フランス菓子研修時代 -Je restais en France.-

はじめに

1994〜95年フランスで生活しケーキの勉強をしました。

それはそれはケーキ漬けの毎日でしたが、ケーキの事以外にも驚きと感動が一杯でした。

人種や環境が違う人と接する事で、それまでの私の中の常識は全く覆されました。

母国を離れ、遠い異国フランスから見た日本という国を知り、言葉の壁にぶち当たりながらも、

フランス人パティシエ達と共に
人種を超えた価値観を共有できた事が最大の収穫となりました。

今の私の人生の芯の部分を築くもとになったフランス研修時代でした。

この頃得たものは今も、私を力強く支え続けています。

極東から来た見習いパティシエを囲むフランス人達。どうぞのぞいて見てください。

1er

 ・リヨンという街
  ・自家用車
  ・スーパーマーケット
  ・ティッシュペーパー
  ・料理
  ・パティシエ達
  ・屋台
  ・地下室
  ・フランス式テーブルマナー
  ・日本語の先生
  ・レディーファースト
  ・冬のリヨン
  ・ショコラ
  ・ヌーヴィル・シュル・ソーヌ
  ・日本語の先生U
  ・ボジョレーヌーボー
  ・ブティック 
  ・バカンス
  ・フランス車  
  ・髪色 
    ・レヴェイヨン
2em
・トランブルモン ド テール
・すずらん祭り
・フランス製菓学校  シャトーエスコフィエ
・フランス製菓学校2 フランス語
・フランス製菓学校3 ルームメイト 
・フランス製菓学校4 プロフェスュール
・バカンス
・バカンス 南仏アルル編
・バカンス マルセイユ編
・バカンス 憧れのブイヤベース編
・バカンス ニース編

・バカンス オーストリアウイーン編


 リヨンという街

「首都のパリから南へTGV(新幹線)で約2時間、
ローヌとソーヌという大河が合流する街、世界遺産になった歴史的な街でもあり、
また世界屈指の美食の街としても有名です。」
と、ガイドブックなどには大抵こんな風に紹介されています。

古代ローマ時代から栄えた街だけあって、中世の面影が残る建築物が
街のいたるところに見られます。
リヨンも大都会なのですけど、パリに比べると地方色が濃く、独特な文化を築いています。

特に食文化ですが、レストランも他の地方に比べて安くて美味しいお店がたくさんあって
世界の食通に知られるところでもあります。
近くに有名なワインの産地もあり、少し車で走ればのどかな風景と緑が広がります。
かの有名な三ツ星レストラン「ポールボキューズ」も街中からだいぶはずれた
森の中みたいなところにあります。
(昔、バスを乗り間違えて幹線道路をはずれてしまい、トトロが出てきそうなバス停で停まったと思ったら
運転手のおじさんに「終点だよ!」と言われて呆然・・・。そこがボキューズの最寄のバス停でした!)
こう言うとたいてい反感を買いますがフランスって結構田舎です。
(食料自給率が100を超えている農業国です。)

リヨンは都会と田舎、両方見られる恵まれた土地です。

ここで、フランスで驚きの連続の生活がスタートしました。

 

赤茶色の屋根が統一されていて美しい町並み 歴史的な街の景観を守るために屋根や壁の色、高さなどが制限されています。



 自家用車
フランスの交通手段は地下鉄、電車、バス、どれもこれもキレイで便利で快適。
ただ、自家用車とタクシー以外は・・・。
個人タクシーでは、本当に個人の家へおじゃまする。といった感じで乗せてもらう。
だから助手席には臭い犬が居たりして、私達のおしゃべりが犬のお昼寝を妨げると注意されたことも。
(それでいてチップが要るなんてどういう事?!)

自家用車では、タダで乗せてもらうのに文句は言えませんがやっぱりすごい!私が働いていたパティスリのアポランティエ(見習い)の子の車は、ドアが閉まりませんでした・・・。
ボコボコにぶつけているので、ドアがゆがんでて隙間があいたまま。
それなのに高速道路みたいに飛ばす!
当然、ロックもかからないので駐車するときも、至って気軽に、まるで乗り捨て。
若者だけかと思いきや、路上駐車してある車はほとんど皆同じようなモノです。
車検が無いのでしょうか?



 スーパーマーケット・商店
どの国へ行っても、スーパーマーケットというのはその国の生活や食習慣がよく分かって楽しいものです。
いくらでも見て回れるし、衣食住なんでも揃います。
しかしフランスの店員さんは大抵横柄。お客さんより一段高いところで座ったままレジ打ちしてます。

後に日本に進出してきたフランスの大手スーパー、カルフールも最初はこのスタイルでした。
日本に馴染まないということで、早々に変更されましたが。

でも、日本のように大規模店舗は多くはないし、営業時間も短い。休みも多い。コンビニもないし、自販機もない。
そこで普段、当たり前の便利さに慣れた日本人は非常に不自由を感じることになります。
私がいた街は、商店は土曜が2時まで、日曜と月曜が休み、
その他の日もお昼は12時から2時まで閉店、夕方は6時ごろまで。だから土曜日のパンやさんは大変!パンの取り合い!!
うっかり土曜日の昼までにパンを買い忘れたら、大変。
普段よく行くのは街の小さな商店、肉屋さん、パン屋さん、チーズ屋さん、お惣菜やさん、花屋さん、八百屋さん、本屋さん、食料品店など。
意外な事に、一軒一軒お店を回ることも慣れると普通に感じ、
それはそれでかえって楽しい。
顔見知りになれば、「仕事はどう?パティシエ達は優くしてくれるの?」
と声をかけてくれますし、
行きつけの本屋さんのウインドウには、ベストセラーの本に代わって、
明らかに私の為に飾ってくれたとみられる立派なお菓子の本がドーンと
飾られているのを見つけて、思わず笑ってしまいました。
前日に、大きなお菓子の専門書を買いましたから。(笑)


ヌーヴィルの教会 

 小さな街でもちゃんと中心に教会があって、教会をとりまくように商店が並んでいます。日曜日には礼拝の鐘の音がパティスリの作業場まで聞こえてきて、平和の象徴のように聞こえました。


