Angel Sugar

「賭け事の果て」 (15万ヒット)

タイトル
「天国、天国……と」
 恭夜はリビングでだらしなく身体を伸ばしてゴロゴロとテレビを見ていた。
 この一週間、ジャックは海外へ仕事に出かけており、久しぶりに十分な睡眠と自由を味わっていたのだ。
 頻繁にこういう風に出かけてくれると良いんだけどなあ……
 サ●スポを床に広げ、両足をパタパタと前後に振りながら恭夜は思った。
 まず今週初め、どうしても断れない仕事がジャックに入り、散々ぶーたれていた男を成田まで送り、迎えに来ていたクライアントの代理人に引き渡したのだ。
 それにしてもあれ何処の国の人だろうなあ……
 黒服のスーツを着、黒いサングラスをかけた二人組と、何やら頭にターバンを巻き、金糸銀糸の妙な服を着た男が空港で待っていたときには恭夜も開いた口が塞がらない程驚いたのだ。
 なんだこいつら……
 愕然とする恭夜を後目に、相変わらず断ろうとするジャックの足を踏んだのは、ようやく我に返った恭夜だった。
「キョウ……私は仕事人間じゃないぞ。この程度の依頼など……」
 と又機関銃の様に話し出すジャックを無視して、にこやかな顔でターバン男に「宜しくお願いします」と恭夜は言って、そこから脱兎したのは言うまでもない。
 そうして自家専用機が遙か彼方まで飛んでいくのを見送り、暫くキョロキョロし、ジャックが本当に行ったことを実感するまでやや時間がかかった。
 どこかからまた、出てきそうだったのだ。
「なあにが、キョウも来てくれたら私は嬉しい~だっ!いつ解決するかわからねえ交渉につき合ってられるかっての。俺にだって仕事があるんだって……」
 床に置いたポテトチップスの袋に手を突っ込んで、恭夜は気分良く一人そんな事を言っていた。
 何より今週は待ちに待った安田記念なのだ。
 恭夜はギャンブラーではないが、競馬は少しやる。G1、それも一度の掛け金が上限2千円と言う可愛らしいものだった。
 馬のことはよく分からない。配合がどうと言われてもちっとも理解できないのだが、馬が一生懸命走る姿が好きなのだ。
 だからG1になると、恭夜はサ●スポを買って、自分なりに馬券を買う。もっと初期の頃は、ランダムで勝手に選んでくれるチケットばかりを買っていたのだが、少し競馬が分かって来ると自分で馬を選ぶようになった。
「やっぱ、一番人気から流して買って良かったのかも……。う~んでも毎年安田は荒れるって言うらしいし……。でもまあこんなところだろうなあ……」
 と、素人のくせによく分かったような口調で恭夜はそう言って、新聞の情報と、テレビの前予想を見ていた。
 本日は枠番と馬番でそれぞれ一番人気をトップにし、馬券を流して買ったのだ。流しとは本命を軸にし、それぞれ次の枠番、馬番を買うやり方だった。
 素人には一番これが買いやすいだろう。
 今日は天気もいいし……
 芝、良じゃん!
