牛耳を執る
昔の中国では、諸侯が集まって同盟を結ぼうとするときは、神への生贄(いけにえ)として用意された牛の左耳を切り落として、その血を唇(くちびる)にぬって誓いあうという風習がありました。同じ動物の血をすすることでお互いがなかまになるという意識を持つ儀式で、牛の耳を切り落とすのは最も弱い国の役割、それを盟主(めいしゅ=その会合の代表)が最初に血をすすって、あとは指名された順に回しました。
魯(ろ)という国が世の中を治めていた頃、晋(しん)という国と衛(えい)という国が同盟(どうめい)を結ぼうとしていました。衛の国から晋の国に対して「牛耳をとって欲しい」という申し入れがありましたが、晋の役人である成何(せいか)は、「衛はわれらの国の一地方である温や原という場所と同じ大きさの国ではないか。同じ諸侯としての扱いはできない。」と断りました。
<例> 彼女は、実質的にこの団体の牛耳を執っている人だ。