 ティッシュペーパー
食品とちょっとした日用雑貨を置いている小さなお店は、便利でよく行きました。
フランスに住み始めて間もない頃、ティッシュペーパーが無いのを不便に思って
買いに行ったのですが、見つからない。
必需品だから絶対にあるはず!と思い直して他の店も探してみるけど、あるのはトイレットペーパーだけで箱に入った「ネピア」とか「クリネックス」がない!
大きな店にはありますが
お店のおじさんに聞いても、「そんなのないよ・・。」とつれない返事。
日本だと、どんなスーパーでも一番目につくところに山積みになってて
いとも簡単に見つかるのに、一体どうして?
フランス人はどうしているんだろう?と不思議に思いました。
そういえば・・・・・。
フランス人はハンカチで鼻をかんでいる!
そうだ、使い捨てをしない人達だったんだ!と気が付いて、そこで暮らすうち慣れてしまいました。
今の日本では、使い捨ての文化が発達して当たり前のようになってしまいましたが、フランスの文化を思い出し、無駄を省いて質素に合理的に暮らさなければ、と思います。
そうすれば、最近のティッシュペーパーの値上がりのニュースもあまり気になりません。
レジ袋を貰う事やペットボトルを捨てる事にかなり罪悪感を感じるのは
フランスでの暮らしが関係してるのかもしれません。
マルシェ(市場)では、品物はそのままかごく簡単な包装で手渡されます。

日本でも最近はずいぶんエコバッグが定着してきましたが、フランスでは昔から
買い物に行く時は、マルシェかごを持っていくのが普通。
それを知らなかった私は、八百屋さんでたくさんの野菜や果物を買って、
持って帰れず木箱を貰った事があります。

※これはかわいいマルシェかご。おじさんもお姉さんもみんなこれを持って
お買い物に出かけます。

簡易包装の代表的な存在はパン屋さん。
長〜いバゲットも、細〜いフィセルも、大きなドーナツみたいなクーロンヌも持つところの真ん中あたりをクルッと小さな紙で巻くだけで終わり。なんとも簡単!近所だからこれでいいのですが、周りの人を見てみると皆んなパンの端っこがない!
歩きながら食べちゃうんです!面白い!
こういう事はすぐに真似してしまうんですが、パンを買いに行くのは大抵お腹が空いている時ですから
帰りにちょっと寄り道すると、家に着いてからカバンの中のパンの下の部分がほとんど無かった!という
悲劇にも見舞われます・・・。焼きたてはおいしくてついつい止まらなくなって。
話がそれましたが、使い捨ての話の続き。
「もったいない」という言葉が使われなくなったといいますが、
フランスから帰った人は昔の日本人のように「もったいない」を連発してるかもしれません。



 お料理
フランスでは、部屋にキッチンが付いていたので自炊をしていました。
食材は安かったですし、ごはんがなくてもパンは文句なしにおいしい。
フランスの食材はとっても豊富。自分で考えた勝手なフランス風とも日本風ともつかない
毎日の不思議なお料理は、何故か楽しくひとり満足していました。
エピスリー(食料品店)では、クイック食材みたいなものもたくさんあって、
すこしずつ買ってはチャレンジ。作り方の説明書きの解読にはすこし骨は折れるものの、
製菓用語とよく似ているので、イラストも手がかりにしながら挑戦していました。

フランスで日本料理を作る事は大変ですが、日本風フランス料理なら簡単。
材料がフランスの素材ですから日本人が、パンに合うように作れば自然とそうなります。

日本料理を作るのがどうして大変か?というと・・・・
日本に居ればどうということはなくても、一歩日本から外へ出ると
日本料理はまるっきりマイナーです。調味料(味噌、醤油、鰹節)はないし、
米だってパラパラの長粒米以外はなかなかありません。
あったとしても輸入モノになりますからとっても高いのです。
日本からそれらのものを送ってもらって、料理して・・・。
外国で普段から和食を食べようなんて、時間とお金と労力がいくらあっても足りません。
NYの松井選手ならいざしらず。
と言う理由で、海外で暮らす日本人はある程度、現地の食事に合わせていくほうが何かと合理的。

また、興味があったのは普段のフランス人の家庭料理。
アポランティエの子の家で時々ご馳走になったのは、カッスーレやラタトゥイユなどの煮込みと、根セロリや人参サラダにバゲットといった組み合わせ。日本人にも馴染みやすいバランスのとれた内容だと思います。
「クミコはなんでも食べるのねぇ!」と喜んで色んなものを作ってくれ、勉強になるようにと料理の説明をしてくれたアポランティエのセバスチャンのママ。懐かしいなあ・・・ホロリ・・。
セバスチャン一家は、大家族。フランス人にとって家族との時間はとても大切で、
お菓子の勉強の為にひとり、家族から遠く離れている私を大切にしてあげなければ!と思ってくれていたようです。
当の本人はただ、フランスの美味しいものに心奪われる日々であったのですけど。
で、自分で作るお料理は?というと、野菜のスープ煮とか煮込みようなものが多かった気がします。
農業国のフランスの野菜は美味しくて安い。
時にはお肉屋さんで、注文すると「ゴゴゴ〜ッ!!」とすごい音をたてて肉の塊を
その場で挽いてくれるつなぎのないステックアッシュ(ハンバーグ)や、
これまた注文してからスライサーで切ってくれる大きなハムを買ったりと、どれも美味しかった。
さすがグルメのお国。ハンバーグのことはステックアッシュといいますが、直訳は
みじん切りステーキですから、まさにこの作り方でいいわけです。お肉だけの味がしました。

時間のないときは、缶詰を開けるだけでもりっぱなご馳走。
豆の煮込のカッスーレ、テリーヌやパテ。一人暮らしでも食べるモノに不自由しませんでした。
まあ、こんなことばかり書いているとまるで私がただ食いしんぼぶりを発揮していただけのフランス滞在みたいになってしまうので、次回はもう少しお仕事や、パティシエ仲間達のことを書かなければ!


ラタトゥイユ・・・

トマト、玉ねぎ、なす、ズッキーニなどの夏野菜を使った南フランス・プロヴァンス地方の料理。
南仏のまぶしいお日様の恵み。そのまま食べても、パンにのせても、パスタに絡めても、
温かくても、冷たくてもOKの万能料理。
カッスーレ・・・

白いんげんと鴨などの肉類を煮込んだ南西フランスの地方料理。豆をたくさん摂ることが出来ます。
寒い時期にとってもお腹がすいたらこれをガツンと!
ポトフ・・・・

大きめ野菜と塊肉をブイヨンでやわらかく煮込んだ冬の味。
野菜とお肉は出来るだけ大きいまま煮込むとうまみが逃げなくておいしい。思えば私、冬の間はずっとこれの中身を少しずつアレンジしたもので過ごしていた気がする。メインとスープがひとつのお鍋で出来るなんて!

※ポトフとは、直訳で火の上の壷(鍋)。
ポトフと聞くと、なぜか私はいつも童話の一場面を
思い出してしまう。お鍋が煮えるシーンにはきっとポトフ
がぴったり!

