奇襲戦法

ここには有名な奇襲戦法を集めて見ました。
奇襲戦法と言うのは相手がはまると自分が優勢に成りますが、
きちんと対応されると、かえって形勢を損ねるものがほとんどです。
但し、筋違い角・鳥刺し・かまいたちは、奇襲と言うよりは、
力戦型に近いものだと思います。

★鬼殺し

解説
「鬼殺し」は「可章馬(かしょうま)戦法」という名で、
大正時代の初めごろ大道将棋の売り物に使われてから広まった戦法だ。
角道を開け合ってから桂馬を跳ね、更に単騎▲6五桂と跳ねれば、
本戦法を知らない相手はビックリすることだろう。
ここで慌てて△6二銀と上がれば、鬼殺しの術中にはまったも同然である。

基本的な手順
▲7六歩 ▽3四歩 ▲7七桂 ▽8四歩 ▲6五桂 ▽6二銀
▲7五歩 ▽6四歩 ▲2二角成 ▽同 銀 ▲5五角 ▽3三銀
▲6四角 ▽5二金右 ▲7四歩 ▽6三金 ▲7八飛 ▽6四金
▲7三歩成 ▽同 桂 ▲同桂成 ▽同 銀 ▲同飛成
これで鬼ごろし成功である。

★鬼殺し2

解説
▲5五角打ちに対して、後手が△3三角と合わせて打ってきた場合はどうだろう。
素直に▲3三角成では面白くないので、勢い▲6四角、
△9九角成となり後手香得となる。
ここで▲7四歩には△8三飛と浮いて抵抗するが、
▲7三歩成〜▲7四銀と絡んでいけば、後手受けきるのは大変な局面となっている。

★鬼殺し封じ

解説
鬼殺しとはいえども対策を知ってさえいれば全然怖くはない。
▲6五桂と来た時に、たった1手で鬼殺しを粉砕することができる。
△6二金が「鬼殺し封じ」で、▲5五角に△6三金と上がるのが妙手で、
金を上がることにより2二銀にヒモがつく。
以下、▲7四歩、△7四同歩と進み、次に△3三角から先手の角を消し、
桂馬をいただけば、先手指し切りとなる。br>

★新鬼殺し

解説
鬼殺しから進化した米長永世棋聖の「新鬼殺し」がある。
鬼殺しの▲7八飛と▲7五歩を先に指すという発想である。
▲7六歩△8四歩に対して▲7五歩とし、△8五歩には▲7七角と上がっておく。
後手は普通の形と安心して角道を開けるが、そこで▲7八飛という奇怪な手を指す。
これは悪手とばかりに後手は△7七角成と来るが、▲7七同桂と平然と取る。
後手は△8六歩から飛車先を破りに来るが、△8六同飛の時に
▲7四歩と突くのが好手で、△8九飛成には▲8八飛がぴったりの受け。
そこで後手は△6二銀と手堅く受けたくなるが、
▲7三歩成を利かして△7三同銀と取らせ、
▲6五桂〜▲5三桂不成と浴びせる。
△5三同銀には、もちろん▲9五角の王手飛車が待っているという訳だ。

★新鬼殺し2

解説
▲7七同桂に対して、△4五角と馬を作りに来た場合には、
△6七角成の飛車取りを恐れず▲6五桂と跳ねる。
そして△6七角成にも▲7四歩。▲7三歩成とされるのは厄介なので、
△7四同歩だが▲5五角と飛車香両取りをかける。
後手も強く△2二銀と来るが、飛車は取らずに▲7四飛とし、
▲6二歩を決めれば先手有利な展開となる。

★新鬼殺し3

解説
▲7七同桂に対して、△4五角の代わりに△5四角と打った場合はどうか。
これには▲5五角と打つのが安全な位置で、△2二銀の受けには、
▲8五桂と一歩稼いで跳ねるのが洒落ている。
△3三銀に対しては、一気に決める▲7三桂不成が面白い。
▲7三桂成だと△8七飛成の余地を与えるが、不成ならその瞬間に▲6一桂成の王手が先手となる。
△7三同桂の一手に▲同角成とすれば、奇襲成功である。

