■知っておきたい将棋の用語

将棋のルール、駒の動かし方は知っているけれど、
将棋の専門書は読んだことがないという方のために、
一見専門用語っぽくないけれども、
実は将棋独特の意味がある言い方を集めてみました。

将棋の用語集

【あ行】

  ★合駒(あいごま)
王手をかけた駒とかけられた玉の間や、次に取られそうな駒の間に、
持駒を打ったり盤上の駒を移動させたりしてその王手や取られそうな駒を防ぐこと。
または、その駒のこと。
  ★開き王手(あきおうて)
飛車・角・香の利いている筋にある味方の駒を移動して、王手をすること。
  ★悪手(あくしゅ)
形勢を不利にしてしまうような悪い手のこと。
「悪手を指してしまった」などという。
  ★頭金(あたまきん)
相手の玉の頭に金を打つこと。「頭金で詰み」などという。
  ★合わせの歩(あわせのふ)
相手の歩の頭に持駒の歩を打つこと。
  ★居玉(いぎょく)
玉が、駒を並べた最初の位置から動かないこと。
居玉で戦いを起こすことはよくないとされる。
  ★一手スキ(いってすき)
次の一手で詰めますよ、という状態。「詰めろ」などとともいう。
  ★居飛車(いびしゃ)
飛車が、駒を並べた最初の位置から動かず、戦い始めること。
「居飛車戦法」などともいう。代表的な居飛車の戦い方に、
相矢倉や相掛かりなどがある。
  ★浮き駒(うきごま)
味方の駒とのつながりのない駒をいう。浮き駒は、狙われやすい。
  ★浮き飛車(うきびしゃ)
居飛車の位置より上の、先手なら▲2六、後手なら△8四の位置に飛車を浮くこと。
  ★打ち歩詰め(うちふづめ)
持駒の歩を打って相手の玉を詰めてはいけないという、禁じ手のひとつ。
  ★上手(うわて)
駒落ちで指すとき、駒を落とす方をいう。通常は、強い方が駒を落とす。
「下手」(したて)の逆。
  ★王手(おうて)
次の一手で玉を取りますよ、という手。
王手は放置できず、何らかの対応をしなければならない。
  ★王手飛車(おうてびしゃ)
王手と飛車取りが同時にかかっている状態。
王手飛車をかけられた駒を取れない場合、必ず飛車を取られる。
  ★大駒(おおごま)
飛車と角のことをいう。

【か行】

  ★空成り(からなり)
駒を取らないで、ただ成るだけの手のこと。
  ★緩手(かんしゅ)
厳しさのない、ゆるい手のこと。こういう手を指してしまうと、
形勢を損ねることが多い。
  ★棋士(きし)
専門的に将棋を指す人。プロ棋士のこと。
アマチュアで指している人は、棋士とは呼ばれないことが多い。
  ★奇手(きしゅ)
ハッとするような奇抜な一手のこと。「鬼手」ともいう。
  ★棋譜(きふ)
対局した指し手の記録のこと。初手から最後の手までの手順を、符号で記す。
  ★疑問手(ぎもんしゅ)
おそらく悪手ではないかと思われる手のこと。
  ★急戦(きゅうせん)
指し始めてから数手で戦いが始まるような将棋のこと。持久戦の逆。
  ★禁じ手(きんじて)
ルールで決められた、指してはいけない手のこと。
二歩、打ち歩詰め、行き場のない駒を打つなどがある。
  ★銀ばさみ(ぎんばさみ)
歩で銀をはさみ、身動きできないようにすること。
  ★位取り(くらいどり)
歩を五段目に進めてその位を保ち、相手に圧力を加えること。
「玉頭位取り戦法」などの戦法もある。
  ★軽手(けいしゅ)
軽快で、相手のスキを突く軽やかな一手のこと。
  ★好手(こうしゅ)
形勢を有利にできるような良い一手のこと。
  ★小駒(こごま)
金・銀・桂・香・歩のこと。飛車と角は大駒という。
  ★駒落ち(こまおち)
実力に差がある場合の対局のとき、強い方が駒を始めから抜いて指すこと。
香落ちや角落ち、飛車と角を抜いて指す二枚落ちなどがある。
  ★駒組み(こまぐみ)
主に序盤で、戦いを始める前に玉を囲ったり、陣形を組み立てたりすること。
  ★駒損(こまぞん)
駒を取られて損をすること。駒損をすると不利になったとされるが、
将棋の終盤では「駒の損得より相手の玉に迫る速さ」が優先されることもある。
  ★駒台(こまだい)
取ったり交換したりした駒を置く台のこと。
相手に持駒をわかるようにしなければならない。
  ★駒得(こまどく)
駒損の逆で、相手の駒を取って得をすること。