 パティシエ達
一階がマガザン(店舗)2階がケーキ工房、3階がショコラとアイスクリームの部屋、そして4階が私の部屋。
屋根裏部屋を改造して住めるようにしてあります。
あの宮崎アニメ「魔女の宅急便」のキキの部屋に似た感じ。(ちなみに、あの映画を観ると魔女のキキと当時の私がダブる。と密かに思っていたのに、(知らない土地で単身修行の身、というあたり)人には、あの妊婦のパン屋の奥さんに似てると言われました・・・・・。なんだか複雑だ。)

3時に起きて朝ごはんを食べ、4時に仕事場へ降りるのとほとんど同時にパティシエ達がやってきます。
職人4人、見習いが私を入れて4人、洗い場係一人、そしてシェフの計10人。
早朝だというのにテンションが高く、ミキサーやパイローラーの音に負けじと大声でしゃべりながら仕事しています。
フランスのパティスリは、日本のケーキ店より仕事の範囲が広くて、パン、ケーキ、クッキー、

ピザやキッシュ、パテなどのお惣菜。チョコレート、アイスクリーム、ボンボンやコンフィチュールなど糖菓類、なんでもあり。したがって仕事もたくさん!

パティシエの個性で担当の仕事がうまく分けられ、私は主にケーキとショコラの担当。特にショコラの量ときたら年間に2千`使うということでフランス人のチョコレート好きは筋金入りだ!と確信しました。
フランスも日本も本当にケーキ職人達はよく働きます。イベントの時(クリスマスや復活祭、公現祭)などは夜中の12時から20時間以上とか、もうどこが一日の始まりなのか、終わりなのか分からなくなるくらいです。
それでもパティシエ達は、いつもと違うお祭り気分に余計テンションを高め、パワフルに仕事をこなしていきます。
少々荒っぽいのがタマにキズですけど。
疲れてちょっとでも静かになろうもんなら、わざと大声で冗談を言い仕事を追い立ててくれます。
仕事が終わりに近づくと、ドタドタいわせて大きな長靴に履き替えて毎日の大掃除。水圧いっぱいにして床流し。
ちょっとでも履き替えるのが遅れるとアウト、びしょ濡れ・・・。一回でもいいから先に仕事を終えて水をかけてやりたい〜!と心の中で思ってました。(笑)
それが終われば仕事の終了。着替えもそこそこに「オールボアール!ア・ドゥマン!!」(じゃね!また明日〜!!)
嵐のような人達だ・・・。             

・・そんな仲間達をちょっとご紹介・・・

★パティシエ

・フランク・・・パティスリの要、生地係。オーブン前が定位置。
         力仕事なので大男だけど神経質。愛妻家。
         愛車はトヨタの4WD。

・クリストフ・・・こちらも大男なのに、声が高くて冗談好き。
         パイローラーをたくみに操ってクロワッサンやデニッシュを成型。                         愛車は大きな体に似合わず、フォルクスワーゲンビートル。

・エリック・・・・口髭がトレードマーク。ムースの仕込み担当。愛車はシトロエン。
         口数は少ないが、心優しい真面目人間。

・レイモン・・・日本人もびっくりの細やかな神経でシェフからの信頼は絶大。
         私たちへの仕事の指示も的確。仕上げ担当。車はルノー



★アポランティエ(見習い)

・セバスチャン・・・素直でかわいい17歳。みんなにかわいがられている。
            童顔で甘えん坊の憎めない遅刻魔。
           免許はないのでママに送ってもらっている。

・ミカエル・・・・内気な少年であんまりしゃべらない。でも私を密かにライバル視。
          愛車はクラシックなバイク。

・オリヴィエ・・・・とにかくお調子者でいつもシェフに怒られてしまう。
         私がおおきなケーキ包丁を使ってると必ず「サムライ!!」って言う。
         柔道は自称黒帯の親日家(?)

・クミコ・・・・私。フランス語がかなり怪しい、遠い国ジャポンの見習いパティシエール。
       何故かレイモンとセバスチャンにだけは通じる。
       色んな仕事を見たくてキョロキョロしてるけど、自分の分だけで精一杯。

★洗い場係
・リヨネル・・・何よりもワインを愛してるので何時出勤なのか分からない。
       手足がとても長いのでリヨン名物「ギニョル」(あやつり人形)に似てる!
       とオリヴィエが言う。 
       機嫌が悪いと、見習い達に洗い物の水をザバザバかけてくる!              


★オーナーシェフ
・ソムリュー氏・・・・この人が来るとやっぱり工場は緊張。
1階のマガザンと2・3階工場を飛び回り

            仕事を指示。器用なやり手で、愛車はベンツ。

            運転が物凄く荒っぽくて怖い!配達用のワゴンを畑に突っ込んで廃車にしたと   

            笑いながら自慢する。(ベンツの方は傷ひとつないけど?)     


本当〜に、この人たちの個性はそれぞれでとっても面白い。

エピソードは書ききれないほどたくさんあります。

いつか全部紹介できるかな?

 屋台
フランスには、道端に突如出現する「屋台」なるものが多い気がします。
普通っぽいところでは、クレープやサンドイッチ(バゲットサンド)など。
ちょっと変わってる?と思ったのはピザやドーナツ屋さん、焼栗、ケバブ(肉の塊をグルグル回しながら炙って、焼けたところを削ぎ落とし、パンに挟んで食べる。というかなりダイナミック系アラブ料理)や丸焼きチキンのお店、中華系のチャーハンの屋台まで!
いつ、どこで遭遇するか分からないのでお腹が空いていたら、チャンス!
最寄のバス停の駐車場に、たまにやってくるピザ屋さんが安くて美味しかったので「今度はいつ来るの?」と訊いたら、「いつがいい?」と・・・・・。(決めてないの?)
そのピザ屋さんは、ワゴン車に大きなオーブンを積んでやってきます。
具も色々あって迷うくらいですが、トッピング方式でのせるものを選ぶと・・・・・、
まず生の生地を、大きな塊からむんずと引きちぎり、打ち粉した台に叩きつけ、おじさん麺棒で素早く伸ばす!伸ばす!
あざやかな手さばきに私が見とれている隙に
注文した具をのっけてオーブンへ。この間、1分くらいじゃないでしょうか?!
(おじさんカッコいいー!)私、思わず拍手!屋台なのに本格的すぎる!スゴイ!
私もパティシエとして麺棒さばきを見習いたい!師匠と呼びたい!
こんな風に、屋台を見るとついフラフラと引き寄せられてしまうのはフランス人も同じみたいでお昼時には、いい大人がスーツ姿や仕事着で、歩きながらデニッシュやサンドイッチを頬張っているのをよく見掛けます。
友達と歩いていて、次にすれ違う人の食べている物を当てる遊びは面白かった。
それほどお昼には食べながら歩いてる人が多かった!(笑)
お腹が空いてもガマンする。という考えがないのは、私とフランス人は似ている?・・・・かも。



