Angel Sugar

「初めての…」 (30万ヒットキリ番リクエスト)

タイトル
 周囲がシンと静まり返った夜半過ぎ、公園脇の道路に一台の車が止まっていた。その隣には古ぼけた一台の自転車が同じように止められていた。
 公園の中に一歩足を踏み入れると、遠くからまだ止まらない噴水の音だけが聞こえ、水銀灯の明かりが、園内の歩道を照らしている。その歩道を等間隔にイチョウが立ち並び、その下にヤブコウジの葉が生い茂っていた。
「あ……や……駄目……」
 明かりの届かない場所から小さな声が聞こえ、暗い藪の中に消えた。
「……なあ……いい?」
 そう言う男の声も興奮しているようだ。その男の側にある藪が突然ガサッと音を立てた。
「だっ……誰だっ!」
「はいはい、未成年はおうちに帰りましょうね……」
 いきなり藪を照らすライトに、そこで繋がっていた男女が慌てて衣服を掴んだ。
 全く……
 どうしてこういうことにつき合わされなきゃならないんだ……
 リーチは心の中で愚痴をこぼした。
「君たち、ちょっと交番まで……」
 と、リーチと一緒に歩いていた若い警官が言うと、二人の男女はそこから脱兎のごとく逃げ出した。
「あっ……待ちなさいっ!」
 警官は追いかけようとしたが、リーチはそれを止めた。
「牛越さん。頭の固い警察官は嫌われますよ……。いいじゃないですか……若いんだから……」
 苦笑したようにリーチはそう言った。 
「隠岐さん……ですが……ついこの間、この先で殺人事件があったのですよ。どうしてそんな公園に来るのか僕には分かりませんよ……」
 現場百回という法則を意外にリーチは守っている。古くさいという刑事もいるが、これは犯罪心理行動上、犯人は現場にかなりの確率で戻ってくることが証明されているからだ。
「新聞もテレビも見てないんじゃないですか?だからこの先であったことなんか今の若い人は知らないんですよ……」
 リーチは利一モードでそう言って笑った。だが、別段ここで長居しようと思っているわけではなかった。名執のうちに向かう途中に現場があったものだから、ただの気まぐれで車を止め、公園をぶらついただけだった。
 そこで、公園を警戒していた警邏中の警官に会ったのだ。向こうは利一を知っていたので、声を掛けてきた。
「……さてと。私もそろそろ帰ります。牛越さんも交番に戻った方がいいですよ」
「そうですね……そうします……」
 牛越はそう言って笑った。だがリーチは今、普通に笑うのも辛かったのだ。
 ああいうもんをみせられちゃあなあ……
 途中で合流した牛越と一緒に現場を回った後、あちこちで楽しんでいる男女に声を掛けていたのだ。
 仕事熱心な警官とはあわねえよ……
 逆に、一緒に探検しましょう……なんて牛越誘われていたのなら、嬉々として(とはいえ一応利一の顔で)おつきあいしただろう。だが予想に反して牛越は、国宝級の真面目人間だった。
 ああもう……
 煽られちゃってたまんねえよ……
 下手をすると内股で歩いてしまいそうな股下の重みに耐えながら、リーチはようやく自分の車に戻ると、名執の元へと向かうためにエンジンを掛けた。

 リーチが来たのは良いのだが、玄関で名執が出迎えたとたん、いきなり手を捕まれ外に連れ出された。
「リーチ……?」
「俺……今日行きたいところがあるんだ……」
 なにやら熱のこもったような声でリーチは言った。
「行きたい所……ですか?」
 怪訝な顔で名執が聞くと、リーチはようやく立ち止まった。
「……ラブホテル……」
 言って鼻の頭の上部をリーチは赤らめた。
「……はあああ?」
「なんか……俺……今日は気分を変えて何処か他でやりたいんだよなあ……外って言っても都内は俺も避けたいし……だったらホテルしかないだろう?」
 無いだろうって……
 それも変な話だと思うんですけど……
「嫌です」
 名執はきっぱりとそう言うと、今度は逆にリーチを引っ張って今来た道を戻りだした。
 どうせ……
 この人は……
 また何か変なものをみるなり、聞くなりをしたんですよ……
 一度リーチが仕事でエロビデオを大量に見たことがあった、その後のリーチの頑張りようは普通ではなかったのだ。
「ユキ……ユキちゃんって~」
 ずるずると引きずられながらリーチはそう言ったが、名執は無視をした。
 まったく……
 まったくもう~
 想像しただけで名執は顔が真っ赤になってしまった。
「リーチ……さ、うちに入りましょう。どうせ貴方はまた妙なものでも見てきたんですよ。分からないと思っているんですか?同じ手には二度とひっかかりませんっ!」
 リーチを掴んでいた手を離し、名執がそう言うと、ムッとした顔が返ってきた。
「別にいいじゃないか……ホテルくらい……」
「ただのホテルじゃなくて、上にラブが付くんでしょう?もう……どうしてそういう所に行きたいと言うんですか……恥ずかしいと思わないんですか?」
 名執はラブホテルという場所を、おどろおどろしい所だと思っていたのだ。特にああ言う場所を利用する人は、不倫等後ろ暗い人が行くものだと思っているからだ。
 そんな場所に行こうと言われても名執はちっとも嬉しくなかった。
「なんで恥ずかしいんだ?楽しいぞ。ベットは廻るし、ブランコはあるし、泡風呂だってあるし~大人の遊園地みたいで楽しいって~」
 リーチはだだをこねるようにそう言った。
「遊園地?貴方は何を言ってるんですかっ!おこりますよっ!」
 名執は本当に気分を害していた。
「……今はもっと色々楽しいものがあるとか聞くし……昔は……、あ……いやその……」
 ぴく……
 昔は?
