Angel Sugar

「病院ではお静かに」 (キャラ別ショート)

タイトル
 崎斗の事件で散々な目にあい、更に大けがを負わされたリーチとトシは長期入院を余儀なくされた。だが身体が回復しだすとごねだしたのはリーチだった。
「……退院しても良いだろ?」
 口を開けばその言葉ばかりを繰り返すようになったリーチだが、ようやく胸のコルセットが包帯になっただけで、まだ日常生活をこなせるほど快復したわけではない。それにも関わらず、会えばその台詞ばかりを口にしていた。
 本日も診察やオペの合間を縫って、様子を見に来た名執であったが、顔を見ると挨拶も無しにそれなのだから始末に負えない。
「いい加減に他の言葉を言えないのですか?」
 苦笑しながら名執はリーチが横になっているベット脇に腰を下ろしてそう言った。
「退屈なんだよ……そりゃ、トシはいいよ。あいつは元々暗いんだから。一人遊びしてりゃあ問題は無いし……。まあだから幾浦みたいな根暗な男と付き合えるんだろうけどさあ~俺は駄目だ。身体動かせないと気がおかしくなっちまうよ」
 あーあーと言う口調でリーチは言った。
「……トシさん起きてませんよね」
 まさかと思った名執はそう聞いた。
 この男、どうもパソコン好きの人間を見るとすぐ暗いだの、根暗だのという評価をするのだ。自分が外を走り回るのが好きだからと言って、それに当てはまらない人間は全て暗いと言う困った男だった。
「お前が来たらそっこースリープするよ。人様の熱々ラブラブなんかみたかねえってとこだろうさ」
 くっくっくっと笑いながらリーチは言う。
「そ、そうですか?」
 以前、やばい雰囲気の所をトシに見られてしまったことで名執は狼狽えながらそう答えた。トシも多分同じような気持ちなのだろう。
「で、いつなんだよ~退院。俺マジで退屈で死ぬぞ」
「リーチ……毎日毎日聞かれても困ります。貴方は心臓部分を手術しているんですよ。それなのに、簡単に退院できると思って居るんですか?何度も申し上げていますが、肋骨がきちんと繋がってからです。まだ軟骨の状態ですので駄目なんです。そんな身体で走り回るなんて私は考えるだけでゾッとしますよ……」
「……俺、庭くらいは散策出来るほど快復してるぞ」
 ムッとしたようにリーチは言った。
「貴方の場合、退院したらすぐに復帰する気で居るでしょう。いきなり重労働な刑事の仕事に復帰するなんて自殺行為です。どうしてそれが分からないのでしょうか……私はその方が不思議で仕方ありませんよ……」
 困ったような顔で名執が言うと、リーチは上半身を起こして言った。
「あったりまえだろ。俺達の仕事なんだから……。俺好きでデカやってるんだよ。こんな怪我くらい唾つけときゃ治るんだよ。医者って言うのはどうしてかすり傷にそうぐちゃぐちゃと難癖付けて病人にしたがるんだろうなあ~」
「唾を付けて治るような怪我に、二度も手術は致しません」
 名執はきっぱりとそう言った。
「けっ……冗談も通じないんだからなア~面白くない」
 そう言ってリーチは又ベットに沈んだ。
「あああもうマジで身体が鈍ってるんだよ~」
 手をバタバタさせてリーチは言った。
「子供じゃないんですから、大人しくして下さい」
 名執はどう宥めて良いのか分からずにそう言った。リーチはごね出すと本当に手に終えないのだ。特に今は崎斗の事件も解決したこともあって、今までリーチ達の病室を警護していた警官はもう居なかった。だから、逃走しようと思えば出来る。それをしないのはようやく名執が引き留めているからだった。
