SDR用 自作リニアアンプ 移動局用(50W)と固定局用(150W)

2016/04/25
JE3PRM (WE3PRM)
Shingo Takimoto

[移動局用(50W)リニアアンプ]
このアンプには安価(200円ほど)なスイッチング電源用のFETを2本使って出力50W(3.5MHz〜14MHz)の出力を得ています。 回路は図のようにB級プッシュプルの広帯域増幅となっています。 電源電圧は45Vとしています。 FETは東芝のTK10E60Wで、重要なパラメータの最大電力、ドレイン電流、ドレイン電圧、入力容量は Pd=100W、Id=9.7A、Vds=600V、Ciss=700pF です。 後述する150WのリニアアンプのFETはPd=130Wで、しかもこちらの方が安価でしたが、免許の保障の関係でPdの合計が免許の電力の4倍を超えてはならないとの規制から、このFETとしました。 しかし現実には真空管と異なり、FETのPdで尖頭電力を規制するのは難しく、特にSSBでは限界があります。 実験の中でこの電力の限界はFETのバイアスの温度補償の性能に大きく関係するということを実感しました。 温度が上がるとIdが増えるので、これを抑えるためVgを下げる必要があります。 しかしFET内部の温度を直接計る手段はないので、放熱フィンの温度をサーミスタなどで計ることになりますが、ここに伝わる時間が問題となります。 一方今回使ったFETの温度依存ですが、Idに200mA流すVgの値(約5V)は25度から70度程度まで測定すると0.5Vほども変化しました。 そしてこのバイアス(Vg)を温度補償回路なしで使った場合、SSB 10W程度でFETは温度暴走し、一瞬で破壊してしまいました。 そこで回路図のようにFETの放熱フィンに押し付けたサーミスタと2個のLEDを使ってこの変化を補償しました。 温度が上昇するとサーミスタの抵抗値が下がり、Vgが下げられます。 しかし10度以下の低温では抵抗値が上がりすぎて、オーバ補償となるので、それを防ぐためLEDの順方向飽和電圧でブロックしています。 完全とはいえませんが、これで数十秒程度の時間50W連続波でもFETの破壊はなくなりました。  またIMD特性についてはツートーン信号の発射を別のSDRで観測したところ、アイドリング電流100mAでー35dB程度となり、何とか合格ではないかと考えます。

[固定局用(150W)リニアアンプ]
固定局用として図のブロックのような構成で150W出力のアンプを設計、製作しました。 FETはやはりスイチング用で米国ネット通販でたった1$で購入したAlpha & Omega社の AOT5N60 で、これはPd=130W、Ciss=583pと前述のTK10E60Wより低く、使い易いです。これを4本でパラプッシュの構成としました。 1W入力ではこれらのFETだけでは多少増幅度が不足したので、前段としてトランジスタ2SC1306で10dBほど増幅してあります。 最終段の50オームへのインピーダンス変換にはトロイダルコア2個を使い1:4の伝送線路の広帯域アンプとしています。 このコアには FT114-61を使っていますが、この巻き線に使用する線材の入手が多少厄介です。 50オーム程度の低いインピーダンスを保持したい場合、芯線(単線)の絶縁被服は導体の太さの半分以下程度にしたいのですが、1mmほどの芯線では簡単に見つかりません。 そこで1mmφの銅線に熱収縮チューブやビニルテープを巻いて作ってみました。 なんとか実用になりましたが、幸い秋葉原でテフロン被服の1.2mmのものを見つけましたので、現在は50W用と共に最上段の図のようにそれを使っています。 この伝送路を1:4としてインピーダンス変換をしましたので、そこから最適な電源電圧が決まります。 V=(SQR(2PZ))+10 となり、50Wで45V、150Wで70Vが最適となります。 入力のトロイダルコアは安直に所謂パッチンコアを使用し、ホルマール銅線0.5φを使用しましたが、充分実用になりました。 全体の回路としては基本的に50Wと同様であり、これに、前段の増幅器とId電流制限回路追加した程度なので、省略します。

 

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