故事成語

逆鱗に触れる
 竜は鱗(うろこ)のある生き物の長です。闇の中にもいるし光の中にもいる。細くもなるし太くもなる。短くもなり長くもなり、春分には天に登り、秋分には淵に潜(ひそ)む。自由自在な竜はめったに人の目の前に現れることはありません。
 竜は、頭は駱駝(らくだ)に似ていて、角(つの)は鹿に似ていて、目は兎(うさぎ)に似ていて、耳は牛に似ていて、項(うなじ)は蛇(へび)に似ていて、腹は蛤(はまぐり)に似ていて、鱗(うろこ)は鯉(こい)に似ていて、爪は鷹(たか)に似ていて、掌(てのひら)は虎に似ています。尊敬の念を込めて竜を描くときには、口は吼(ほ)えるように開き、目は射るように見開き、首は細く頭を掲げ、身は緩やかに長く描くとよい、とされています。
 竜はとてもおとなしくて人と仲良しです。機嫌のいいときにはまたがって大空を飛ぶこともできます。ただ、竜ののどもとには逆さに生えた直径一尺ほどのうろこがあり、もし人がそれに触れてしまったなら必ず殺されてしまうのです。

 竜はとても強大な力を持っていることから君主のことを竜にたとえることがあります。君主の顔のことを敬意を表して「竜顔」というのもその例です。どんな君主にも竜と同じように触れられたくないことがあるものです。君主に忠告するときには逆鱗に触れないようにしなければいけません。間違って気に入らないことを言ってしまえば殺されることもあるので注意しなければいけません。 
■目上の人にきつく怒られること。

<例> あのひと言が、社長の逆鱗に触れたようだ。
●竜を描くときには、口は吼(ほ)えるように開き、目は射るように見開き、首は細く頭を掲げ、身は緩やかに長く描くのがよい、とされています。