 
地下室
 私が住んでいたのは、リヨンの中心からバスで少し北へ行ったところ。
中心街は半径200mほどの範囲に、教会を中心に小さな商店がびっしりと立ち並んでいます。
車の入ってこない路地には古い石畳が残って、アンティークな雰囲気が魅力的。
日本人にとってヨーロッパの小さな街はどこもロマンティックなおとぎ話の街のように見えます。
建物も古い石造りで、高さも制限があるらしく地上は4階建てまで。
地下室もあって、ワインを貯蔵したり、物置に使っています。
地下は温度や湿度が一定で貯蔵に最適なため、地震の少ないフランスでは、
このように古い地下室も昔のまま使われています。
私が働いていたお店では、地下は材料の貯蔵庫。漬け込みのフルーツや缶詰、リキュール類、アーモンドを挽く石のローラーなどが置いてありました。
この地下室が大問題。・・・・・やっぱり地下なんて暗くて天井が低くて怖い。
建物が古ければなおの事。
古く中世のお城の地下に幽閉された、気がふれたお姫様のお話かなにかが勝手に私の頭をよぎる・・・・・・。
シェフに「ちょっとプラリネ取って来て!」なんて言われると内心、
(なんで私〜?)などと思いつつもイヤとも言えず、渋々行くハメになります。
不揃いな石段を真っ暗な中、バンバン足音を立てながら
(ネズミを脅かしつつ自分を奮い立たせる為!)降りていきます。
やっと電気のスイッチがあり、点けてみたところで薄暗く、しかも!
一定時間が過ぎると誰に断りもなく消える!!嫌がらせとしか思えない!
で、私が地下室にビビっていることを知ってるパティシエ達はわざと地下へそ〜っとやってきて耳元で「サヴァ!?」って大声で脅かす人でなし!!
「地下へ来る用事があるなら、ついでに取って来てくれればいいじゃんか!!」
と、フランス語で言える語学力もないので、日本語でつぶやくのみ・・・・・。
 フランスは普通の部屋でも、照明が暗い。
電気のとこだけぼんやり明るくて、部屋の隅っこは暗くて見えないのが普通。
こんなところも日本より進んだエコロジーのお国なのでしょう。
雰囲気があるとか、落ち着くという人もいるでしょうが、一般的に日本人は私を含め明るいほうが好きだと思います。
フランスは廊下の照明も、大半が一定消電式。
「クミコは探さなくってもすぐ分かる。明かりを点けまくりながら廊下を歩いてるから!」
って言われてしまいました。




 
フランス式テーブルマナー
 

やっぱりなんといってもフランスはグルメのお国ですので、お料理の勉強とかなんとか言いつつたまには外食もしたのですが、美味しい料理を頂きながら気になるのは、隣のフランス人の食事の様子やテーブルマナー。
やっぱり現地の人なのだから、さぞやスマートな作法であろうと思いきや!
かなり自由な主義の方が多かった。
「お食事は楽しく食べて何が悪い!」と言わんばかりで、物凄い勢いでしゃべるわ、笑うわ飲むわで、マナーとかどこいったんでしょう?な感じ。
たまたま私がそういう人に出会ってただけかも知れませんが、全体的にみてもやっぱり日本人のほうが幼い頃から食事の作法に厳しく躾けられているせいか、お行儀がいいように思います。
楽しく食べるという意味では、フランスのほうがいいかも知れませんが・・。
「フランスのテーブルマナーって難しいでしょ?」とよく聞かれますが、
「日本のお箸の作法の方がずっと難しいです。」って答えます。
ですから、フランス人と食事をする時やレストランでテーブルマナーが必要な時も、特に気後れすることなく、美しいお箸のマナーをナイフフォークに持ち替えるだけでOK!
自信をもっていいんです!

 

 せっかくのお料理、おいしく楽しみたい!


   
  
日本語の先生
新しい街とパティスリの仕事にも慣れてきた頃、
シェフの奥さん(マダム)から恐る恐る「クミコにひとつ頼みごとがあるの。」
と切り出された話は、向かいの建物に住む知り合いが日本語を教えてくれる人を
探している。というものでした。

聞けば、その人は近い将来仕事で日本へ行く予定があって、その準備をしたいのだといいます。
「仕事もあるし、もし無理だったらいいのよ。」とマダムは気を遣ってくれましたが、週に一回1〜2時間で良いと言うし私のフランス語の勉強にもなるし、私の分からない事も訊ける。とあまり迷わず、
大胆にも引き受けることにしました!
マダムは私の語学力を知っていますので「あの子で務まるのかしら・・・。」
の心配が大きかったようなのですが、
私はまた違う自分のメリット(自分の上達)を考えて
「ちょうど私もフランス語の先生が欲しかった!」と言ったらマダムは笑いながらもちょっとあきれたようでした。
(この子分かってるのかしら。)って感じですね。

今考えても、ちょっと能天気な感じがしますけど(笑)、恐らく当時の私は本当にフランス語が上手くなりたい。という気持ちが強かったんだろうと思います。
言葉さえ上手になれば、仕事ももっとやり易く、楽しくなる筈。
やっぱり一番大きい壁ですから。
それにしても、その時のマダムのオロオロした感じを思い出すと、ちょっと笑えます。
大事なお客さんだし断れない事情もあるし、私に話をする前にもさんざんシェフや店の人達と相談してたみたいです。
でもシェフは仕事の事で頭がいっぱいな人ですから、このことについてはほとんどシェフから話はありませんでした。
マダムに任せっきりで自分は傍観してる感じ。たまにふざけて「プロッフェッサー!!」なんて呼ぶことはありましたが。
 それからはマダムを窓口に、レッスンの時間と内容なんかが決まって、
私は毎週水曜日の仕事が終わってから、
向かいの建物の事務所まで、自分の辞書とフランス語テキストを抱えて通う事になりました。
(自分のテキストを持っていくあたりが完全に自分中心ですね!)



