Angel Sugar

「隣の事情スーパー1(リーチ視点)」 (200万ヒットキリ番リクエスト)

タイトル
 報告書を山のようにためた為、リーチは自分の課ではなく、数階上にある個室ばかりあるフロアの一室に昼過ぎから籠もった。いつものことであるが、当然リーチは報告書の作成をトシに押しつけ手伝うことはない。トシといえば首が回らないほどためて、リーチが痺れを切らすのを待っていたようだが、当然、駆け引きに負けたのはトシの方だった。
「どうして僕がやらなきゃならないんだよ。次はリーチがしてくれるって約束したよね?」
 ブツブツと、それでもトシは手を動かし、報告書を一枚、また一枚と仕上げていく。リーチの方はバックの花畑でゴロゴロと惰眠を貪っていた。
 リーチは元々こういう机にへばりついて何かをすることが苦手なのだ。無理矢理押しつけられたとしても絶対にしない。
『なあ、まだ終わらないのかよ~』
 ごろごろしながら待つことに疲れたリーチはトシに声を掛けた。だが、トシはよほど怒っているのか、返事はなかった。
『悪いと思ってるからさあ、今晩のプライベートはお前に譲るって。それでいいだろ?』
 名執は今晩、緊急の会議が夕方から入っていて、どうにも会えないのだ。誰もいない名執のうちに行くより、ここでトシの機嫌を取って置いた方がいいとリーチは考えた。
「え、ほんと?嘘じゃないよね?」
 急にトシは声を弾ませてそう言う。
『いいよ。トシにはいつも報告書をやってもらってるから、お詫びの印』
「……え~本当かなあ」
 信用なら無いという声でトシはリーチに聞いてきた。そう思っても仕方のないことをトシにはしてきたリーチであったから、疑われるのも当然だろう。だが本日は本気だった。
 どうせ名執はいない。これが一番の理由だ。トシにはこのことは黙っておくつもりだった。ばらせば売った恩の価値が下がるからだ。
『マジだって。疑ってんのか?』
「そ、そうじゃないけど。だってリーチっていっつもさあ……」
『あーそう。じゃあ譲らねえよ』
 ムッとしてリーチが言うとトシが慌てて謝ってきた。
「あ、ごめん。本気なんだよね。うん。ありがとう。譲ってもらうよ。その代わり、後であれは嘘だったとか無しだからね」
『分かってるって』
 今晩のプライベートを譲って貰えることになったトシは、俄然張り切って報告書を書き始めた。単純と言えば単純だ。これがトシの良いところだろうと、思っていると壁を挟んで隣の部屋からなにやら怪しげな声が聞こえてきた。

あ……馬鹿、何やってるんだよっ!あっ……よせって。あ……っ!

『……なあ、トシ。なんかエッチな声が聞こえないか?』
 耳をそばだててリーチは言った。

あ……あ……あっ!