 コースは芝千六百メートルの短いものだ。恭夜が好きなのは長いコースなのだが、このコース、過去にレコードを出したオグリキャップがことのほか恭夜は好きであったので、結構思い入れがある。
 オグリキャップを知ったのはビデオからだ。恭夜は過去の競馬のビデオもよくレンタル屋から借りて見る。
 要するに走っている馬が見たかっただけであったのだが、あの地方から出てきたオグリが奮闘する姿に恭夜は惚れた。
 まあ……あいつの子供は全然駄目だけどな……
 でもそんなオグリが可愛いんだよなあ……
 と、嬉しそうに新聞を眺めながら、本日買った馬券を床に並べていた。
 カチャン……
「えっ?」
 玄関の扉が開閉する音が聞こえ、恭夜が身体を起こしたと同時にジャックが両手を広げて走り寄ってきた。
 そのジャックは、薄い色のサングラスをかけ、金髪の髪は相変わらず無造作に肩に落とされている。オーダーメイドの黒に近い紫のスーツが異様に似合っていた。
 外を歩けばもう、芸能人並にみんなが振り返るような男が、恭夜を思い切り抱きしめた。
「キョウ~帰ってきたよ~」
 ぎゅうううっと力を込めて抱きしめられた恭夜は息が止まるかと思った。
「はなっ……離せッ!!」
「寂しかっただろう?私もだよ、キョウ……」
 ジャックはそう言って、顔中キスを落としてきた。
 俺の幸せな日々が……
 終わってしまった……
 がくう……
「なんだね、その顔は……恋人がようやく帰ってきたというのに、その、明らかにがっくりした表情はなんだ……」
 こちらの顎を掴んで上に向け、ジャックはサングラスを外すと、薄水色の瞳で睨んできた。
 だってな……
 俺マジで、この一週間楽しんでたんだもんなあ……
 そりゃちょこっとは寂しいなあ~なんても思ったけど……さ
 心の中で深い溜息をつきつつ、恭夜は言った。
「お帰り……」
「それだけか?」
 不満げにジャックはそう言った。こちらを拘束する手はピクリとも動かない。
「それだけだよ。なんだよ。お前は仕事で勝手に留守してたんだろうっ!なのにどうしてあんたが不満な顔をするんだよ」
 恭夜がそう言うと、ジャックは満面の笑みでこちらを見た。
 うわ……
 なんか又、自分の都合の良いように自動変換してるぞ……
「一人だけ置いて行かれて、拗ねているんだね……。可愛いキョウ……」
 いや……連れて行かれるのも困るんだけど……
 じゃなくて、俺の何処が拗ねてるんだよ……
 とはいえ、一週間分のおつとめをさせられそうな勢いのジャックであったのが恭夜に分かっていたため、ここは逆らわない方がいいと思った。
 下手に逆らうと又何をされるか分からないからだ。
「……ま、まあな……」
 ジャックから視線を反らせ、恭夜はそう言った。
「キョウ~」
「ぐはっ!」
 いきなり床に押し倒され、思い切り背中を打ち付けた恭夜は痛みで声を上げた。
「いてえっ!何するんだよっ!」
 ジャックに組み敷かれながら恭夜はそう言ったが、ジャックの視線はこちらを見てはいなかった。
「何だ……これは?」
 不思議そうにサ●スポを掴んでジャックはそう言った。
「あ、それ、競馬予想。あっ!安田記念これから見るんだから、こんなとこでおっぱじめるなよっ!俺のささやかな楽しみなんだからなっ!」 
 上に乗ったジャックから身体をずらしながら恭夜はそう言った。
「競馬??キョウにこういう趣味があったのか?」
 驚いた顔でジャックは言った。
「日本に帰ってきてからだけどな。結構楽しめるんだよ……」
 言って恭夜は床に並べていた馬券を掴んでポケットに入れようとした。だがその手をジャックによって掴まれた。
「あいてててててて」
「見せろ」
「普通にそう言えよっ!そんな風に掴むなよっ!」
 掴まれた手首を振り払いながら恭夜はそう言って馬券をジャックに見せた。
「……ほう……」
 馬券とサ●スポを眺めながら瞳を細めるジャックが、口元で笑った。
 やべ……
 なんかまた企んでる……?
