ことばのレシピ語楽 故事成語 解説

他山の石

 鶴が深い谷間の沢にいたとしても、その声は山に広がる野原まで響いてきます。魚が水に潜っていたとしても、いずれは水際に姿を見せるでしょう。私が庭で大切に育てている檀(まゆみ)の木も、やがて立派に成長して人目をひくでしょう。それがとても楽しみなのです。

 檀の木の下には、他の木の枯れた枝や落ち葉を埋めて肥やしにします。何の役にも立ちそうもない枯れた枝や落ち葉であっても、若木を肥やすことができるのです。同じように、よその山で取れるつまらない粗悪な石であっても、砥石にすることができるでしょう。

 鶴が深い谷間の沢にいたとしても、その声は天まで届きます。魚が水ぎわで遊んでいたとしても、いずれはまた深くに潜ってしまいます。私が庭で大切に育てている檀の木も、やがて立派に成長して人目をひくでしょう。それがとても楽しみなのです。

 檀の木のそばに穀(からたち)などの雑木を植えて支えにしています。何の役にも立ちそうもない雑木であっても、使い方によってはなくてはならないものになります。同じように、よその山で取れるつまらない粗悪な石であっても、玉(たま=宝石)を磨くために砥石として使うことができるのです。

 鶴がどこにいてもその存在がわかるように、優秀な人物はたとえ野に隠れていてもその名は自然に知られるようになるでしょう。魚が水の中を自由に行き来するように、賢い人物は何にも縛(しば)られずに自由に生活するでしょう。庭に檀の木とそれを支える植物があるように、立派な君主がいるところにもつまらないと思われる人たちがいて支えていることもあるでしょう。君主になるような立派な人は、どんなにつまらない人物であっても自分を磨く大切な人材として扱うことができるのです。

『詩経・小雅』
■ 自分がより良くなるために役に立つ他人の言行。どんなことでもとらえ方によって自分の反省材料になる。

<例> この失敗例を他山の石として、もう一度しっかり点検して欲しい。