「え……?」
 トシはシャーペンを机に転がして顔を上げる。次に頬が真っ赤になった。だが、何も言わずにシャーペンを再び手に取って報告書を書き始める。
『おい。聞こえてんだろ?』
『聞こえたけど、だからってなに?隣で……その……。べ、別に放っておけばすぐ済むよ』
 声に出さずに心の中でトシはリーチに言った。
『あの声さあ、聞き覚えないか?』
『……ある。けど……苦情を言えないだろ』
 手を震わせてトシは文字を書く。震えているせいか、文字が乱れてそのたびに消しゴムで消しているのだが、進まないようだった。
『ていうか、あいつら、ここまでわざわざ出張してきてエッチするかあ?』
 呆れてものがいえないとはこのことだった。声はうわずっていたが、どう聞いても恭夜の声なのだ。となると相手はあのジャックしか考えられない。
『……恭夜さんは週の数日はこっちにきてるだろ。ついてきたのかもしれないよ』
 もごもごとトシは口ごもりながら言った。
『ついてくるのは勝手だけどさ、警視庁でセックスするってどういう了見だよ。俺に喧嘩でも売ってんのか?』
 なんだか腹立たしい気にリーチはなった。なにより、この部屋は数名程で打ち合わせをする場合に使う狭い部屋だ。だからソファーも長細い机に対して四つしかない。それがこのフロアにいくつもあるのだが、扉の所に使用中というプレートを表示できるようになっていて、後から来た二人がそれを見ていない筈がない。だから隣に人がいることをしっていて、行為に及んでいるのだから、隣の人間に喧嘩を売っているとしか考えられない。
『別にリーチに喧嘩なんか売ってないって。放って置いたら良いんだよ。それより部屋を代わった方が良いのかもね。僕もこんな状態で報告書なんてできないよ』
 ため息をついてトシは机に広げた報告書を重ねて立ち上がったが、リーチはトシに後退するように言った。
 リーチは売られた喧嘩は買うのが主義だった。
『ねえ、壁でも叩くの?』
 トシは何を考えているのか分からないが、リーチにそんなことを言った。
『あのなあ。壁叩いてあいつらを喜ばせる気か?もっと根本的な解決を俺はする気だ』
 言って、リーチは携帯を取り出すと名執を呼び出した。
『……喜ぶの?』
「利一ですけど、あ、ユキ?お前、今どこにいるんだよ。え、うちにいるって?会議はどうしたんだよ。昼間は休憩だって?分かった。今から警視庁に来い。四階だよ。お前なら顔パスだろ。7号室にいるから」 
 自分の言いたいことだけを小声で一気に話してリーチは携帯を切った。長々話していると名執は来るのを躊躇うだろうと踏んだからだ。
『……雪久さんを呼び出して何をする気なんだよ……』
『言っただろ?俺は売られた喧嘩は買うってな』
『はあ?買うってなんだよ?』
『俺達が上って事を証明してやるぜ』
 真顔でリーチは言ったが、トシは目を丸くしたまま、信じられないと小さな声で言った。だが、トシは間違っている。信じられないのは奴らでリーチではない。
『……僕、知らないからね。でも、今晩のプライベートは僕がもらうんだから。分かってる?それに事件があったらすぐに出てよ。ていうか、ばれないようにしてよ』
『わーってるって。さっさとスリープしろよっ!』
 トシはリーチのその言葉に速攻スリープした。
 さて……
 腕組みをしてリーチはソファーにどっかりと座り込んだが、相変わらず隣から聞こえてくる、聞きたくもない喘ぎ声を耳にしていた。未だに恭夜が受けであることが信じられないリーチであったが、相手があのジャックであるなら仕方ないのだろう。二人を並べてどちらが攻めで、どちらが受けだと聞かれたら、迷いもせずにジャックが攻めで恭夜が受けだと答えるに違いない。
 ジャックは妙なオーラを纏っていて、道を歩けば人の波が自然と左右に割れる。どれだけ人で溢れていても、あの妙な威圧感に人は知らずに道を譲るのだ。モーゼの十戒の現代版が間近で見られるのはジャックだけだった。
 あの人を小馬鹿にしているような視線に、地球は自分中心で回っていると本気で信じているような態度。あれほどアクの強い男が受けであるなど、何処をどう見れば思えるのだ。
 とはいえ……
 あいつらって、見境無しか?
 相変わらず聞こえてくる喘ぎ声にウンザリしながらも、益々やる気になっているリーチの元に名執が扉をそっとあけて入ってきた。名執が名前を呼ぶ前に、「名前は呼ぶな。小さな声で話せ」と、書いた紙を見せて黙らせる。
「どうしたんですか?……あ……」
 紙に書いたとおりに小さな声で名執は言ったが、すぐに隣から聞こえる喘ぎに気がついて、絵画の掛かっている壁に視線を移した。
「喧嘩を売られてるんだ」
「は?」
 赤らめた顔がこちらを向くが、きょとんとしていて、リーチが言ったことが分からなかったようだった。しかし、リーチは有無を言わさず名執をソファーに押し倒す。
「だから協力しろ」
「あの……ですから……なにを?」
 名執の上着を脱がせようとした手を掴んで困惑した表情をリーチに見せた。
「お前だって、隣から聞こえてるだろ?あれな、恭夜だぜ。信じられないだろ。やつらここまで出張ってきてわざわざセックスしてるんだぜ。完全に俺に喧嘩を売ってるよな。だから、お前も対抗しろ」
 耳元で囁き、名執が掴んでいる手をやんわりと解いて、リーチは上着を剥ぎ取った。だが、名執はまだ状況がのめないのか、薄茶の瞳をじっとこちらに向けたまま、硬直している。
「俺の名前は呼ぶなよ。その代わり、お前の艶っぽい喘ぎを思いきり聞かせてやれ」
 名執の上に馬乗りになったまま、今度はシャツを剥ぎ取り、ベルトを引き抜いた。
「あの。良く分からないのですが……」
「分からなくても良いよ。要するに、エッチしようって言ってるんだ」
「でも、ここは……ん……」
 名執はどれだけ最初逆らっていようと、リーチが唇を吸えば素直に従うのだ。正気に戻ればまた怒り出すだろうが、名執が怒ったとしてもリーチはちっとも怖くない。それよりも目の前に突きつけられた挑戦状を受けるのが先決だった。
  
あっ……馬鹿っ!よせよっ!そんなの……できねえっ!あーーっ!