 限界が来たら本当にこの男は逃げ出す……
 それが分かっているために、名執は日々どうやってここに縛り付けておくか苦心しているのだ。拘束できるのなら手足を縛っておきたいほどだった。
「貴方が逃げ出したら……貴方の上司にきつく言って貰うようにしますからね。分かってますね」
 リーチ達の上司を出してようやくリーチは納得する。だがこれもそれほど長くは保たないだろう。
 せめてあと一週間はここにいてもらわないと名執は安心できないのだ。特に自分の身体のことは二の次に考えているリーチであるから、不完全な身体で外に出すことが出来ない。そんなリーチをトシが止められると良いのだが、それも無理なのを知っている。
 リーチが言いだしたことを止めることが出来る人間が居るのなら会ってみたいと思うほど、リーチは我が強いのだ。
「……俺……退屈」
 横目でじーっと意味ありげにリーチは視線を送ってきた。
「はいはい。入院は退屈なんです。仕方ないんですよ」
 呆れた風に名執は言った。
「運動したい……」
 やはりこちらをじっと見てリーチは言った。
「もう少し元気になってからです」
 ピシリと名執が言った。
「……男の生理が溜まってる」
「はあっ?」
 名執はその言葉に驚いた。
「……そう言う場合は……あの……トイレに行ってください。幸い外科の病棟には部屋にトイレを設置してありますし……」
 仕方無しに名執はそう言った。
「それってさあ、お前がそうなのか?」
「……えええっ!?」
 名執は妙な声を上げた。そんな事を聞かれるとは思わなかったのだ。
「だってよ、お前がそうだから俺にもそうしろって言ってるんだろう?」
 何故かこちらを睨みながらリーチは言った。
「ちっ……違いますよ。私はそんな……」
「じゃあ、お前はどうやって始末付けてるんだ?」
「……我慢してるだけです……」
 もちろん正直な話、リーチを思って確かに悶えることはあるが、相手が病人だからどうにもならないのだ。だからといって他に誰かと等とこれっぽっちも考える事はしなかった。
「……我慢するなよ……」
 ニヤニヤとしながらリーチは言った。
「トイレでしろと言うんですか?」
 何だか名執はムッとした。 
「まあ~俺が抜いてやらないとお前一人じゃ出来ないのしってるもんなあ~。お前はバックに入れられなきゃ満足できない身体だし……」
 まるで嫌がらせのH電話のような口調であった。
「私のことは放って置いてください」
 からかわれたと思った名執は腹が立ってきた。
「おいおい、怒るなよ。じゃなくて、我慢しないで夜忍んで来いって言ってるんだよ。これでお互いの問題が解決するじゃないか~」
 えへへとにやけた笑いを浮かべながらリーチは言った。
「貴方は何を考えてるんですか?ここは病院ですよ!」
 ややきつく名執は言った。
「……じゃあ逃げてやる。外でしかお前とイイ事出来ないんだったら逃げて外でやる。それで良いんだろっ!」
 冗談ではなく本気でそうリーチが言っているのが名執には分かった。そんなリーチに溜息が漏れる。
「……貴方は……そんな事のために逃げ出したいのですか?」
「あーーーーっ!そんな事って言うのかお前っ!何言ってるんだよ!俺の人生で一番大事なのがそれなんだぞっ!」
 一番大事って……
 セックスが?