★パックマン

解説
先手が角道を開けた直後に△4四歩とただで歩を差し出すのが、
本戦法の出だしである。初中級者なら▲4四同角と飛び出してくるであろう。
また多少強い方ならその先を読んで△4二飛▲5三角成△4七飛成
▲6三馬△7二銀▲3六馬で先手有利と思うはず。
しかし▲5三角成の時に飛車を成り込まず△3四歩と突いておくのが妙手で、
以下▲4二馬△同銀と飛車角を清算してから
飛車角交換後の▲8八銀には△9五角の鬼手が炸裂する。
先手玉は飛車の横利きが消えるので動けないのである。
ここで▲7七銀なら△同角右成▲同桂△同角成▲6八金△9九馬で後手が指せる。
従って▲7七飛と打つがこの飛車を取らずに△3三桂と跳ねるのが
また憎らしい手である。▲9六歩の催促にようやく飛車を取って△4五桂と
更に攻めまくる。以下、手順通りに進めば後手大成功である。
△9五角には▲7七飛と打つのが最強の受けである。これに対し
すぐに△7七同角右成▲同銀と清算するのでは大したことがないので、
△3三桂と力をためる。ここで▲9六歩と催促するのは、
△7七角成▲同銀△4五桂▲4八銀△7七角成▲同桂△8九飛▲7八角△9九飛成と進み、
後手優勢となる。▲6八玉と体勢を整えておくべきで、これなら先手も指せる。

★パックマン2

解説
先手が飛車を取らずに、先に▲8八銀と上がった場合には、△4七飛成と成り込む。
ここで▲4八銀と龍を攻めるのは、△8八角成から、桂香をいただけば、
龍を取られても後手が指せる。
また、▲7七銀も△5七龍、▲5八飛、△5六歩がある。
▲6三馬には△7二銀と手堅く受け、▲3六馬に△5八歩と打つのが絶好手である。
以下、手順通りに進めば、難なく銀のタダ取りが実現する。


戻って、単に▲8八銀と上がった変化を見る。後手は△4七飛成と成り込む。
ここでの先手の手も広いが、▲7七銀では△5七龍(王手馬取り)
▲5八飛△5六歩と食い付かれる。
▲6三馬では△7二銀▲3六馬△5八歩▲同金右△3六龍▲同歩△8八角成(第7図)と進んで後手勝勢。
よって、△4七飛成に対しては、馬を安定させる▲7五馬が有力な手である。
後手の継続手段としては、馬を浮かせるための△7四歩があり、
▲6五馬の両取りで困るように見えるが、△5八歩▲同金右△4五龍▲2一馬△8八角成
▲4三桂(第8図)と進んで形勢不明。
以下、一例として△6二玉▲3一桂成△5二金左▲4八飛△同龍▲同金△9九馬(第9図)が考えられる。


★超急戦居玉棒銀

解説
本戦法はガチガチの矢倉党を相手にした時に有効である。
手順通り、後手は玉も囲わずひたすら棒銀を進める。
△8六歩と突いた局面は、既に先手収拾不能な状態に陥っている。
▲同歩、△同銀、▲同銀、△9九角成で先手陣はあっという間に崩壊する。
実戦では途中、▲2六歩、▲6六歩や端歩の突き合い等が考えられるが、
いずれも棒銀が互角以上に戦える。




