虎を描きて狗に類す
馬援(ばえん)はいつも「何事も一生懸命でなければ身につかない」と考えていました。あるとき、自分の兄の息子が、遊び人たちと遊びまわり、「僕は遊んでいるのではない。彼らから義理人情を学んでいるのだ」と言っているのを伝え聞いて、忠告の手紙を送りました。
「義理人情の世界に生きる杜季良という人物がいます。彼は、義を大切にする立派な豪傑です。そして、彼を慕って命を捧げても惜しくないという人物はたくさんいます。その志はすばらしいことだ。ただし、杜季良から学ぼうとしながら肝心なことが身につかずに、結局うわべだけの義理人情を知っただけでどうしようもない軽薄者となってしまう者もいると聞きます。絵にたとえると、勇猛な虎の姿を書こうと思ったがうまくゆかず、かえって弱々しい犬のようになってしまったようなものです。形だけ理想を求めていても、勘違いしていては何も身につかない。」
■ 結果が目的と食い違うこと。優れた人物に学ぼうとしたがうまくゆかず、かえってつまらない人間になること。
<例> 彼女は確かに頑張っているが、あれでは虎を描きて狗に類すといわざるを得ない。