 あきれ果てた名執は言葉が出ない。
「はあ……」
「まあ……一番大事なのは……お前だけど……その次くらいにさ、お前とやることが大事なんだよな……」
 リーチはそう訂正して言った。
「はいはい。好きに言ってくださって結構ですよ。私もそろそろ、会議の時間ですから行きますね」
 構ってられないと思った名執は、腰をかけていた椅子から立ち上がった。
「今晩お前が来なかったら、俺ぜってーーーー逃げてやるからなっ!分かったなっ!有言実行!俺はやるっ!」
 訳の分からないことを言い出すリーチを置いて、名執は病室から出た。溜息しか出なかった。

 時間は十二時を回る頃だった。名執は自室でカルテの整理をしていたのだが、ふとリーチが言っていた言葉を思い出した。
「俺はやる……ってふざけたことを言ってましたが……本気じゃないですよね……」
 部屋に置かれている時計を見ながら思わず口をついてそんな言葉が漏れた。
「……」
 どうしよう……
 リーチは言い出したら絶対実行するのだ。
「……様子を見に行くだけです……」
 自分自身に言い聞かせるようにそう呟くように名執は言い、椅子から腰を上げた。
 薄暗い廊下を歩き、外科の病棟のある三階に降りる、看護婦の詰め所が廊下の真ん中にあるのだが、そこだけが明るい。中に数人の看護婦が待機し、カルテの整理をしたりモニターのチェックをしていた。
 ここを通れば、見られてしまう……
 と、思った名執は一旦非常階段まで戻り、廊下の端にあるもう一つの階段から三階に入り直した。リーチ達の病室は警護しやすいようにと一番端にあった為、こちらの方が便利だったと今頃名執は気が付いた。
 動揺してる……
 どうして……
 私は様子を見に行くだけ……
 それだけなのに……
 必死にそう思いこもうとしているのだが、どこかで期待している自分が居るのも分かった。
 心臓をいつもより早い速度で鼓動させながら、名執が問題の病室に入ると、分かっていたようにリーチが言った。
「やっぱり来てくれたんだな」
 そうして枕元にある小さな電灯をつける。
「よ、様子を見に来ただけです。昼間逃げるとか逃げないとかおっしゃっていましたので……」
 動揺を気取られないように平静にそう言ったが、こちらが今どんなにドキドキしているか等リーチにはすっかりばれているはずだった。
「ふうん……医者ってそう言うことにまで配慮してくれるんだ?」
 ニヤニヤと口元を歪ませてリーチは言った。
 とにかく、嬉しそうだ。
 違うっ!
 そんなつもりで来たわけでは……
 名執は椅子を引き寄せて座ろうとしたが、その椅子を引き寄せるのに失敗し、床に転がしてしまった。
 おもいきり動揺している~
 と自分で焦りながらも「済みません」とだけ言い、椅子を再度持って床に立てるとそれに座った。
「……お前さあ……」
「何でしょう?」
「面白いぞ」
「……」
「いいじゃん別に……恋人同士なんだから……」
 時と場合があるとこの男に分からせるにはどうして良いか名執には分からなかった。
「……逃げないでくださいね」
 名執は、間抜けな言葉しか出ない。
「お前がちゃんとする事をしてくれたらな……」
 言ってリーチは上半身を起こし、背を枕にもたれさせた。
「……ちゃんとって……ここはっ!」
「でかい声出すなよ。病院だろ。そんな事分かってるよ。じゃなくて、俺を慰めてくれよ……いいだろ?」
 言っていそいそと毛布を足元にずらしていく。
「良い訳無いでしょう」
 頬が赤くなりながら名執は言った。
「じゃなんで来るんだ?こんな時間にさ」
「……だから……貴方が逃げると困るので……」
 もごもごと名執はそう言った。
「いいから、ベットに上れよ」
 イライラとリーチは言った。
「リーチ……本当にここでは……」  
「ユキ……お願いだ……」
「……」
「お前が欲しいんだ……」
「…………」
「どうにかなってしまいそうなほどお前が今欲しい……」
「………………」
「愛してるよ……ユキ……」
「……………………」