★超超急戦!後手居玉棒銀

▲7六歩、▽8四歩、▲6八銀、▽8五歩、▲7七銀、▽3四歩、▲6六歩、▽7二銀とやる気満々。
この後は▲7八金、▽8三銀、▲7九角、▽8四銀、▲5六歩まではお馴染みの手順。
この▽6四歩が怖い狙いです。
単純に棒銀をした場合は端から攻めても▲6八角でなんでもなく、
7筋を絡めた攻めは▲4六角と出て飛車に当たるのが嫌味。
その筋を消すのも含めたのが▽6四歩ですが、これには恐ろしい狙いが含まれています。
というか、これを見てるということは悩まされているということでもありますが、
一応お付き合い願います。
4六角の筋はやらせてもらえないので▲6八角としておくのが無難なところ。
後手はいきなり▽6五歩と突っかけてきます。
もちろん▲同歩で▽9五銀と飛び出ます。
ここで▲5八金と攻めに対する補強をするとちょっと大変です。
いかにも自然な進行のようにも見えますが
▽8六歩と攻めに出ます。
▲同歩▽同銀▲同銀の瞬間に後手の角道が開くため、香車を取られて馬を作られます。
なかなか厄介な筋でどうやって受けたものかという感じです。
銀香交換で駒自体の損得は先手がいいですが、
馬を作られてる分が面白くない上に桂馬のあたりになっています。
桂馬を逃げるなら銀が抜かれますしね。
馬を作られるこの展開はちょっと先手を持つ気になりません。
▽8六歩に▲同歩▽同銀に▲8五歩が手筋の受けではあります。
▽同飛車なら▲8六銀とここで銀を取ります。
これなら馬を作る瞬間に飛車が取れるため、一応の受けにはなります。
ということで▲8五歩には同飛車と取らずに▽6二飛車と攻める場所を変えてきます。
早速6五の位を狙ってきますが、これを受ける手は当然ありません。
▲6七金と受けてしのぐぐらいですかね。
ここで後手が銀交換して▽7七銀成りに▲同角が自然な形でしょうか。
これもまた一局ですが、後手の要求を受けているという形は否めません。
もうちょっといい手はないものか。
前述しましたが▲5八金のタイミングに工夫ができます。
はっきり言ってここまで来ると矢倉に組むのは現実味がなく、実現困難です。
それは先ほどの説明で紹介したとおりですね。
▲5八金は矢倉を指すうえでは自然な一手と言えますが、この際矢倉にこだわらないで行く方が
戦術としては妥当な選択です。そこで知らなければ指せないのが▲5五歩。
角道を遮断する一手で、このまま▽8六歩からの攻めは馬作りができないためやる人はいないですね。
当然▽同角と攻めをつなげる一手です。
タダでやるからには技があるのが道理で、▲5八飛車とします。
角が逃げる▽4四角は▲5五歩と位を取って勝負。逃げずに▽5四歩もまた一局。
どちらにしてもこのまま中飛車で穏やかに進めて9五の銀を遊び銀にしていけば、
先手が指しやすいかなとなります。
振り飛車なんてやりたくない!という居飛車堅持派の場合でも何とかならないこともないです。
狙いが棒銀と9九角成りは目に見えてるので、
▲8八銀と角成りの狙いを消しつつ菊水矢倉で受ける手です。
角がいきなり銀に当たるのである意味で強気です。
後手としては銀を何とかする手しかないです。
▽8六歩と攻めに出るか、▽8四銀と一旦矛を収めるか。
どちらにしても▲5八飛車と違って相手に歩をやらないで済みますが、
引き続き居飛車で戦うならすでに戦火を交えている9筋方面に玉を移動させることになるので
矢倉城入城は構想としては疑問が残ります。
6五歩と突かされてる傷が気がかりですしね。
中住いから相掛のような構想も、飛車先が伸びてないため攻め合いに持ち込むのが難しいですね。
穏やかな展開になれば歩を得してる先手が指せるとは思いますが、
果たしてそういう展開になるのやら。
後手はそういう展開になると不満になるというのは承知でしょうからね。
露骨に傷を攻め立てるのは当然の狙いでしょう。
こちらの変化はずっと受けて辛抱する展開が見えているため、どうしても居飛車にしたい人か
受ける将棋が好きならこれもまた一局と言えるかと思います。
▲5八金とどちらが指しやすいかは悩ましい問題ですね。


★ノーガード戦法

解説
本戦法は、相横歩取り模様からの超急戦である。
△3二金の1手を省略して、8筋の歩交換を行うという一見無理筋の攻めから始まる。
△3三角は二枚換えを狙った手で、▲2八飛には△2七歩、▲5八飛、△7六飛、
▲7七銀、△2六飛がある。
途中の▲7七銀で▲6五角も△8八角成、▲7六角、△8九馬がある。
従って、△3三角には▲2一飛成となるが、間違っても△8八角成、▲同金、
△同飛成としてはならない。
なぜなら、▲3三角で終わってしまうからである。
△8八角成に▲8三飛ときた場合には、△2二馬、▲同龍、△同銀として自玉の脅威を消す。
そして、▲8一飛成に△2八歩と利かし、▲2八同銀に△7八飛とすれば寄り筋となる。
△2八歩に▲1五角ときた場合には、△4二銀と受け、△2五飛や△5五飛を狙う展開となる。


