memo
  2006.2.9 
退院一日目

昨日の夕方に帰宅した、うらら。
震えが止まらず、動くこともできず、そんな…うらら。
大切なひとがお風呂にも入らず、
「もう、うららと寝る…」
とのこと。
抱きしめて眠ってやると、震えも止まる。
わたしは、ホビットさんとふたりでお風呂に入り、他のネコたちにおやすみを言って、ベッドに横たわりました。
眠いのに、あくびは出ても眠れない。
うららは、眠っているのかな…。大切なひとが特に何も言ってこないので、何とか眠りについたのかな…。いつもうららは、夜中に何度となく目を覚ましてふとんから出ては、大切なひとを起こして、また布団にもぐりこむことの繰り返し。それが、今夜は…ありません。
薬を飲ませるために、7時に携帯の目覚ましをセットしておきました。
眠った気がしないまま、朝に。
「うららは?」「ねてる」
夜中に起きることもなく、ちょっと体を動かす程度で、安定して眠っていたようです。薬を飲ませて、ネコ缶を開けると…
(くれるの?ねっ、ねっ?オレに?)
黒ネコあむくんが、ものすごい目で見てきます。
うららも、いい匂いがするのか、頭を少し起こして「ふんふん」しています。少しずつですが、何とかスプーン一杯程度は食べました。
その頃、ホビットさんが起き出しました。
「うーちゃん、まんま食べてるよ♪」
そう言うと、
「もう、元気になった?」
そう、たずねて来ました。
「まだ、しんどいみたい。」
「そーかー」
2歳半の娘が、どれだけ理解しているのは分かりません。でも、口真似でも何でも、うららを気遣う、そんな温かい心が育っているのは、よく分かります。うららのお陰だなぁ。
八時半になって、病院に電話をしました。
「9時ごろ行きます。」
今日は休診日なのですが、うららのおしっこが出なければ、おしっこを抜きに来てくださいと言って下さったので、連れて行くことにしました。
9時だと言っていながら、五分ほど遅れてしまって「申し訳ないなぁ」と、大切なひとと話しながら向かうと、休診日だというのに、他にも患者さんがいました。看護士さんがいないので、ドクターがパタパタと忙しそうでした。
昨晩からの様子を話して、その後、おしっこを抜いてもらったのですが、それが、出るわ出るわ…大きな注射器2本強分。他に、栄養剤と水分を少し注射してもらいました。
「それでは、また明日」
自力でおしっこが出来なければ、貯めておけるはせいぜい一日分。抜かなければ、体内に毒素が回ってしまう…。家でも、砂場に寝かせてみたり、あたたかいタオルで刺激をしてみたりしたのですが、全く出ないのです。
おしっこのこと、それから、動けないこと…が、抗けいれん剤の作用であれば、時間がたてば、少しは回復するのでしょうが、そうでなく、何らかの病気なりの症状が進行してのこと、あるいは、発作による脳への障害であれば、回復はないと思います。
考えるのが…こわい。
でも…今、この日記を綴っている、現在…
うららは、わたしの膝の上で…すやすや…眠っています。
時折、目を覚まして「にゃぉ〜にゃぉ〜」と鳴き、ぴくぴくとけいれんし、そしてまた、すやすや…と。
いつの日にか、誰にだって、別れはくるもの。
自分だって、同じこと。みんなとの別れは、くる。
それは、さみしいけれど、不幸なことばかりではない…はず。
今は、あったかく声をかけ、笑っていてあげたい。
うららのせいで、みんなが暗く悲しい家になっては、いけない。
うららがいるから、幸せなんだもの。
二年前のあの日、野ねずみの様な二匹の子ネコだった、モコとうらら。
食欲もあり、どんどん大きくなっていった、モコ。そして、
自然界では、きっと生き残れなかっただろう、うらら。
病院の診察室で、大切なひとが言いました。
「あの時、無理やりミルクを飲ませて、伊達に上手に飲ませられるものだから、生かせてしまって…こんな苦しいの…」
それから、ふたりで言いました。
「わたしたちに出会ったのが、この子の運命なのかも…」
短くても、長くても、それぞれに生きる道があって、その中で精一杯生きていくんだろう、きっと。色んな出会いがあって、楽しいこと、楽なことばかりではないけれど、それが「生きる」ってことなんだろう。
苦しんでいるのを見る、周りの者は辛いけれど、別れが来るなんてこと…考えたくもないけれど、それを受け入れなきゃ…。
わたしには、妹のような存在の犬がいました。その子は癌で亡くなりました。最期の日、わたしは仕事があるからと、その子のそばに最期まで付いてやることをしませんでした。こわかったのです。朝になって、お別れだったんだと泣いても、未だに悔やむ気持ちが残っています。でも、それだって、そのときの自分のできる限りのことは、そこまでだったのかもしれません。そのことがあったから、今の自分が、いる。少しは成長した自分が、いる。奈菜という、その犬との出会いがあったから、そして別れがあったから、今の自分が。
気持ちの整理なんて、全く出来ません。
でも、大切なひとがいる。ホビットさんがいる。
あむくん、リュビちゃん、チョコたん、モコたん、ユキちゃんがいる。
そして今、うららがいる。
この時間を、しっかり生きていたいと思います。
まだ幼いホビットさんは、大人になってこの頃の記憶は心の奥底に眠ったままになるかもしれません。思い出すことはできないかも。でも、ホビットさんの心のどこかに、きっと刻まれている、これまでと今日、そして、これからのこと。だから、しっかり見せてやりたい。
…生きるということを。
  2006.2.8 
うらら…

