あの日の君へ












ボンッ!


微かな違和感の後、目に映るのは白い煙幕。
もうもうと立ち込める煙が収まれば、大抵まず目に入るのは若きボンゴレ10代目。
もはや慣れきってしまった、10年前への召喚。


「ああっ…もう、また!」
「会うなりそれはどうかと思いますよ、若きボンゴレ」


その言葉が10年前の俺に対してのものにしても、さすがに面と向かって言われるのはどうかと思う。
10年前の幼い頃とはいえ、俺自身であることに違いは無いのだから。


俺の言葉に慌てて謝罪する若きボンゴレ。
別に本気で傷ついてるわけじゃない。
ただ、相手のことを考えないと、後々大変になりますよとまだ若きボンゴレへの忠告。
もっとも、彼は10年経った今でもお人好し加減が抜けていないから、心配は無いのだけど。




そんなやり取りをしつつ、視線を彷徨わせる。
右無し、左無し。

「ランボ?」

後ろを振り向けば、いた。




若きさんは、今日も照れたような幼い笑みを浮かべて手を振ってくれた。
それに俺もにへらと返す。
10年前のさんは、今のさんとはまた違った魅力がある。可愛い。
今のさんはすっかり大人の女性で、甘さの中に鋭さがある、薔薇のような一人前の女マフィアだけど。
10年前はまだ、普通の中学生だ。
まだ幼さの抜けきらない頬だとか。
まだ全く染めていない茶色かかった黒髪だとか。
成長しきっていない体型も愛らしい。


この時よりしばらく経った頃から、さんは俺の憧れだった。
いつも俺の面倒を見てくれた彼女は、俺の初恋だったのかもしれない。
優しいお姉さんへの憧れが初恋へと発展するのはよくあることだ。



今の俺は15歳。さんは24歳。
恋人に、なってなれないことはない年の差だけど、5歳の頃から俺を知っているとなると、少々問題は違ってくるらしい。

「鼻水たらして「ガハハハ」って笑ってたランボを、今更…ねぇ?」

俺の彼女に目の敵にされる度、困ったような、それでも堪えきれないような笑いをして、頭を撫でてくれる。
よくしてもらえるのは嬉しいけれど、子供扱いは少々複雑で。
俺ももう、大人の男ですよって言ったら爆笑された。



さんには、恋人がいる。
俺にも彼女はいる。

ただそれでも、決して離れていくわけでない彼女への気持ちが完全に冷め切ったわけではなくて。





こうして10年前にくれば、ほら。俺とさんは目線が一緒。
同じくらいの年の彼女に会える。今ばかりは子供扱いされずに済む。
これは、ボヴィーノの至宝10年バズーカを持っていたゆえの幸せ。
馬鹿な10年前の俺を、ちょっと誉めたくなる瞬間。



「お久しぶりです、若きさん」



可愛い顔で笑ってくれるさんの耳元で囁けば、それだけでもう真っ赤。
可愛い可愛い、若きさん。






「何してやがる、阿呆牛!」
「ぎゃふん!」

…と、たった5分の至福さえ邪魔される。無粋加減は今も昔も変わらない。
若き獄寺さんのまだ短い足は、見事に俺の背中をクリーンヒット。
短いくせに威力は抜群。


「ちょっと、獄寺!大きくてもランボはランボなんだから」
「そーだ。所詮それはあの阿呆牛だ」
「ハハハ、見事に食い違ってんぞお前らー」


当たり前に交わされる、友達同士の会話。
何年経とうと入り込めない、俺は所詮子供。










同じ年に生まれていたら、アナタは俺を見てくれましたか…?








+++++++++++++++++++++++++++++

  なんとなくランボ。
  短かったしSSに入れようかと思ったけど、
  名前変換しなきゃなのでちゃんとページに(そんな基準)

                            ’06.2.4.up


BACK