   
  
レディーファースト
残念ながら、ずっと日本にいればレディーファーストを体験する機会は少ないと思います。

でもこの習慣は実は、女の人の立場から見て都合が良いという意味じゃなく
女の人に限らず弱い立場にある人に対して、自分に出来る手助けをする。
という当たり前のこととしてフランスでは根付いてい
ます。

特に日本との違いがはっきり現れるのは、スーパーやビルの入口の大きなドア。
自動ドアならいいですが、問題はひらき戸。
自分が入ってから後ろも見ずに手を離すのは、フランスではありえません。
必ず振り返って、後ろの人が押さえるのを確認して手を離すか、
お年寄りだと、入るまで持っててくれます。ごく普通の光景です。
そして、持っててもらった人は必ず「Merci!」の一言と微笑みを。
これを、下心なく自然に出来るようになればあなたも立派なパリジャンに!(笑)
フランスの少年は小さい時からお母さんからこれを躾けられます。
私が働いていたパティシエのマダムも、当時17歳の息子に根気よく教えていました。
日本の男の子達は、若い女の子を口説く時に使うと効果的とか思ってるかも・・・・・そうじゃありません!
日本の昔堅気のお父さん世代の人は、レディーファーストを「欧米の悪しき習慣、
日本人はマネするな。」なんて悪口をいう人もいますが、
本当のレディーファーストは、お年寄りやハンデのある人に優しく。っていう武士道にも通ずるものだと、私は思っています。

ただ、最近の女性は守らなくても十分強いんでは?・・・と言われれば、
言葉に詰まりますが。





 
冬のリヨン  Lyon de l'hiver
(2008.1.7更新)
ヨーロッパの冬は暗く、長く、そして寒い。

春から夏にかけては、もうさわやかで最高の季節と言えるフランス。梅雨はないし

お日様は9時頃まで明るく、いつまでも外にいられます。

でも、ちゃんとそのツケは冬にまわってきまして、冬は日が短いと言うよりも・・日が出ない・・・。

日本と同じでフランスでも冬はお菓子屋さんが忙しい時期。

昼間、外を見る余裕がなかったのかも知れませんが、一日中夕方みたいで、

お日様の姿なんてほとんど見られなかった気がします。

フランス人、どうしてバカンスであんなに弾けるのか、理由が分かりました。

バカンスで一年分のお日様を浴びるつもりらしいです。

リヨンはフランスの内陸部ですが、地中海にも近い為、冬も比較的温暖と言われています。

が!やっぱりそこはヨーロッパの冬。

連日気温はマイナスですし、石畳の街は底冷えがして、

うろうろしてるとすぐに体が芯から冷えてきます。しかも、カイロもない。

足元はブーツがお決まりになりましたが、ファッション的なのじゃなくてごっつい防寒用。

パンを買いに出ても、用事が済めばとっとと帰らなくては

マロンショー(焼き栗売り)の屋台やロマンチックなクリスマスのイルミネーションも

気にはなるけど・・・。

日本ならここで温泉にでも浸かれれば最高なのですが、銭湯さえない異国なのですからここはもう

温泉の記憶は頭の中から捨て去るしかありません・・・。

まず、私の部屋、バスタブ自体ありません・・・。

あ、でもこれ、別に珍しい事ではありません。日本人のようにたっぷりの暖かい湯に浸かる

習慣がないですから。

ここで、お酒の好きな人ならワインが大活躍となるのですが、

私は、あの世界的ワインの産出地であるブルゴーニュのすぐそばにいて、まったくの下戸。

日本と比べたら破格で飲めるのに、です・・・。

寒がりな私の、ささやかな防衛手段といえばどうという事はない「ひきこもり」。

石造りの建物の中は、ヨーロッパで主流の暖房、オイルヒーターでずっと暖めておけば、快適。

石自体が温まるまで時間はかかりますが、一度温まってしまうと

全体がじんわり暖かく、なかなか冷えません。

小さい私の部屋には、ヒーターが全部で4つもあって、それを最初に見たときは

寒波がくればそうとう寒くなる事を覚悟しました。

冬はお店のイベントで忙しく、厨房で過ごす時間が長かったことは

寒がりの私にとってはむしろ良かったかもしれません。

何台ものオーブンで暖まった厨房で仕事をしながら、ちょっとした合間に

曇った窓ガラスの向こうをのぞくと、昼間でも薄暗い街は寒いからこそロマンチックでもありました。

きらびやかなパリなど都会のイルミネーションと違って、すこし寂しい小さな街ヌーヴィル。

光がないと、白と黒とグレーの世界になるんだなぁ。って事を知りました。

私、今、ブーツを持っていません。大阪の冬にブーツなんて必要ありません。

それにブーツと言ってもファッション的で防寒の要素は薄いし。

まあ、もう若い人達のおしゃれなブーツが似合わなくなったヒガミも見え隠れしていますが。(笑)

冬のソーヌ河岸

ブルブルッ・・・・
人が歩いてないよ・・・・。


 

(2009.2.05更新)
ショコラ  Chocolat (名・男)チョコレート・ココア・チョコレート色

 日本のパティスリでは2月になるとチョコレートをたくさん作り始めます。

チョコレートを作りながら思い出すのはフランスのこと。フランスではヴァレンタインデーに

関わらず、普段からチョコを食べるのでパティシエは大量のチョコレートを作らなければなりません。

フランスで修行した日本人パティシエ達にショコラが得意な人が多いのは

たくさん扱ってきたからでしょうか。

業務用クーヴェルチュールは、フランスやベルギーからの輸入で、

パッケージからしてすでに懐かしい。そしてフランスで買い集めたショコラの型や専用の道具を見て

また昔の思い出がよみがえります。

 ベルギーのショコラ

今は刻む必要のないカレットタイプが主流です。(私が若い頃はこんなのがなくて、厚さ6cmほどもあるブロックの板を全体重をかけて牛刀で刻んでいたっけ・・・・。)

 ショコラやプチフールの型、プラスティック製のショコラ専用型は一枚2万円ぐらい〜と 製菓道具の中でも高価な部類ですが、一生ものです。

      

フランス人パティシエ達はやっぱりショコラの扱いがとても上手でした。私は日本の修行中には

ショコラはしなかったので、今でもフランスのシェフに教わった事がとても役に立っています。

フランスのショコラは伝統的、そして日本のショコラは斬新。日本人は新しいもの好きなんですね。

モンガトウでも毎年新作ショコラを考えています。

何年か前に買った専門誌、チョコレートの特集だったので読み返しているとリヨンの名店、

ショコラトゥリー「ベルナション」が載っていました。

(買った時に目を通しているはずなのに見落としているなんて・・・・・・・!)

その記事で驚いたのは、私がフランスに居た頃(14年前)とスペシャリテ(特製ケーキ)が同じ、

ショコラも同じ、新作もなし!とシェフが胸を張っています。  すごい自信、すごい心意気!