★ノーガード戦法2

解説
△8八角成に▲7七角と受けた場合には、△同馬、▲同桂と進める。
なお、▲7七角に△8九馬とした場合には、
▲1一角成、△6七馬に▲6九香があり、うまくいかない。
次に△3二銀と上がって様子を見るのが好手で、
▲1一龍には△4四角から無理矢理飛車を取りに行く。
△8八飛と打った局面は、後手が優勢になっている。


★目くらまし

解説
本戦法は1歩得のためにかなりの手数を費やす戦法で、相手が振り飛車なら、成功率はかなり高い。
まず始めに飛車先を突いて、△3三角を強要する。
そして、▲2六飛から▲3六飛縦歩取りを狙いに行くと、後手は△3二飛と受けることになる。
次に▲7六歩と突くと、後手は普通の振り飛車感覚で△4四歩と突いてくる。
▲4六飛がインチキ臭い手で、この手を指すときには、
「これで1歩得できるかな?」とでもつぶやいておけば、
相手が1歩でもやるまいと乗ってくるハズである。
以下、手品のような手順が進んで、
再度▲3六飛となった時点では、▲3四飛を防ぐ手はなくなっている。
狙われた角を捌くのは振り飛車の常用手段で、△4五歩と反発するが、
角交換の後、やっと念願の1歩を取ることができる。
ここで、後手が△3二銀と自陣の強化をはかれば、▲2二角と打ち込んで先手有利となる。


★原内流

解説
始めに断っておくが、本戦法を使用する場合には多少の演技力が必要である。
相掛かりの出だしで定跡なら、▲2四歩の前に▲7八金と上がるところであるが、
本戦法は先に▲2四歩を突く。定跡通りに進めば、△2四同歩、▲同飛、△8六歩、▲同歩、


△8七歩、▲2三歩、△8八歩成、▲同銀、△3五角で先手が悪いが、
これは先手が1歩損することで逆にするのが本戦法の狙いである。
しかし本譜の通り、先手は▲2四同飛とは指さず、
「しまった!」と演技の一つでも入れて▲7八金とする。
この演技次第でうまく行くかどうか決まる。
何も知らない後手は、△8六歩から飛車先の歩を切ってくるが、
▲2三歩と1手先に角取りと相成る。
後手が気付いた時には、既に定跡とは逆の現象が起きている。
以下、変化はいろいろ考えられるが、先手有利には違いない。




★ヒラメ

解説
ヒラメ戦法は中飛車の一種で攻撃力に優れているが、
狙いが単純であるためプロ棋戦ではほとんど見られない。
△3四歩に▲6八銀と受けるのがヒラメ流で、角交換を苦にしない。
序盤に角交換を行い、角を手にしつつ大技を掛けにいくのが攻めのパターンである。
玉の囲いは美濃囲いだが、▲5九金左とするのが変わっていて、
この金2枚の形がヒラメの目玉に似ていることから本戦法の名前がついた。
△5三銀がかえって先手の攻めを誘発した手で、8筋を放棄して▲6六銀と進出する。
▲7五角があるので、すぐに△8六歩と突けなくなっている。
以下、手順は長いが中央に殺到して先手優勢の局面となった。
途中、△3三桂では強く△5五同歩と取り、▲同飛、△4二金直、▲8五飛には△8四歩と謝って、次の△8八角に期待すればいい勝負である。