昨日の夜の段階で、抗てんかん薬の力をかりなくてもいい状態になりました。それでも、まだピクピクという感じは残っているとのこと。(主治医との電話)
今朝、診察が始まる時間に電話を入れてみました。
「ご飯を食べましたよ♪」
看護士さんのこの言葉…嬉しかったぁ。
昼前に、うららに会いに行ってきました。
まだ、ピクピクという全身麻痺のようなものが残っています。
それでも、声をかけると、か細い声で「にゃ〜」と反応があります。
それに、ノドの下の方をなでると、右足が動きます。これは、いつもの反応で、そこに触れると動き出すので、面白がってよくこうやって遊んでいます。
「うらら♪足も動くな〜♪ちゃんと、動く♪」
あったかい涙があふれてきました。ふわふわっと。
今、うららは生きています。
エサも食べれるまでになりました。まだ、立つことはできません。
大切なひとが、主治医さんと話をしていました。
「楽にしてあげることも…」
やはり、そういう話が出たそうです。
うららにとって、どうすることがいいのか…。
どうにかなってしまいそうな程に苦しいけれど、辛いけれど、一番苦しいのは、うららです。近いうちに決断を迫られることになりそうですが、逃げないで、うららに寄り添っていてやりたいと思っています。
これから、病院に迎えにいってきます。
食事がとれるようになったので、仮退院です。
次の発作のことを考えると…こわくてたまりません。
でも、逃げない。
残された時間を、できるだけ楽しく過ごさせてやるために。
そして、少しでも「しあわせ」だったと思ってもらえるように。
逃げない。
  2006.2.7 
てんかん発作

きのう、うららの発作が起こりました。
夕方、気づいたときには、いくらか時間がたっているようでした。
それでも大きな発作の感じではなく、ぴくぴくとして、おしっこなどは出ていませんでした。座薬を入れて、様子を見るものの、全く治まる様子が無く、十分後にもう一度座薬を使いました。それでも変化はほとんど見られなくて、半時間後に座薬を…。重責状態になるのがこわいので、それだけ座薬を使ったのですが、今回は効きませんでした。
それで、いつもの病院に連れて行きました。夕方の六時。
病院は、他の患者さんがいなかったので、到着後すぐに見てもらうことができました。点滴をしながら、抗けいれん剤をうち…2.5kgのうららは6kgの子に使うほどの、薬を入れてもらって、やっと落ち着き始めました。ドクターは「あまり薬を使いたくはないけれど、けいれんが止まらなければどうしようもないし…」と言いながら、治療を続けました。看護士さんふたりも、付き添ってくださいました。熱をはかると、41.5℃。けいれんのために発熱していました。このまま、熱が上がり続けると、危険な状態になります。そのことも含めて「…了承しておいて欲しい。」と、ドクターに言われ、そのまま、うららを預けて、うちに帰りました。
夜中に電話がなるかもしれないと気になり、一時間おきには目が覚めました。そうこうしているうちに、明るくなってきて、
「夜を越した…、もう大丈夫だろうな♪早く迎えに行こう♪」
そう思って、朝の診察が始まる頃に、病院に電話をかけました。
すると…
「困ったなぁ…と。」
うららのけいれんが、止まらないと言うのです。薬が効いているときは、けいれんが止まるけれど、切れだすとまた、ぴくぴく…と。ドクターは、またMRIの話をしました。MRIについては、何度となく話し合ってきました。ただ、脳のことなので、猫の症例が少なく、原因が分かったところで、どうしようもない…のです。全くない…というわけではありません。それでも、うららの体へのダメージを考えると、原因が分かったところで、その先に進むことは無理だと思います。うららは、生まれてまもなく、母猫に見放され、ミルクも飲まず、うちに着てからも、何度も危ない日があった子です。うちにいる他の五匹のネコたちと比べて、様々なところが違います。発育不全の子です。昨年の五月にてんかん発作を起こしてから、ますます体が不自由になってきています。えさもカリカリだと、上手に食べることができないほどです。それでも…うちのネコです。わたしたちの。かけがえのない。
大きな発作を昨年の秋に経験し、それからというもの、十日おきの発作のたびに、
「あぁ、今回もなんとかやり過ごせた…」
という感じでした。
幼い頃には、ほとんど鳴くことさえなかったのに、最近は、ずっと何やら
「うにゃうにゃ…」「うぎゃ♪」
そう話しかけたり、ひとりごとを言う、うらら。
きのうから、入院しているので、うちの中にぽっかり穴が開いたようです。
昼前に、お見舞いに行ってきました。ホビットさんも心配そう…。大好きなうらら。うららもホビットさんのことが大好き。いつも、ふたりは仲良し。
そんな、うらら。今日は病院のゲージの中でぐったり。ぴくぴく。
なでても、反応はありませんでした。やわらかい毛並み。
大切なひとと、最悪のケースも話し合いました。辛いけれど。
うららにとって、何が一番望ましいのか。飼い主として、それをしっかり考えてやりたいと思っています。けいれんが止まらず、ただ管につながれたまま、来るべき日を待つのか。…それとも。
うららは必死に頑張っているように見えました。看護士さんの話では、ドクターも「止まるだろう…」と言っていたようです。(ただ、わたしたちには明言はさけていました。)
何とか…けいれんが止まって欲しいです。もう少し、うららに時間を。
一年半では、あの子には短すぎる。あんなにいい子なのに。
きっと、うららが、わたしたち家族みんなの身代わりになってくれているのだと思っています。発作のたびに苦しいのだから、それはそれで辛いけれど、発作の起きていない日の、あの「ごろごろ…」っていう甘えた、うっとりとしたうららの顔を思うと、もう少し…と願わずにはいられません。
今日は病院で、このまま薬が切れたらまた入れつつ、様子を見てもらっています。

うらら…。待ってるから。迎えに行くから。
大好きだよ、うらら。
           
    
La garconne...