立ち尽くす二人の今の気持ちを表すように強い風が吹いた。
公園の木々がざわざわとたてる音が、一言も話さないままの二人の傍でより一層大きく聞こえる。


「かず・・・は。」
「平次・・・。」


やっとお互いの名前を呼べる状態でお互いが向き合った。
平次の突然の告白から、2週間が経とうとしていた。

久しぶりの対面。
二人きりなんて当たり前すぎるほどの二人だったはずなのに。
何故か今、二人ともとても緊張していた。

「なんや・・・久しぶりやな。」
「せやね。」
「遠山のおっちゃんとか・・・元気やったか?」
「うん・・・。相変わらず仕事忙しいみたいやけど・・・。」
「そうか。」
「そうや。」
「・・・・。」
「・・・・。」

表面上のやりとり。
こんな会話を目の前の人間とやることになるなんて。
落胆にも似た気持ちをお互いに抱いていた。


「あ、あのさ。」
「え?」
「・・・最近店に来うへんけど・・・大学忙しいん?」
「え、あ・・・いや。バイトとかでちょっとな・・・。」


和葉に触れて欲しくなかった質問をされて、平次は思わず顔をそらしてしまった。
反論されたら上手く切り返すことが出来ないと判断したのか?
和葉もそれ以上は何も突っ込んでは来なかった。



上手く会話が続かない。
無理やり話題を作っては無難に答える。
事務的なやりとりに自分たちの絆はこんなにも脆いものだったのかと更に落ち込んでしまう。
何かを話さなければならないという思いはお互いにあるようだ。


それは、分かる。
分かるけれども、以前のように相手が何を話したいのかが分からなかった。
お互いどちらかが話すのをじっと待っている様にみえた。



平次にとって、あの時の言葉は・・・なんやったんやろう・・・?



和葉はあの時の返事、するつもりはないんか・・・?



聞きたいことは唯ひとつだけ。
お互いの気持ちはもう決まってる。
それがお互いに伝わっていないだけ。

あともう一言があれば次のステップへと進めるのに。
「あと一言」を相手に託してしまっていた。



「・・・おれ、コンビニ行こうと思っててんや。」
「あ・・・さよか。私は欲しいもんもないし・・・ほな、またな。」
「・・・ああ・・・。」


結局、平次も和葉もまともなことは何も話せないまま分かれてしまった。
平次はコンビニへ、和葉は家へとそのまままっすぐ歩いていくはずだった。
数歩進んだところで、平次が呟かなければ。



「・・・俺ら・・・もう、駄目かも・・・な」



自分が幼なじみではもう居られない。
その考えが変わらない限り、自分たちは元には戻れないだろう。
そんな諦めにも似た平次の言葉。
それは平次にとって独り言であり、和葉に聞かすつもりなど毛頭無かった。
だが、風のいたずらは平次の独り言を和葉の耳へと届けた。



「駄目・・・なんかって。何でそんなこと言うん?」


和葉の返答は聞こえていないつもりの平次をひどく驚かせた。


「・・・・。」
「・・・なあ、何で?」


和葉の疑問の言葉は平次をイラつかせてしまった。


何も分かっていないのか、と。
今までどおりこれからも幼なじみでいろとそういうことなのか、と。

「それが出来ひんっちゅーてるやろっ!オマエ、人の話何きいとんねんっ!」

それはもう出来ないと。
そうあの日、和葉に伝えたではないか、と。

「なっ!出来ひんってどういうことよっ!なんでそんなに決め付けんのよっ!」


幼なじみなのは変わらないのに。
これからもずっとずっと平次の傍に居たいのに。


「そしたら平次のこの間の「好きや」ってゆーてくれたんは嘘やったっていうの!?」


和葉は感情を抑えきれずに大声で叫んでしまう。


「びっくりしたけどっ!そんなこと考えたこと無かったけどっ!
 平次が傍におるのは当たり前やと思ってたけどっ!ずっとずっと好きやっていう気持ちやって気づいたのにっ!」




「へ・・・?」


感情のままに叫ぶ和葉自身はその言葉を考えもしていないだろう。
・・・それは今までの経験上、分かる。


だったら。今。和葉の言葉は・・・・?


和葉とは逆に平次はだんだん冷静になってきていた。


「平次のこと大好きやのにっ!もう、ええっ!!」


決定的な言葉を最後に和葉は、くるりと平次に背を向けて走り去ろうとした。

だが。


一瞬後、平次は走り出そうとした和葉の手首をつかんだ。


「かず・・・は、待てや。」
「・・・平次・・・・?」



そのまま走り去るつもりだったのに手首をつかまれ、そのから一歩も動けなくなってしまった。
訳が分からなくなっている和葉だが、たったひとつだけは分かった。


捕まれた手首が・・・熱い。




「勝手に自己完結して逃げんなや、オマエは。」
「なっ!」

平次の言葉に和葉は軽くパニックを起こしていた。
それとは裏腹にしたり顔の平次。


「なあ、信じてエエんか?オマエのさっきの言葉。」
「え・・・え?え?」

どこか勝ち誇った平次の声。
その雰囲気は分かる。

でも、和葉は今、それがどういう意味を持つのか分かっていなかった。
頭に血が上った状態で言った平次への告白。

その言葉を言ったことさえ、分かっていないように見えた。


それはそれでがっくりくるものがあるが。
平次はソレはもう、どうでも良かった。


和葉が「自分を好きだ」と。
ただ、それだけが分かれば突き進める。


「・・・も一度だけ言うで?」
「え?」

すっと真剣な表情を見せる平次に和葉は思わず見惚れる。
そして、そのまま時が止まる。


「オレは、和葉が好きや。」


まっすぐに届けられる言葉が和葉の耳を通って、身体中に染み渡る。
最後に、涙腺を壊して、その感情を平次に伝える。


「平次ぃ・・・。」
「・・・オマエは、オレをどう思ってる?」


確かめたい気持ちをそのまま素直に平次は言葉にした。




「オレは、この手をこのまま引いても構わへんのか?」



その言葉が終わると同時に、平次の胸に和葉が飛び込んできた。
背中にがっちりと回される和葉の細い腕。
そして、身体全体に感じる和葉のぬくもり。


感情は全部伝わってきている。
でも、どうしても言葉が欲しくて。
平次は抱きつかれたまま、腕を回そうとはしなかった。


「・・・平次・・・が好き。大好きやねんっ!」


回されない平次の腕にじれて、和葉は叫んだ。


「・・・絶対、離したらへんからな・・・?」


漸く手に入れた世界で一番大事なものを壊さないように、そっと。
でも、きつく抱きしめた。



漸く平和編終了です!

いや、長かったっ!こんなに長くするつもりはなかったんですけど?
うーむ。

平次が静かに告白したので、和葉ちゃんには叫んでもらおうと思ってたのですけど。
本来は、この夜の公園ではケンカ別れして、お店での告白・・・とかって思ってたのです。
けど、書き出すと、公園でコクってしまいました。あはは。

これで漸く新蘭編最終局面へと移れそうです。
が、次回はまだ、お預けです(笑)
新一、耐えてねv(にっこりv)