「恐怖のBBS―恭夜の場合―」 (感謝企画)
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タイトル
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別に相談したところで解決する事など無いのだが、少々遊び半分と言うところがあった。この場で答えを探そうという気はさらさらなく、他の人間なら一体どういう風に答えるだろうと思っただけだった。何度も言うが、このことを深刻に考えている訳でも、誰かの助言を貰いたい等と男として情けない事を言うつもりもない。ただ、どういう答えが返ってくるか、少々気になった。
それだけだ。
本当にそれだけだと恭夜は思って、パソコンに向かうとついこの間見つけたサイトを眺めた。偶然見つけたサイトで、しかし、どうも色々な精神分析の資格を持っているような管理人が運営するＨＰだった。しかもそれほどカウンターが廻っていないため、僻地にあるのだろう。逆にこういうところの方が書き込みしやすい。
タイトル「どうにかして欲しいんです」
ＨＮ ナイト
メール －
ＨＰ －
相談事
初めて相談します。
実は困っています。恥ずかしい事ですが、恋人の性欲が貪欲すぎてついていけません。相手が嫌いなわけではないのですが、毎晩のお勤めに疲れています。どうにかして回数を減らして貰いたいのですが、分かって貰えません。こういう恋人にどういえば良いのでしょう？下手に言うと、余計に恋人はしつこくなります。上手くあしらえる方法はありますか？それと、こういう恋人の心理というのは一体何でしょう。
宜しくお願いします。
はは、書いちゃったよ……
ドキドキしながらも恭夜は、悪いことをしている訳でもないのに、すぐ他のサイトに飛んだ。あんな風に書き込んだのは初めてだったのだ。管理人はすぐにレスをくれないだろうが、二、三日したらまた見に行こうと考えた。確実にレスされている状態で見たかったのだろう。
変なことかいちまったなあ～と、思いながらもゲームサイトで恭夜は遊びだした。
数日後、恭夜は例の書き込みをしたサイトに再度訪れた。すると管理人からのレスが入っており、他の全く知らない人のレスも入っていた。
＞ナイトさん初めまして 管理人・ドクター
回数が多いという悩みは初めて聞きました。ですが、これは別に不思議ではありません。毎晩、いいではありませんか。セックスレスになるよりは健康的だと思いますがいかがでしょうか？世の中には求めても返して貰えない人達も沢山いらっしゃいます。それを考えるとナイトさんは幸せなのでしょう。もしそれが負担になるのであれば、きちんと話し合った上で回数を決められると誤解も無くていいかもしれません。この場合、言葉をにごしたり、理由をはっきり言わずに、ただ嫌だとか、めんどくさい等という言葉は厳禁です。相手はナイトさんを愛しているから、行為によってその気持を表そうとしているだけだと思われます。
相手に自分の気持ちを伝え、愛していることを分からせた上で話し合いを行われることが大切です。誤解を生むと、折角の仲がこじれることも多いのがこういう問題ですので、相手の気持ちを傷つけないように最新の注意を払いながら話し合いましょう。
＞いいなあお前 通りすがりのＬ
羨ましいこと書いてるじゃないか。あんた、実はそれ、羨ましいだろう～って自慢してるのか？こういう相談するなよ。俺なんか、やりたくても制限あってできねえんだよ。毎日やりてーよ……！実は羨ましいＬでした。
＞制限ですか？ 管理人・ドクター
初めましてLさん。制限があるということは糖尿でも患っていらっしゃるのでしょうか？それとも心筋梗塞、脳溢血など過去に患ったとか。時折、随分お年を召した方にもかかわらず元気な方はいらっしゃいますが、もしそうであるなら、ご自身の体力を過信なさらないよう気を付けてください。腹上死は笑い事では済みませんよ。
＞そんなじーさんじゃねえよ（笑） 通りすがりのＬ
ちげえよ。そんなじじいじゃねえよ。色々事情ってのがあるんだって。俺はただ羨ましかったからカキコしただけだよ。ったくも～真面目に答えて貰う方が申し訳ないよ。適当に流して置いてくれっての（＾＾；）
変な人が自分の書き込みに横レス入れてるんだな……まあ良いけど……。恭夜は半分笑いながらも、話し合いが通じる相手ではないことを書いておこうと思った。
＞さっそくありがとうございます ナイト