「俺の趣味なんだから、ごちゃごちゃ言わないでくれよ……」
「……いや……字が読めん」
 真顔でジャックにそう言われ、恭夜は一瞬硬直した後、笑いがこみ上げた。
「ぶはっ……わははははははっ!何だよそれっ!」
「日本語の聞き取りは出来るようになったがね。この三種類の文字がどうも気に入らない。日本には何故自国の誇りが無いんだ?あちこちから文字を輸入するからこんな事になる!島国がどうして三種類の文字を扱うんだっ!」
 ムッとしたようにジャックは言って腹を立て始めた。
 うわ……
 おこっちまった……
「読めないんだったら俺が教えてやるから……そんな風に怒るなよ……。俺が輸入した訳じゃないんだから……。これが日本の歴史だろ……」
 恭夜はそう言ってジャックを宥めると、また機嫌が戻った。
 ある意味単純なんだよな……こいつ……
「今日は優しいね……」
 と言って、また覆い被さってくるジャックを押しのけながら恭夜は言った。
「だからっ!俺は安田記念を見るんだってっ!」
「誰の記念だ!キョウは私の記念をしておればいいんだ」
 ジャック記念ってなんだよ~
 訳がわからねーーー
「誰じゃなくて、競馬レースの名前だ!」 
 ようやくジャックの覆い被さる身体から逃げ出した恭夜はそう言って額の汗を拭った。
「……競馬ね……」
 言ってジャックは暫く考え込んだ。
「んだよ……」
「キョウ、私も何かに賭けるぞ。私が勝ったら、何でも聞いてくれるね。その代わり、キョウが勝ったら私が逆に何でも聞いてやるぞ」
「はあ?」
 恭夜が驚いていると、既にやる気満々のジャックは馬の名前を眺めていた。
「カタカナは読めるんだ。少しね。漢字はまるで駄目なんだが……」
 こちらを見ずにジャックはそう言って、馬の名前を見て選んでいる。
 俺より素人のジャックだ……
 それに俺、すっげー今回手堅く買ったぞ。
 と言うことは……
 俺の勝ちじゃないか!!
 何でも聞いてくれるって言ったよな……
 じゃあ……
 セックスの回数を減らして貰おう!
 これを何とかして貰いたかったんだっ!
 やった……
 チャンスだっ!
「ちょっと、待てよ……俺の賭けた馬は駄目だぞ」
 そう恭夜が言うと、ジャックの顔が新聞から上がった。
「ん?そうだな。キョウは何に賭けたんだ?」
「こいつと、こいつ……で、流してこいつ」
 言って恭夜は、ジャックに馬券の番号と、馬の番号を合わせながら指を差した。
「何だね君は……半分くらい買ってないか?そうやって選り好みをするからいつもキョウは失敗するんだよ。こういうのは一頭決めて賭けないと駄目だ」
 うわ……
 馬鹿だこいつ……
 競馬の恐ろしさを分かってない。
 と思うのだが絶対口には出さなかった。
「……じゃあ……私はこれだ」
 とジャックが指を差した馬は、全くの論外の馬だった。
 チェックが一つもついてない……
 お前……
 これが来たらすっげー大穴だぞ……
「なあ……何でこいつ?」
「馬主が外国人で、読めたからな。それと馬の名前もいいぞ。ゴールドホーク。良いじゃないか……」
 嬉しそうにジャックはそう言った。
 うわ……
 こいつやっぱり馬鹿だ……
 って、やはりそんな事は言わない。
 この賭は貰ったっ!
「じゃあ俺が買ったら絶対俺の言うこと聞いてくれよ」
「馬鹿だねキョウは……君のお願いならいつでも聞いてあげているだろう?まだ何か私にあるのかい?」
 そう言ってまたジャックは恭夜にすり寄ってきた。
 なにがいつも聞いてあげてるだっ!
 お前は俺の頼みなんか一度だって聞いてくれたことねえだろ……
 思いながらも、引きつった笑いだけを恭夜は浮かべた。
「さて、私は着替えてくるか。玄関に荷物も投げ出したままだしな……」
 ジャックはそう言って、恭夜にすり寄せた身体を離した。
「え、お前……もうレース始まるぞ……」
 時間は既に三時十五分だった。レースは三十五分からだ。
「結果が全てだ。その過程など私には興味が無い」
 当たり前の様にそう言って、ジャックはリビングを出ていった。
 悪いな~俺の勝ちだ……
 なんて恭夜はホクホクしながらレースが始まるのをテレビの前で、笑顔で待った。 
 だが……

「負けた……大穴が出た……」
 呆然とテレビ画面を見ているところに着替えたジャックがやってきた。
「キョウ、どうだった?ゴールドホークがもちろん勝ったな?」
 言ってジャックはテレビ前に座り込んでいる恭夜の隣に座った。
「……何で?何でこいつなんだ?絶対嘘だっ!」
 恭夜は立ち上がって、確定の文字の浮かんでいるテレビ画面を指さして言った。
 嘘だっ!