【さ行】

  ★指し切り(さしきり)
攻め過ぎて戦力が足りなくなり、これ以上攻めが続かなくなること。
  ★指し込み(さしこみ)
勝敗により、駒を落とすなど手合いを変えていくこと。
  ★指し過ぎ(さしすぎ)
必要以上に攻め過ぎてしまうこと。
逆に相手にその手を利用されてしまうことがある。
  ★捌く(さばく)
働きの悪い駒を相手の駒と交換したり、要所に動かしたりして駒の働きをよくすること。「駒がうまく捌けた」などという。
  ★仕掛ける(しかける)
戦いを起こすこと。
  ★持久戦(じきゅうせん)
序盤の駒組みが長い戦いのこと。互いに玉を固めあう将棋に多い。急戦の逆。
  ★持将棋(じしょうぎ)
双方の玉が敵陣に入り込み合い、詰ませられる見込みがなくなった場合に、
駒の数を点数に置き換えてお互いに点数が足りていれば持将棋となり、
引き分けとなる。
  ★自陣角(じじんかく)
角を自陣に打つこと。単に、受けるために打つ角は自陣角とはいわれない。
自陣から遠く相手陣を狙うような、素晴らしい好手が生まれることがある。
  ★自陣飛車(じじんびしゃ)
持駒になればすぐ敵陣に打ちたくなる飛車を、じっと自陣に打つ一手。
  ★下手(したて)
駒落ちの場合に、駒を落とされる方をいう。上手の逆。
  ★質駒(しちごま)
いつでも自分の持駒にすることができる相手の駒のこと。
  ★凌ぐ(しのぐ)
受ける、耐えること。
  ★縛り(しばり)
王手をかけずに、相手の玉を動けない状態にしてしまうこと。次に詰みを狙う。
  ★十字飛車(じゅうじびしゃ)
飛車のタテヨコ十字に利く利点を生かし、
相手の駒に両取りをかけたりする手筋のこと。
  ★終盤(しゅうばん)
互いに相手の玉を狙いあう一局の将棋の終了直前の攻防のこと。
  ★定跡(じょうせき)
先人が研究を重ねてきたいろいろな戦法の最も良い指し手順のお手本のこと。
将棋は「定跡」であり、囲碁の場合の「定石」との違いに注意が必要。
  ★勝負手(しょうぶて)
形勢不利な局面で放つ、勝敗を賭ける一か八かのような一手。
  ★序盤(じょばん)
初手より、駒と駒がぶつかるまでの駒組みの段階のこと。
  ★新手(しんて)
従来の定跡を覆すような、新しい一手のこと。
  ★捨て駒(すてごま)
あえて自分の駒を取らせることにより、形勢有利にしたり詰みを逃れたりすること。
  ★素抜き(すぬき)
飛車・角・香の利いている筋にいる駒を手順に移動させることにより、
相手の駒を取ってしまうこと。
  ★千日手(せんにちて)
同じ局面が繰り返され、盤上がこう着状態に陥ること。
同一局面が4回現れると千日手となり、先手と後手を入れ替えて指し直しになる。
  ★戦法(せんぽう)
戦い方の方法をいう。大きくは、居飛車戦法と振り飛車戦法に分けられる。
  ★即詰み(そくづみ)
王手の連続で、詰みとなること。
  ★底歩(そこふ)
自陣の一番下に打つ歩のこと。
底歩があるのを忘れ、うっかり「二歩」の反則に気を付けなければならない。