 昔は利用したんですか?
 美女十人切りと、そういえば言ってましたね……
 ということは……
 貴方は遊びでそう言う場所を利用したこともあるって言うことですか?
 ……過去の事だとはいえ……
 なんだか腹が立ちます!!
 と心の中では思いながらも、名執は口に出してそれを言葉にすることは出来なかった。気が付くとその思いとは別の言葉を発していた。
「行きましょう。リーチ……」
 名執は何故か負けたくないと思った。
「……なんだ?いきなり……」 
 今まで頑なに嫌だと言っていた名執がそう言ったことで、今度はリーチが怪訝な顔を向けた。
「行きたくなったんです」
 きっぱりと名執は言った。
「……お前が乗り気ならそれでいいけどさ……」
「行きましょうっ!」
 にっこりと微笑みながら名執はリーチに言った。
「じゃあ……行くか……」
 名執が乗り気になったところで今度はリーチの方が、躊躇しているようであった。
「でも私……ラブホテルの場所なんか分かりませんから、リーチに任せます」
 その名執の言葉にリーチは嬉しそうに頷いた。

 やって来たのは都内にあるラブホテルだった。いくつか立ち並ぶ中で、リーチが選んだのは外観が中世の城を思わせるものだった。それを見ただけで名執は口が開いたままふさがらなかった。一体だれがこんな設計をするのだと思ったのだ。
 なんて……
 恥ずかしい建物……
 その上、丁度棟にになっている部分に旗が立ち、風にたなびいているのだ。
 は……
 恥ずかしいっ!
 日本人は一体何を考えているんですかっ!
 ……でも……
 昔リーチは、私が知らない人とこういう所に来たのだ。
 チラリと運転席にいるリーチの様子を窺うと、嬉しそうにニコニコとしていた。
 勢いで来てしまったが、ここまで来て名執は後悔していた。だが今更帰るとも言えずに名執はずっと俯いたまま無言になってしまった。
「なに……ユキちゃん恐いの?」
 意地悪な表情でリーチは言った。
 恐いのではない。
 何となく嫌なだけだった。その理由が名執には、はっきり分からないだけだ。
「いえ……その……」
 駐車場に車を止め、そこから建物の中にはいるとやや照明を落とされたロビーに着いた。そこには誰もいなかった。
 どうやって受付するんだろうと名執がキョロキョロしていると、リーチはさっさとフロアの真ん中にあるモニターの前に立つと、プレート状になった画面を眺めていた。
「あ、開いてる開いてる……」
 なにやらご希望の部屋が空いていたようだ。
 ……それって……
 リーチすっごい慣れてるって事ですか?
 以前から知ってた?
 心の中に生まれた疑惑がムクムクと身体を支配している頃、リーチは開いていると言った部屋のプレートに付いているボタンを押している。すると下からキーが出てきた。それをリーチは自然な仕草で取ると、名執の側に戻ってきた。
「リーチ……」
 どうしてそう手慣れているんです?
 言おうとしたが、やはり喉元で言葉が止まった。
「楽しもうな……」
 リーチは名執の肩を引き寄せてそう言うと、行き方など分からない名執を案内するように、目的の部屋に着いた。
 扉をキーで開けるとそこは別世界だった。
 な……
 何ですかここ?
