回 全国盲人将棋大会(名古屋大会)へ、
是非是非大勢 来てくださぁい!!」