故事成語

疑心暗鬼
斧(おの)をなくした者がいました。「となりの息子がどうもあやしいぞ。」と疑っていました。最近、となりの息子の歩く様子はあきらかに不自然なのです。出会ったときの視線も今までと違うし顔色もおかしい。話していても不自然な感じがするし、会話もあっさりとしていて話題も単調になっている。そう思ってみると日常の動作や態度がすべて怪しいのです。何か隠しごとをしているのは間違いありません。

ところがある日、近くの谷間で斧を見つけました。よくよく考えてみると、自分がそこに置き忘れていたのでした。斧を見つけた帰り道に、となりの息子と会って話をしてみても全くあやしげな様子は感じられませんでした。そして、それ以降もの様子に不自然な感じは全くありませんでした。
■疑いの心をもって見ると、あやしくないものまであやしくみえること。

<例> 男はだまされ続けてきたので、すっかり疑心暗鬼になっていた。
●原文の中には「疑心暗鬼」という言葉はでてきません。宋の林希逸(りんきいつ)の列士の注釈の中で、「諺(ことわざ)に曰く、疑心暗鬼なり」として、この話が紹介されています。暗鬼とは「暗闇の中にいるかもしれない鬼」で、ありもしないものを怖がるという意味です。