我々が悪と呼ぶものが善と呼ばれる善悪の逆転した世界。

最後の聖戦において黒き羽の天使が勝利して以来、

世界には二つの階級が生まれた。

黒きコウモリの羽を持つ支配階級と、白き鳥類の羽を持つ者達である。


そしてまた同時にこの世界には、

黒き羽の者達を率いるメフィスト・フェレスによって、7つの大罪が定められた

すなわち、愛・自由・正義・人権・弱者・友情・平等、である。









血染めの羽
―序章―










許されることのない大罪だとしても。

そのせいで、この身を滅ぼすことになろうとも。

この想いを偽りたくはない。


私は、あなたを愛している…………。









町からは少し外れた位置に、その家はポツンと建っていた。
まるで、人目を避けるように。
小さな、しかし暮らすには不自由はないであろう程度の家。
奴隷一人いれば、手入れは十分だろう。

そして、その家に住むのは一人の黒き羽の少女。
濃い茶の髪に、一際鋭い光を灯す深紅の瞳を持ち、類稀なき美貌の持ち主。
しかし、それなりに良い身分に生まれ、何不自由無く生きて行くこともできたはずなのに、あえてそのような質素な暮らしをする彼女を、周りの者達は好奇というよりはむしろ侮蔑にも近い眼差しで見ていた。
何より、奴隷を持たぬことが彼女の変わりぶりをより高めさせていたと言って良い。
この世界において、奴隷を持たぬ者はよほどの貧乏人か変わり者のみ。
大抵のものは多くの白き羽を持つ奴隷たちを所有し、働かせるのが当然である。
それを持たぬは愚の骨頂と。
黒き羽を持ちながら何と言う恥さらしな、と。
そう、囁かれていた。






その少女の名は
その時はまだ、変わり者という程度でしかなかった。
そう。
その時は、まだ…。






週に一度の町への買出し。
それを除けばが他人と接触することはほぼ皆無であった。
その買出しにしても、必要最低限のものを買い、それ以外に何か気の向くままに遊ぶなどということもなかった。



薄暗い町中を、彼女の足音が響く。
ひとけがないわけではない。
ただ、周りにいる者たちのうち、白き羽を持つ者たちは、皆黒き羽の者たちを恐れ、また主人に逆らうことを恐れ、何の言葉も発しないせいだった。
商人たちにしても、白い羽の者達は言いつけられたもの以外を買うことなどあるはずがないことも知っているので声を張り上げて商売をするなどということはない。
それが当たり前だった。
町の中で賑わっている場所といえば、酒場であるだとか、白き羽立ち入り禁止とされたそれなりに高級な店だとか。
あるいは、その白き羽の者を売っている市場くらいのものである。


そのような場所、見たくもない。
そう思ってさっさと用事を済ませようと思っていただったが、ちらりとそちらへ視線を向けたとき、前方不注意で人にぶつかってしまった。
「あっ…」
ぶつかった相手は、そのことにはまるで気づかないように走っていってしまった。
ただ、その拍子に、がいつも愛用している髪飾りが落ちてしまった。
拾おうとした瞬間には、もうすでに他の者に蹴飛ばされ、さらに遠くへとすべっていってしまった。
気に入っている物なので諦めるわけにもいかず、彼女はいつもなら近寄りもしないその人だかりへと入っていった。





「ちょっと……すみません…」
一生懸命手を伸ばそうとするが、あまりの人にかがむことすらできない。
かと言って、今更引き返すこともできない。
そんなこんなしているうちに、いつのまにやらは随分と前の方へと来てしまっていた。



「さぁ、みなさんお待ちかね!今日の男奴隷たちだよ!!」
耳障りな奴隷売りの司会の声。
音声拡張機の調子も絶好調のようだ。
思う以上に近づいてしまっていたため、はあまりの声の大きさに顔をしかめた。
「粋の良い働き盛りの男手だ!今日は3人!!まずはコイツからだ!!!」
その言葉と同時に連れて来られた白き羽の男。
働き手として十分に思える印象のある彼は、すぐにどこかの黒い羽の者に買われていった。
次の者も同様。
この次で最後だというのに、客足は衰える様子は無かった。

髪飾りは目に見えている。
手を伸ばすにはもう少し近づかなければいけない位置ではあるが。
次のラストの販売さえ終われば、取り戻すことができるだろう。
不本意だが仕方が無い。
この市が終わるまで待つしかないようだ。








「さーあ。今日はこれでラストだ!性格は悪そうだが、器量ならそれなりだ!ちょいと手なづけりゃいいだけなんだ。見た目は綺麗な方が良いだろう、お客さんたち!!とくりゃあ見逃す手はないぜ!!」