フランスでもさすがにここまでの店はそれほど多くはないと思うのですが、

ショコラは伝統菓子、日本だって柏餅やおはぎは変わらないですもんね。

日本の洋菓子の歴史はまだまだ浅いもの、まだ今は次々流行が移りかわり、

本命を探している真っ最中なのでしょう。
 

伝統と言えば、フランスの古い寺院や教会、あまりの迫力に圧倒されて言葉を失います。

長年、人々が宗教を通じて幸せを願い続けたエネルギーが芸術となってぎっしり詰まっています。

あの言葉に言い表せない迫力は、周りを近代的な建物やお店に囲まれても

決して威厳を失なわない。人々の願いのエネルギーが折り重なるということは

そういうことなのでしょう。

内部は撮影禁止のところが多いので、仕方なく持っていた手帳にスケッチしたら

思いがけず写真より良い思い出が残りました。

日本のお寺だって同じ、私達日本人より外国人観光客のほうが熱心に見て回っている

ところをみると、かつての私と同じ事を感じているのでしょう。

フランスは本当に街並も変わらないのです。地震が少ないせいもあるでしょうが

建物が古くなっても使い続ける。(私が働いていたパティスリーの階段は天然石なのに

真ん中が擦り減って低くなっていました。)

日本では本当にどんどん建て直しをしていますね。2〜3年見ていないと風景がかわってしまう。

その点では、私の知っているリヨンの世界遺産を含む美しい風景が今も変わらない事は

とても嬉しく、またショコラの味も変わらない事が嬉しいのです。

Basilique Notre Dame de Fourviere a lyon.

 リヨンのフルヴィエール寺院は外観より内装が芸術的で素晴らしいです。お城などの華やかさとは違う芸術の形がそこにあります。


 


Neuville sur saone ヌーヴィル シュル ソーヌ

【2009.6.3更新】

              


 ソーヌ河沿いのヌーヴィルという小さな街。

リヨンからバスで北へすぐ。ソーヌに架かるかわいい橋が目印のこの街。

中心街には、小さな個人商店が軒を連ね、ぐるっと歩けば30分もかからないくらいで

お店を回る事ができます

小さな街ながら、バス停は乗り換え場になっているのでお買い物に来る人が多く、

便利な街です。

私がお世話になっていたパティスリーは、この橋からすぐのところ。

仕事が終わると、このソーヌ河の堤防で白鳥と戯れる子供達を眺めたり散歩をしたり。

大きな河の流れは、どことなく孤独で不安な私の心を癒してくれました。


日本語の先生 U  La professeure de japonaiseU

(2009.6.18更新)

毎週水曜日、仕事が終わってから通うことになった向かいの建物。

私を日本語の先生にと頼んでくれたのは、カメラの技師をしている人でした。

近々日本へカメラの技術を勉強しに行く予定があると言います。

勉強部屋は、仕事場の事務室。隣の作業所では何人かの技師が作業中。

小さな引き出しがいっぱいあってひとつひとつに

カメラの小さな部品が入っています。引き出しの扉面には

日本でもおなじみのカメラのメーカーの名前がずらり。

私がそれに反応すると、「カノン(キャノン)は世界一だ!」とサービスコメント。

ちょっとノリの良いタイプ?(笑)きっとお仕事は真面目であるに違いありませんが。

とりあえず、日本に行くまで半年しかないというので、旅行者会話から

始めようという事に。これは私がフランス語を始めた時と同じ。

まず、

「KO・N・NI・TI・WA」の挨拶から。

苦難の道はここから始まります。

「私の名前は○○です。」

「私はフランス人です。」

「私の仕事はカメラ技師です。」

私のフランス語のテキストをそのまま日本語に訳してあげるだけ。

うん、これはらくちん。って思っていましたが、そうはいかない。

彼は彼なりの日本語に対する疑問がいっぱいあったようで、

答えようもない質問が次々と・・・・・。日本人なら考えた事もないような事を

疑問に思うらしい。

Q「ひらがなのハネ、トメ、ハライに意味はあるのか?」

私の答え(ええっ?・・・・意味、意味って・・・?)

Q「これが間違っていれば通じないのか?」

(う〜、通じない事もないが・・基本のカタチだから)

Q「日本人は普段、刷毛を使うのか?」

(何?刷毛??・・・・・・・・・・・・・
あっ、筆?筆ね。書道以外、特別な時意外使いません。)

Q「SHODO?そうそう黒インクをいっぱいつけて書くあれ!

筆でハネ、トメ、ハライをやってみたい!」

(・・・・・・それより先に挨拶を覚えようよ。)

などなど・・・・・・。なんだか偏った日本への憧れがあるようです・・・・・。

当時は、「オタク」やらという言葉もなく、ただ日本文化に興味がある人なのだと

思っていましたが、最近のフランスでのアニメブームやら日本ブームのニュースを

耳にすると、「ああ、彼もそうだったんだな」と今になって思います。

本当に仕事の為だったのかなあ?(笑)

勉強会の次の日、店ではマダム達が待ち構えています。

「どうだった?あなたはボンプロフェッサーだったの?」

「ボンプロフェッサーかどうかは・・・・。彼はボンエテュディアン(グッドスチューデント)だったと思う。」

(一応そう言っておこう)

マダム「まあ!そうなの?ねえ、みんな聞いて聞いて!」

安心したのか、マダムはもう完全に面白がっています。


 (2009.10.06更新)

ボジョレーヌーボー   Beaujolais nouveau (ボジョレーの新酒)

ワインの事については、書きたくなかった・・・・・・。ワインに詳しい人はいっぱいいるのに。

私は下戸なので、フランスではほとんどワインを飲んでいないし・・・・。

とはやっぱり言っていられない。私が居たのは、フランスではボルドーと並ぶワインの大生産地、

ブルゴーニュのボジョレー地方の南端。

11月になると解禁日まで街中が楽しみに待っていて、今年のワインの出来は

どうだこうだとにぎやか。値段も破格で、日本の10分の1くらいだったと記憶しています。

それにしてもフランス人達は、ほとんど年中ブドウの木の生育状態を気にして生きているみたい。

初夏ごろ、大粒の雹(ひょう)が降った時、目の前の屋根や車のボンネットが

へこみそうな勢いだったのに、見えないブドウの木のほうを心配していたらしい・・・・・。

それどころなのっ?!って思いますよね?(笑)

毎日の食卓にも必ず出てきますし、大人には水代わりといった感覚。

フランス人はアメリカ人の事を、蛙みたいだ。と言ってバカにするらしい。

食事の時、水を飲んでいるから。

と言っても、フランスもアルプスのミネラルウォーターが世界的に有名だし、

大型スーパーでは巨大カートで山盛り買い込んでいる姿をよく見かけます。

日本では、水道水が安心して飲めますが、フランスは水は買うもの。

フランスの水道水は長年飲み続けると、あまり体に良くないと言われています。

それでもお金のない私は、たまにリッチな時だけブランド水(エビアンやビッテル、ヴォルビックなど)を

買い、お金が苦しくなったら水道水を飲んでいました。結果、ほとんど水道水でした。(爆)

お腹をこわした事もありません。

水を買うくらいなら、パンやお菓子を買いたいわ!!

