もぉー君、がぉー君、ぴょんちゃん物語 第3話

 

毎日毎日 降り続いた雨も上がり、見渡す限り真っ青な青空。

肌寒い梅雨も明け、暑い暑い日が続くようになり 季節はもうすっかり夏です。

もぉー君、がぉー君、ぴょんちゃん達には、待ちに待った夏休みが始まりました。

朝6時に起きてラジオ体操です。

ぴょんちゃんも、お兄ちゃんたちに付いて行きます。

特別にカードを貰ってスタンプを押してもらいます。

嬉しくって嬉しくって仕方ありません。だから毎朝、早く起きます。

そうして、もぉー君、がぉー君を起こします。

「早く行こうよ!」っと。

ラジオ体操は、近くの神社「金札さん」であります。

大きな木があるので、とっても涼しいのです。

木の高い所では蝉が鳴いています。

近くに住むゴン太君も、来ています。

だからラジオ体操が終わると、もぉー君、がぉー君、ぴょんちゃん達は、ゴン太君と一緒に遊びます。 

じゃれあったり、おいかけごっこをしたりして・・・

お兄ちゃんのもぉー君が言います。「そろそろ 朝ごはんの時間だから帰るよ」っと。

ゴン太君も途中まで、一緒に帰ります。

「ゴン太君 バイバイ!」「ワンワン」

本当に仲がいいんですね!

 

この日も 朝は、いつもと同じでした。

でも、がぉー君は今日 友達と一緒に泳ぎに行く日でした。

夏休み前から約束してあったのです。

近くに泳げる場所が無かったので、とても楽しみにしていました。

帽子をかぶって、母さんに作ってもらったお弁当、お茶、水パン、タオルを持って

先輩や、仲間達と出かけて行きました。

危険な場所に行ったり、危ない遊びは絶対しないように、出かける前には

父さんや、母さんから、充分なほど注意されていました。

がぉー君達は、水泳場に着きました。

みんなと一緒に遊んだり、泳いだりしていた時でした。

がぉー君は、父さんや母さんの言いつけを良く守っていました。

ふざけたり、冗談なんかは決してしていません。

でも、事件は起こってしまったのです。

窪みに、足をとられて溺れてしまいました。

がぉー君は、必死に泳ぎましたが、どうすることも出来ません。

その時、一緒に来ていた上級生が、もがいているがぉー君を見つけて

水中に潜って 水中から水面へと 何度も 何度も水面へ向けて

体を 押してくれました。そうして何とか、浅瀬にたどり着きました。

助かりました。助けてもらいました。

がぉー君は、生まれて始めて 生死をさまよう恐い思いをしました。

今迄、どんな辛い思いをしても 父さんや母さんが側にいてくれたし

ぎゅっと抱きしめられたら、安心することが出来ました。

今日は、友達と一緒です。

こんなに恐い思いをしたにもかかわらず、がぉー君は泣くことも 我慢してしまいました。

 

水泳場から帰ってきたがぉー君を、おじいさんが迎えてくれました。

「楽しかったかぁ 水遊びは。」

がぉー君は、「うん」と言っておじいさんに、抱きつきました。

おじいさんは、大きな手で肩を「ポン ポン」と2回たたいてくれました。

「そうか 良かったなぁ 良かったなぁ」と言いながら

背中を抱きしめて くれました。

 

晩御飯の時 がぉー君は、今日の楽しかったことをみんなに、自慢しています。

水しぶきを上げて5メートル泳げた事。息継ぎを 教えてもらった事。

お砂で山を作ってトンネルを掘って、みんなでお水を流した事。

お弁当を残さずきれいに 食べた事。玉子焼きが とっても美味しかった事。

宝探しゲーム大会があって 参加したことを・・・。

でも、何故か あの恐い思いをした事は、話しませんでした。

ぴょんちゃんも負けずに、自慢します。

「今日ね。もぉー君にね。金札さんで蝉を取ってもらったんだよ!3匹も。」

「それに お昼寝の後、3時のおやつにスイカを食べたよ。」っと・・・。

 

 

★みなさんも 経験ありませんか?★

無意識に なんとなく 何故かはっきりとは、解らないままに

秘密にしてしまった事を・・・

この事を言ったら、叱られるかも知れない。それだったら・・・。

この事を言ったら、心配するかも知れない。それだったら・・・。

だから自分の心にしまっておこうと、決心した事が・・・

ただその時は、怒られるのがいやだからと言う理由だけかも知れません。

子供心にしたら、やはり大人は大きいし、頭ごなしに押さえつけられるような・・・。

親としては、憎くて言っている訳でもないのに、

危ない目に合わない様にする為に、注意しているだけなのに

子供にとっては、叱られている様な気がします。 

そうして、だんだん子供なりに 自分にとって都合の良い事、悪い事を判断する能力が備わって

少しずつ、少しずつ大人になって行くのかも知れません。

 

がぉー君が「恐かった事」を秘密にしないで、おじいさんに話していたら

父さんや母さん、もぉー君やぴょんちゃんに話してたら

この想い出は、小さく 小さくなってしまって、40年近く経った今も

ゾットするような想い出には、成っていなかったかも知れません。

話さ無かった事によって、鮮明にいつまでも残っていたのかも 心の奥底に・・・。

今こうして話して戴いた事によって、この「恐かった事」が半分になり

また、こうして書かせて戴いた事によって半分になり

そうして、読んで戴くたびにまた半分に、またその半分になって行くのかも知れません。 

でも、もしかしたら犯罪には、時効があっても、

心の中と記憶には、時効は無いのかも知れません。

話すたびに、よけいにハッキリと鮮明に甦るかも知れません。

ちょっとでも罪悪感を持った秘密は・・・。

楽しい想い出はいいですけどね。

心にいつまでも残る楽しい想い出を、沢山作りましょう。

 

MIYU

がぉー君を助けてくれた先輩どうも有難う御座いました。

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