【た行】

  ★対局(たいきょく)
将棋を指すこと。
  ★大局観(たいきょくかん)
局面の優劣を見極めること。これに優れている人は、将棋が強いとされる。
  ★叩く(たたく)
持駒の歩を相手の駒の頭に打つこと。「叩きの歩」という手筋がある。
  ★垂れ歩(たれふ)
「叩きの歩」とは違い、控えて打つ歩のこと。
次に「と金」になれる位置に打つ歩をこう例える場合が多い。
  ★力将棋(ちからしょうぎ)
定跡にとらわれない、力と力のねじり合いのような将棋のこと。
  ★中合い(ちゅうあい)
飛車・角・香の利きをさえぎるために、
それらの駒と自分の駒の間に合駒をすること。
中合いはたびたび、際どく相手の攻めから逃れられたりできる。
  ★中盤(ちゅうばん)
序盤の駒組みが終わり、いよいよ本格的に駒がぶつかり合う段階のこと。
仕掛けてから終盤までをいうが、
どこからが終盤なのかは将棋により違いがあり、難しいところ。
  ★突き捨て(つきすて)
歩を突いて捨てること。「戦いは歩の突き捨てから」という格言がある。
  ★継ぎ歩(つぎふ)
相手の歩に対し、まずこちらの歩を突き捨てて取らせ、
さらにその歩にこちらの歩を合わせる攻め手筋のこと。
  ★突き歩詰め(つきふづめ)
盤上にある歩を突いて玉を詰めること。
これは「打ち歩詰め」とは違い、反則ではない。
  ★詰め将棋(つめしょうぎ)
王手の連続で玉を詰めることができる、詰みを考える練習問題のこと。
上達には欠かせないとされる。
  ★詰めろ(つめろ)
次に詰めるぞ、という状態のこと、「一手スキ」や「詰めよ」などともいう。
  ★手順前後(てじゅんぜんご)
先に指すべき手を、後でも同じと錯覚して指し手の順序を間違えてしまうこと。
  ★手筋(てすじ)
駒本来の性能を引き出す、筋のよい指し方のこと。
  ★手損(てぞん)
同じことを繰り返したりして、手数を損すること。
昔の将棋はこれを嫌ったが、現代の将棋ではさほど気にされていない風潮がある。
  ★手得(てどく)
手数を得すること。手損の逆。
  ★手抜き(てぬき)
相手の一手に応じないで、別の手を指すこと。
  ★投了(とうりょう)
負けを認め、意思表示をすること。
「負けました」「ありません」などということが多い。
  ★トン死(とんし)
詰めろがかかっていることに気づかずにうっかりして、詰まされてしまうこと。

【な行】

  ★成る(なる)
飛車・角・銀・桂・香・歩が、敵陣に入って駒を裏返しにし、
動けるマス目が増えたりなど働きが強くなること。
  ★二歩(にふ)
同じタテの筋に、2枚目の歩を打ってしまうこと。反則負けになる。
  ★入玉(にゅうぎょく)
敵陣内に、玉が入り込むこと。

【は行】

  ★端攻め(はしぜめ)
盤上の1筋、9筋から攻めること。
  ★跳ね違い(はねちがい)
桂の交換になりそうなときに、それに応じないで違う方へ桂を跳ねること。
  ★ハメ手(はめて)
将棋には、引っかかると一気に劣勢になるような手順がある。それのこと。
ハメ手は、ハメようとするよりもハマらないようにするために学ぶのもよい。
  ★早逃げ(はやにげ)
相手の攻めを遅らせるために、前もって駒を逃げておくこと。
「玉の早逃げ8手の得」という格言もある。
  ★必至、または必死(ひっし)
玉が、次に必ず詰んでしまうという受けの利かない状態のこと。
必至をかけられたら、相手玉を詰ませるしか勝ち目はない。
  ★平手(ひらて)
駒落ちではない、対等の対局のこと。
  ★封じ手(ふうじて)
対局を中断してまた後から続きを指し始める場合に、
最後の一手が相手に分からないように記録して、
封筒などに入れて保管しておくこと。
続きを指し始めるときに、その封筒を開封して、
その記録した一手から対局を再開する。
プロの2日制のタイトル戦などで行われる。
  ★歩切れ(ふぎれ)
持駒に歩がないこと。
  ★不成(ふなり)
成れる駒をわざと成らないこと。「ならず」ともいう。