 ち……
 先にはじめてる方が有利か。
 心の中で舌打ちしながらも、リーチは一気に名執の気持ちを高ぶらせるために、ズボンの中に手を突っ込んで、まだ熱を保っていない雄を掴んだ。
「……っあ!」
 ギュッと力を込めると、名執の身体が小さく震える。眉間に寄った皺が快感を確かに伝えていることをリーチに知らせた。
「……いきなり……嫌ですっ……」
 グイグイと擦りあげると、名執は目に涙をにじませて訴える。だが、その言葉が本心でないことをリーチは知っていた。理性がまだあるうちは、こんな風に名執は言うのだ。いつもは可愛いなあと思うが、今日は違う。とにかく名執の気持ちを高揚させるためにはここをまず攻めなければならないだろう。リーチ自身の快感は後回しだった。
「やっ……やあっ!そんなっ……やっ!」
 ひときわ大きな嬌声を上げた名執の声に、隣の二人が反応したのか急に声が聞こえなくなった。ニンマリしながらリーチは名執の尖りを舌で転がしながら、手の平で雄を腹に押しつけて、撫で回した。

や、やめるって言ってるだろっ!

 いきなり恭夜の声がワントーン上がって聞こえた。こちらの声が聞こえてようやく理性が戻ったに違いない。だが、リーチは名執を攻める手を緩めなかった。恭夜がああ言ったところで止まるジャックではないからだ。

ぎゃあああっ!よせっ……よせって~!
 
 ……
 ていうか、何やってんだあいつら?
 五月蠅いセックスだな。
 ふと、どういったセックスをしているのか気になったが、隣に行って見るわけにもいかず、リーチは名執の首筋を舐め上げて、擦りあげていた雄の先を爪で弾いた。
「……ああっ!」
 顎を仰け反らせ、つややかな唇から甘い吐息を吐き出して名執は喘いだ。こうなると隣で何があろうと名執には声など聞こえない。快感に支配された名執の集中力は並ではないのだ。

そ、そんな格好できるかっ!ひーーーっ!

 一体……
 どういう体位を強要されてるんだあいつ……
 フッと顔を上げ、壁を見つめてみるがもちろん透けて見えることはない。
「こっちを見て……」
 グイッと名執の手で頬を挟まれて、顔を戻された。真下には淫らな名執がリーチを求めてキスをねだる。応えるように何度も舌を絡ませると、じっとりと湿った口内が感じられた。
「あ……ああ……もっと触って……」
 腰を押しつけるようにして名執はねだる。もう隣のことなどリーチはどうでも良い。とはいえ、聞こえてくる声は、どう考えてもセックスしているようには思えない言葉ばかりで、そっちのほうが気になった。

誰がお前の言うような台詞っ!言えるかってんだあああっ!ぎゃーーーー!

 ぎゃあとか、わあとか……
 動物の調教じゃねえんだから……
 呆れつつも、恭夜だから仕方ないかと何故か納得してしまうのが不思議だ。あの男が艶っぽい声で喘ぐ姿などリーチには想像がつかない。

いっ……いきなり突っ込むなっ!あーーーっ!

 む……
 入ったな。
 リーチはすかさず、まだ固く窄んだ場所に己の雄を捻り込んだ。一瞬名執の表情が苦痛で歪んだものの、息を何度も吐き出して痛みを逃がし、拒否することはなかった。
「……く……」
食いしばった口元から覗く白い歯に、リーチは見とれた。苦痛に耐えながらも、快感を感じる何とも言えない表情が、リーチの下半身を疼かせるのだ。
「……あ……中で……大きくなった……」
 顔を真っ赤にしながら、それでも瞳を閉じたまま名執は身体の奥で感じる心地よさを目一杯味わっている。
 なんて可愛いんだユキは……
 それに引き替え恭夜は……
 あんなセックスじゃ、俺は萎えるけどなあ……

いてっ……いててててっ……ずりずりやってんじゃねっ……あいてええっ!

 ……
 俺は……
 どっちに同情したらいいんだ?
 とはいえ、ジャックが恭夜に突っ込んだまま、抜いていないことだけはリーチにも分かった。あの男は挿れた時間を競うつもりなのだ。
 負けるか~
 リーチは腰を激しく動かし、名執の快感を煽る。もちろん、向こうが先に達したら勝ちになるのだから、当然名執の雄の根本を掴んでリーチは大きく腰を振った。
「やっ……あっ……あーーっ……駄目っ……そこ……いやっ!」
 顔を左右に振って、名執は何度もそう繰り返したが、リーチは恭夜が達するまで内部に挿れた己の雄を抜くことは絶対にしないと誓っていたのだ。ここで負けたら男がすたる。そこまでリーチは思い詰めていた。

あっ……あっ……あーーっ!や……嫌だっ……ジャックっ!もう……嫌だっ!