「けっ……お前なんか、俺のことどうでも言い訳だよ。だっから嫌だったんだよ。こんな所に居るのはさ。ここにいるとお前はぜってー医者の顔しか見せないからな。んだよ……期待させるだけなら来るな。帰れ。医者の顔のお前なんか見たくもない」
 そういってリーチは足元に団子になった毛布を引き上げて、こちらに背を向けると丸くなった。
「リーチ……」
 リーチが本気で怒ったのが分かった名執はリーチの名前を呼ぶことしかできなかった。
「帰れ。医者の顔で来るならもう回診以外では来るな。分かったな。ああ、ああ分かってるよ。逃げなきゃ良いんだろ。それが心配で来るんだったら逃げないって約束してやるから、その代わりもう来るな。俺はお前が居るだけで煽られてるんだからな。そんな事もわかんねーで、無神経に来るならもう来るな。逆に迷惑だ」
 冷たくそう言い放たれた名執は涙が出そうだった。
「あの……」
「うざいよ。帰れ」
 言ってリーチは先程点けた電灯を消した。
「お休みなさい名執先生。手間のかかる患者はもう居ませんのでお帰り下さい」
 本気で怒ったことを示すようにリーチの口調は利一特有のものに変わった。
「……そ、そんな言い方しなくても……」
「名執先生は、医者の口調でしょう?だから私は利一なんです」
 相変わらずリーチは他人行儀になったまま、元に戻らない。
「リーチ……」
「……」
「リーチって……」
「……」
 こういうリーチを見ると名執はとたんに不安になるのだ。小さな子供が、誰も自分を知らない所に一人取り残されたような、そんな不安に駆られる。
「……うう……」
 思わず名執は目元から涙が落ちた。リーチに拒絶されるのが一番堪えるのだ。 
「……おい」
 そんな名執に気が付いたリーチがようやくこちらを向き、先程消した電灯を再度つけると、うつむく名執の頬を掴んだ。
「なんだよ……泣くなよ……」
「……だって……リーチが……ん……」
 抗議しようとした口元を掬われそのまま名執はリーチの身体に手を伸ばして身体を寄せた。
「ユキ……おいで……」
 リーチの優しげな瞳に吸い寄せられるように、名執はベットに上がり、もう一度互いに口元を合わせた。
「……ん……」
 何度も口内を愛撫され名執は久しぶりに感じる舌の交わりを味わう。それと共に押さえていた身体の疼きがここに来てまた身体を支配し始めた。
 駄目だと思うのだが、ここまで来ると自分の身体を止めることが出来ない。
「……リーチ……私……」
「見て……これ……もうこんなになってるよ。お前の所為だから、お前が最後まで面倒見てくれよ……」
 熱っぽい瞳でそうリーチは言い、名執の手を取ると自分の盛り上がっている部分に触れさせた。
 パジャマの薄い布地を一杯一杯引きつらせて、リーチの欲望は狭い中で勃ちあがっていた。
「……あ……嘘……」
 かああっと頬を赤らめ、薄闇の中で触れているリーチの塊を確認した名執は、今度はそれを見たくて仕方なかった。
「嘘じゃねえよ。お前に興奮してるんだ……」
 言ってリーチは自分から、勃ちあがるものを引っ張り出した。
「……リーチ……」
「イかせてよ……お前の舌で……」
 名執はもうここがどこだか忘れたように、その塊を口に含んだ。
「……あ……すげ……久しぶりに良い気持ち……」
 リーチは嬉しそうにそう言った。
 もっと気持ちよくしてやろうと名執は口に一杯に含むと、吸い付いて舌で舐め上げた。
「……イイ……」
 名執の屈めている身体を撫でながらリーチはそう言った。
 強く吸い上げ、舌を這わせながら先端を口先で触れるようなキスを落とすと益々リーチのものは悦びに震えた。
「……あ……お前……上手くなった……」
 そんな言葉は名執を余計に積極的にさせる。
 ぐっと口内に頬張るとリーチがいきなりタオルを持ってくるので、それを横目に払いのけ、自分の中で放出させた。
「……ああもう……そこまでしなくても……」
 言いながらも嬉しそうなリーチであった。
「貴方のものは……なんだって私のものです……」
 口元を舌で拭いながら名執はそう言った。
「……で、お前はいいの?」
「ここまで来てそれは無いでしょう?」
 既に開き直っている名執だ。一人だけ何も無しでは余りにも苦痛だった。
「そう言うと思った。その代わりお前が上に乗れよ」