★ヒラメの開き

解説
いきなりの▲5六歩で△3四歩と指させ、▲5八飛と回る。
位取り拒否の△5四歩で早くも準備が整った。
▲7六歩の角交換強要に対して、後手は玉の囲いを急ぎ、先手もそれに合わせて玉を囲う。
様子見の△1四歩には▲1六歩として穴熊でないことを表明する。
△8五歩の催促には、▲7七角と意表を突いた受けをし、当然の△7七角成に平然と▲同桂とする。
8筋を破ってくれば、▲5五歩のカウンターが先手の狙いで、△8九飛成には、
▲5四歩、△5二歩、▲6五桂で、
次に(1)▲5三歩成、(2)▲5五角、(3)▲8八飛などの狙いが多すぎて後手防戦不能となっている。
▲5五飛に対して、△4四角には飛車を逃げずに▲6六角と打ち返す。
先手陣は飛車打ちに強い形なので飛車角交換は全く気にしなくてよい。
▲5五同角、△2二銀に▲6六角打の決め手があり、先手指せる。




★アヒル

解説
本戦法はとにかく守備が強いので、大駒の交換になれば、ほとんど必勝となる戦法である。
△8五歩には▲2六飛と受け、次の▲9六歩が大事で角は端に出す。
1筋の歩の突き合いの後、▲5八玉として早くも先手は中住まいを決め込む。
後手は、先手は金開きの中住まいに組むと思いがちだが、先手は予想を裏切る陣形を築く。
▲7九金、▲3九金としたその姿は、両足を広げて踏ん張っているアヒルに似ていることから、
本戦法の名がついている。
先手はこれで戦闘準備OKで、自陣はもうこれ以上動かさない方がよい。
後は飛車角歩(場合によっては桂香も参加)で強引に手を作っていくことになる。
以下、先手は何も動かさないのがベストで後手が動いてくれるのは大歓迎となる。
後は本譜のように、後手陣のスキを見つけて手を作っていけばよい。
アマ有段者の実戦では、最終図の後△2四金〜△1三角と動いてきたが、
先手は▲1五歩から飛車を切る強襲で快勝している。


★アヒル2

解説
振り飛車に対しては、美濃囲いの一番の弱点である端を攻撃する。
▲9六歩は将来の端攻めを狙う重要な手で、穴熊党でなければ△9四歩と突き返してくる。
そして▲5八玉と定位置に据え、居飛車相手ではないので、先に▲2六飛と浮き、
△3二銀を強要する。▲7九金、▲3九金で囲いは完成する。
仕掛けのタイミングは、振り飛車美濃囲いが完成する寸前が絶好で、
▲8六歩は相手から仕掛けてもらうための罠である。(演技の1つでも入れれば効果的であろう)


後手が罠にハマって△9五歩と突いてくれば、▲同歩、△同香の後、
▲8五歩と伸ばすのが用意の手で、当然後手は角香交換をしてくる。
▲9五香打に後手は香二本には怖がることはないと美濃囲いを完成させるが、
▲9六飛と回られてみると後手に受けはなくなっている。
仕方なく後手は△4五歩で角道を開けて開き直ったが、▲9三香成〜▲8三歩と進めば、
先手有望である。


★アヒル3

解説
▲8六歩の局面で先手の誘いに乗らず△7二銀と美濃囲いを完成された場合には、
▲8五歩と突き越した後、▲8六角と出る。
後手は自陣に手を入れるが、次の▲9五歩がこれまた意表をついている。
当然の同歩に▲9五角と強引にいけば、以下の手順は必然であろう。
▲9六飛と回れば、先手有望である。


★対振り飛車金開き

解説
普通の居飛車模様で始まり、▲2六飛と浮く。後手は3四歩を守るため△3二銀と受ける。
▲3八金〜▲7八金と上がって金開きの形を完成させる。
後手は先手の奇妙な囲いに苦笑するだろうが、そんなのはお構いなしで、先手玉は中住まいとする。
△8二玉と寄った瞬間に▲9六歩と突くのが重要で、△9四歩を引き出し、
仕掛けの手掛かりとする。▲8六銀が狙いの一手で、後手が△8四歩なら▲7五銀、△8三銀、


▲6六角、△8五歩、▲7七桂と玉頭戦に持ち込めばよい。
次の▲7五歩も重要で、飛車の横利きを9筋まで通す。
▲9五歩から開戦し、棒銀模様で9筋から攻めたてる。
以降、▲9五香〜▲7七桂〜▲8五桂と端に戦力を集めれば、数の攻めで端を破ることができる。