 八百長だっ!
 こんな馬鹿な話ってないっ!!
 荒れるっていうけど……
 こんな荒れ方は何かの間違いだっ!
「おおっ、やはり勝ったか。ゴールドホーク!」
 愕然としている恭夜の横で、満足そうにジャックは言った。
「……さて……キョウ……」
 意味ありげにジャックはそう言って、恭夜の肩に手を回してきた。
 ぎくうう……
「私は君に一度どうしてもして欲しいことがあったんだが……」
 更に……ぎくうう……
「な、何かなあ~」
 乾いた笑いで恭夜がそう言うと、ジャックは満面の笑みで言った。
「キョウに奉仕して貰いたいね」
「はい?」
「そうだな……まずは……」
 ニヤリと笑ってジャックはそう言うと、呆然としている恭夜を抱き上げた。
「軽く誘ってもらうか……」
「……え??ええ?」
 混乱している頭のまま恭夜は速攻に寝室に運ばれ、ベットに下ろされた。そのベットの上で正座した恭夜は、嬉しそうにしているジャックを見て言葉が出なかった。
「あの……あのさあ……」
「ほら、誘ってくれ」
 枕を背に持たれさせて座っているジャックは、もうこれでもかと言うほど嬉しそうだ。だがこちらは正に氷河時代に突入したような気分になっていた。
 誘ってくれって……
 どうしろって言うんだよ……
「俺……こういうの……出来ないって……」
「……有言実行だ」
 何を今更という顔でジャックは言った。
「う~」
「唸っていないで、さっさと来ないか」
 呆れたようにジャックはそう言った。
「こんな昼間からさあ……止めようって……」
「訳の分からないことを言うな。昼でも夜でもその気になったら時間など関係ないだろうが……」
 と、ジャックは言ったが、恭夜はその気になど全くなっていないのだ。
「……ああもう……」
 恭夜は仕方無しに、とりあえずジャックの上に跨った。
「それで?」
 それでって聞かれてもさあ……
 俺は……
 こういうのは苦手だし……
 っていうか……
 自分から誘ったことなんか無いから分からないんだって……
 恭夜が逡巡していると、耳元でジャックは囁いた。
「最初はやはりフェラチオだろう?」
 それを聞いた恭夜は一気に顔が赤く染まった。
「おま……お前っ……そ、そんな事俺にしろって……しろって言うのか?」
 口をぱくぱくさせて恭夜が言うと、ジャックは言った。
「他に何が出来るんだね?キョウがこっちの服を脱がして私の気分を盛り上げてくれるのなら良いんだが、そんな事は出来ないだろう?だったらそれしか無い」
「……」
「なんだ君は……。いつも私がしてあげているだろう?なのにキョウは嫌だと言うのか?」
「いっ……嫌とかじゃなくて……俺は……その……苦手なんだってっ!」
 首を振りながら恭夜がそう言うと、ジャックはいきなりこちらのジーパンを下ろし、下半身を裸にすると、ジャックは恭夜の上に覆い被さった。
「なっ……何するんだよっ!」
 脱がされたズボンを掴んでジャックにそう言うと、今度は恭夜の前を掴んできた。
「うわっ……」
「ギリギリまで煽ってやらないと、キョウには分からないようだから……ね」
 言って恭夜のモノを掴んだ手が、動かされた。
「あっ……や……」
 一週間禁欲生活をしていた身体は、久しぶりのジャックの愛撫に一気に盛り上がりを見せた。
「あっ……あっ……ジャック……嫌だ……」
 身体が敏感にジャックの手に反応しているのが恭夜自身にも分かる。こうなるともう降参するしか無い。それでもまだ残った理性が必死に抵抗していた。
「も……あっ……」
 散々揉み擦られ恭夜がもう少しで、達っしそうになったと同時にジャックの手が無情にも離された。
「……あっ……ジャ……ジャック……」
 涙目で訴えるようにジャックに言うと、困ったような表情が返ってきた。
「変だな……キョウに奉仕して貰うつもりなんだが……。この辺で止めておくか……」
 が~ん……
 こいつ……
 こんな状態で俺を放置するのか?