いいからとっとと終わらせて欲しい。
自分はこんなものが見たいわけでは無いのだから。
そう思って睨みつけるように舞台を見たとき。




その場に立っている、商品である白い羽を持つ少年に、目を奪われた。




の髪よりも黒い闇色のサラサラの髪。
それとは対照的な目に鮮やかな、光のような白い羽。
目に入ったものすら映していないように見えるその漆黒の瞳は暗い炎を宿しているようだった。


自分が売られていることをわかっていないわけもないだろうに、彼の目はその前に売られていた他の奴隷たちとは明らかに違っていた。




「どうだい、この綺麗な顔!絶品だろう!じゃあ、まずは5万からいこうか!」
司会者の男がそう言ったが、どういうわけか手をあげる者はいなかった。
シーンと、さっきまでの歓声が嘘のように静まり返った。
「あ、あれ?…高すぎたかい……?じ、じゃぁ、4万5千でどうだ!!」
しかし、それでも手をあげる者はいなかった。
なぜなら、その白い羽の男は舞台に出てきた時から始終何かをぶつぶつと呟き続けていたからだ。
それに加え、あの何を見ているのかわからない瞳。
いくら働き盛りの男といえど、精神に異状をきたしているのなら、奴隷としては使えない。買い手たちの多くは、そう判断したのだった。



まったく希望者の出ないこの商品に、司会者の方が慌てた。
「みなさーん、ホントにいらない?ほーら、こんなに美形だよ」
先ほどまでの威勢はどこへやら、随分と弱々しい声に変化しているが、それでも商売は商売。ここでやめるわけにはいかないらしい。
困りきった司会者と、すでに全く興味を失った買い手たち。

そのしらけた空間に、綺麗な女の声が響いた。



「1万5千」


え?と、司会者は驚き、客も一斉にそちらへと視線をやった。
その声を挙げた少女、は一歩前へと進みもう一度言った。
「1万5千。それなら買うわ」
変わり者として有名だった彼女のその言葉に、ああ、あの子もようやく奴隷を買う気になったんだねなどという声もあがっていた。
司会者は予想以上の安価に戸惑ったようだったが、それ以上値を上げて買い手がつかない方が困ると判断したのか、それで諦めた。












「ねぇ。なんで俺なんか買ったのさ」
家に着くなり、その少年は言った。
思ったよりは低めの声だった。
その話し方は、ボソボソといったでは風あったが、少なくとも精神に異状は無いようだった。


家に着くまで、二人は一言も話さなかった。


は自分の行動に驚いていた。
この奴隷制度を良く思っていなかったのに。
なのにどうしてそんなものに参加してしまったのだろう。
このような小さな家、自分一人暮らすだけなら、誰かの手など必要ないのに。
ずっと、そうしてきたのに。
なのに、気づけば彼を買っていた。
なぜだろう。
どれだけ考えても、答えは出なかった。
ただ、一つ理由付けできるとしたら、この瞳が気になったからかもしれない。
この、何かを見ているようなのに、何も映していないように感じる瞳が。


「なぜなのかしらね。私にもわからない」
「何ソレ」
少年は、自分が白い羽の者であるにも関わらずそのような口の聞き方をした。
大抵の白い羽を持つ者たちは、支配階級である黒い羽を持つ人間に怯えるというのに。
そのことも、が彼に興味を持つ一因となったのかもしれない。




「あなた、名前は?」
「名前?そんなの必要なの?キミたち黒い羽の奴らにとっては俺たちは道具でしかないんじゃないの?」
彼の言う通りだった。
白い羽の者たちにも名はあるが、それが使われることはめったにない。
その主人が多くの奴隷を所持しているとかでない限りは。


「そうね。でも、私は知りたいの。ダメならいいけど」
そう言った彼女に、少年は驚いたようだった。
と言っても、そう大きく表情が変わったわけでも無かったが。



「………シンジ」
「そう。シンジね。私は。これからよろしく」



そう言って、差し出された白い手に、迷いながらもシンジは手を重ねた。







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  なんでだろう。
  今日ブラックマトリクスクロスを購入して、
  なんか世界観が気に入ってしまったようです。
  ミニゲームに手間取ってまだ2時間分もプレイできていないのに
  何を血迷ってテニプリinブラマトなんてやるんだ……。
  深司に白い羽。笑えるじゃないか(をい)
  育った環境があまりにも違うので少々違うように思えますが、
  一応いつもの深司夢のヒロインちゃんのつもりです。
  なんか終われなかったし。
  『浮気』も簡潔させてないのにこんなの書いてる場合か(爆)
  あまり多くの人は見ないだろうと自己満足に書きなぐっております。
  気の向くまま更新するかな。
  とりあえず本編プレイせんことには(黙)

                               ’02.2.25.up


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