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初めて彼女と出逢ったのは、いつだったか。 繰り返す生と死の中で、いつからか彼女の姿を探していた。 意識的であれ、無意識的であれ、僕らは必ず顔を合わす運命にあった。 その時々において、恋人であることもあれば敵になることもあった。 ただの通りすがりで、名前さえ知らぬままのことも。 それでも、僕は彼女に気付いてしまう。 ボンゴレに狙いを定めたのは、自然の成り行きだった。 マフィア界で一番の勢力を誇っているボンゴレファミリー。狙いとしては当然のところだ。 その筆頭が9代目。しかし彼はあまりに強大すぎた。仮にもマフィア界のトップだ。 けれど、その9代目が次代候補を探していることはすぐにわかったし、その最有力候補が日本にいることも難なく突き止めた。 彼の右腕である最強のヒットマンが、次代候補の家庭教師として日本に渡ったということはマフィアの中では有名だった。 名前も所在もわからない、ボンゴレ10代目候補。 並盛という中学に通うということさえわかれば、あとは簡単だった。 ランキングのフウ太という少年を捕らえ、強さのランキングを入手。 一番強いのに決まりだろうと思ったら、それは学校の風紀委員長だった。 ランキングブックに並んだ顔写真の中。 見つけてしまった知らない顔に、思わず笑みがこぼれた。 なかば諦めたように吐息を漏らすと、気付いた千種が視線を向けた。 僕が笑うのはよくあること。 肩をすくめて首を振れば、何も言ってはこなかった。 紛れも無い、彼女だった。 こうしていつも、僕は彼女を見つけてしまう。 この生において出逢ったことも無い彼女を、どうして『彼女』だとわかってしまうのか。 理屈はわからない。 けれど、確かにそれが『彼女』なのだと本能が告げる。そして、それが間違いだったことは一度も無かった。 今の彼女の名前は『』。 並盛中2年。 学内の腕は… 「2位が女?へっ、くだんね」 「犬」 「はいはいー、っと。わーってるって」 鼻で笑った犬に、千種が鋭い視線を向ける。 犬は気にした風も無く手を頭の後ろで組んで壁にもたれたまま口笛を吹いた。 全く変わらない態度に千種の視線も変わらないままだったが、固い顔をしていたのは彼一人。 バズーもMMも楽しげに笑っているのを見て、千草は諦めたようにため息をついた。 ここにいる者は皆、これから始まる宴を楽しみにしている。 楽しみ方はそれぞれだ。 弱い者をいたぶるのを楽しみにするも良し、強い者を己の前にひざまずかせるのを楽しみにするも良し。 犬はただ、ケンカを楽しみたいだけ。 それも良いだろう。 彼女はランキング2位だった。 他は男が並ぶ中、一人混じった少女の顔は際立っていた。 ゲームを始めるのを3日後と決めると、僕は一人で並盛校区へと繰り出した。 下見のつもりはない。 ただ、特にすることもなかったからだ。 することが無いなら明日にでもすればいいものを、気付けば僕の口は「三日後」という単語を組み立てていた。 誰も異議は唱えなかった。 彼女に会いたいのか…。 否、とは言えない。 確かに会いたい気持ちはある。 だがいつも、最初の対面は決まってうまくいった試しは無かった。 それも当然で、今の彼女は、僕の知る以前の彼女とは違う。 魂が同じでも、人格を構成してきた記憶は全く別のものだ。 たかが13年。けれど、13年しか生きていない彼女にとっては、それが全てだ。 その差に、戸惑い。 同時に、その中に変わらぬ彼女を見てしまう。 たまらなく厄介だった。 夕方の通りは人が多く、その中を歩く僕に注意を留める者はいなかった。 人ごみにまぎれるのは得意だ。 温厚な顔をして歩いている僕を警戒する人間はいない。 今こうして歩いていても、僕はただの一人の黒曜第一中の生徒でしかない。 だから、向かいから歩いてくる彼女たちも、当然僕に注意を向けることは無かった。 学校帰りの三人組。和気藹々…というには少々とげが見えるが、ごく普通のありふれた中学生だ。 隣にいるのは、確かランキング上位に名前のあった二人。 山本武に、獄寺隼人。 この二人も、三日後には僕らの獲物だ。 笑いあっていられる今の幸せを、その時になって思うだろう。 くふふ、と。笑みがこぼれたが、他人から見れば単なる思い出し笑いの姿を気に留める者もいなかった。 こちらに向かって歩いてくる彼女を、気付かれない程度にじっと観察した。 以前は真っ黒だった髪は、今は薄い茶色。 染めた様子は無いから、純粋な日本人ではないのかもしれない。 背中にかかる長さのそれを、首元で一つに束ねている。動くのに支障は無さそうだった。 彼女らしい…と思ったが、今の彼女の「らしさ」が昔と同じとは限らない。 ただ、そんなところは変わらない。 くだらないことなのに、心に留めた。 身長は隣の銀髪と同じくらい。女性にしては少しばかり高めだろうか。 表情は固く、薄い唇からは淡々と言葉が綴られていた。 彼女の隣を通り過ぎる。 背で揺れる髪が目を引いた。 けれど、それだけ。 通り過ぎた三人はまっすぐ歩いて雑踏に紛れていく。 それが当然で、当たり前すぎて、気が狂いそうになる。 「くっ……」 零れた笑みは、何に対してか。 寄せられた眉間は、どういう意味か。 新しい体は、己でありながら以前の僕を笑う。 「好きだ」と言ったこともあった。 「嫌いだ」と言ったこともあった。 殺したこともあった。 殺されたこともあった。 僕がいつの時も彼女に欲したのは、ただ一つ。 それがどんな種類のものであれ、僕に対する「強い感情」 「愛してる」がもらえないなら、いっそ憎まれたかった。 「殺してやる」と言われれば、彼女を僕への殺意で満たせることに喜びを感じた。 一番嫌いなのは、「別にどうでもいい」という気持ち。 いてもいなくても変わらない存在になるくらいなら、いっそ消してしまいたかった。 馴れ合いは、ごめんだ。 今度はアナタは、どんな感情を僕にくれるのか。 「楽しみに、していますよ」 背の向こうにある後姿に、誰にも聞こえないように呟いた。 ++++++++++++++++++++++++++++ ありがちネタですいません。 骸様大好きです地の果てまで追っかけたい。 ツナより俄然書きやすかったです。 単純なハッピーの方が難しい。 こっちも10題の連載にしようか迷い中。 同時進行したらどっちかが仕上がらない気が。 ’06.1.19.up |