「……嘘……だっ……」
 浅く息を吐きながら恭夜はそう言ったが、覆い被さっていた筈のジャックは既に枕を背にしてもたれさせていた。
「ジャック……う」
 身体を起こし、恭夜はジャックにすり寄った。
「楽になりたかったら、さっさとこちらの気分も盛り上げてくれないか?私はさっきからわくわくして待って居るんだからね」
 そう言ってジャックは、下半身だけ素っ裸の恭夜の太股を、さらりと撫でた。
「あ……っ……」
「ほら……キョウ……」
 ジャックはそう言って恭夜を自分の上に跨がせた。
「……ジャック……」
 ああ……駄目だ俺……
 下半身に力入らない……
 膝を折折り、ジャックを跨いだ格好で恭夜は呻いた。
「キョウ……君はバックに入れられないとイけない身体だろう?だったら私のモノを大きくしてくれないと、入れてあげられないよ……」
 くすくすと笑ってジャックはそう言った。 
 分かってるよ……
 言われなくても……
 充分、分かってるんだけど……
 息を整えながら、恭夜はそろそろと手を伸ばし、ジャックのズボンのジッパーを下げた。そうして、手を忍ばせ中で張りつめているモノを外に出した。
 ごく……
 すげえ……
 もうおもいっきり勃ってるじゃないか……
 チラリとジャックのモノを見て、次に視線をジャックに戻すと、やはり笑顔でこちらを見ていた。
「……あ……」
「早く……キョウの可愛い口を私にくれないか……?」
 うう……
 やらなかったらこいつ……
 また散々俺のこと苛めるに決まってる……
 ようやく決心を付けた恭夜は身体を沈ませると、既に立ち上がっているジャックのモノを口に含んだ。
 ……うう……
 でかい……
 外人ってなんでこんなでかいんだよ……
 なげえし……
 口に全部なんて入らない……
「キョウ、先だけをちまちまやっていないで、根性入れてしっかり口に入れないか……」
 と言ってジャックはこちらの後頭部に思い切り力を入れた。その所為で、いきなり口の含んでいたモノが喉の奥まで入り込み、恭夜は咳き込んだ。
「なっ……なにするんだよっ!ごほっ……げほっ……。息が出来ないじゃないかっ…げほっ」
「お前は息を口でするのか?呼吸は鼻でするものだ」
 当然のようにジャックはそう言って、また頭を押さえようとするので、恭夜は言った。
「俺の好きにさせてくれよっ!やるって言ってるんだからっ!」
 頭を振って恭夜はそう言い、半ばやけ気味でもう一度ジャックのモノを口に含んだ。
「ほう……良い心がけだ」
 ジャックの方は目を細めてそう言い、恭夜の頭から手を離した。
「……ん……う……」
 もう何でもいいっ!
 舐めりゃいいんだろっ!
 もう口の中一杯になっているモノを、恭夜は必死に舌で愛撫した。これでジャックが気持ち良いかなどは考えられなかった。ただもう、恭夜は必死だったのだ。
「……キョウ……君は筋がいい……」
 言ってジャックは恭夜の頭を撫でた。
 筋?
 そんなの良いとか悪いとかわからねえよっ!