 意地悪そうにリーチがそう言った。
「……それしか……無いですね」
 少しだけ残った羞恥心が名執の心をちくりと刺した。だが止められないのだ。自分もリーチを感じて、気持ちよくなりたいのだ。リーチが欲求不満だった分は、そのまま名執にもあるからだ。
「じゃあ、ズボンを脱げよ。あ、白衣は着たままでいいぞ」
 嬉々としてリーチはそう言う。名執はもう逆らわずにズボンと下着を脱ぐと膝を曲げ、リーチの両足の間に入り込んだ形で立った。
「なんだよ。お前のだって勃ってるぞ」
 リーチは指先で名執のモノをはじいてそう言った。
「あっ……」
 その刺激に身体全体がビクリと痙攣した。
「後ろ向きに、なれよ。前だけじゃあお前満足できないだろ?」
 まじめな顔で言われ、名執は思わず首から上全部を真っ赤にさせた。だがリーチの言う通りであったので否定はしなかった。その代わり、リーチの言葉を肯定するように後ろ向きになると膝を立てたまま、上半身を折った。
 すると腰元だけが上に上がり、恥ずかしい部分がリーチ側から丸見えになっているのが名執には分かった。
「……は、恥ずかしい……」
 思わず名執はそう言って顔をシーツにこすりつけた。
「可愛いな……ユキ……ここも可愛い……」
 言いながらリーチは名執の奥まった部分が見えるように両手で双丘を開き、まだ堅く窄んだ部分に軽くキスを落とした。
「あっ……あ……」
「ユキ……あんまり大きな声は出すなよ……ばれると大変だし……」
 ねっとりとした舌を這わせながらリーチは言った。
「……は……はい……」
 焦りながら、名執は毛布の端を噛んだ。
 暫くリーチは窄んだ部分を積極的に攻めていたのだが、片方の手を前で勃ち上がっているモノを掴み、前後を攻め始めた。そのリズムが身体をどんどん熱くさせていく。
「……うっ……うーーっ……」
 前を散々擦り上げられ、バックには指を突き立てられた名執の身体は、ガクガクと震えていた。快感がさざ波のように身体を走り、頭の芯を夢心地にさせる。久しぶりであるためか、快感が鮮烈でそれに耐えるように立てられている膝がたよりなく感じた。
「……うっん……うん……うう……」
 毛布を噛んでいる口元がギリギリと分厚い布を噛みしめていた。くぐもった嬌声は普通に聞こえるより、怪しい色気が伴っている。
「んっ……んーーーーっ……」
 指が何本も襞をかき回すと、名執の目は見開かれたまま涙が落ちた。快感がどんどん身体に蓄積されて、いつの間にか名執のモノを掴む手はイけないように堰き止めるように根元でしっかりと握られていた。
「んっ……んんっ……んーーーっ……んーーーっ……!」
 吐き出してしまいたいモノを止められている名執は、身体を掻きむしってしまいたいほどのじれったさを感じ、両手でシーツを何度も叩いた。
「……仕方ないから……乗れよ」
 名執の前を掴んだまま、リーチはそう言って名執の奥をかき混ぜていた指を抜いた。
「……あっ……はあ……はあ……リーチ……もう……駄目……」
「分かってるって……ほら、自分で自分のモノを押さえてから、俺に乗れ」
 あくまで先に一度抜いてやろうという気など見せずにリーチはそう言うと、名執の手をとり自分の握っている手と交換させた。
「一人でイったりしたら、後ろはほったらかしにしてやるからな。しっかり持ってろよ」
 名執はリーチの言葉通りに、自分のモノをしっかり掴むと、リーチの方を向いた。
「あ……ああ……駄目……本当に……駄目なんです……」
 快感による涙をポロポロと落としながら名執は言った。その所為か身体がぐらぐらとする。
 もう堪らないのだ。
「ほら……分かってるって……腰落とせ、気持ちよくしてやるから……」
 名執の腰を片手で掴み、下に座らせるように促してくる。それに逆らわずに名執は腰をゆっくりと落とした。すると溶けた部分にリーチの既に勃ちあがったモノの先端が触れ、その感触に思わず腰を上げた。
「なにビクついてるんだよ……お前の中にさっさと入れさせてくれよ……俺もお前の中に入りたいんだから……」
 うっとりとした目でそう言われ、名執は再度腰を落とした。もちろん前はしっかりと自分で押さえてだ。