管理人さん。早速レスありがとうございます。でも、相手が話し合いに応じてくれない場合はどうしたら良いんでしょうか？誤解は避けたいと思うのですが、どう話しても多分、誤解してしまいそうな気がするんです。実は、勝手に脳内変換する相手で、こちらがまともに話していても、自分の都合の良いようにしか聞き取ってくれないんです。それが一番困っているんですが……。
頭はいい人です。でもかなりの変人ですね。
＞通りすがりのＬさんへ
羨ましいですか？毎日は流石に吐きそうになりますよ（笑）これはこれで悩みなんですよねえ……（Ｔ-Ｔ）
そうしてリロードをすると、また更に書き込みがされていた。
……
なんだこりゃああ……
みんなもしかして俺の話を餌に愉しんでるのか？それが分かるような盛り上がりになってきたのだ。
＞一緒にいても…… きらりん
私なんか仕事柄のせいか、好きな相手と一日一緒に行動するぞ。だが、セックスは週末だけ。これも腹立たしいがどう思う？毎日毎時間毎秒一緒にいるのにだぞ。ちっとも面白くない……
＞それは貴方の事情でしょう？ トロ
きらりんさんへ
今ナイトさんの相談には関係ないでしょう？カキコを見る限りナイトさんはとても真剣に悩んでるんです。そんなカキコは失礼だと思いますが……。あ、気分を悪くされたらごめんなさい。もし管理人さんに相談されるのなら、ナイトさんの質問の所に書くのはおかしいと思っただけなんです。
＞済みません きらりん
申し訳ない。確かにそうだった。今度からそうします。不都合なら削除ねがいます。
＞いえいえ 管理人・ドクター
こういう話題は沢山の人間の意見があると、良いので、どんどん書いてくださいね。
きらりんさんへ
毎日一緒であっても、こちらからのアプローチ次第では何とかなります。貴方の所も良く話し合って、平日であっても愛情の確認をしたいと提案されてはどうでしょう？ストレスは溜めない方がいいんですよ。
トロさんへ
色々書いてみんなで話し合っていきましょう。余り固いことを私は言いたくないんですよ。
なんか……
もしかして俺の書き込みの所為でみんな盛り上がってるのか？いや……別にそんなに真剣に悩んで貰わなくても……。と、恭夜が思っていたのだが、どうも皆、愉しんでレスしているのだ。だがまあ、放っておけばいいと楽観的に思っていた恭夜であったが、また数日後サイトを覗いてみて仰け反ってしまった。
自分の項目の所がどんどん下に長くなっているのだ。要するにみんなが恭夜の書いたことで盛り上がっていると言える。
＞やりたいときは 通りすがりのＬ
やったらいいんじゃないのか？きらりんさんの押し一つで何とかなると思うぞ。別に週末って決めなくても……。あんたが決めたのか？
＞私が決めたわけでは…… きらりん
相手が決めたことだ。最初は私もそれで良いとは思ったんだが、どうも最近はそれが不満でね。
＞ストレスというのは 管理人・ドクター
ストレスというのは不満からはじまり、それが蓄積されて自立神経を狂わせるもので、一度狂うとなかなか元に戻らないやっかいな性質を持っているんです。ですので、適度なストレスも必要ですが、それが過度にならないように気を付けてください。
＞自律神経って トロ
狂うとどうなるんですか？教えてください。
＞酷くなると無気力 管理人・ドクター
吐き気や、目眩。体温の上昇、逆に下降。不眠症に体内時計異常。そんなものが上げられます。こうなるとなかなか元に戻しにくい為、普段から気を付けてくださいね。それともトロさんには心配なことがあるのでしょうか？
＞いえ トロ
今のところそれはないです。ご心配かけちゃいました？済みません。
恭夜は書き込みから目を逸らせて肩を落とした。
これはこれでなんか嬉しくないな……
どうする？
俺の分、消す？
だけど俺の記事が親記事だから、消すと下のレス全部消えるんだよな……
う～ん……
どうしようか。
とはいえ、ここで消すとまた何やら色々書かれそうなので、自分の事は解決したとでも書いておけばとまるのかもしれないと恭夜は思った。
＞お久しぶりです ナイト
沢山の意見を聞かせていただいて勉強になりました。自分の悩みは解決しましたので報告しておきます。
これで良いよな……
書かなきゃ良かったよなあ……
パソコンを閉じて恭夜はため息をついた。解決などしていない。簡単にするものでないことを恭夜自身は知っている。しかもジャックに話したところでいくら真剣であっても脳内変換の激しい男とは何処までいっても平行線だ。、