 きらびやかに装飾された部屋を想像していたのだが、今目の前に広がっている光景はどう見てもジャングルだった。
 あちこち人工の草が生やされ、ご丁寧に花も付けられている。その周りには本物そっくりの木々が天井を覆い尽くすほどの葉を茂らせていた。その隣に何故か人工的な小川が作られ、その流れを逆行して目で追うと、一番奥に風呂のような浴槽があり、やはりその廻りもシダなどで覆われている。
「……リーチ……??」
 予想とあまりにも違うラブホテルの一室に名執の混乱は続いた。
「ここ、アオカンが味わえる部屋なんだよな……。他の部屋も色々あるんだよ。ピラミッド風とか、砂漠風とか、海岸風とか……ちょっと普通のホテルに飽きた人間が来るらしいけどな。俺はアオカンがいい」
 名執にはリーチの言葉が意味不明だった。
 アオカンって……何??
「リーチ……アオカンって何ですか?」
「え、お前知らないの?……なんていうか……ははは。要するにこういう場所でエッチをするのがアオカンって言うんだよ」
 乾いたような笑いを浮かべながらリーチは言った。
「……よく分かりませんけど……リーチはこういう、草の生えたようなとこでエッチしたいと思っているんですか?」
 草の上でなど楽しいのかと名執はその心理が分からなかった。
 まあ……
 気分を変えるという意味では分かるのですけど……。
 何も草の上じゃなくても……
「う~ん……好みの問題かもしれないけどな。本当は外でやりたかったんだよなあ……でもマジで知ってる奴にライトなんか当てられた日にはもう目も当てられないことになるから……」
 リーチは名執に聞かせるというより、一人で呟くように言った。
「ま、とりあえず二人で泡風呂に入ろう!!」
 言ってリーチは名執の服を脱がせ始めた。
「じ……自分で脱げますっ!」
 名執はリーチを手で押しやり、自分でシャツのボタンを外し始めた。だがこの脱いだ服をどうするのだろう……そんなことを思っていると、リーチはまるで自分の庭のように何処からか籠を持ってきた。
「……何処から持ってきたんです?」
「入り口の所にほら、ちゃんと色々と置いてあるだろ」
 丁度今入ってきた扉の周りには、低い観葉植物が置かれ、その下にジャングルの部屋にそぐわない籠や、アーミー柄のゴミ箱、その他ご丁寧にティッシュの箱など置かれていたのだ。
 ……なんだか……
 嫌かもしれない……
 そんな気持になっていることを絶対リーチには分かっているはずだった。だがリーチの機嫌の良さに流されるまま服を脱ぎ終わると、シダに囲まれた浴槽に二人で浸かった。
 それにしても落ち着かないのだ。
 周囲は屋外そのものであり、人の目は無いとは言え名執は恥ずかしくて仕方ない。言葉を失っているとなにやら股の間をすり抜けるような異物感があった。
「ひっ……い……今の……?」
 湯の中を覗くと、赤いコイが泳いでいた。
「さっ……さっ……魚がっ!」
「玩具だよ。電池で動いてるんだって」
 リーチに宥められ、名執がもう一度そのコイをじっと見つめると、確かに本物よりぎくしゃくとした動きで身体をくねらせていた。そんなコイが数匹浴槽の中にいた。その上浴槽の上部にある余分な湯を外に排出する溝がそのまま小川の形で部屋を横断していた。そこにも小さな魚らしきものがカクカクと身体をくねらせて泳いでいた。
 気持ち悪い……
 こんな所で本当にリーチはやりたいんですか?
