SDR とKenwood TS-480 との連動、
その機能を利用してのリモート運用

2017/01/08
JE3PRM (WE3PRM)
Shingo Takimoto

[システム構成]
汎用のトランシーバとしてTS-480を使用していますが、受信にはSDRを使用し、PCの画面でスペクトラムを見ながらオペレーションができるようにしました。 SDRのS/Wとしては、SDRconsoleを使っています。 H/Wには米国RFspace社のSDR-IQを使っていますが、これは手持ちの関係であり、現在では安価なSDRドングルからGHzまでの連続カバーできるものなど多くのものがSDRconsoleに対応しています。 送信はTS-480ですから、当然周波数の連動とアンテナを切り替えが必要です。 周波数の連動についてはOmniRigという機能をSDRconsoleに追加する事で実現でき、USBでPCと繋ぎます。 アンテナの切り替えはリレーで行うわけですが、詳細は後述しますが、SDRとTS-480との同時受信が可能なように分配回路を追加しました。 以上のシステムでは送信関連の設定やTX/RXの操作はTS-480から通常通り行う事になりますが、正直、このごろのトランシーバの設定や操作の煩雑さにはうんざりしており、自分でよく使う操作だけをPC上の画面で簡単に操作できるようにするためのプログラムを作成し、これをOmniRigと連携させました。 これにより通常のQSOではTS-480には全く触る必要がなくなりました。  これにPCのRemote Desktop 機能を使うとインターネット経由で別の場所のPCからリグの前に居る感覚でQSOが可能です。


[アンテナ入力分配回路--2台同時受信]
通常ならアンテナを切り替えるリレーを1つだけ用意し、このリレーをトランシーバに標準で用意されるコントロール出力に繋ぎ、受信時にはSDRに、送信時にはトランシーバに切り替えれることで、送受のコントロールが出来ます。  しかし図のような特別な回路を作り、2台同時受信を図ったのは次の理由です。

  1. OmniRigの送受の切り替えに若干の遅れ(0.2〜0.5秒)があるため、通常のQSOは問題がないが、コンテストには不向き。 この場合はバンドスコープはSDRで、音声はトランシーバで行う事で解決できる。
  2. ノイズ除去やビートキャンセルなどの受信の了解度性能はSDRが一般的には優れているが、時としてアナログ型のトランシーバの受信音の方が自然に感じ、上記と同様の運用をしたくなるときがある。
  3. 2台を独立に動かし、別々のバンドを同時にモニタしたい。
  4. 以上の課題に対し受信時2台のアンテナ入力を直接繋ぎ、送信時だけ切り離す方法があるが、お互い干渉しノイズや不要輻射の影響を受ける。

これらの問題解決のため、図のような回路を作りました。受信時、リレーで切り替えられたアンテナからの信号は、まずトロイダルコアを使ったハイブリッド回路(参考:トロイダルコア活用百科 CQ出版)で2つに分岐されます。 これが下図の回路のT1とR1です。 分岐した後バッファアンプで増幅しTS-480とSDRのアンテナ入力とします。
T1とR1だけで分岐回路は成立するのですが、入力のインピーダンスが出力の1/2となってしまい、一般的な50Ωインピーダンスを持つ受信器だと分岐回路の入力は25Ωとなりアンテナとはミスマッチとなります。 また、相互干渉も2台並列接続に比べ-10〜ー15dB程度には低減できたのですが、不満が残りました。 そこで分岐した後にバッファアンプを入れ、このアンプ入力インピーダンスを100Ω程度とし、インピーダンスマッチと干渉の問題解決を図ることにしました。

バッファアンプはGG回路(ゲート接地回路)で広い周波数でほぼ一定の10dB程度のゲインとなり、分岐の減衰を完全に補正できました。 相互干渉もー50dB程と非常に効果がありました。 また、アンテナが繋がる入力インピーダンスは50Ωとなった事を自作のリターンロスブリッジで確認しました。 使用した部品に関して、T1,T2,T3のコアは所謂パッチンコアで、プラスチックの外装を取ったものです。 手持ちのコアを計ったところ、2ターンで1μH で、これを7回巻きとしました。 T1はバイフェラ、T2,T3はトライフェラ巻きで、出力インピーダンスを1/9としました。 FETはJ211(Fairchild)を使い、入力インピーダンスは1/gmとなり,100〜150Ω程度に出来ました

リレーは一般的なパワーリレーですが、リレーのケースを外し、結線が最短になるよう多少の改造を加えました。 これで28MHzまでの使用には問題ありませんでした。 リレーのON/OFFは RS232C の DTR 信号とトランシーバのTX制御線(ON/OFF)で行っています。


[PCプログラム]
SDRでバンドの様子を見て、周波数をPC上の画面をクリックして、トランシーバのPTTを使ってQSOするのなら、特別なプログラムを作成する必要がありません。SDRconsoleとOmniRigを使うだけで簡単に出来、バンドスコープを持たないトランシーバがPCの大画面にペクトラムを映し出す高級機に変身します。

その上でプログラムを作ったのは以下のような操作をPC上で実現するためです。

  1. TS-480の設定で以下のものをPC画面上で操作できるようにした。
  2. アンテナ入力の切り替え
  3. その他のSDR(PowerSDR)のコントロールの統合

OmniRigは通常直接トランシーバのRS232Cポートに繋ぎます。下図ではCOM12となります。 しかし上記の機能を入れ込むにはコントロールプログラムがOmniRigとTS480の間に入り、時にはデータをそのまま流し、上記の機能を使う時は、その流れの中にコマンドを割り込ませることで機能させます。 そのためにCOMポートを分ける必要がありますが、実際のRS232Cのコネクタの代わりに仮想のポートを用意します。

代表的な仮想ポートプログラムがCom0Comです。 注意点として、このCom0Comには最新バージョンがありますが、署名済(sigend)でないとテストモードでしか動きませんので、私は com0com-2.2.2.0-x64-fre-signed.zip の旧バージョンを使っています


[リモート運用]
リモート運用では、いわゆるアマチュア無線用として作られたプログラムではなく、Windowsの下で動く汎用の Team Viewerを使いました。 下図のようにトランシーバ側のPCをホストに設定し、操作するPCにリモート(クライアント)設定すれば、あっけない程簡単に構築出来てしまいます。

これでホスト側の画面と全く同じ画面がリモートに表示され、マウスなどもそのまま動きます。 したがってSDRのバンドスコープも同様手に取るように見えます。このシステムでの問題はネットワークのスピードです。 私はリモート運用として同じLAN内でリグがある部屋とは別な所からの運用が多いので、全く問題はないのですが、いわゆる外部からだと回線スピードの関係でうまく使えない事もあります。


音声に関してはVoIPを使いますので、トランシーバのオーディオ入出力をPCに繋ぎますが、私は図のようにST23という300Ω 1:1のトランスで絶縁し、PCを通す回り込みを軽減しています。 直接接続もしてみましたが、50Wを超えるとPCのマイクに発射電波が乗り、やはりトランスでの絶縁などの対策が必須のようです。 VoIPは一般的なSkypeを使っています。 ただしSkypeのオーディオ設定の自動は外した方がベターです。


top   Home page