あらら、何故かワインの話から大きく外れてしまいましたね。 うむむ・・・困った。


ヴィッテルが好き

 でもフランスではミネラルウォーターもワインも

大して値段は変わりません・・・・・。


 2009.10.06更新
ブティック   Boutique (名・女)店・小売店・洋装店


ブティックって言っても、ブランド服の店ではありません。

フランス語って、何でも気取った言い方に聞こえてしまいますね。

口紅の事を常にルージュと言う人がいたらどうですか?

私なら引いてしまいます。(笑)

とにかくブティックとは、普通に洋品店。(←昭和な表現?)

若者のカジュアルなファッションであろうと、敗れたジーンズがあろうとブティックはブティック!!

で、日本ではブティックに限らずお店に入る時、お客さんから挨拶する事はあまりないですが、

フランスでは、お客さんから挨拶するのが普通です。

挨拶なしで店に入っていくと怪しまれてしまいます。何か企んでいる?と警戒されます。

商品を買う時も同じ。黙ったままレジ台に選んだものをポンと置くだけ。っていうのは

不自然な感じを受けるようです。日本では普通ですが。

言葉があんまり出来なくても「ボンジュール!」って勇気と笑顔で明るく声をかけると、

笑顔文化の達人のフランス人の、洗練された微笑みがえしを見る事が出来ます。

それに、「私ってフランスになじんでるわ!」って気分にもなれます。(笑)

とは言え日本人は私も含め、感情を表に出したり、表現する事に慣れていないですね。

フランスでは、「あなたに敵意はないですよ。」という意思表示をするのが礼儀で、

挨拶の握手や抱擁も、「私は武器を持っていません。」という事をあらわすものです。

それと同じ文化として笑顔も定着しているんですね。

フランスで一人の滞在になると、表情も少なくなりますが、リヨンに出てみれば

驚くほど素敵な微笑みの人達にたくさん出逢って、こちらのこわばった顔の筋肉まで

ほぐれてくるような気がします。

近所の店では、最初の笑顔でのボンジュール!の一言から一瞬で人種の壁を超え

フランス人に対する時と同じように後の会話を続けてくれる事がとても嬉しかった。

知らない土地で人とつながる。警戒心がほどける瞬間が嬉しい。

最後には、ケーキの専門用語より、人と繋がれる事が実感できる言葉を探して

勉強していた気がします。語学留学ならもっともっと話せるようになったかも知れないのに。

と後悔した時期もありましたが、やっぱりケーキの仕事を通じてパティシエ達との

信頼関係を築けたことが一番の自信になったので、これでいいとします。





バカンス Vacances (名・女) 長期休暇

 とにかくフランス人は、なにかと言うとすぐにバカンスの話題を出してきます。

年中バカンスが頭から離れないようで、当時まだ休みの少なかった日本人にとって

なじみのない感覚です。

バカンスの旅行はお金持ちの特権ではなく、一般庶民にとっても身近なもので、

バカンスだけを楽しみに一年間働く!と公言するフランス人達もたくさんいます。

お金持ちでなくても、南フランスやイタリアに滞在したり、お隣のスペインやドイツ、

アメリカにまで足を伸ばす人も。すこし遠出を覚悟すればアジアも十分範囲内。

だって、1ヶ月以上あるんですから!!

パティシエ達も、私に日本までの飛行機代や渡航にかかる時間などを聞いてきて

日本に行ってみたい!と思っている様子。


「日本にはバカンスがないってほんと?!」


この質問は、何度耳にした事でしょう!バカンスがないと知ると、

いつも自国のバカンス制度の自慢が始まります。

「フランスはいい国だ。バカンスの長期休暇は 我々の当然の権利だ。

パトロン(雇用主)がなんと言おうとこれは法律で保障されているんだから!

(中略)

ところでクミコ。きみはこんないい国に来たのになんでわざわざバカンスのない

日本へ帰って働くの?」

とまあ、こんな風にバカンスについて話し出すと興奮してまくしたて、

私が話のスピードについていけなくなっても、お構いなしです。

「とにかく、そんな非常識な国にはさっさと見切りをつけて、我々とずっとここで働けば

いいじゃないか。ノンプロブレムだろう!?」

と度々説得してくれました。非常識とまで言われても・・。(笑)

でも、通りかかったスーシェフのレイモンは、「だから日本は経済大国なんだよ!!」と。

う〜ん。そうなのかなあ。私は経済大国よりバカンスのほうがいいなあ〜。

レイモンがいつも日本をそんな風に言うので、若いアポランティエはいつも

「ジャポネ トゥットゥ リッシュー?!」(日本人って全員お金持ち?!?)って

何かにつけて言うようになりました。

「日本がそんなにお金持ちなら、ぼくがそっちで働きたいよ!」「オレも、オレも!!」

って、手まで挙げてこんな調子。(さっき非常識な国って言ったばっかでしょ?!)

いつも売れ残りのクロワッサンやブリオッシュを貰って日々をしのいでいる私も日本人ですが・・・?



フランス車 Un vehicule

 フランスは車社会です。人の多いところでは必ず車もいっぱいで、あちこちに路上駐車・・・・

というか乗り捨ててある感じ。

私が働いていたパティスリの前も、いつも車が停めてあって移動したかと思えばまた違う車が・・。

お店の写真を撮っておこうと思ってるのに、車が邪魔で正面から撮れたためしがありません・・・。

路肩にずらりと駐車してあるたくさんの車を見ていると、まるっきりラフな車ばかり。

私は車に詳しくないのでよく分かりませんが、日本のぴかぴかの車とは明らかに違います。

ぶつけたりこすったり、傷がつくことも大して気にしていない様子で、縦列駐車の場面では

消火栓か何かのポールにガシャーン!とぶつけても平気な顔。ぶつけたところを

ちらっと見ただけで行ってしまいました!ポルシェでもそれですか?!

すぐ横の歩道で飛び上がるくらいびっくりしたのは私だけ!?