 ぶくぶくと湯に顔を半分浸した名執はじっとリーチの表情を窺った。そのリーチはいそいそと泡を出すボタンを押していた。
「こういうところもたまには良いだろう?」
 嬉しそうにリーチは泡の出だした湯をばしゃばしゃと手で弾いていた。
「……私にはよく分かりませんが……」
 妙に気持が冷静になりすぎて、理性がしっかりと機能している名執には今のこの状態を楽しめなかった。
「楽しくない?」
「え、いえ……」
 想像していたホテルの内装ではなかったことと、泡だらけの湯の中を泳ぐコイの存在がこの場にそぐわなく、違和感だけが名執にはあった。
「ユキ……」
 こちらが全く乗り気でないのに、リーチはそう言って口元を近づけてきた。
 ……やっぱりなんだか……
 ここ……
 気持ち悪い……
 ぐいと近づくリーチの顔を押しやり名執は言った。
「ユキ?」
「リーチ……落ち着きません……」
 俯き加減にリーチを見て名執は言った。
「俺は興奮してる……」
 名執の手を取り、リーチは自分の股間に誘った。するとそこは既にはち切れんばかりに高ぶっていた。
「……あ……」
 堅い弾力性のあるものを手に取り、その形を確認するように名執は手で触った。
「この状態で退けるか……」
 グイッと身体を引き寄せられた名執はそのままリーチに倒れ込んだ。すると湯がその勢いで跳ね、コイの身体が泡の中からぷっくりと浮かび上がった。
 この……コイも嫌だ……
 気味が悪い……
 リーチの口づけを受けながら、目線は浮かんでいるコイに釘付けになっていた。
「おい……何見てるんだよ……」
 名執の目線に気が付いたのか、リーチは機嫌悪くそう言った。
「気味が悪いんです……コイが……」
 ぷかぷかと浮いているコイをやっぱり目線で捉えながら名執は言った。するとリーチはいきなり湯船から上がると、まだ湯に浸かっている名執を引き上げ、人工芝になっている所に泡だらけのまま転がした。
「リーチ……」
 人工芝のちくちくした痒いような痛みを背中に感じ、名執は身体を起こそうとしたが、その上にリーチは覆い被さった。
「ユキ……」
 髪に付く泡を手で払いのけながらリーチは名執の額にキスを落とす。
 ……あまり気は進みませんが……
 リーチが満足なら仕方ないです……
 そこで名執はようやく吹っ切り、リーチの背に手を廻した。
「愛してるよ……」
 言いながらリーチの唇は額から頬を伝い、名執の柔らかな唇に滑り降りてきた。
「……ん……」
 名執の舌に絡まるリーチの舌は、音をたてて吸い付き、二人しかいない室内に粘着質な音を響かせた。
 明るかった室内がいつの間にか薄暗くなり、まるで夕暮れ時のようなえんじ色のライトがともっていった。そのライトを背にしているリーチの姿がぼんやりと自分の前に浮かび上がる。
 ああ……
 変な気分になってきた……
 口元から離れたリーチの唇は胸元に移動している。そんなリーチの身体を両手で抱えるようにして、自分にのし掛かっている身体に密着させた。
「あ……っ……」
 いきなりリーチの手が名執の茂みに伸び、そこにあるモノを掴んだ。
「やっ……あ……」
 リーチは執拗に名執の乳首の先をついばみ、舌で舐め上げた。その快感が胸元から広がり、身体を支配し始めた。もちろん、その間もリーチの手は名執の股下に付いている二つのボールを手の中で転がし、重ね合わせては擦りあわせた。
「あっ……あっ……」
 両足をリーチに絡め、名執は益々自分の身体をすり寄せると、その刺激に酔った。
「……んっ……」
 ボールを揉んでいた手は次に、やや勃ちあがっているモノを掴み、そのまま刺激を与え続けた。時に激しく指先でいたぶられ、名執は喘ぎ、リーチの髪をかき乱した。
「ユキ……足解いて……」
 リーチの声を聞き、名執は答える前にリーチに巻き付けている足を解くと、膝を立てたまま左右に開いた。するとリーチはそのまま身体をずらし、名執のモノの側面を舌でなぞった。
「……あっ……」
 口に含むことはせず、リーチは側面を何度も舌で舐め上げ、ようやく満足したのか最後に先端を口先に含んだ。
「……ん……あ……ああ……」
 立てて開いた両足が、ヒクヒクと小刻みに震える。断続的に身体を走る快感が名執を夢心地にさせた。
 ああ……
 リーチと抱き合うと、心が満たされる。
 名執はうっとりとしながら、与えられる刺激に酔った。ねっとりしたなま暖かい舌が股下や敏感な太股に吸い付くと、それだけで名執はイってしまいそうになるのだ。それを現すように、名執のモノは先端から白濁した液を滲ませていた。
 まだ……
 まだ早い……
 もっと強い刺激が……
 刺激を貰ってから……
「ん……ん……う……」
 自分の指を咬み、名執は必死に耐えた。だが頭の芯まで快感が浸透し、瞳が虚ろになってくる。そんな状態で何処まで我慢できるか名執にも分からなかった。
「イけよ……いいから……」
 リーチはクスクスと笑いながらそう言い、再度先端を口に含んだ。
「あっ……やっ……駄目っ……」
