虎の威を借る狐
楚の宣王は、戦国時代の七雄として勢力を伸ばしていました。しかし、実質的な権力を握っていたのは、宣王の群臣のひとりである昭奚恤(しょうけいじゅ)でした。ある日、各国の使いたちが集まった場で宣王が「他国では私よりも昭奚恤を恐れているというが、実際はどうなのか」と尋ねました。誰もが気をつかい、正直な実情を答えることができませんでした。
そのとき魏の国から来ていた江乙(こういつ)がとっさに答えました。「虎は、ご存じのように百獣を求めて食べてしまいます。あるとき、捕まえたキツネを食べようとしたところ、捕まったキツネが『俺を食べてはいけない。神様が私を百獣の長だとお決めになったのだ。うそだと思うなら私の後ろをついてきなさい。』と言いました。言われたとおり、虎がキツネの後ろから歩いていくと、確かに獣たちはみんな逃げてしまいます。虎は、獣たちが自分を怖がって逃げているということがわからず、キツネの話を信用したという話がございます。宣王が治めている領土の広さといい、軍隊の力といい、他の国の誰も及びません。宣王が後ろにいて、それらを昭奚恤に託(たく)しているので、他の国々は昭奚恤を恐れているのでしょう。」
それを聞いた宣王は、納得したのでした。
■ 有力者の権力をかさにきて威張ること。
<例> 彼の言動をみていると、結局は虎の威を借る狐のようなものだね。