ちょっとそこまでパンを買いに行くとか、車はとにかく足代わり。

日本のように自転車が一般的ではないので、車がママチャリ感覚という感じでしょうか。

自転車は、ツール ド フランスに代表されるようにスポーツに使うもので、

それ以外は子供のおもちゃ自転車くらいしか見かけません。

日本では常識のママチャリは見た事ありませんでした。

街の車は大衆車でルノー、シトロエンあたりがほとんど。その次にちょっと高級車のプジョー、

ドイツ車もちらほら、でまれに日本車。トヨタの4駆は当時、パジェロがヒットした

せいもあって、みんなの憧れです。リヨンのターミナルでは大きな看板が

日本車のスタイルや性能を競ってアピールしていますからメジャーな存在です。

パティシエ達も全員車で通勤してきます。仕事の合間には、次はどんな車が欲しいとか、

誰がどんな車を買ったとか車に関する話題も多くて、男の人はやっぱり車好きなんだな〜

って思っていました。車には興味はないのでぼんやりしていたら、

「ところでクミコのお父さんの車は何なの?」って突然話題をふられてみんな興味シンシン。

「日本の車はいいね〜日本でフランス車に乗るヤツなんていないだろ?!」

って言ってたけどそんな事もありませんよね。日本人もフランス人も車に限らず

身近に当たり前にあるものや持っている物は、いいものでも気がつかないんだなあ。と、

母国を離れてみて思う事がよくありました。





これはプジョー308 こんなにピカピカならぶつけないかな?




髪色Une couleur des cheveux

フランス人は、日本人のような黒髪、直毛の人はいません。

多いほうから、栗色、茶色、ブロンド、赤毛、ハゲ(わー、ごめんなさい!でも・・多いです)。

髪の色は目の色とともに、人を言い表す時によく使われます。

髪の色だけに使われる色の表現があるくらいですから。

日本みたいにほとんどの人が黒目、黒髪を持つ単一民族国家ではないので、珍しい感覚です。

私からすると、フランス人というひとつのくくりなので目の色や髪の色は気にした事はなかったけれど。

特に女性は、ファッションを考える上で髪と目の色は重要な感心事。

自分の持っている色のトーンを生かしておしゃれするのが上手です。

マガザンの店員さん達は、いつもしげしげと私を眺めます。朝食は一階で店員のお姉さん方と

一緒に摂っていましたが、新人の若い人は特に遠慮なく観察してきます。

フランスの小さな街で暮らしていると、街中ではじろじろ見られる事には慣れました。

珍しいのですから当たり前の事。彼らから見れば私は外国人なのです。

だから店員さん達に見られるくらいは平気。でも気がつくと20センチくらいの至近距離で

見つめている事も!で、その近くに迫ってるフランスのお嬢さんのお顔も、

それならばと反対に観察させていただく事もあります。珍しいのはお互い様ですから(笑)

皮膚の厚みが薄い感じで、髪、目、肌の色も薄いので全体の色が明るく淡い。

ルージュがとっても映えています。

まつげは男女ともにカールしていて頭が小さい・・・・(私も結構観察してます。)

それで、髪色ですが日本人の黒目に黒髪はフランス人にはエキゾチックに見えるようで、

特にストレートロングは神秘的だと言います。私は当時ショートボブでしたが

マダムは日本人の黒髪はきれいだと誉めてくれました。髪留めはシルバーなんかが

いいわよ、って。皆様ご参考に。(マダムはスタイルが良くてフランス人らしい超小顔、

ブロンドで青い目。ミニのスーツでピンヒールが似合っています!)

で、またフランス人の素朴な質問出ました。


「日本人が歳をとったら髪は何色になるの?」

すごい質問にずっこけそうになった私は、それでもちゃんと答えなければ・・、と気を取り直す。

「し、白ですが・・。」

    (「たまに紫とか?」なんて言ってしまうと一同パニックになるからやめとこ・・)

普通に答えたのに、マダム達は「ええっ!本当!?」ってまた仲間内で討論。

どうしてそんなに驚くのか分からず、「フランス人は違うの?」って聞いてみたら、

「もちろん、私達だって白よ。」

(じゃなんでそんなに驚く?)





どうやらマダム達は、黒と白は完全な反対色なので、白髪じゃなく何らかの中間色になると

思ったようなのです!そんな風に思うなんて、こっちのほうがびっくり!!



フランス人はこのくらいのブリュネット(栗色〜茶)が一番多いです。
日本人も、もう黒髪のストレートロングは見かけなくなりましたね。



レヴェイヨン Reveillon

 クリスマスイブや大晦日の夜がレヴェイヨン。 

準備から始まって夕食まで、夕食と言っても真夜中まで食べ続けしゃべり続け!

年越しをみんなで祝う行事です。


私がフランスで過ごしたレヴェイヨン(大晦日)は、仕事仲間のアポランティエの子のおうち。

例によって世話好きのセバスチャンのママが、一人で可哀想(だと思っている)なジャポネの子を

招待してくれました。

 外が明るい時間からみんなでお料理やお菓子の準備。私もセバスチャンと一緒にひたすら

牡蠣をこじ開けるお手伝い。フランス人は生の魚介類を食べませんが、牡蠣だけは別。

殻付き牡蠣を開けて食べます。雑貨屋さんでは牡蠣を開ける道具がいっぱい売られています。

開けたての牡蠣は香りが良くてだんぜん美味!

大粒の身にレモンを絞って吸い込むようにして食べると磯の香りがしていくらでもいけそう。

また私の何でも食べる様子に驚くママ。いえ日本人は生もの全然平気ですから!!(笑)

お菓子も手づくり。マジパン(アーモンドペ−ストのお菓子)をひたすら一口大に丸めて

並べます。その間、ママは大忙し。私みたいなのまで招いてお料理を振舞うのがとっても

嬉しいママは、私とセバスチャンにあれこれ指示しながら楽しそうにお料理を作っていきます。

セバスチャンは牡蠣を開ける間にすでに10個以上食べてしまったとお姉さんに指摘され

姉弟ゲンカが始まるし、途中からは親戚の小さな男の子の2歳の誕生パーティーまで始まって。

たっぷりと薪をくべられた暖炉で暖まった部屋で、みんなで半袖になりながら大騒ぎ、

にぎやかな年越しになりました。

親戚が持ち寄ったワインやお料理も含めると、「誰がこんなに食べるねん!」というほどの

量になりましたが、みんなが腹12分まで食べてそこそこになりました。

ものすごく疲れた気がしたと思ったらこのパーティー、8時間以上続きました。私とセバスチャンは

早朝からの仕事なのでほとんど夜通しのパーティー。レヴェイユとはフランス語で

「目覚める」という意味なので、きっとレヴェイヨンって「寝ずのパーティー」って意味だ・・。

と思いました。



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