 等と心の中で悪態を付きながら恭夜はひたすら舌や口を動かして、愛撫に励んだ。
「ひっ……」
 四つん這いになっている恭夜の後口にいきなりジャックの手が伸ばされ、窄んでいる部分に指が突き立てられた。 
「なっ……何するんだよっ……」
 恭夜は口元を離し、身体を捩らせてそう言った。
「何?キョウばかり奉仕させるのも可哀想だと思ってね……」
 ジャックはそう言って、指を深く捻り込んで来た。その痛みと快感が恭夜の身体を震わせた。
「あっ……嫌だ……」
「ふふ……キョウの嫌は悦いって意味だからね……。ほら……ちっとも嫌がってない……」
 そう言ってジャックは恭夜の身体の奥で指を動かした。すると内側の粘膜がジャックに絡まるのが恭夜には想像できた。
「うっ……あ……」
 胸元を反らせ、恭夜は声を上げる。そんな口元をジャックは貪るように愛撫した。
「……ん……う……ん……」
 前も後も散々いたぶられた恭夜は、ジャックが口元を離す頃にはへろへろになっていた。
「あ……も……駄目だ……」
 ジャックの肩に手を伸ばし、恭夜は掠れる声でそう言った。
「まだこれからだろう……ほら、自分で入れないと、私は何もしてやらないよ」
 ニヤと口元で笑ったジャックはそう言って、恭夜が自分を支えるために伸ばしている手を掴むと、勃ちあがっているモノに手を誘った。
「……あ……」
 俺……
 俺に自分で入れろって言うのか?
 嘘……
「ジャック……それは……」
 と、非難の声を上げようとすると、ジャックは所在なげに勃ちあがっている恭夜のモノを掴んで力を込めた。
「ひっ……あ……」
「腰を落として、自分で動くだけだろう?ちっとも難しいことでは無いだろう……。そうでもしないとここはいつまで経っても楽にならないぞ……」
 ここと言ってジャックは爪を立てた。
「いっ……あ……」
 痛みで、目と目の間だがギュッと縮むような感じが恭夜にはした。
「本当は自分で広げて貰ってからと思っていたんだからね。それは私がしてあげたのだから、後はキョウがしてくれないと、折角賭で勝った私の立場が無いだろう?」
 どういう立場だ~
 と、思いながらも恭夜は決心を付けるとジャックのモノを掴み、そろそろと腰を下ろした。恭夜は自分でこうやってジャックのモノを入れたことなど無いのだ。かなり不安だった。
 途中でチラリとジャックの方を見たが、ジャックの方はただこちらをじっと見ているだけだった。
 うう……
 恥ずかしい……
 そんな事を考えながらも、ようやく恭夜はジャックのモノを自分の中に入れることに成功した。だが初めてのことで緊張している所為か、先だけが入った状態で、腰が止まってしまった。
 恭夜はそこで両足を震わせ、視線を落としたまま動けなくなった。
 は……
 入らない……っ!
 も、どうしていいか分からないっ!
 落とした視線の先に涙が零れると、そこでジャックが言った。
「全く……キョウが一言、ジャックにして欲しいってねだってくれたら許してやろうと思っていたんだが……」
 苦笑した声でジャックはそう言った。
「……う~」
 呻くようにそう恭夜は言って、更に涙を落とした。
「強情なキョウも可愛いが……素直なキョウが私は好きなんだよ……」
 言って恭夜の身体を引き寄せ、ジャックは恭夜の背を撫でた。
 もちろんその動きで、一旦入ったモノは抜ける。
「……う……えっ……」
「キョウ……会えなくて寂しかったよ……」
 ジャックはそう言って、涙の伝う頬を舌で愛撫した。
「俺……」
 俺も寂しかった……
 最初の二日くらいはゆっくり眠れたのだが、後半は寂しく過ごしたのは本当の事だった。だが元来素直になれない恭夜は必死に虚勢を張ることでしか、寂しさを紛らわせることができなかったのだ。
「私が居なかった間、一度くらいは私としたいと思ってくれたかい?」
 くすくすと笑いながらジャックがそう言うと、恭夜は何度も頷いた。
 ホントは……
 会いたかったんだ……
 寂しかったんだ……
 ジャックが家にいなくて……
 俺……
「一週間分愛してあげるからね……」
 ……一週間……
 一週間分って……
 ちょっとまてーーーー!!