★対振り飛車金開き2

解説
▲7八金を見た後手は、三間飛車に振ってきた。
後は▲3八金〜▲5八玉と自陣を整備し、△8二玉と寄った瞬間に▲9六歩と端を突く。
▲7七角で9五に利かせ、端攻めに重みをつける。
△8四歩は次に△8三銀の狙いだが、この瞬間▲9五歩と仕掛ける。
棒銀模様に銀香交換し、最後に角で取る。
△4五歩には▲7七角がぴったりで、この手で9九香の利きが通った。
後は飛車を9筋に振り、▲9五に香車を打って露骨に攻める。
△9二銀の必死の受けに、▲9一角が好手で、以下9筋に殺到すれば、
後手受けきることは不可能である。


★対振り飛車金開き3

解説
通常は△8二玉で端歩を突くが、△7二玉で様子を見ることもある。
後手は端歩を受けず穴熊を決め込む。当然先手は端歩を詰める。
▲7七銀はこの戦法に欠かせない一手である。後手が穴熊なので、▲8六銀ではなく、


▲7五歩とする。先手はその後、▲7六銀〜▲8六歩と8筋に照準を合わせる。
穴熊相手の場合には、8筋を攻めるのが良い。△8二金と穴熊を完成される前に仕掛ける。
△8四歩に▲8四同角は、△8三銀〜△8四歩で攻めを切らされるので、
もちろん▲9四歩と継続手を放つ。以下、先手の攻めを後手は受けきることができない。

★対振り飛車金開き4

解説
後手が銀冠に組んできた場合には、▲8五歩、▲7四歩の突き捨てで6六角の利きを通し、
▲8五銀で後手玉頭に迫る。
再度▲6六角となった局面は、先手のみ歩を持って満足である。
△7五銀には構わず、▲6一銀で後手玉を薄くし、継続の▲8五桂が切り札である。
桂交換、▲8五歩の利かし、▲5六飛の転回と先手に好手順が続いては、後手苦しい展開である。
▲8六歩となった局面は先手有利である。


★横歩取り素抜き

解説
相横歩取り模様から△8八角成と角交換をし、△3八歩と叩く。
△3八歩に▲2八銀は、△2七歩、▲同銀、△3九歩成、▲同金、△4五角があり、
以下▲2四飛なら△6七角成、▲同金、△8八飛成がいきなり詰めろになっている。
▲3八同銀に△3三角は江戸時代から伝わるハメ手で、▲7七角なら△同角成、▲同桂、△8九角、▲8七銀、△同飛成、▲同金、△6七角成が詰めろ飛車取りとなる。
△3三角に定跡は▲8七歩、△7六飛、▲7七銀、△2六飛、▲2七歩、
△2八飛、▲4九金と進む。
本戦法は、△3三角ではなく、△4四角とする。
△4四角に▲7七角は△同角成以下、先程の手順と同じ進行となる。
▲7七歩にはじっと△7四飛と引く。もちろん狙いは△7七角成からの飛車の素抜きである。
先手も考えて▲2四飛〜▲1五角の準王手飛車を狙い優勢に見えるが、実はそうではない。
△2三歩〜△1五歩と飛車角を取り合った後、▲2三歩成〜▲4五角で決まったように見えるが、
△4一角の受けがぴったりである。飛車を持ち合った将棋では、自陣角の方が勝る。
△2八歩を嫌っての▲2八歩に△3三金が好手で、
角の睨みを避けながら△4四金から角をいじめる構想を秘めている。
4五角が居なくなると、△1六歩、▲同歩、△1八歩、▲同香、△1九飛の筋がある。