【ま行】

  ★待ち駒(まちごま)
玉を逃がさないように、逃げ道にあらかじめ利かせておく駒のこと。
「縛り」と同じ意味。
  ★見落とし(みおとし)
相手の次の指し手に気がつかなかったこと。
  ★妙手(みょうしゅ)
局面を有利に導くような、素晴らしい一手のこと。
  ★都詰め(みやこづめ)
玉が、盤面の中央である「5五」の位置で詰むこと。
  ★持駒(もちごま)
相手の駒を取ったり、交換したりして手持ちになった駒のこと。

【ら行】

  ★両王手(りょうおうて)
2つの駒で同時に王手すること。
  ★両取り(りょうどり)
一度に2つの駒のどちらかが取れる状態になること。
  ★連打の歩(れんだのふ)
歩を続けて打って捨てる手筋のこと。相手の駒を近づけたいときや、
移動させたいときに使う。

【わ行】

  ★割り打ち(わりうち)
銀の手筋のことで、下の図のように金2枚や飛車の後ろの死角に銀を打つこと。
「銀の割り打ち」などと呼ばれる。

■各駒に限定された言い回し

  ★「突く」
歩を突く。盤上の歩をひとつ前に進めることを言います。他の駒では使いません。
  ★「走る」
香車と飛車に限定して使います。香車の場合が多いですね。
  ★「跳ねる」
桂馬に限定した言い方です。
ちなみに、桂馬のことを省略して「馬」と呼んではいけません。
「馬」は成り角のことをさします。
  ★「睨む」(にらむ)
角の斜めの利きが間接的に敵の玉や飛車など、
重要な駒に当たっていることをさします。
また、「覗く」(のぞく)という言い方もしますが、このときは簡単に利きを
〈遮断〉することができて影響が少ないことが多いです。
「睨む」の場合は利きが〈遮断〉されていても、
それによって相手の指し手に制限が生じて、
影響力を与えているというニュアンスがあります。

■歩を打つときに限定した言い回し

  ★「たたく」
相手の駒の前に歩を打つことを言います。
相手が手抜きをすれば、歩でその駒が取れる状態です。
大抵の場合は、相手がその歩を取ることを想定していて、
野球でいえば犠牲バントのような手です。連続してさらに「たたく」ことを、
「継ぎ歩(つぎふ)」と呼ぶことがあります。
  ★「垂らす(たらす)」
次の手で成る、つまり「ときん」を作ることができる位置に、
歩を打つことをさします。

■その他の言い回し

  ★「切る」
飛車や角を犠牲にして、勢いのある攻めを行うことを言います。
(例) 角切りの猛襲。
  ★「切れる」
攻めが切れる:攻めが途切れること。
  ★歩切れ:持ち駒に歩が無いこと。
  ★「挨拶する」
端歩を突いたときに、相手も同じ筋の端歩を突くことを言います。
相手が挨拶しないときには、
さらにもうひとつ端歩を突くことができますが、この状態を
「端を突き越した」「端を詰めた」と言います。
  ★「紐をつける」
自分の駒を相手にタダで取られないように他の駒を利かすことを言います。
〈命綱〉をつけた状態を想像してください。
逆に「紐がついていない」状態を「浮いている」と言います。
浮き駒が自陣にあると、角を交換したときにそれを狙われたりします。
  ★「頭が丸い」
角と桂馬はひとつ前に進むことができません。
そのため相手の歩にいじめられたりします。
角と桂馬のこの弱点のことを「頭が丸い」と表現します。
  ★「さばく」
この言葉を説明するのは(私の棋力では)難しいです。
強いて言えば「駒の働きをよくすること。」
将棋の中盤はいかに駒を「さばく」かということが主眼になります。
「さばく」の意味がわかって使いこなせる人はもう上級者です。
  ★「寄せる」
相手の玉を詰ませにかかること。この状態ではもう駒の損得は考えない。
  ★「即詰め」(そくづめ)
詰将棋のように、王手の連続で詰ませることができること。