 やっぱりそうきたかーーー!
 なんて口をぱくぱくしている間に、恭夜はジャックによって既に抱き込まれていた。

 翌朝、やはりジャック一人が、満足そうに朝食を食べていた。恭夜と言えば、昨日の昼真っから散々セックスにつき合わされ、遅くにようやく夕食を食べ、またベットで散々セックスにつき合わされた。
 その所為で、本日の恭夜は普段より更に目の下にクマを作り、顔色もどんよりとしていた。
 又……俺……
 最悪な日々に逆戻り??
 昨日一瞬でも寂しいとか思ったのは間違いだったっ!
 やっぱりこいつ……
 俺の生気吸い取ってやがるぞっ!
「何だね……その顔は……。キョウはどうしてもっとこう、楽しげに朝食が食べられないのかね……」
 チラリとこちらを見たジャックは呆れたようにそう言った。
 お前が諸悪の根元だろうがっ!
 なんては言えない。
「……俺……低血圧だから……」
 ぽつりとそう言って、スポーツ新聞を広げると、一面にやはり昨日の安田記念の記事が載っていた。

 やはり荒れた安田記念

 今度賭をするときは荒れないレースを選ばないと……
 絶対今回のことでジャックは味を占めてる筈だからな……
 恭夜はそう思いながらコーヒーを飲み、記事を読んだ。

●レースを制した馬主さんのインタビュー●
 もう今回どうにかしないと……と、みんな必死だったんですよ。
 それが、昔からの友人にレース直前に連絡を貰いましてね。
 馬と話をさせて欲しいというので、携帯でその人の声をうちの馬に聞かせたんですよ。
 その友人は馬におまじないをしてくれるっていうんで、
 もう、わらにもすがる気持ちでおまじないを聞かせたんですが、
 それが効いたんでしょうかね……

 ぶふっ!!
 恭夜はそこまで読んでコーヒーを口から吹き出した。 
「今度は何だね……キョウは朝から何をしているんだ……」
 顔をしかめたジャックはそう言って、こちらに布巾を渡してきた。だがそれを恭夜は振り払った。
 馬主って……
 アメリカ人だっ!
 もしかして……
 こいつの知り合い??
「あああああ、あんたっ!昨日っ!昨日どっかに電話しなかったか!」
 立ち上がって恭夜はジャックにそう言った。
「古い友人にね……何、ちょっとしたおまじないをしてあげただけだ……」
 ニヤリと口元に笑みを浮かべてジャックはそう言った。
「そ、そんなの……う、馬に効くのか?」
 信じられないと言う顔で恭夜が言うと、ジャックは言った。
「さあね。ただ快楽物質と言うのを知っているかい?人間が苦しみの限界を超えると脳内から出てくるんだが、そうなると人は実力以上のものを発揮することができるんだよ。まあ……馬に効くかどうかわからんが、上手く引き出せたようだね」
 こいつ……
 こいつって……
 何者???
「何だ、キョウも体験してみたいのか?」
 嬉しそうな顔でそう言うジャックに、恭夜は思い切り首を左右に振った。
 恭夜がジャックとは二度と賭などしないと心に誓ったことは言うまでもない。

―完―
タイトル

ああ……毎年の事ながら安田記念が荒れた……。昨日ちょこっと打って、お話の中では勝つのは大穴でブラックホークに決めていた私って……(涙)。買った馬券は手堅く流してしまった。がふ。こ、こんなことになるとは……恭夜と同じく茫然自失のあすかであった。がくう。お話の中では勝った馬の名前は変えています。元はブラックホーク……嘘だーーー! 馬主さんもブラックホークは日本人の方です。あ、レコードのオグリキャップの事はホントです(苦笑)。
なお、こちらの感想も掲示板やメールでいただけるととてもありがたいです。これからもどうぞ当サイトを可愛がってやってくださいね!

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