★右米長玉戦法

解説
本戦法は対居飛車穴熊戦法用に考案された戦法である。
まず、三間飛車に振り、▲7五歩と位を取る。相手は△3三角と上がり、


居飛車穴熊を目指してきた。先手は普通に美濃囲いを進め、後手は△1一玉と潜った。
先手は▲7六飛〜▲7七桂と石田流に組むが、角は右翼への転換を狙う。
▲3六歩は玉の小びんだけに危険だが、▲3七角を実現させるためには必要な一手である。
後手は△6四歩と角のにらみを消しにいったが、
これは後々の争点となるので先手にとっては好都合である。
▲1八玉と寄って先手陣は完成した。
後手は端歩を突いてきたが、構わず▲6五歩から仕掛ける。
途中、▲2六歩は端に備えた手で、
▲2七銀と玉頭を固めておけば上部からの攻撃には安心していられる。
▲9六歩から強引に手を作って香交換に持ち込むが、6筋から激しい戦いが始まった。
▲6五同桂に△6二銀と引き、次の△6四歩を狙うが、▲6四歩が手筋で、
▲9五歩と香を取り返した。△6三歩と後手は自陣のキズを消したので、


先手は▲7二歩の垂れ歩で勝負に出る。
以降、飛車角が動き回り激戦模様だが▲6六角と大さばきに成功した先手が有利な展開となった。


★右米長玉戦法2

解説
相手も研究してくると、6筋の歩を突かず、右金は玉の守備につけるなど工夫してくる。
形も定跡化されていき、最初の局面が基本図となる(らしい)。
ここから▲7四歩突きからの攻撃になるが、先手の桂馬を相手に渡さないことと、
角を成り込むことがポイントとなる。
先手の▲8三飛に後手も△7九飛と打ち込んでくるが、ここで桂馬を跳ねて取らせないようにする。
この一手が後々になって効いてくる。
また▲9一角成で先に▲8一飛成を急ぐと、△5五歩、▲同角、△6九龍、▲8二角成、
△5四香で損な展開となる。
以降、▲8一飛成〜▲9三桂成と駒を取り、成桂を寄せていく展開となるが、
戦力差の違いで先手有利である。


★右米長玉戦法3

解説
この棋譜は、先手が某プロ棋士である。
△5四銀は▲6六歩の強要であるが、先手は応じなかった。
角道を開けたまま戦うという意志表示である。
△7四歩は角の展開をみせた本戦法独特の手である。
先手は▲7五歩〜▲7四歩と拠点を築き、▲2六飛と横利きをみせ十分な態勢となった。
△4五歩〜△6五銀が一連の好手で、先手は△7四銀と拠点を払われる手を防ぐ手段がない。
▲5五角の王手には喜んで△9二玉と寄れば、右米長玉となった。
△7四銀の前の△2四歩が憎い手で、△2五歩からの飛車先逆襲で更にポイントを稼いだ。
▲2七歩と謝る手を見て、後手は悠々と△7四銀と目障りな拠点を払うことに成功した。
以降、飛車交換になったが、
先手は2三に働きの悪い銀を打たされている分だけ不利な局面となっている。


★筋違い角(すじちがいかく)

解説
角交換して、▲4五角と打ち一歩を取りに行くのを筋違い角と言う。
奇襲というよりは、単に力将棋となる戦法として成立している。
図で後手は、持ち駒の角を、いかに有効に使えるかが勝負だ。
先手は、角を▲6七、▲7八に引き、1〜3筋を狙うのか、
▲5六から▲3八、あるいは▲1八へ引き、6〜8筋を狙うのか2通りの指し方がある。
一歩損をしたくない場合、後手は、△5二金右▲3四角△6五角の相筋違い角もある。

★鳥刺し(とりざし)

解説
角道を開けず、銀を▲6八銀から▲5七銀左とし、▲7九角をと引き角で使うのを鳥刺しと言う。
三間飛車には特に有効のようだ。
通常、攻める時、振り飛車側から角交換を迫られ、さばかれることがあるが、それがこれにはない。反面、角をどのように使えるかが勝負になるだろう。

★かまいたち

解説
▲5五歩から▲5六銀と中央の位を取り、さらに▲6五銀から▲5八飛と序盤から中央を制するのが鈴木英春氏創案の「かまいたち」。この後、7九の銀を6六に繰り出し、圧迫を加えていく。
2002年11月に発売された「島ノート」で、島八段は、「新・かまいたち」として、ここから▲5四歩と銀交換に出る指し方、後手がそれを防いだ場合の指し方についても紹介している。