「皮」の効用、芯から皮へ
2002.11.16 東山裕一
最近ではほとんど、リンゴや芋の皮はむいて中身だけを食べます。 子供の頃よくやったリンゴの丸かじりの光景は見られなくなりました。 その頃は、皮のあたりに甘味や栄養がたまっていて皮ごと食べた方が体にいいと聞かされたものです。 最近そうしないのは、お上品になってきたのかもしれませんが、それよりも農薬や光沢材など体に良くないものも皮周辺に残っているという理由もあるのでしょう。
「皮」とは、ある物体が外界と接する境界部のことです。 そこは、外界に接しているがゆえに内部と違った特殊性、ある種の"緊張感"があります。 地面は地球の皮、海岸線は大陸や島の皮と考えられます。 もっと広くとらえれば、学生時代の皮は入学式や卒業式、人生の皮は誕生と死亡でドラマがあります。
地球上の生き物は、地球の皮に住んでいるし、大きな都市は内陸より圧倒的に海岸部にあります。 たとえば中国文明は長い歴史の中で回りに広がって中国大陸の海岸線、またわずかな海を隔てて日本、琉球、台湾で熟成されてきたとも考えられます。 脳の働きでも記憶、思考をしているのは皮質の部分であって、知能レベルは脳の容積ではなく、しわの多さ、すなわち表面積によって決まるといわれています。
皮の反対は、「芯」、むずかしく言えば「核」です。 一般的には、皮(周辺部)より核(中心部)の方が重要だということになっています。 「中核的役割」、「核心をつく」などの言葉はその典型です。 でも、時間を経るとともに、重点は芯よりも皮の方に移行するのは自然現象、社会現象のように思えます。 上記の例だけでなく、都市のドーナツ現象、産業の空洞化など、思い当たることはたくさんあります。
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