 胸元を反らせ、名執は近くにある観葉植物を掴み、何とか刺激に耐えようとしたが、リーチはそれを許さなかった。
 ぐいと喉の奥まで口に含まれ、名執は果てた。
「は……っ……はっ……」
 膝を立てていた両足は今の刺激に弛緩したように芝生に伸びた。涙目になった瞳の向こうには生い茂った葉が照明に照らされ、黒い影のように見える。
 ああ……
 変な気分……
 本当に外にいるみたい……
 周囲は人工的に作られたとはいえ、木や草が生い茂っているのだ。それらを見ていると屋外で抱き合っているような感覚に陥る。
「……っ……」
 いきなりリーチの指が、窄んだ部分に触れ、名執の身体がビクンと跳ねた。腹に零れ落ちている白濁した液を、リーチは手のひらで敏感な部分に擦り付けているのだ。
「……やっ……あ……」
 急に現実に戻された名執は声を上げた。
「ユキ……足立ててくれよ……」
 言われるままに足を立てると、リーチは更に名執の奥を抉った。指先が数本に増やされ、クチュクチュと音をたてた。
「あっ……あ……っ……」
 口は開き既に閉じることが出来なくなっていた。その開いた所から熱くなった息がせわしなく吐き出された。
「あ……いれ……入れてっ……!リーチっ!」
 喉から絞り出すように名執はそう叫ぶと、リーチは自分のモノを掴み、トロトロに溶けている部分に自分のモノを押しつけた。
「はっ……はっ……あ……」
 息を整えながら、名執はリーチがすんなりと奥まで突き進めるように、出来るだけ力を四散させていたが、堅く尖ったモノが襞をかき分け奥に捻り込まれると、一気に内側が縮まった。
「く……っ」
 歯の間から息と共にリーチは言葉を発した。
「すげえ……締め付け……」
 次にそう言って小さく笑うと、リーチは腰を動かし始めた。同時に何故か芝生が動いた。
 何っ……
 何?
 芝生がっ! 
 動いてるっ!!
 打ち付けられる腰からくる快感を味わいながらも、名執は自分の背中に触れている芝生の動きが気になって仕方なかった。
 いや、そうではない。気持ち悪かったのだ。
 こ……
 こういう所なんですか?
 ラブホテルって……??
 そんな風に思ったが、いつの間にか快感の虜になっていた。

 散々リーチが愉しんだ後、二人は朝方近くホテルを後にした。だが名執はぐったりとしたまま身体が殆ど動かなかった。ほんとうはゆっくり眠っていたかったのだが、とにかく落ち着かなかったのだ。
 散々、リーチを説得し、ようやくうちに帰ることになった。
 だがホテルで愉しんだことよりも、名執はずっと心の引っかかる事があり、そのことばかりが今も気になっていた。
 リーチがあまりにもラブホテルの中に詳しかったからだ。
 どう考えても昔からあるラブホテルには名執には思えなかった。では、良くあそこをリーチは利用するから知っているのだ。
 だが名執はラブホテルは初めてだった。
 だったら誰と行って詳しいのだろう……
 もしかしたら自分以外に誰かと?
 そう思うと、ホテルで一晩明かす気にはならなかったのだ。
「リーチ……どうして貴方はホテルに詳しいんですか?」
 名執はぼんやりとそう聞いた。
 もし悲しくなるような答えが返ってきたら……そう思ったが、聞かずにはおれなかったのだ。
「え、……う~ん……言ったらお前……怒るかもしれないしなあ……」
 困った様な口調でリーチは言った。その上こちらをちらとも見ようとしなかった。
 ……それって……
 やっぱり……
「誰と……誰と行ったんですか?私……」
 急に涙がこぼれ落ちそうになったのを名執は必死に堪えた。
「あっ……違うよっ!誰かと行ったから知ってるんじゃなくて……その……仕事で行ったから……」
 仕事?
 リーチの仕事は刑事……
 しかも……
 殺人課……
 って……!!
「まさかあの部屋で誰か殺されたとか言いませんよねっ?」
 名執はぼんやりしていた目を見開いてそう言った。
「あはははは。あの隣の部屋」
 リーチはそう言って笑ったが、名執は笑えなかった。
 この……神経は……
 どうなってるんですか??
 名執が言葉を失っているとリーチは続けていった。
「人が死んでない土地なんて何処にも無いって……。だろ?」
 そのリーチの言葉に名執は同意など出来なかった。

―完―
タイトル

meguさまリクエストのラブラブリーチと名執です。ちとご希望に添えない部分があってホント申し訳なかったと……すみません。こんな風になっちゃいました。しかし、この話……多分、誰だってこういう感じでホテルに誘われるのは嫌だと……。というか、隣で誰か殺されてたって……そりゃないよ~リーチ……。とはいえ、ホントにこういうホテルがあるのかは謎。あったら面白いってことにしておきましょう……(汗)
こちらの感想を掲示板やメールでいただけるととてもありがたいです。これからもどうぞ当サイトを可愛がってやってくださいね!

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