 さっさとイけよ。
 粘着質な音を響かせつつもリーチは名執の内部を抉るように突き入れる。名執の方は涙をぽろぽろと落としながらも、喘ぎ、快感に酔いしれるように身体を捩らせていた。
 しかし、さすがに時間が経つと、焦りが出てきて、リーチの額を汗が伝った。
「も……もう……イかせて……お願い……」
 涙で光らせた瞳をこちらに向けて名執は訴えるが、あっちが済んでいないのにこちらが先に終わらせるわけにはいかないのだ。
 もうこれは意地だった。
 快感が過ぎると、ただのピストン運動だ。もう、気持ちいいとか悪いとか、そんなものは感じない。ひたすら突っ込んで腰を動かすだけなのだが、どうしてもリーチは負けたくなかった。ジャックが相手だから余計なのだが、名執は何度も自分の雄を掴んでいるリーチの手を払おうと必死になっている。それをもう片方の手で払いのけ、リーチは励んだ。
「……お願いです……お願いですから……イかせて……っ!」

いい加減、離せ~!
  
 くそ。
 あいつも突っ込んだままだ。
 俺がここで抜くわけにはいかないんだよっ!
 ごめんユキ。
 これは男の意地なんだっ!
 心の中でリーチは叫び、涙ながらに訴えている名執を見ないようにして、腰を動かす。だが、名執を苦しめていることを知ってリーチは心苦しかった。こんな気持ちの良くないセックスをしたところでなんの価値があるのだろう。
 駄目だ……
 俺。
 こいつを苦しめるだけのセックスなんてしたくない。
 リーチが名執の雄から手を離そうとした瞬間。また恭夜の絶叫が聞こえた。

あんたは……遅漏かあああああっ!

 ……ぶ……
 ぶはっ!
 笑い声を押さえるために思わず両手で口元を離したリーチは一気に力が抜けて、名執の身体の奥に己の欲望を溢れさせた。とはいえ、力が抜けて、その勢いで出たという、今まで経験したことのない、空しいセックスだった。
「……貴方は……私を愛しているんですか?」
 何か勘違いした名執が、快感とは違う涙を流している。そんな名執の頬に何度もキスを落としてリーチは許しを請うた。
「ごめん。俺が意地なったから悪いんだよな……。許してくれよ。ガキみたいにちょっと競ってみたかっただけなんだ。ジャックだから俺……負けたくなかったけど、こんな事で競って勝ったとしてもちっとも良くない。俺が悪かった」
 真剣にリーチが言い、組み敷いていた身体を抱きしめると、名執の方からも手が伸ばされた。そうして背を撫でてくる手はとても優しい。名執も分かってくれたのだろう。
「でも、もう二度としませんから。良いですね。今度こんな事をしたら本気で怒りますからね。今回は……許してあげます。気持ちが分からないわけではありませんから……」
 名執もジャックを間接的に知っていたから、リーチの気持ちが理解できたのだろう。とはいえ、未だ会ったことがないのだから、本当の強烈さは知らない。だが、世の中には知らない方が幸せなことも多いから、これで良かったのだ。
「ところでさあ、遅漏って病気ってあるのか?」
「ありますよ。それがどうしたのですか?」
 名執は恭夜の声を聞き逃していた。
「いや。別に……く……くくく」
 また口元を押さえてリーチは笑いを堪えた。
 早漏も嫌だが遅漏も嫌だな。
 そんなことを考えつつ、まだ励んでいる隣を放置して、二人はそっと部屋から抜け出した。

 その晩、約束通りプライベートを貰えたトシであったが、あそこがヒリヒリして、とても幾浦とエッチをしようという気にならなかった。幾浦が問いつめる中、トシは心の中で涙しつつ、結局理由を話せなかったのは言うまでもない。

―完―
タイトル

朋子さまリクエストのエロ対決。対決になっていないというか、お笑いに走ってしまってすみません(大汗)。とはいえ、なんか妙なことを口走っている恭夜ですが、これがジャック視点ならどうなることやらです。続編(笑)ができてしまいましたが楽しんで書きました。素敵なリクエストをありがとうございました~。
なお、こちらの感想を掲示板やメールでいただけるととてもありがたいです。これからもどうぞ当サイトを可愛がってやってくださいね!

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