初心者が覚えておきたい基本的な囲い方
将棋は、相手より一手でも先に相手の玉「王様」を取ったほうが勝ちです。
逆にいうと、一手でも先に自玉「自分の王様」を取られてしまうと負けになるので、
玉「王様」は最も大切な駒で、
玉「王様」が取られないように大事に囲う必要があります。
将棋の格言にも「攻めは飛角銀桂」とされているように、
残りの金銀3枚は守り駒として玉「王様」を囲う駒に使います。
ただ、玉「王様」の囲い方の種類は数多く、
全ての囲い方をマスターするのは大変なので、
初心者が覚えておきたい10種類の基本的な囲い方だけを紹介します。
居飛車党向けの囲い方
1. 金矢倉(きんやぐら)
相居飛車で相矢倉の将棋で用いられます。組むまでに手数はかかりますが、
組みあがってしまえば上からの攻めに強く、攻めに専念できます。
ただし、横からの攻めや端攻めには弱い形なので注意が必要です。
先手でいえば、玉将を8八に、左金を7八、右金を6七に、
左銀を7七に移動させたものをいう。
作る側の手だけを書きますと以下の順で組んでいきます。
金櫓
▲7六歩・▲6八銀・▲5六歩・▲6六歩・
▲5八金右・▲7八金・▲6九王・▲7七銀・
▲7九角・▲6七金右・▲6八角・▲7九王・▲8八王で完成。
相手の指し方によって手順が変わることもあります。
2.舟囲い(ふなかこい)
舟囲いは対振り飛車戦の将棋で用いられます。
舟囲いは手数も少なく急戦調の将棋に向いていますが、
柔軟な囲いなので持久戦になるようなら舟囲いから、
左美濃や居飛車穴熊などに発展させ、玉「王様」を固めることも可能。
ただ、舟囲い自体は薄い囲いなので注意が必要です。
作る側の手だけを書きますと以下の順で組んでいきます。
船囲い
▲76歩・▲26歩・▲48銀・▲68玉・▲78玉・▲58金・▲56歩・
3. 居飛車穴熊
穴熊は相居飛車、対抗型を問わず用いられます。
組みあがると絶対に王手がかからない通称ゼットの形で非常に堅固な囲いです。
ただ、組むまでの手数が長く組む前に仕掛けられる、自陣の隙が多くなる、
上部や端攻めに意外と弱いという短所もあります。
居飛車穴熊にする手順
▲7六歩・▲4八銀・▲5六歩・▲6八玉・▲7八玉・▲5七銀・
▲7七角・▲8八玉・▲9八香・▲9九玉・▲8八銀・▲7九金・
▲6六銀・▲6八角・▲5九金・▲6九金右・
▲7八金右・▲7七銀引まで18手で完成です。
4. 中住まい
中住まいは相居飛車、横歩取りの先手番で用いられることが多いです。
横歩取りは激しい将棋になりやすいため、
玉の堅さより自陣の隙を無くすバランス重視の囲いです。
中住まいの形は以下になります。
▲9六歩・▲7六歩・▲2五歩・▲2六飛・▲1六歩<br>
▲8八角・▲7八金・▲5八玉・▲4八銀・▲3八金<br>
▲9九香車・▲8九桂馬・▲7九銀・▲2九桂馬・▲1九香車<br>
5. 中原囲い
中原誠十六世名人が最初に使った囲い方として中原囲いと呼ばれていて、
横歩取りの後手番で用いられることが多いです。
中住まいに比べると左右の逃げ道が広く、
飛車の打ち込みにも強いとされています。
中原囲いの形
以下のような形になります。
▲9六歩 ▲7六歩 ▲2六飛車 ▲1六歩
▲8八角 ▲7八金
▲9九香車 ▲8九桂馬 ▲7九銀 ▲6九玉 ▲5九金 ▲2九桂馬 ▲1九香車
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩
▲同 歩 △同 飛 ▲3四飛 △3三角 ▲3六飛 △8四飛
▲2六飛 △2二銀 ▲8七歩 △5二玉 ▲1六歩 △1四歩
▲4八銀 △9四歩 ▲9六歩 △7二金 ▲6九玉 △6二銀
▲5九金
振り飛車党向けの囲い方
6. 美濃囲い
本美濃囲いとも呼ばれる美濃囲いは振り飛車の代表的な囲いです。
横からの攻めに非常に強く、組むまでの手数も比較的少ないです。
また、高美濃囲いや銀冠に発展させることも可能で柔軟な囲いと言えます。
ただし、上部からの攻めや端攻め、コビン攻めに弱いので注意が必要です。
振り飛車の場合であれば、飛車を6八や7八などに
振った後で、4八玉〜3八玉〜2八玉〜3八銀、で
片美濃囲いの完成です。
このあと、5八金左で本美濃囲い完成です。
身の囲いの守り駒の形
▲9六歩 ▲7六歩 ▲6六歩 ▲1六歩 ▲6七銀
▲7八飛車 ▲6八角 ▲5八金 ▲3八銀 ▲2八玉
▲9九香車 ▲8九桂馬 ▲6九金▲8九桂馬 ▲1九香車
7. 高美濃囲い(たかみのがこい)
美濃囲いから3手進めると高美濃囲いになります。
美濃囲いと比べると、横からの攻めには弱くなりますが、
上部からの攻めに強くなります。
また、3七桂と桂馬を跳ねて攻めに転換することも可能ですが、
更に端攻めに弱くなってしまうので注意が必要です。
美濃囲いの5二金が6三へ上がれば高美濃囲いです。
高身の囲いの守り駒の形
▲9六歩 ▲7六歩 ▲6六歩 ▲4六歩 ▲1六歩
▲6七銀 ▲4七金
▲7八飛車 ▲6八角 ▲3八銀 ▲2八玉
▲9九香車 ▲8九桂馬 ▲6九金▲8九桂馬 ▲1九香車
8. 銀冠
高美濃囲いから3手進めると銀冠になります。
高美濃囲いよりも横からの攻めに弱くなり、上部からの攻めに強くなります。
3七桂と桂馬を跳ねることで攻撃的な形になりますが、下段が薄くなり、
桂馬を跳ねるタイミングが難しいという短所もあります。
高美濃囲いから2六歩とついて、
2七銀と上がります。
銀冠の囲いの守り駒の形
▲9六歩 ▲7六歩 ▲6六歩 ▲4六歩 ▲3六歩 ▲2六歩 ▲1六歩
▲6七銀 ▲4七金 ▲3七桂馬 ▲2七銀
▲7八飛車 ▲6八角 ▲3八金 ▲2八玉
▲9九香車 ▲8九桂馬 ▲1九香車
9. 振り飛車穴熊
基本的には居飛車穴熊と同じですが、
角がいない分居飛車穴熊よりも薄いという見方もできれば、
角がいない分角が負担にならないという見方もできます。どちらにしても、
絶対に王手がかからない通称ゼットの形で、
非常に堅固な囲いであることに違いはありません。
振り飛車穴熊 守備駒の形
▲1九玉 ▲1八香車 ▲1七歩 ▲2九桂馬 ▲2八銀 ▲2七歩
▲3九金 ▲3八金 ▲3七歩
10. 金無双
金と玉と銀の駒が横一列に並ぶこの駒配置は、
金無双とよばれる囲い方です。
金無双は、主に相振り飛車の将棋で用いられます。
上部からの攻めや端攻めにも強いという特徴がありますが、
2八の銀が「壁銀」になっているため、
横からの攻めに玉の逃げ道がないという短所もあります。
金無双「二枚金」 守備駒の形
▲5八金 ▲4八金 ▲3八玉 ▲2八銀
将棋には最強の囲いなんて存在しない
以上、初心者が覚えておきたい10種類の基本的な囲い方ですが、
どの囲いも一長一短で、
どんな攻めにも万全で最強の囲いというものは存在しません。
相手が上部から攻めてくる戦型なら上部の攻めに強い囲いで対抗するなど、
相手の戦型に応じて自玉の囲いを選択することが大切です。