故事成語

呉越同舟
 紀元前5世紀といいますから、今からざっと2500年ほど前の話です。呉という国と越という国は歴史に名を残すほどの激しい戦いを繰り返していました。

 軍隊をうまく動かすことができる人は、たとえていうならば、常山(じょうざん)に住む伝説の大蛇「卒然」のようなものです。卒然はとても強くて素早い動きをします。頭を撃とうとすると目にもとまらぬ速さで強じんな尾でやられてしまうし、尾から撃とうとすればたちまち頭が来てガブリとやられてしまう。かといって体から撃とうとすれば頭と尾が一度にかかってくるのです。結局どこを攻めてもやられてしまいどうすることもできないのです。軍隊はこの卒然のように配置して動かすことが大切なのです。
 呉の人越の人は長年の戦いにより、お互いに憎しみあっています。しかし、たまたま同じ舟に乗り合わせて川を渡っているときに、大風にでも遭いお互いが危機になったときにはまるで左右の手のように協力し合って救いあうことでしょう。
 戦うときにたくさんの馬をつないで車輪を土に埋めて陣地をしっかり固めても、十分戦えるとはいえないのです。軍の中には勇ましい者もいれば臆病な者もいます。臆病な者が勇ましく戦えるようにするためには軍隊の動かし方を工夫しなければなりません。強い者にも弱い者にも同じように十分な働きをさせるためには地形を利用するのがよいでしょう。地形をうまく利用して兵士たちが戦うほかに道がないように配置してから軍隊をうまく動かせば、まるで強い者が手をつないでいるように全体がひとつとなって戦うことができるでしょう。
■仲がよくない者たちが、同じ場所・境遇にいること

<例> いざというときには、呉越同舟で乗り切らねばならない。