これを簡単にどうにかできるとは流石に恭夜も考えなかった。ただこんな男がいると言うことを赤の他人であるからこそ知って貰いたかったのかもしれない。
でも解決したことにして置いた方がいいか……。
色々考えた末、本当は親記事である自分の書き込みを消したくは無かったが。これほどの盛り上がりを見せるとは思わなかった。
これで忘れてしまおう……
今度からこんな話題をふることはしないで置こうと恭夜は心に誓いながら、そのサイトから他に飛んだ。
また数日経ち、何となく気になった恭夜は例のサイトに行ってみた。するとまた自分の書き込みの下にレスが増え、ものすごいことになっていた。
……な……
なああああっ！
＞見た事ある 通りすがりのＬ
ナイトさんのいうタイプ見た事あるような気がするのは間違いかな……脳内変換。いるんだ俺の知ってる職場に……世の中広いよなあ。
＞あ、自分も トロ
あります～！！じゃあ結構沢山の人が脳内変換してるんですね。びっくりしました。僕の知ってるタイプも大変ですよ。こうだって決めたら一番自分が正しいんですよその人。
＞見たこと無い きらりん
そんな傲慢な男がいるなんてな、見てみたいような怖いような気がするぞ。
＞すごいですね 管理人・ドクター
そんな人がいたら見てみたいですね。私は見たことありません。もしかすると思考する速度が人より速いためにそんな風にみなさまが思われるのかもしれないですね。頭のいい人で良くあることです。
＞俺の知ってる奴は 通りすがりのＬ
頭は良いんだろうけど、脳の回路が何処か常人とは違うところと繋がっているような気がするな。話し通じねえもん。
＞もしかすると トロ
同じ人のこと指してます？通りすがりのＬさん……僕が知っている人とすごく似てるんですけど……。
＞他人のそら似 きらりん
人間は沢山いるから、似てるのもいるんだろう。
＞見たことはありませんが 管理人・ドクター
私はそれに該当するような人のことをある人から伺ったことはあります。
……俺の……
気のせいかもしれないけど……
みんなジャックを指しているような気がするんだけどなあ……
もしかして……
ジャックって有名人？
つうか……
なんか……ここでしゃべってんのって身内？
……はははは
ま～さ～か……
恭夜は恐ろしくなってそこでサイトから脱出した。そしてパソコンを落とそうとするとジャックがやってきた。
「キョウ……」
ジャックの表情は渋い顔をしている。
「……え……あ、何だよ……」
回線を切ろうとした手をジャックが止めた。
「とあるサイトに変な質問をかかなかったか？ん？」
ぎく……
「な……なあんのことかなあ……」
はははと笑っていると、ジャックがすかさず履歴を見て、先程まで恭夜が見ていたサイトを開いた。
ひーー……
ばれてる～
なんで～
パソコンの画面を見られずに怯えているとジャックが言った。
「よく見ろ。こういう奴らとは話をするな」
チラリと見るとジャックが最後に書き込みをしていた。
＞私のことか？ ジャック・ライアン
私に何か言いたいことがあるなら、直接言ってもらおうか。メアドは記載しておく。
その後レスはされていなかった。
「こういう、くだらないことを書くんじゃない」
ムッとしたようなジャックを見ながら、恭夜は本気で背筋を凍らした。ジャックにこっそりとか、黙って……というのは通じないのだろう。
それを思い知った。
翌日そのサイトは閉鎖していた。
恭夜がその日いつにもまして寝不足な目で朝食を食べていたのはいうまでもない。
―完―
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タイトル
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くだらないショートですみません。ほんのお気持ちだけというところで許してやってくださいね。あはは。もう……馬鹿丸出しの恭夜でした。そして一体身内とは誰でしょう。えへへへ。まあHNから大体推測できますね。いやはや。こちらオープンになった時点でテスト(おい)選択問題としてあげますので、合った方はまた違う恐怖のＢＢＳを読めるというところでいかがでしょうか？ 嘘嘘(笑) なお、こちらの感想も掲示板やメールでいただけるととてもありがたいです。これからもどうぞ当サイトを可愛がってやってくださいね！ |