「あ……」
「ユキ……口、口」
 リーチはそう言って名執の口にハンカチを噛ませると、もう一度腰を下に下ろすように言った。
 ゆっくりとした動きで少しずつ呑み込むリーチのモノは、久しぶりでそう思うのかは分からないのだが、酷く熱く、そして大きく感じた。
「うっ……うーーーーっ……」
 擦れるような痛みと、ずっしりと体積のあるモノが名執の狭い中に侵入した。どんどん奥に入るそれは、内側の襞を思い切り擦りその存在感をこれでもかと言うほど名執に示した。
「ぐうっ……う……うううっ……」
 熱く脈打つそのモノは、内部でドクドクとした血流の動きすら名執に伝え、快感を煽り、意識を麻痺させる。頭の芯も既に快感に支配されてまともな事を考えられなかった。
 今はただ、与えられる快感を全て身体に取り込もうと必死に名執は腰を動かし始めた。
「久々だとっ……狭いけど……っ……イイな……」
 うわずらせた声でリーチはそう言って、いつの間にか名執のモノを掴んでいた。先にイかせるものかと意地になっているのだろう。
「……うっ……うっうっ……」
 上半身を前後に揺らしながらも、名執は身体を上下させた。それに加えてリーチが腰を突き上げると、一気に快感が背骨を伝って脳を直撃するのだ。
 溶ける……
 身体が……
 熱くて……
 堪らない……
 何度もリーチによっても揺さぶられ、名執はもう限界だった。下半身の感覚がなく、快感だけが身体を支配していた。
「うっ……うううううっ……!」
 こんな時でも名執は、リーチの方へは倒れ込まずに、両手を後ろに回して腰を落としたまま果てた。内部では熱いもので一杯になり、リーチのモノはその中でまだ痙攣していた。その痙攣に合わせて、名執の身体も小刻みに震え、まだ残る快感を味わっていた。
「ああもう……お前って……最高……」
 感嘆の溜息を付き、リーチはいつの間にか名執のモノにあてがっていたタオルをギュッと握りしめた。
「あっ……ん」
 口元からハンカチを落として名執は小さく呻いた。まだ意識がはっきりとしないのだ。
「ここは汚せないからな……」
 ふきふきとリーチはタオルで名執のモノを綺麗に拭いた。
「あっ……や……そんな風に動かさないでください……」   
 リーチは煽るようにタオルを動かすのだ。今の身体にそれは拷問だった。
「普通に拭いてるだけだよ。お前が敏感すぎるんだ」
「……ああ……私はなんて事を……」
 少し戻った理性が名執にそう言わせた。
「悪いことじゃねえぞ。恋人同士なんだから……」
 そう言ったリーチに名執は頷く事しかできなかった。
「あ、あと、お前の中のものだけど、そっと腰を上げろよ。それも全部綺麗にしてやるから……」
 ニッコリと笑ってそう言うリーチの顔が名執には意地悪な悪魔に見えた。

 それからというもの、夜に病室を訪れることを約束させられ、名執も逆らうことが出来ずリーチにつき合っていたのだが、数日後外科病棟で妙な噂が流れた。
 
 十二時を過ぎると妙なうめき声が聞こえる。あれは幽霊だ。 

 それを小耳に挟んでから名執はどれだけリーチが文句を言おうと、病室には行くことをしなかった。何より追い打ちをかけたのは、話さなければいいのに、見舞いに来た幾浦にそのラブラブぶりを聞かせた為であった。
「名執……私が夜中来たら、病院に入れてくれるか?」
 そんな事を真面目な顔で言われ、もう穴があったら入りたいほど恥ずかしい思いをさせられたのだ。そうであるから本当に二度と、名執はリーチのそういうわがままにつき合うことはしないと決めたのだった。
 もちろん、幾浦にそんな事を許しはしなかった。

―完―
タイトル

ああもうリーチっておばか! でもエロさで右に出るものはない? まあ……これがリーチと言いましょうか(笑)。でもって幾浦に話すし……。そんなことをするから名執の機嫌を傾かせていると何故気が付かないんでしょうねえ。それにしてもこの後退院してからの名執苛めはさらに加速したと見た私(笑)。

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